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24

「地震?」



 私がそう言った瞬間、地面から水が噴き出した。

 これは、水じゃなくてお湯? 

 しかも、かなりの高温のようです。


 (タチマ)ち辺りが、水蒸気に満ちあふれた。

 真っ白で、何も見えない。

 あまりの水蒸気に一歩下がろうとすると、急に身体(カラダ)を持ち上げられた。



「キャッ」



 優しく気遣うように抱き上げられましたが、目の前なのに水蒸気で顔が見えない。



「薺君?」



 小声で声をかけると「はい」と言う返事が返ってきた。



「姫、蒸気を吸い込むと危険です。蒸気が晴れるまで、息を止めていて下さい」



 薺君はそれだけ言うと、一気に加速しその場を離れた。

 すると、妖狐達とあやかしの軍勢が水蒸気を散らしているのが見えた。

 その様子を見ていると、薺君が安全な場所で降ろしてくれた。



「姫、大丈夫ですか?」

「はい」



 私が返事をすると、薺君はブルーローズの方を向いた。



「ブルーローズ、高温の水蒸気を押さえ込んでくれないか?」

「言われずとも、今やっておる。任せておけ!」



 ブルーローズが、噴き出す水蒸気を命令する様に押さえ込んでいた。

 すると、噴き出していた水蒸気が消え去った。

 しかし、他の場所からも水蒸気が噴き出し始めた。

 すると、雛菊(ヒナギク)がブルーローズを手伝いだした。



「ブルーローズたん、ピィも手伝うね」

「うむ。頼りにしておる」



 雛菊(ヒナギク)が噴き出す瞬間に凍らせ、ブルーローズがその水蒸気の向かう先を変えて止める。

 連携したその行動に、妖狐達とあやかしの軍勢は感心するように見入っていた。

 薺君を見上げると、今も私を庇うように辺りを見渡していた。


 何か有ると、薺君はいつも私を真っ先に守ってくれる。

 だけど薺君に守られてばかりの私では、自分を変えて成長する事なんて出来やしない。

 ましてや、皆を守る事なんて……。


 向日葵様は、そんな私の為に能力を授けてくれたんだと思う。

 これは神の試練であり、私の心を鍛錬する為に授けてくれた向日葵様のやさしさ。

 私は魔物と戦うにつれ、そう思うようになってきた。



「薺君、私もブルーローズ達を手伝います」

「ですが……」



 薺君は私を心配するように、見つめて来た。



「薺君、お願いします」



 私が真剣な目差(マナザ)しでお願いすると、薺君は少し考えて「分かりました」と言ってくれた。

 守りたいという薺君の気持ちは嬉しいのですが、頼ってばかりでは成長する事何て出来やしない。

 私はブルーローズと雛菊(ヒナギク)と共に、神通力を使用して水蒸気を押さえ込んでいった。


 しかし押さえ込めば押さえ込むほど、至る所から水蒸気が噴き出し始めた。

 すると、石楠花(シャクナゲ)やあやかしの軍勢も神通力を使用しだした。

 あやかしの軍勢が加わった事で、社全域の水蒸気をほぼ押さえ込む事が出来た。



「むう……(テン)(ヤシロ)にも一部に野湯(ノユ)の源泉が来ているが、これは明らかにおかしい。なぜ、多量に噴き出しておる?」



 石楠花(シャクナゲ)が神通力を使用しつつ考えていると、水神様が封印から離れた。



石楠花(シャクナゲ)、我も手伝おう」

「いや、長兄はバアルゼ・オーバーロードに蒸気がかからぬよう集中するのじゃ! この蒸気は、濃厚な野湯(ノユ)のエネルギー。奴に触れるだけで、この封印は解かれるじゃろう」



