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幕間 「事後報告・再び」

きっと家族のグループラインには悠馬君だけ入っていないグループがあるに違いない

蘭が妊娠した。

その報告を聞いた時、僕は固まった。


まただ。


この家はどうして僕に爆弾を投げる時、必ず事後報告なのか。


エドワード叔父上は紅茶を飲みながら、何の前置きもなく言った。


「報告だ。蘭が妊娠した」


「……は?」


 一拍。


 二拍。


 三拍。


「妊娠?」


「妊娠だ」


「誰が」


「蘭が」


「なぜ」


「知らん」


「知らないんですか」


叔父上は穏やかに微笑んだ。


「間違いらしい」


「便利な言葉ですね」


「便利だな」


胃が痛い。

叔父上は淡々と続けた。


「ノアが喜んでいる」


「喜ぶな」


「喜ぶだろう」


叔父上はカップを置いた。


「君は仕事を回せ」


「……はい?」


「ノアは育休だそうだ」


「は?」


脳が追いつかない。


「育休?」


「育休」


「仕事は」


「行かないそうだ」


「皺寄せは」


「君だ」


僕の胃が死んだ。


ーーーーーーーーーーーーー


数ヶ月後。

蘭は産んだ。


産んだが、本人はほとんど家にいなかった。


仕事がある。

蘭はそういう女だ。


かつてのジェシカ叔母様のように。


子供はいる。

だが生活は仕事が中心。


違うのは――


ノアだった。

ノアは息子を溺愛した。


隙あらば抱く。

世話をする。

笑いかける。

仕事を放り投げる。


「育休です」


堂々と言い張る。


全ての皺寄せは僕に来た。


叔父上は穏やかに言った。


「見に行け」


「なぜ命令形なんですか」


「家族だからだ」


便利な言葉だ。


胃が痛い。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ハミルトン邸。


部屋に入ると、ノアがいた。


輝いている。

輝きすぎて怖い。


「兄さん!!見て!!」


逃げられない。


蘭は淡々と座っていた。


腕の中に小さな塊。


赤ん坊。


ノアが囁く。


「似てるよね!!」


僕はゆっくり顔を見た。


小さい。

柔らかい。


なのに。


僕だった。

写真で見た僕の幼い頃の顔がそこにあった。


僕は固まった。


今日何度目だ。


「……気のせいだ」


「気のせいじゃない!」


ノアが即答する。


「兄さんに似てる!最高だね!」


「最高じゃない」


ノアはデレデレしながら言った。


「名前もね、拓海父さんが考えてくれた!」


嫌な予感しかしない。


「ルイス・悠人・ハミルトン!」


「……」


僕は無音になった。


『悠人。』


僕の名前の音。


ノアは幸せそうに赤ん坊を揺らした。


「兄さんに似てるよねぇ」


僕は思った。


この家は僕の胃を殺しに来ている。

そしてこの子は、これから僕の人生に頻繁に現れる。


恐怖だった。



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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