その67 「招待/使い」
幕間地獄が終わりました
夜。
ホテルの部屋は静かだった。
悠馬はベッドに座っていた。
倒れてはいない。
ただし。
胃薬を抱えている。
(……一日ある)
帰国まであと一日。
明日もある。
噂が育つには十分だ。
控えめなノック。
悠馬の肩が跳ねた。
爆弾はいない。
なのに反射が抜けない。
「……はい」
ドアの向こうにいたのはホテルのスタッフだった。
丁寧に頭を下げる。
「佐伯様、失礼いたします」
手には封筒。
嫌な予感しかしない。
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「ヴァイスハルト様より、お使いでございます」
「……使い」
レオン。
地元の頂点。
その男が“使い”を寄越す。
圧がある。
悠馬は封筒を受け取った。
中には短いカード。
文字は端正だった。
********************
『佐伯悠馬殿
明後日ご帰国と伺いました。
差し支えなければ明日の夕食をご一緒に。
私邸にて。
『Leon von Weißhardt』
*********************
悠馬の脳が止まった。
(……私邸)
ホテルじゃない。
家。
家に呼ばれている。
なぜ。
悠馬はゆっくりスタッフを見る。
「……これ、間違いでは」
「間違いではございません」
即答。
逃げ道がない。
悠馬はカードを見つめた。
(なぜ)
(どうして)
(僕を)
(観察しているんですか)
声に出そうになったが胃が止めた。
スタッフが続ける。
「お返事は明朝で構わないと」
「……はい」
明朝。
つまり断る余地があるようでない。
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ドアが閉まる。
静かになる。
悠馬はカードを持ったまま固まった。
(……僕は普段こういう)
(社交も)
(私邸訪問も)
(担当じゃない)
担当はノアだ。
爆弾だ。
いない。
最悪だ。
悠馬は枕に顔を押し付けた。
「……胃が痛い」
世界は早い。
悠馬は遅い。
レオンは容赦がない。
そのとき。
隣室のドアが開く音がした。
エレノアだろうか。
悠馬はカードを握りしめた。
明日。
夕食。
私邸。
何が始まるのか分からない。
ただ胃が痛い。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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