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「【残像回避分身!】」



 薺君がスキルを使用した瞬間、残像の分身が四人現れた。

 そして、次々しかけて来る姉妹五人の攻撃を受け止め回避し翻弄した。

 この残像回避分身は忍者スキルの一つで、薺君の残像が四人同時に現れる。


 しかも、防御や回避をする物体として10秒間その場に存在する事が可能。

 デコイに似てはいますが、攻撃や相手を引きつける能力が無い事と、5秒しか存在する事が出来ないので、(オモ)目眩(メクラ)ましとして使うスキルのようです。



「【迅雷(ジンライ)瞬歩(シュンポ)!】」



 更にスキルを使用し、薺君は一瞬で加速。

 赤核を飲み込んだ、四人の元へ移動した。



残像(ザンゾウ)徒手空拳! 【呑吐(ドント)環流(カンリュウ)(ショウ)!】」



 そして、赤核を飲み込んだ四人の姉妹の腹部に、残像を伴う技を使用し、次々と手の平を当てていった。

 すると、四人の姉妹のうち三人が赤核を吐き出した。

 直ぐに吐き出した三つの赤核を、薺君は木刀と脇差しを使用し破壊。

 しかし、一人が吐き出す気配は無かった。

 今の技は、飲み込んだ物を逆流させる技のようです。

 私はその時、薺君の残像回避分身に紛れ、五人の姉妹へ癒やしの光りを使用していた。

 癒やしの光りを使用すると、口から瘴気を噴き出した。

 五人の状態を確認すると、彼女達の正気を失わせていた瘴気は、癒やしの光りによって完全に消滅していた。


 ですが、瘴気によって必要以上に能力を引き出されていたせいで、ショック状態を起こし気絶してしまっているようです。

 この程度の状態なら、自然治癒するはず。

 そう思い薺君の方を見ると、木刀と脇差しを腰に付け素手での戦闘に切り替えていた。


 武器を使用しての戦闘は、手加減していても相手を傷つけてしまう恐れが有ると判断したようです。

 先ほど木刀と脇差しで、姉妹の攻撃を()なしつつ躱していましたが、往なして相手の体勢を崩した時に、薺君が肘で当て身をすると、姉妹の一人が吹き飛んでいましたからね。

 武器を持った状態での素手の攻撃は、剣聖の能力で与えるダメージを3.4倍にする。

 全体の能力が上がった今、武器を手放した素手での攻撃しか手加減は難しかったのだと思う。


 並列思考を利用すれば、薺君の行動もこのように分かる。

 ですが、瞬間的に使用せず多用してしまうと疲れてしまう。

 それに今は、残りの四人の姉妹に癒やしの光りを行う事が先決。

 近くに水神がいたので、意識を失った五人の姉妹を任せる事にした。



「水神様! こちらの人達を、お願いします!」

「うむ……」



 水神が返事をすると、五人の姉妹に癒やしの清水(セイスイ)をかけていた。

 私なら、赤核を飲み込んだ稲成空狐を助ける事が出来るかもしれない。

 そう思い薺君の方を振り向くと、赤核を飲み込んだ稲成空狐が苦しみだした。


 以前の戦いで、オークオーバロードが魔法陣の赤核を取り込んだ事があった。

 その時は、魔法陣と一体化し凄まじい力を持つオークオーバロードとなった。

 稲荷空狐が取り込むと、恐らく九尾以上の魔王になる可能性が高い。



「……えっ?」



 危機感を覚え、薺君の元へ行こうとすると水神に手をつかまれた。



(ワラベ)よ、もう時間がない。稲荷空狐達の意識が、暫くの間途切れてしまった。もう、我が弟達の石化解除を止める事は出来ぬ。石化が解けると、弟達の時が動き出してしまう。時が動き出すと、本来有るべき姿に戻ろうとする力が働く。その力が働くと、八頭(ヤズ)(リュウ)として存在出来なくなり、禁忌融合分離が巻き起こる。巻き込まれる前に、ここから急いで逃げるのだ」



 石化が解除されると、八頭(ヤズ)(リュウ)の禁忌融合分離が巻き起こる? 

 もし八頭(ヤズ)(リュウ)が暴れる事になっても、チアさんが暫くは押さえ込んでくれる筈です。

 ですが、禁忌融合分離の状態がどのような状態になるのかは不明。

 それに水神が焦る所を見ると、何が起こるか予想できないと言うことです。



「水神様達は、どうされるのです?」

「我らは、ここから出られぬ。元より、弟達と運命を共にするつもりで有ったからな」



 水神によると、(ジュウ)御供(ゴクウ)封印(フウイン)は封印対象の内に呪縛される代わりに、外に強固な石化封印が施され封印対象の時が止まるそうです。

 しかも呪縛された者達は、時の止まった中で自由にする事が出来る特別な封印なのだそうです。

 但し、石化封印が解けた場合には何が起こるか分からないのだそうです。

 ならば尚更、私が知っている魔法陣の赤核の情報を伝えなくてはなりません。



「ですが赤核を破壊しなければ、赤核を飲み込んだ人が、融合分離の前に魔王化してしまうかもしれないのです」

「何だと! ……むぅ、分かった。我らが、出来るだけ融合分離を引き延ばす。しかし、どれだけ延ばせるか分からぬ。故に、時間がなくなれば強制的に(ワラベ)達を排出させる。それでも、良いか?」

「分かりました」



 水神に返事をすると、まだ虚ろな眼をしている五人の姉妹を清水(セイスイ)の船に閉じ込め、激流の清水(セイスイ)を巻き起こして共に入口を出ていった。

 薺君の方を向くと、三人の姉妹が薺君の行く手を塞いでいた。

 しかも、無かった筈の尻尾がいつの間にか二本も生えていた。


 素手で相手をしている薺君が、一人で捌ききれなくなっているのはそのせい? 

