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石楠花達を再召喚し終え、それぞれに指示を与えていると、チアの妹さんがあやかしの大軍勢を連れてきた。
その数、総勢二百万体。
構成は妖狐を筆頭に、様々なあやかしの援軍でした。
どうやら以前よりこの様な状況を予想しており、妖狐達が各地に散らばり様々なあやかし達に声をかけていたようです。
その為、善なる妖狐の中でも、位が上である白狐、黒狐、銀狐、金狐の四人しか、野湯にいなかったというわけです。
すると、あやかしの軍勢の中からチアの妹さんが出てきた。
そして、慌ただしく走って来た。
「娘娘、遅くなりました。ごめんなさい」
「いえ、大丈夫ですよ」
謝ってきたので事情を聞くと、遅くなった理由を語り出した。
どうやら白狐の所へ行くと、花ちゃん達が慌てるように上空を指さしていたそうです。
あまりにも慌てるので見上げると、巨大化したイベリスと姫立金花が上空で旋回していた。
なので、銀狐と金狐に言って幻影の結界を解除し降りて来てもらったそうです。
ですが、イベリスと姫立金花の上に百合愛ちゃん達が乗っていた。
事情を聞くと、宿で待てど暮らせど一向に帰ってこない私達に痺れを切らしたのだそうです。
そして、イベリスと姫立金花達の能力をフルに使用してやって来た。
そこまでは良かったのですが、今度は花ちゃん達が私達の所へ行きたいと言い出した。
イベリスと姫立金花に人型へ変化してもらい、引き留めてもらった。
しかし、花ちゃん率いる百合愛ちゃん達の動きが機敏で、イベリス達だけでは引き留められなかった。
仕方がないので、銀狐と金狐も巻き込んで、どうにか引き留める事が出来たのだそうです。
「花ちゃん達が、ごめんね」
「いえ、滅相も御座いません」
「本当に、ご苦労様でした。今、作戦会議をしているので、チアさんの所でゆっくりしてくださいね」
「娘娘、お心遣い感謝致します」
そう言ってお辞儀をすると、妹さんはヘイズスターバースト達の方へ顔を向けた。
現在ヘイズスターバースト達は天狐を守護していますが、そちらにはチアさんはいません。
私達の後ろ、見えないのかな?
すると、慌ただしく走って行った。
「あっ、待って」
引き留める為に声をかけたのですが、既にヘイズスターバースト達の所へ。
「……行ってしまいました」
小声で呟くと、薺君が苦笑いしていた。
「チアさんの妹さんって、慌てん坊さんなのですね」
薺君とこうして話しているのには、理由があります。
なぜなら、メイドスケルトン達は作戦会議の為に私達の後方に控えていたからです。
「そうなんです。ですが私は、愛嬌が有って良いと思いますよ」
薺君にそう言って笑みを向けていると、チアさんが私達の所へ紅茶を持って来た。
「撫子娘娘、申し訳ございません。妹には、後でキッチリと指導しておきます」
「チアさん、ほどほどにね」
そう言って、チアさんの注いでくれた紅茶を飲んでいると、チアの妹さんが頬を染めて戻って来た。
そして、チアさんの元へ行くとキッチリと叱られていた。
現在私達は、石化している八頭龍の中で水神の長兄様と稲成空狐の長姉様と共に、異界の魔王虫であるバアルゼ・オーバーロードをどうするか話し合っている所です。
実は、水神様と石楠花で意見が割れているのです。
水神様は、現時点で倒せる見込みがない魔王を無理に起こし、世界が滅亡しては困る。
なので、あやかし達と協力し封印に力を込め続け封印し続けたいようです。
ですが石楠花は、現時点で一番能力の高い桜が倒せない相手なら、尚更野放しには出来ない。
なので、あやかし達皆で力を合わせ、早急にどうにかして倒したいようです。
そして稲成空狐の長姉様は、どちらの言い分も正しい。
ですので、天狐が眼を覚ますのを待ってからにしたいそうです。
つまり、話が進まないというわけです。
二百体の妖狐達がそれぞれ一万の軍勢から出て来ると、白狐と黒狐に各隊の状況を報告していた。
報告し終えると、白狐と黒狐が各隊の妖狐達に指示を行い、火・水・風・土・雷・木・影・光・その他の属性に分けて配置させて部隊を編成し直していた。
配置指示を終えると、天狐の前に白狐が駆け寄った。
「天様……」
そして、泣き崩れるように跪いた。
すると、天狐の状態を確認していたブルーローズが白狐の肩を優しく叩いた。
「白よ、心配せずとも良い。天は、深い眠りについているだけだ」
ブルーローズ曰く、天狐を凍結した事で、痛みと同時に外傷を最低限に押さえる事が出来た。
しかし、天狐の心は既に壊れかけていた。
その為、清水の蒸気で眠らせて幸せな夢を見させ、天狐の心を回復させているのだそうです。
ブルーローズの言葉を聞き、白狐の表情が少し穏やかになった。
「ブルーローズ様、感謝致します」
感謝の言葉を白狐が伝えていると、ブルーローズの背後から黒狐が笑みを浮かべ近づいていた。
そしてブルーローズが私達の元へ戻ろうとすると、背後から抱きつき耳を噛んだ。
「フニャァァァ!」
「ハムハム。ブルーローズ様、可愛い」
……妖狐って、悪戯好きなのでしょうか?
