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31) 勢ぞろい


「最後に今期の議長国、統一ハウトカンプ国!」


 執事頭が入場を宣言し、巨大な五角形の部屋の扉が開いた瞬間、既に会場入りしていた他国の使節団からどよめきが起こる。本来ならば、統一ハウトカンプ国の王の代理として使節団を仕切っていた熊の獣人、宰相ブリアックが毎回先頭を飾るのだが、今回に限って全く違う。使節団の先頭を飾ったのは何を隠そう国王本人、統一ハウトカンプ国国王、オルフィエル・カーンその人だったのだ。


(すげえ……頭の両側から立派な枝角が生えてる。威厳たっぷりだな)


 獣人と言うと、猫耳やウサギ耳の少女をイメージしていたラルフレインであったが、早くもその幻想は粉砕された。今、議長席に着席した獣人の頂点は、まるで映画「荒野の七人」で主役を務めた往年の名優ユル・ブリンナーのように精悍な顔付きで、目付きも振る舞いもいぶし銀そのもの。地上最大の鹿と言われるヘラジカのような豪華な角が、そのスキンヘッドの頭から威風堂々と生えていたのだ。


 獣人に対するイメージの違いで驚いていたラルフレインだが、先に着席していた魔族やエルフ族の代表たち、またオーストレム伯爵は別の意味を持って驚愕している。国の代表が集まるこの会議で、まさか代表ではなく国のトップが直々に出席するなど前代未聞だからだ。


「カーン陛下、ご無沙汰しております」

「おお、北の大魔女よ、久しいな」

「オーガ討伐の合同作戦から数えて、十三年の月日が経ちました」

「互いに壮健で何よりである」


 オルフィエルが議長席に着くと、すぐに魔族の代表である大魔女ライサが立ち上がり、獣人族の頂点にうやうやしく礼をしながら挨拶口上を述べる。お互い古くから知己があったのか、ギスギスとした空気は漂っていない。いや、だからこそ――旧知の関係だからこそなのか、ここで大魔女が一石を投じたのだ


「しかし陛下もお人が悪う御座います」

如何(いかが)した、余が来ては迷惑か?」

「あらあら、聖剣に導かれし勇猛なる者を迷惑などと、口が裂けても言えませぬ」

「だが、そう言う事なのだな?ははは、余も戯れが過ぎたとは思っている。許せ」

「許せとはもったいない。出過ぎた言動、伏してお詫び申し上げます」

(おもて)を上げよ、古き友よ。古い話は(なんじ)が言い出した事だからな」

「聖剣を持ちて悪鬼羅刹を討ち霊格者となった者。陛下自らがこの場にいては……ふふ、皆も恐れ多くて謀り事が出来ますまいに」

「はっはっはっ!それはすまなかった!」


 このヘラジカの獣人、国王オルフィエル・カーンと、魔族の代表である大魔女ライサは、どうやらオーガ戦争よりももっともっと古い時代に仲間だったのではないか……。二人のやりとりを聞いていたラルフレインはそう感じたのだが、その根底に『導かれし者』の存在があった事に、まだ気付いていない。


「古き友、北の魔女、千年魔女……今は大魔女だったか。世俗と離れ悠々自適であるはずの汝が、一週間も早くこの地へ乗り込んだと聞いた。なれば余とて興味は湧くと言うもの」

「なるほど、やはりそうでございましたか。此度(こたび)の事、僥倖(ぎょうこう)であって欲しいと願い、急ぎ馳せ参じた次第にございます」

「ふむ、僥倖か。余もそう願いたい」


 僥倖(ぎょうこう)とは、偶然手に入れた幸せを意味する言葉である。オーストレム伯爵は知っているかもしれないが、今年になってドワーフやエルフなど人間以外の種族が、大地を駆け巡る『龍脈』に変化が現れたと大騒ぎしているのは事実。それが幸いの兆候なのか災いの兆候なのか全ての種族が気にする中で、龍脈が荒れるその原因である可能性を秘めた少年が目の前にいる。災いではなく幸いであって欲しい――ライサたちが僥倖を願うのは必然なのだ。


「さて!挨拶もそこそこに、議事を進めようではないか!」


 獣人国の国王は、まるで言霊でも秘めたかのような荘厳な声を発し、境界連絡会議の開催を宣言する。


「そしてエトホーフトの代表、連合組合長のハッキよ、余が参加するのを認めてくれた事、感謝するぞ。そして余はもう良い、議長はそちらに任せるから進めてくれ」


 早ければ二日、こじれれば一週間はかかると言われる『境界連絡会議』。獣人の王に大魔女、謎の褐色エルフにと……一筋縄ではいかなそうな、なかなかに濃い面々が集まった。そして皆が皆、腹の底でくすぶっている「核心」にたどり着くために、議論は深まって行くのである。



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