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【薺SIDE】



 その瞬間、翡翠色の巨大な刃が目の前の水蒸気と魔虫(マチュウ)を切り裂き地面を裂いた光景が見えた。

 なので、柔らかい物に抱きつかれたまま、僕は大きく後方にジャンプした。

 すると、僕の大感知が前方から危険が迫っていると反応を示した。


 未来予知の神眼と大感知が働いたと言うことは、かなり危険だと言うことだ。

 木刀と脇差しをクロスさせて防御体勢を取ると、翡翠色の巨大な刃が水蒸気を切り裂き、前方にいた魔虫(マチュウ)の軍勢を切り裂くと地面までも切り裂いた。

 その瞬間、轟音が木霊し土煙と爆風が通り過ぎていった。


 今のは、姫の斬撃か。

 ……凄まじい、威力だった。

 二体のあやかしと怪力(カイリョク)乱神(ランシン)融合(ユウゴウ)すると、これ程の威力が出せるのか。

 だけど、衝撃を一切感じなかった。


 感じるのは、背中の柔らかい感触。

 つまり、背中の柔らかい物の正体はイベリスと言うことだ。

 それにしても、背中に押しつけてくる、この大きな二つの膨らみ。

 イベリスは、人型になっているのか? 



「ハァ、ハァ、ハァ……」



 すると、後ろから息を切らしている声が聞こえてきた。



「やっと、追いついたにゃ」



 後ろを振り向くと、可愛らしいネコ耳少女が僕を見上げていた。



「えっ?」



 しかもなぜか、朱色の頬を膨らませて睨んでいる。

 変化出来るようになったと聞いていたけど、この子がイベリスだよね。

 だけど、何で睨んでいるの? 

 不思議に思い小首を傾けると、抱きつく力を強めてきた。

 うっ……手加減してくれているけど、もの凄い力だ。



「薺っち、早過ぎるにゃ」



 えっ? どういう事? 

 ……そうか。

 僕が迅雷瞬歩を使用していたので、追いつくのに苦労して走り回ったのか。

 イベリスの額を見ると、大粒の汗をかいていた。

 着地すると、イベリスが力を緩めてくれた。



「ごめんね、イベリス」



 僕が謝ると、イベリスが笑みを向けてきた。

 そして今度は、前から抱きついて来た。

 なので、僕は咄嗟に小桜がいるポケットを左手で守った。



「イベリス、前から抱きつくと小桜が潰れちゃうよ?」



 すると小桜が顔を出し、頬を膨らませた。



「薺さんの、言うとおりどすぅ。イベリスさん、会えて嬉しいかもしれへんけど、うち潰れるかと思たわぁ」



 そして腕を組み、わざと意地悪を言う表情でイベリスを見下ろした。

 よく考えたら、僕よりHPが上の小桜が潰れるわけないよね。

 先ほどまでとは接し方が違うけれど、急にどうしたのかな? 


