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その1 「旅行」

初めまして、雪森です。

前作、前々作から来られた方(いるのか?!)またよろしくお願いします(`・ω・´)

悠馬君が初めてイギリスに連れてこられた日のお話です。


その頃、両親はいつも難しい顔をしていた。


僕は外に出ないように言われていた。

幼稚園にも行くな、と言われた。


理由はわからない。

わからないまま、家の中で過ごす日が続いた。


ある朝、目が覚めると、いつもならもういないはずの父がリビングにいた。


小さなスーツケースが二つ。


「悠馬。これから少し旅行に行こうか」


旅行。


僕は久しぶりに園服を着せられた。

おもちゃと絵本でぱんぱんになったリュックを背負わされる。


旅行なんて、行きたくない。


僕は幼稚園に行って、みんなと遊びたかった。


でも、その言葉は飲み込んだ。


ーーーーーーーーーーーー


どこに行くの?


聞きたいのに、聞けなかった。


母の顔を見つめた。


妹たちのベビーカーを引いた母は、不安そうで、泣きそうで、それでも優しく言った。


「大丈夫よ」


何が?


僕は言えなかった。


旅行なら、いつもは車で行くのに。

今日はタクシーが来た。


急かされて乗り込み、空港へ向かった。


僕たちは飛行機に乗った。


両親は少しほっとした顔をしていた。


旅行なんて行きたくない。

帰りたい。

幼稚園でみんなと遊びたい。


でも言えなかった。


言ってはいけない。

そんな気がした。


ーーーーーーーーーーー


機内で眠って、少し目が覚めた。


両親が何か話している。


「……なの?」

「……ああ。行けば大丈夫だ」


また、大丈夫。


その言葉が、僕は怖かった。

泣きそうになったけれど、母が泣いているのが見えたから、

僕はそのまま寝たふりをした。


ーーよけいなことは聞いちゃいけない。


僕はその時、そう感じたことを覚えている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


飛行機を降りた。


見たことのない景色。

よくわからない言葉。


黒くて大きな車が僕たちの前に止まり、僕たちは乗り込んだ。


着いたのは、公園より大きな庭。

お城のような家だった。


「これからここで暮らすのよ」


母が言った。


僕はただ帰りたかった。


でも、


「うん……」


とだけ答えた。


ーーーーーーーーーーーーー


中に入ると、知らない外国人の叔父さんと叔母さんがいた。


叔母さんのお腹は大きかった。


叔父さんは僕を見て、にっこり笑った。


「君が拓海の息子かい?」


僕にわかる言葉で、はっきり言った。


「……はい」


小さな声で返事をした。


ーーーーーーーーーーーーーー


この時のことは、数十年経った今でも鮮明に覚えている。


この日、何が起きていたのか。

全部知ったのは、大人になってからだった。


本来いるはずだった場所を、突然失った感覚。


それ以来僕はずっと、

 ーーいていい場所を探しているのかもしれない。



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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