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 銭湯の靴置き場で靴を置き、受付を済ませて施設の中に入ると驚きました。

 ゲームセンターや、食事が出来る施設が沢山有ったのです。

 食事ができるお店の情報を見てみると、一階の他にも様々な施設が有るようです。


 それに通路が広く、清掃をよくされているようで清潔でした。

 お客様が多いのも、納得です。

 お姉さんによると、休日は今よりもお客様が沢山来るそうで、ゆっくり寛ぎたいなら平日がお勧めだそうです。


 ただ先ほど足湯は見たのですが、大きなお風呂はまだ見ていません。

 お風呂の紹介は映像で映っていたのですが、肝心なお風呂はどこでしょうか? 



「お姉さん、銭湯はどこですか? 私、先ほどの足湯しか見ていませんよ?」

「撫子ちゃん、ここは色々と楽しめて寛げるスーパー銭湯なんや。うちらが入ろうとしている銭湯は、上の階にあるで」

「そうなんですね」



 お姉さんの説明を受けて、ふとゲームセンターを見ると、UFOキャッチャーが有りました。

 そう言えば幼い頃、UFOキャッチャーの縫いぐるみが欲くて、駄々をこねた事を思い出しました。

 あの時はどうしてもその縫いぐるみが欲しくて、ママの手を引いてUFOキャッチャーの所に連れて行ったのですが、結局獲得できず泣いて帰りました。


 ですが次の日に目が覚めると、枕元にその縫いぐるみが置いて有ったのです。

 大喜びでママにその縫いぐるみの事を聞くと、お兄ちゃんが獲りに行ってくれたそうです。

 なので実家の机の上に、今も大事に縫いぐるみを飾っています。



「ほな、二階行くでー」



 お兄ちゃんが獲って来てくれた縫いぐるみの事を思い出していると、お姉さんがエレベーターの中から手招きしていました。



「はい。お姉さん、二階に行くのですか?」

「せや、二階に着替える所が有るねん。うち、この服はよー脱ぎたいんや。慣れへん服は、あかんな」



 お姉さんはお尻回りを気にするように、そう言いました。

 私はスマートで良いと思うのですが、お姉さんは嫌なようです。

 確かに、お姉さんの普段の服装はラフですからね。


 それと、今日はお風呂がメインなので行きませんが、予約をするとマッサージや整体なども楽しめるらしいです。

 着替えをしてから銭湯に行って身体を洗っていると、お姉さんが顎に手をやり首を傾げてきました。



「撫子ちゃん、透き通る様な肌しとるなー。細いし、色白やし、出てる所は出てるし、うちと大違いや。何食ったら、そないなええ身体(カラダ)にられるん?」



 そんな事を言われても、私は普通の食事をしているだけですし、これと言って拘りは有りません。



「普通の食事ですよ?」



 私は正直に答えたのですが、お姉さんは首を捻りながら色々な所を見て来ます。

 食い入る様に見られると流石に恥ずかしいのですが、お姉さんは自身の腰回りと私の腰回りを比較し出しました。



「うちの、半分以下やん」



 お姉さんは悲しそうな顔をしていましたが、私はまだ十二歳ですし大人と子共との大きさに差が有るのは当然だと思います。

 私が髪を洗いだすと、今度は自身のウエストと私のウエストを比較しているようです。



「撫子ちゃんのお腹周り、うちの太股より細いんちゃうやろか? あかん、凹むわー……」

「キャッ!」



 髪を洗い流していると、急に横腹を触られました。



「撫子ちゃん、堪忍してや。思わず、触ってしもた」



 どうやら、お姉さんが私の横腹を触ったみたいです。

 ですが、私のウエストがお姉さんの太股と同じ大きさ? 

 片目を開けて見てみると、膝を曲げた時の太股の太さは確かに……。



「はい……」



 ですがそんな事は口が裂けても言えないので、考えた事を反省するように「はい」とだけ返事をしました。

 身体(カラダ)を洗い終えると、お姉さんがお勧めのお風呂を案内してくれました。



「先ずは、血行が良うなる炭酸風呂やな。泡風呂や岩風呂も、気持ちええで。うちはサウナも好きやけどな」

「私、熱すぎるのは苦手なのです」

「サウナは大人でも苦手の人がおるさかい、付き合わんでもええよ」

「はい」



 二人でお風呂巡りをして、お姉さんがサウナに入ったので、私は別のお風呂に行くことにしました。

 香り湯に入っていると、姿が向日葵のお使い様に似ている女性が目の前を通り過ぎました。

 直ぐに追いかけたのですが、見失ってしまいました。


 サウナから出てきたお姉さんに確認すると、お得意様達もこのスーパー銭湯によく来ているそうです。

 お風呂を堪能し終えて脱衣所にやって来ると、鍵がかかっていたロッカーの中に、向日葵のメッセージカードが有りました。


 やっぱり、向日葵のお使い様来ていたんだ……。

 メッセージカードの内容を見てみると「下着洗濯不要」と記載されていました。

 向日葵のお使い様から賜った下着は、どうやら洗濯しなくても良いようです。


 確かに、穿いてきた下着には汚れが一切有りませんでした。

 ですが、帰ったらちゃんと洗濯しようと思います。



「撫子ちゃん、自分のパンツ眺めてどうしたんや?」



 下着を見ていると、お姉さんが覗いて来ました。



「ひゃっ! な、何でも有りません」



 思わず下着を後ろに隠すと、バスタオルが下に落ちました。

 下着をロッカーに置いて慌ててバスタオルを拾うと、お姉さんがこちらに来ました。



「換えの下着忘れたんやったら、売店で売ってるさかい。うちが、買うてきてやろか?」

「いえ、持ってきているので大丈夫です」



 私は袋から新しい下着を取り出して穿き、袋に向日葵の下着を入れて鞄にしまいました。

 そして洋服を着て、お姉さんと一緒に帰ることにしました。

 夜遅くなったと言うことで、お姉さんがマンションの前まで私を送ってくれました。



「数日通わなあかんと思て億劫やったけど、うちあの銭湯気に入ったわ。なんや知らんけど、スーツがしゃっと穿けて痩せた気もするし。マッサージとかも、まだやしな。撫子ちゃん、また行こな」



 お肌が艶々になったお姉さんは、凄く機嫌が良かったです。

 サウナが、効いたのでしょうか? 