 そう思って、小桜の頭を撫でると可愛らしい表情に戻った。

 姫もそうだけど、女の子達の考えている事が分からないな。

 そう思ってイベリスを見ると、俯いていた。



「小桜ちゃん、ごめんにゃ」



 イベリスが謝ると、小桜が慌てるようにイベリスの頭の上に乗った。

 そしてちょこんと座ると、イベリスを撫でた。

 すると、下を向いていたイベリスの耳が上を向いた。



「イベリスさん、冗談どすぅ。せやけど、うち小さいよって、気ーつけてなぁ」



 そう言って、小桜が笑っていた。

 小桜の態度が少し気になったけれど、気のせいだったのかな。

 そう思った次の瞬間、イベリスが勢いよく頭を上げた。



「ふぇー!」



 すると、小桜が上に吹っ飛んだ。



「あっ! でも、薺っちに会えたのは嬉しいにゃー」



 イベリスはそう言うと、頬を朱色にして僕を見上げた。

 僕は慌てて、小桜をキャッチした。



「薺さん、聞いてぇー。イベリス、扱いがあらけないねん。せやから、いけず言いたくなるんどすぅ」



 すると、手の中で小桜が怒っていた。

 だけど、怒っている小桜とは対照的にイベリスはニコニコしていた。

 イベリスは、嬉しくなると周りが見えなくなるようだ。

 小桜が、わざと意地悪を言った気持ちが少し理解できた。



「イベリス、もう少し小桜を丁寧に扱ってあげてね」



 そう言って頭を撫でてあげると、尻尾を僕の足に絡ませて笑顔を見せてきた。



「分かったにゃ!」



 うっ……可愛い笑顔だけど、ますます動けなくなってしまった。

 小桜が、扱いが雑だと言った意味が分かったよ。

 姫の事が心配だが、身動きが出来ないので仕方がない。


 イベリスが何か言いたそうにしていたので、僕は木刀と脇差しを下ろし、話を聞くことにした。

 イベリス曰く、手を離すと僕がこのまま考え無しに姫の元へ向かい、攻撃に巻き込まれてしまうかもしれないと思ったそうだ。

 成る程、僕が足を姫の方向へ向けていた事に気づいていたのか。


 足を向けていると、その方向に迅雷瞬歩を使用出来るからね。

 イベリスは姫のあやかし達の中で、僕と最も死線を乗り越えてきた仲。

 つまり、僕が次に行う行動を一番よく理解している。

 恐らく姫はそれらの事を考え、イベリスを自身から離れさせ、未然に僕の行動を止めたのだ。

 イベリスと話していると、左肩に乗った小桜が僕の頬を突いてきた。



「薺さん、どないしまひょぉ? 巻き込まれへんよー、うちが障壁張りまひょかぁ?」



 小桜の申し出は有り難いが、障壁で防ぐと四神相応(シジンソウオウ)の極意をいかせなくなる。

 四神相応(シジンソウオウ)の極意は、僕を良い位置に導く事が出来る。

 それは、味方からの攻撃であろうと同じ事だ。


 良い位置に導いてくれれば、敵に強力なダメージを与える事が出来る。

 つまり攻撃を躱せば躱すほど、四神相応(シジンソウオウ)の極意をいかした攻撃が出来るのだ。



「小桜、心配してくれてありがと。だけど、大丈夫だよ。僕には、大感知があるからね」



 そう言って小桜を撫でていると、イベリスが背伸びしてきた。

 僕の髪を、触ろうとしてるのかな? 

 ……今度は、跳びはねて来た。

 だけど飛び跳ねると、また小桜に怒られるよ? 

 小桜が起こる前に、何がしたいのか確認しておこう。



「イベリス、どうしたの? うっ……」

「薺っちも、ミィの耳付けるにゃ?」



 ……イベリスの耳? 一体、どういう事だろう。

 だけどその前に、僕はイベリスを顔から引き剥がし下に降ろした。

 姿が猫の時は気にしなかったが、人の姿になると流石にこれはちょっと控えてもらいたい。


 興味を注ぐものが有ると、イベリスはそちらに集中してしまうようだ。

 耳を付ける意味が分からなかったので、イベリスから話を聞くと、レベルが上がった事で、【予見の猫耳】という能力を取得したそうだ。


 それを使用すると、空間認識能力と第六感が急激に向上し、何も見えていない状態であっても周りの状況を全て把握する事が出来る。

 但し制限時間は三十分で、再使用に一時間を要し、付与した者には猫耳と尻尾が付く。


 だけど、イベリス特有の能力であるため他の能力と重複しないそうだ。

 四神相応(シジンソウオウ)の極意をいかすのに、良い能力。

 僕は、イベリスの申し出をお願いすることにした。


 イベリスに予見の猫耳を付与してもらった瞬間、周りの状況が手に取るように分かった。

 水蒸気爆発が発生する兆しと、魔幼虫や魔虫(マチュウ)の位置。

 そして、姫が放った攻撃。


 姫が戦っている、この魔虫(マチュウ)は何だ? 

 攻撃を喰らっても、耐えている? 

 いや、躱している? いや、攻撃自体が避けている? 


 ……姫の攻撃を喰らっている、個体もいるな。

 極小の、集合体? 

 だけど極小の一部が魔幼虫に入った途端、魔幼虫が別の物へと変化した。

 何だ、この不可解な魔虫(マチュウ)は……。


 だけど、凄い。

 この不可解な魔虫(マチュウ)に、姫も互角に渡り合っている。

 しかし、あともう一歩のところで、一体の極小の魔虫(マチュウ)から逃げられた。

 少し、姫の手数が足りていないのか? 


 いや、この不可解な魔虫(マチュウ)は、警戒して対処した方が良いかもしれない。

 イベリスの能力が有れば、いつでも隙を突ける。

 だけど、不可解な魔虫(マチュウ)の行動を観察しなければ、攻撃は失敗に終わる可能性が有る。



「今から姫が戦っている中に、突入する。だから、イベリス。悪いけれど、猫の姿になってくれないかな?」

「分かったにゃ」



 イベリスが猫の姿になると、僕の隣に来てくれた。

 こうして僕達は、不可解な魔虫(マチュウ)を倒すため、姫の近くに行くことにした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

一日置きの更新とさせて頂きます。

不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。

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