 石楠花(シャクナゲ)がそう伝えると、水神様はバアルゼ・オーバーロードの周りに清水(セイスイ)の障壁を何重にも張り巡らせた。

 そう言えば、あやかし達の能力が野湯(ノユ)ブースト状態になっていました。

 魔王虫は、色々な耐性が有る上に桁違いのHPとMPを持っている。

 もしも、野湯(ノユ)ブースト状態になってしまうと間違いなく今以上の脅威になる。



「……分かった。我が蒸気を、奴に触れぬようにする!」



 水神様が封印の前に行くと、両手を広げて眼を瞑った。

 すると、清水(セイスイ)の障壁が滝のように流れ出した。

 あの流れで、蒸気を遮断するようです。



『「撫子、わしは(ヤシロ)全体に大掛かりな結界を張る準備をする。じゃから、神通力を暫く使えぬ。後の事は、任せたぞ!」』



 噴出する水蒸気を押さえていると、石楠花(シャクナゲ)が私の『心』に話しかけて来た。



『「分かりました」』



 石楠花(シャクナゲ)に『心』で返事をすると、大きな地震が発生した。

 その瞬間、地面に亀裂が入り水蒸気爆発が起こり、多量の水蒸気が噴き出した。

 この時、地面の下から強烈に嫌な魔物の気配を感じた。



「何、この感じ? まるで、封印されている筈のバアルゼ・オーバーロードのような……」

「キュウーーン!」



 すると、インカルナタも地面から何かを感じると言いだした。

 地中から感じる、この感覚……もう、殆ど時間が無い。



「インカルナタ、私と怪力(カイリョク)乱神(ランシン)融合(ユウゴウ)して。お願い」



 するとインカルナタが可愛い瞳を向け、私の中に溶け込んだ。



『「おら、撫子様のごと大好きだ。初めにおらを選んでぐれて、感謝しますだ」』



 そして、インカルナタの言葉が伝わって来た。

 その瞬間、今までに感じた事の無い力の脈動を感じた。

 桜と共有した時の感覚とは、明らかに違う。


 あの力は、桜から借りた仮初(カリソ)めの能力でした。

 ですが今は、この能力を自由に使いこなせる事ができる。

 そう思った瞬間、身体(カラダ)から翡翠色の光りが溢れ出て、ケモ耳と尻尾が生えた。



「これが、怪力(カイリョク)乱神(ランシン)融合(ユウゴウ)。信じられない程の、力が感じられる……」



 すると、(マク)れ上がっていたメイド服のスカートに、尻尾を出す裂け目が現れ、スカートが整えられた。

 ブルーローズ達に、メイド服を作ってもらって正解でした。

 普通の服だと、九本ある尻尾でスカートが(マク)れ上がったままになりますからね。

 自分のHPとMPを確認すると、信じられない程上がっていた。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 LV99

 撫子           HP 12600/12600  MP 18602/18602

 (怪力(カイリョク)乱神(ランシン)融合(ユウゴウ):風神Ⅰ)

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――



「姫、その姿は?」



 薺君は、どぎまぎした表情をしていた。

 以前も、同じ表情をしていました。

 確か、イベリスとリンクした時です。

 あの時はイベリスのネコ耳と尻尾でしたが、今回はインカルナタのタヌキ耳と尻尾です。

 もしかして、変でしょうか? 



