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7) 人類最北端の地



 ファウセレ王国とは、この大陸における人類最北端の国家名である。最北端と言っても永久凍土やブリザードと闘う極寒の地ではなく、ファウセレ王国は四季に彩られた実豊かな地域だ。

 ――では何故、ファウセレ王国が最北端なのかと言うと、人類以外の知的生命体たちが生存圏を確立しているからであり、この世界……この星においてのホモサピエンスは、生物の頂点に君臨していない。ドワーフやエルフなど人類に似た亜人種、獣の特性を持ってこの世に誕生した獣人族、そして生物の進化の法則……つまり『法の外』に生まれた魔族など、人類以外の知的生命体が群雄割拠する世界において、ホモサピエンスは生物の頂点どころか、その生存権を維持するために常に剣を取っていたのである。


 【ファウセレ王国】

 建国の祖ベルトムント・ファウセレ王から四代続く比較的新しい王国であるが、時代はまさにこれから中世の戦国時代に突入しようと言う頃。人類以外の知的生命体とも紛争や衝突を繰り返しつつ、荘園制貴族社会を維持しなければならない状況下で、王国を四世代も続けて来れたのは、実質的に安定した王国運営を行なって来た結果であると言えよう。ーーまだこの世界で人類は、戦乱につぐ戦乱を勝ち抜いて、他の王国や国家を併合する事に成功していない。国家の名にグレートを冠した「帝国」などは存在していないのだ。それ程までに人類の生存競争は過酷だと言えたし、消滅や改名を繰り返す有象無象の王国のその中で、ファウセレ王国だけは国王の血統を護りながら繁栄を続けて来たのである。

 今現在、エーリス・ファウセレ国王の治世の元、公爵二人に伯爵三人、男爵に子爵八名と言う内容の貴族数で王国としてはいささかに寂しい規模ではあるのだが、この少数精鋭の国家があるからこそ、人類以外の知的生命体が北の大地から侵攻して来ないと言う事実もある。人間種にとってはこの王国が防波堤の(いしずえ)の様な存在であったのだ。そして、その国境、、、最前線を領地に与えられて統治するのが、『辺境伯』コニー・オルストレーム伯爵。前国王の(めかけ)の子にて、オルストレーム家の養子となったコニーは、見た目の脆弱さを繕うともせずにその豊かな知略と硬軟絡めた外交力を持って、人類最北端の境界線を維持し続けたのである。ーー辺境伯と言うと中央から叩き出された無能者を想像するかも知れないが、事実はそうではない。国王や王国に比類する軍事力や外交力を駆使して、辺境の外敵に立ち塞がる独立精鋭部隊を展開して王国を護る事が出来るからこそ、国王から辺境を任された有能な貴族を指して言う言葉なのだ。

 

 その辺境、コニー・オルストレーム伯爵領。さしたる産業も無い古典的農奴集落の集合体ではあるが、人類最北端の国家の、その最北端の自治領の長でも更に最北端の村『リスタル村』……そのリスタル村がこの物語の中心となる。一部の亜人種たちからは霊山と褒め称えられるリスタル山の南斜面に位置する寒村ではあるのだが、この村を軸として世界は今、グルグルと目まぐるしい回転を始めるのだ――



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