ですが、悪意は感じられません。
「黒、離れろ! 会う度に、我の耳を噛むな!」
黒狐を見ると、頬を朱色に染めていた。
もしかして、好きすぎる故の過剰な愛情表現なのかもしれません。
そう言えば、うちにも愛情表現が下手な子がいました。
その子を見ると、クシャミをしながら水神様と論議を述べ合っていた。
再びブルーローズを見ると、今度は顔を胸に埋められていた。
「フミュミュミュ……プファ! 白、見ていないで助けろ!」
黒狐の胸から顔を出すと、ブルーローズが白狐を睨んだ。
「……はぁー。黒、貴女はいつもいつもブルーローズ様に何て破廉恥な事を……直ぐに、止めなさい!」
白狐が止めるように言うと、黒狐が不敵な笑みを浮かべた。
「白ー……私に、そんな事言って良いのかしら? 貴方も、人の事言えないわよね? 天様にしている事、金と銀に言って良いのかなー?」
「……ブルーローズ様、お役に立てず申し訳ありません」
「白、お主は天に何を?」
「……」
ブルーローズが問うと、白狐が無言で頬を染めた。
……妖狐達の事は、ブルーローズに任せておきましょう。
「ブルーローズ、ごめんね」
私はそう言って、膝の上に寝転んでいるインカルナタを撫でた。
実は、インカルナタを召喚すると、人型から獣型に変化し、私から離れてくれなくなったのです。
仕方がないので、作戦会議の場に連れてきたと言うわけです。
一方桜は、八人の稲成空狐姉妹達と共に封印に力を注いでいた。
「あんたら、八頭龍封印も有るさかい大変どすえ? ここはうちに任せて、休んでくるとええよぉ」
「滅相も御座いません。失礼かと存じますが、貴台を鑑定させて頂きました。ですが、私達の能力でも鑑定することは出来ませんでした」
そう言って、稲成空狐姉妹達が佇まいを正しお辞儀をした。
「「「「「「「「私達は、稲成空狐です。存在が高位な方に、敬意を払います」」」」」」」」
「そんなん、気にせんでええのに。うちは、撫子さんのあやかし。稲成天空九尾の狐、桜どす。今後とも、よろしゅうおたのもうします」
「「「「「「「「桜様、こちらこそよろしくお願い致します」」」」」」」」
桜の方は、稲成空狐姉妹と上手くいっているようです。
同種と言って良いのか分かりませんが、妖狐同士で気が合うのかもしれません。
それに妖狐さん達は皆、ブルーローズ達の名前を覚えてくれたようです。
私も、その方が有り難い。
なぜならブルーローズと、水神の長兄様を勘違いされては困るからです。
『「姫、そう言えば驚くほどの討伐ポイントが入っていましたよ」』
皆の様子を見ていると、薺君が『コーナーワイプ』で話しかけて来た。
『「私も、確認してみますね」』
『「はい」』
確認すると、なんと1283794659ポイントも入っていました。
恐らく、天狐の腸の中を清水の激流で清浄しながら出てきたからでしょう。
ですが、ここまでのポイントが入っているという事は、百兆以上の大蛇などを浄化したという事です。
『「姫、取得可能ギフトも有りますよ」』
薺君に言われて確認すると、取得可能ギフトが増えていた。
『「薺君……もしかすると、このギフトの中に魔王虫を倒せるスキルが有るかも知れません」』
なぜなら、倒す事が出来ない魔王に対して、神々や向日葵様が介入しないとは考えにくいからです。
つまりこのポイントを使用し、スキルを取得すれば、倒せない相手ではないということです。
『「ですね。僕も、ギフトの組み合わせを見てみます」』
『「お願いします」』
コーナーワイプを終了させると、私達はそれぞれギフトを確認する事にした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
一日置きの更新とさせて頂きます。
不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。




