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 漆黒の影は、ブルーローズの尻尾から細い糸の様に四頭(シトウ)四尾(シビ)(ギツネ)の足下まで続いていた。

 しかも地面には漆黒の瘴気が渦巻き、ブルーローズの身体(カラダ)を少しずつ引き寄せられていた。

 ここまでの力、どこから? 



「しまっ……」



 (テン)を見ると、七本有った尻尾が一本減っていた。

 奴め、強大な瘴気の固まりを巨大化として使わず、このような能力として使ったか。

 じゃが、ブルーローズには空間と空間を繋げる水の龍穴(リュウケツ)が有る。

 水の龍穴(リュウケツ)を使えば、漆黒の瘴気に取り込まれる事は無い。



「ブルーローズ、水の龍穴(リュウケツ)じゃ!」



 能力を使用するよう伝えると、ブルーローズが首を横に振った。



「漆黒の瘴気が、我の身体(カラダ)をしっかりとつかんでいる」



 その言葉にブルーローズの身体(カラダ)を見ると、尻尾まで漆黒の瘴気が幾つも張り付いていた。

 尻尾に付いた(マダラ)な瘴気を見て錫杖を確認すると、錫杖にも黒い斑点が付いていた。

 小癪(コシャク)な奴め、わしらが何度も攻撃するうちに少しずつ瘴気を……。

 この漆黒の瘴気は、わしらの魔力を合わせた程の力をもっておる。

 浄化の力を凝縮した、流星(リュウセイ)聖火(セイカ)しか浄化出来ぬ。

 じゃが、小さな物なら辛うじて作れるぞ。



流星(リュウセイ)聖火(セイカ)よ聖なる力を凝縮し、わしの指先に宿れ!」



 聖火(セイカ)を指先に灯し、聖なる炎を激しく燃え上がらた。

 そして、その聖火(セイカ)で錫杖に付いた漆黒の瘴気を浄化させた。

 しかし、ブルーローズに付いた瘴気はあまりにも多い。


 地面の瘴気に到達する前に浄化するには、ブルーローズごと聖火(セイカ)を燃やすしか無い。

 わしは多量の水は作り出せるが、闇を浄化出来るほどの清水(セイスイ)は得意ではない。

 それに、ブルーローズごと聖火(セイカ)で燃やせば気化してしまう。


 気化……そうじゃ。

 ブルーローズは、浄化の清水(セイスイ)で出来ておる。

 水は、水蒸気や固体などあらゆる物に変化出来る。



「ブルーローズ、霧化するのじゃ!」



 助言をすると、ブルーローズが再び首を横に振った。

 なぜじゃ? 

 霧化すれば、つかむところが無くなるぞ? 