「インカルナタと、融合しました」



 私はそう言って、クルッと横に回転して見せた。



「可愛い……」



 すると薺君が小声で何か呟きましたが、それどころではなくなりました。

 地面に、亀裂が増えて行ったのです。

 このままでは、多発性の水蒸気爆発が起きてしまう。


 私は地面に手を(カザ)し、幾つもの亀裂を塞いで水蒸気を止めた。

 しかし、遠方の至る所で地面が陥没し水蒸気爆発が起きた。

 おかしい。


 私は神通力を使用し、地面の亀裂を塞いだだけでは無い。

 地中の水蒸気を冷やし、源泉の流れを変えた。

 にも拘わらず、遠方の至る所で地面が陥没し水蒸気爆発が起きている。


 まるで、源泉を至る所に作りあげているかのように……。

 私が地面の下から感じた嫌な物は、大きな一つの塊だった。

 それが今は、地面の至る所から感じる。



雛菊(ヒナギク)(ハク)さんの部隊を右翼に展開。戦闘態勢を、取って下さい!」

「撫子お姉たん、ピィに任せてぇ。エヘッ、(ハク)たんよろしくね」

「あっ、はい。雛菊(ヒナギク)ちゃ……さま、よろしくお願いします」



 雛菊(ヒナギク)に指示を出すと、右翼に(ハク)さんと百人の妖狐率いる百万体のあやかしの軍勢が戦闘態勢に入った。

 (ハク)さんは、雛菊(ヒナギク)の美しい姿と、話すと不思議と可愛らしい雰囲気をかもしだすので、敬称をどうしたら良いか一瞬迷ったようです。



「ブルーローズ、(クロ)さんの部隊を左翼に展開。戦闘態勢を、取って下さい!」

「うむ」



 ブルーローズに指示を出すと、左翼に百人の妖狐率いる百万体のあやかしの軍勢が、既に戦闘態勢に入っていた。

 そして、褒めて欲しいとでも言うように、ブルーローズの腕に(クロ)さんが腕を組んでいた。



(クロ)、いい加減にしろ! 我から、離れるのだ! これでは其方(ソナタ)が、左翼の部隊に指示を出せぬだろ?」

「指揮権は全て、私の優秀な子供達に譲りました。心配しなくても、良いですわ。ですので、私はブルーローズ様の専属メイドとして、お側にいれば良いのです!」



 (クロ)さんのメイド服を見ると、私達と同じものでした。

 そう言えば会議中、ブルーローズが暫くの間だけ、(クロ)さんから解放されていた時が有りました。

 その時チアさんの妹が「メイド服、メイド服」といって、ブルーローズと雛菊(ヒナギク)の間を往復していた事を覚えています。


 何をしているのだろうと思っていましたが、あれは(クロ)さんの為に、メイド服を作ってもらいに行っていたのですね。

 ブルーローズは、自ら墓穴を掘ったようです。

 そういう所を見ると、(クロ)さんは抜け目が無さそうですし、左翼はあの二人に任せていても大丈夫でしょう。



「ヘイズスターバースト、大変ですが(テン)さんを安全な後方へ運んで下さい」



 次に私は、まだ目覚める様子のない天狐をヘイズスターバースト達に任せることにした。



「撫子姫、心得た。我らに、任せよ」

「お願いします」



 私のレベルが99になった事で、スケルトン達の能力が向上しました。

 しかも、部隊人数が99万体と増えたので、山のような天狐でも運ぶことが可能だと思います。



「薺君は、桜と共にバアルゼ・オーバーロードの周りを警戒して下さい」

「分かりました」



 多才な技と瞬間的な早さは、恐らく薺君が最強だと思う。

 しかも、私と同じ様にバアルゼ・オーバーロードにも通用する能力を持っている。

 そして私のあやかし達の中でも、圧倒的な魔力と体力に加え、少しの間ならバアルゼ・オーバーロードの妨害を躱し、時空間を移動する事が出来ると言っていた桜。

 二人には、最も警戒すべきバアルゼ・オーバーロードの事を任せることにした。



『「撫子さん、うちらにまかせときー」』



 薺君が桜の元につくと、桜から私の『心』に連絡が入った。



『「バアルゼ・オーバーロードは封印されているとは言え、最も警戒すべき相手です。ですので、桜にお任せしますね。それと何か有れば、薺君のサポートもよろしくお願いします」』

『「えーよ。うち撫子さんの、そないな所好きなんどす。いややわぁー、もーほんまかいらしいおすなぁ」』

『「えっと……ありがとう、桜」』



 私の言葉の何に勘繰(カング)ったのか知りませんが、薺君に迷惑をかけなければ良いのですが……。

 皆に指示を与え終わると、至る所で地面が割れ多発性水蒸気爆発が起きた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

一日置きの更新とさせて頂きます。

不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。

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