 姉妹三人のスピードとパワーが、先ほどまでとは桁違いです。

 もしこのまま、尻尾が増え続けられたら手加減なんて出来なくなる。

 私は暴風の神通力を使用し、加速して薺君の元へ行くことにした。



「薺君、私も加勢します」

「【残像回避分身!】……姫、済みません。徒手空拳では、対応しきれなくなってきました」



 暴風を足に纏って薺君の元へ行くと、技を使用し三人の姉妹の攻撃を残像の分身に向けさせた。



「薺君、直ぐに武器を使用して下さい」



 薺君に示す様に、私は懐剣を持って見せた。



「ですが、それでは彼女達を……」



 話をしている間も、残像を倒した一人が襲いかかって来る。

 薺君が言いたいことは、分かります。

 ですが、もう時間が無い。



「【残像(ザンゾウ)徒手空拳! 空気投げ!】」



 一人の攻撃を薺君が躱し、相手の力を利用して、遅れて襲いかかって来た二人に投げた。

 その間に、私は水神が話してくれた内容を薺君に伝える。



「実は、五人の稲成空狐姉妹が気絶したことで、八頭(ヤズ)(リュウ)の石化封印が解けてしまうそうです」



 ですが、何度も襲いかかってくる三人の姉妹のせいで話が途切れてしまう。

 すると、薺君は脇差しを左手に持って三人の姉妹に対応しだした。

 脇差しを持つだけで、薺君のスピードが一気に増した。



「【迅雷(ジンライ)瞬歩(シュンポ)!】」



 そして更にスピードを上げて、相手を翻弄する。



「姫、ですが石化はチアさんが押さえてくれるはずですよ? 【連脚(レンキャク)水面(スイメン)()り!】」



 薺君は私の話を聞きつつ、三人の姉妹の攻撃を躱し、技を使用して転ばせ吹き飛ばした。

 メインの武器では有りませんが、武器を持っただけでこの威力。

 今のうちに、一気に話さなくては……。



「いえ、それだけではなく八頭(ヤズ)(リュウ)が禁忌融合分離すると、何が起きるか分からないそうなのです」

「参ったな、それは……」

「今、水神様達が禁忌融合分解を引き延ばしに行ってくれています。ですが、引き延ばし出来なくなれば、私達は強制的に出されてしまいます」



 話し終えると、三人の姉妹が連携してきた。



「【残像回避分身!】」



 すると、薺君は残像の分身を出して対応。

 こうして三人の姉妹の攻撃を躱していると、薺君が右手に木刀を持った。



「分かりました。では姫、連携して行きますよ」

「はい!」



 薺君と連携し三人の姉妹を相手にすると、隙を見て私は癒やしの光りを使用する事が出来た。

 しかし、赤核を飲み込んだ稲成空狐は漆黒の瘴気を纏っていた。



「クッ、駄目だ……もう、倒すしかないのか?」

「えっ?」



 薺君に言われて稲成空狐をよく見ると、胸には赤核が浮かび上がっていた。

 赤核と、完全に同化? 



「姫、近づくと危険です。下がってください」



 薺君に下がるよう言われましたが、私にはまだ試していない事が有ります。

 元々癒やしの光りは、直接触れて回復していた癒やしの手の上位スキル。

 もしかすると、直接相手に触れることが出来れば、赤核と完全に同化したとしても、異物として除去出来るかもしれない。

 私はそう思い、薺君の前に出た。



「いえ、きっとまだ間に合うはずです」



 薺君にそう言った瞬間、激しい揺れが起きた。



「キャッ」

「姫、僕につかまって下さい」

「薺君、ありがとう」

「この揺れは、一体なんだ?」

「石化が、解けたのかもしれません」



 薺君と一緒に座り込むと、気絶していた三人の姉妹達と赤核の飲み込んだ稲成空狐が、隔離器官の地面に引きずり込まれた。



「えっ? そんな……」

「姫、動くと危険です」



 そして暫くすると、揺れが治まった。



「姫、チアさんが作法の糸を使用したのでしょうか?」

「そうだと思います」



 立ち上がり、引きずり込まれた場所を見に行くと入口から轟音が響いた。

 すると、激流の清水(セイスイ)が流れ込んで来た。

 そして、一瞬にして清水(セイスイ)で埋め尽くされた。

 これは、恐らく水神の合図。



「姫!」

「薺君!」



 私達は、清水(セイスイ)の中で手を伸ばし合った。

 そして手を繋いだ瞬間、私達は波の渦に巻き込まれた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

一日置きの更新とさせて頂きます。

不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。

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