「駄目だ、漆黒の瘴気に取り込まれる」



 そうか……霧になるとその分細かくなり、浄化作用も弱くなる。

 今は、浄化し続ける事で均衡が保っておる。

 しかし、(テン)の尻尾の瘴気を使用した事で力が増しておる。

 つまり、浄化作用が弱くなると一瞬で取り込まれるのじゃな……。



「むう……わしの、暴風で吹き飛ばす!」

「無駄だ、石楠花(シャクナゲ)! 引きずり込まれる前に、我から飛び立て!」

「嫌じゃ! わしは、ブルーローズをおいてなど……」



 そう言って(ツノ)に抱きつくと、ブルーローズがチラリとこちらを見た。



石楠花(シャクナゲ)、忘れたのか? 我は、清浄の化身! 瘴気の渦に引きずり込まれようと、染まる事は無い! 逆に、浄化してくれようぞ!」



 ブルーローズに張り付いた瘴気は、張り付きながらも浄化と再生を繰り返していた。

 じゃが、ここまで浄化の作用を強めると、同時にブルーローズの魔力も削れておる。

 このまま飲み込まれると、漆黒の瘴気を全て浄化するか、それともブルーローズの魔力が先に無くなるかじゃ。

 賭けになるかも、しれんのぉ……。

 じゃが、ブルーローズ。



「わしは、信じておる!」



 そう言ってわしは、ブルーローズの魔力と体力が最大値となるよう水をかけ飛び立った。

 するとわしが飛び立つと同時に、白いものがブルーローズに降り立った。



「……」



 白いものを確認しようとしたが、ブルーローズが無言笑顔を向け、野湯(ノユ)が入った小瓶を五本投げてきた。

 そして、そのまま地面に渦巻く漆黒の瘴気に飲み込まれた。

 地面に渦巻く瘴気は、ブルーローズがもつ一本の野湯(ノユ)では足りぬ。

 この状況でブルーローズは、わしの事を案じたのか? 


 どこまでも、わしの乙女心を擽ってきおって……

 ブルーローズよ、直ぐにそこから助け出してやる。

 そして、覚悟するのじゃ。

 助け出した後に、わしがたんまり愛でてやるからのぉ。



四頭(シトウ)四尾(シビ)(ギツネ)よ、天狗を怒らせたらどうなるか篤と味わえ!」



 わしはそう言って、奴を睨みつけた。

 すると奴は、見境無しに漆黒の瘴気の固まりを吐いてきた。

 その瘴気の固まりを躱して近接し、わしは奴に錫杖技を使い攻撃する。

 少しでも隙が出来たら、強烈な神通力を喰らわせてやる。



「ほれほれ、そんな攻撃は当たらんぞ!」



 わしは、上回撃、腰回撃、袈裟回撃、肩回撃、逆袈裟回撃、突天連続突を繰り返し隙を待った。

 しかし、奴は瘴気の固まりを吐くだけ。

 こ奴、風や火を織り交ぜた瘴気を使うのを止めたのか? 

 確かに、効率は良いかもしれん。

 じゃが、何を考えておる? 

 そして錫杖技の千手(センジュ)白蓮(ビャクレン)(トツ)を使ったとき、異変に気がついた。

 四頭(シトウ)四尾(シビ)(ギツネ)の中身が、空洞だったのだ。



「まさか?」



 周りを見ると、疎らな漆黒の瘴気が当たりを覆っていた。



【ブルーローズSIDE】



 クッ! 瘴気の濃度が、異常に高い。

 我の魔力がもつか分からぬが、このままではおれん。

 超圧縮した清水(セイスイ)の球体を重ねて作り出し、その中に身体(カラダ)を入れた。

 そしてその中に、多重渦清水(セイスイ)竜巻を作り出し身体(カラダ)ごと瘴気を削り取っていった。



「どうにか、瘴気を削り取れたか……」



 周りを見ると、漆黒の瘴気の再生と清水(セイスイ)の球体の浄化が拮抗していた。

 少しでも魔力を抑えるため、龍化を解き人型に姿を変えた。

 すると、髪からフワフワしたものが現れ頬を突いてきた。



「ピィ、ピィ、ピィ、ピィ」



 雛菊(ヒナギク)……寄りにも寄ってこんな所に。

 我の耳元が擽ったかったのは、雛菊(ヒナギク)が居たせいか。

 だが、



「何故、来た?」

「ジュリィィィッ、ジュリィィィッ」

「何? 野湯(ノユ)を、持って来ただと?」



 雛菊(ヒナギク)が人型に変化すると、メイド服のポケットに野湯(ノユ)が入った五本の小瓶が入っていた。

 これだけ有れば、漆黒の瘴気を消し去ることが出来る。

 しかも、雛菊(ヒナギク)は完全な雪女となっていた。

 我の清水(セイスイ)と、相性も良い。



「ブルーローズたん、ピィ来ちゃダメだった?」

「いや、感謝する。雛菊(ヒナギク)、来てくれてありがとう」

「えへ、へへへ。ピィ、褒められちゃった」



 こうして雛菊(ヒナギク)と合流出来たブルーローズは、漆黒の瘴気を攻撃しだした。



石楠花(シャクナゲ)SIDE】



 使いたくはなかったが、致し方あるまい。

 懐から鬼天面(キテンメン)を取り出すと、被って羽団扇を掲げた。

 羽団扇を通し、この鬼天面(キテンメン)に神通力を流し込む為じゃ。

 鬼天面(キテンメン)はその名が示すとおり、鬼と天狗の力を面に宿す。


 この鬼天面(キテンメン)には、強大な烏天狗の神通力と鬼の力を宿しておる。

 そして、わしの神通力を流し込む事で鬼天面(キテンメン)が活性化され身体能力と神通力の能力が三倍となる。

 但し、使用時間は五分間。


 じゃがこの力で、四頭(シトウ)四尾(シビ)(ギツネ)を滅ぼしたとして、ブルーローズがあの瘴気から出てこられるとは限らん。

 それに、そのまま神通力として渦巻く瘴気に使うと、ブルーローズまで巻き込む恐れが有し、慣れんと調整が難しいからのぉ。


 先ずは、ブルーローズを渦巻く瘴気から助け出す。

 奴を倒すのは、それからじゃ。



鬼天面(キテンメン)よ、わしの魔力を糧とせよ! ハァァァァァァ!」



 鬼天面(キテンメン)を被り神通力を通すと、一気に能力が向上し、気合と共に疎らな漆黒の瘴気が吹き飛んだ。



「わが友よ、()(ジン)(ユウ)を有す神器を呼べ!」



 更に鬼天面(キテンメン)は、擬似的な三種の神器を作り出す事が出来る。

 鬼天(キテン)八咫(ヤタノ)(カガミ)は邪悪なものを跳ね返し、鬼天(キテン)八尺瓊(ヤサカニノ)勾玉(マガタマ)は邪悪なものから我が身を守り、鬼天(キテン)草薙(クサナギノ)(ツルギ)は邪悪なものを全て切り裂くことが出来のじゃ。

 但し、ちと筋肉質になるのが好かんのじゃ。

 この能力は、わしの友の能力じゃったから仕方がないのじゃが……。


 嘗て求菩提山(クボテサン)には、わしと仲が良い烏天狗の友がいた。

 友は人が好きで、人へ姿を変え下山し、近くにあった村へ遊びに出かけていた。

 しかし突如として鬼が現れ、村を滅茶苦茶にした。

 そこで友は烏天狗となり、その鬼を完膚無きまでに打ちのめした。


 次の日、打ちのめした鬼が七体の仲間を連れて現れた。

 友は再び烏天狗となり、七体を相手にした。

 しかし一体の鬼が予想以上に強く、友は苦戦を強いられた。

 傷つきつつも友は、八体の鬼を全てを天狗の面に封じ込めた。


 しかし鬼の能力は凄まじく、神通力を常に使って面を封じ続ける必要が有った。

 そこで友に頼まれ、あべこべの羽団扇を使用し、鬼を善なるものへと変えた。

 善なるものへと変えたことで、その面を付けると鬼の力を宿すことが出来るようになった。


 しかし、怪我が原因で友は少しずつ能力が減退していった。

 友は能力減退を恐れ、わしの目の前で自らを面に封じ込めた。

 自らを面に封じたことで、友の減退は止まった。


 じゃが、たまに力を面に注いでやらなければ面ごと朽ちてしまうし、自らを封印しおったので動けん。

 友人ながら、馬鹿な奴じゃと思う。

 もっとよい考えが、有ったじゃろうに。

 じゃから、わしがこの面を受け継ぐ事になったのじゃ。



「どうした、四頭(シトウ)四尾(シビ)(ギツネ)?」



 睨みを利かせると、奴は少しずつ後退していった。

 今のうちに、ブルーローズを救出じゃ。

 鬼天(キテン)草薙(クサナギノ)(ツルギ)で渦巻く漆黒の瘴気を祓おうとすると、漆黒の瘴気が浄化した。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

一日置きの更新とさせて頂きます。

不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。

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