 スーツを着たウエストにも、くびれが出来ていました。



「是非、ご一緒させて下さい。お姉さん、今日は色々とありがとうございました」



 私も楽しかったので、また行きたいと思います。

 マンションの部屋に戻って明かりを付けると、フィギュアの服装が凄く可愛らしい修道服に変わっていました。

 実は、日にちが変わる度に服装が変わっているので、服装が変わってもあまり気にしないようにしています。


 ですが今日のフィギュアの顔は、なぜか頬がほんのり赤くなっていて、嬉しそうに笑っていました。

 もしかすると、フィギュアの女の子に何か良い事が有ったのかもしれません。

 それとも、お使い様がフィギュアの女の子にお化粧でもされたのでしょうか? 


 詳細は不明ですが、お使い様から賜ったフィギュアなのできっと何か意味が有るのだと思います。

 因みに、フィギュアが今まで着ていた服はミニチュアのタンスに収納されていました。

 ですが、二カ所だけ開かない所が有ります。

 開かない場所は、きっと意味が有ると思うので私はそのままにしています。


 次にテーブルを見ると、ヒントの書いてあったメッセージカードに文字が追加されていました。

 その内容とは「靴箱の番号-結果、脱衣所の番号-結果、岩風呂階数+行った人数+結果」というものです。

 もしかするとスーパー銭湯は、お告げ様の意向だったのかもしれません。


 初めて行ったスーパー銭湯なので、番号はしっかりと記憶しています。

 確か靴箱の番号が103、脱衣所の鍵が30でした。

 それに岩のお風呂が有ったのが二階で、お姉さんと私の二人で行ったので4です。

 結果というのは、私の健康診断の結果でしょうか? 


 ですが、健康診断-健康診断で「87、29.7、5」と答えが出ています。

 つまり「87、29.7、5」と組み合わせろと言うお告げでしょう。

 計算すると「16、0.3、9」です。

 白紙の本を確認すると、また内容が増えていました。


 そして白紙の本の16ページ目には、向日葵のスタンプが十、9ページ目には五つありました。

 ですが、白紙の本に0.3ページは存在しません。

 目次なのかと見てみても、目次が有りませんでした。

 どうしようかと、1ページ目を開けてみると7行目の空欄に向日葵のスタンプが二つ押してあったのです。


 今回の「29.7の.7」は、7行目を現していたようです。

 以前同様なら、スタンプの数「10、2、5」は巻数を現す筈です。

 ですが、今度はページ数が有りません。

 今回のお告げは、健康診断、銭湯と続いたので、次にまたお告げが有るのかもしれません。


 ですので、今は次のヒントを待つしかないようです。

 それにお使い様から、封書を明日開けるように告げられています。

 もしかすると、この封書にヒントが書かれているのかもしれません。

 なので、お使い様に従い明日まで待つことにしました。

 スマホを見ると、ママからの着信が沢山入っていました。



「お姉さんと、銭湯に行くってママに言ったのに……」



 ですが心配性のママに、お姉さんと帰りに銭湯の前で撮った写メも一緒に送付することにしました。



(ママ、ただいま。今、帰ってきました)送信。


 この写メも見てくれたら、ママもきっと安心してくれると思います。


(おかえりなさい)既読。


 すると、メイド服を着たママとメイド服を着たお姉様達が一緒に写った写メ送付されてきました。

 講義と言っていましたが、どうやら私が学校へ行った後にメイド服に着替え、後輩のお姉さん達と一緒に楽しんでいたようです。


(凄く楽しかったので、またお姉さんと一緒に行こうと思います)送信。

(その時は、ママも呼んでね)既読。



 かなり遅く帰ってきたのですが、このままだとまだ永遠に続きそうな気がします。

 ですので、おやすみなさいのスタンプをこの後に送っておきました。

 ママも気がついたようで、おやすみなさいのスタンプを送ってきてくれました。


 封書の事が凄く気になりますが、私はお兄ちゃんの温もりを感じる着ぐるみパジャマに着替えて我慢しました。

 そして気分を紛らすように、スノーちゃんの縫いぐるみを抱いて、おやすみする事にしました。



        ※ ◇ ※



 今日は、いつもより早く目が覚めてしまいました。

 何故かというと、フサフサした物が顔を擽っていたからです。

 ですが、変です。

 スノーちゃんの大きな縫いぐるみは、左側に有ります。


 でしたら、このフサフサしている右側に有る大きな物は何でしょう? 

 私は寝惚け眼で起き上がり、パソの薄暗い明かりの中、部屋に電気を付けました。

 すると、そこには大きな尻尾が有ったのです。



「キャッ……」



 一瞬叫びそうになりましたが、口を押さえて堪えました。

 一気に目が覚め、恐る恐る掛け布団を(メク)ってみると大きな狼さんの縫いぐるみでした。

 いつの間にか、お使い様が来ていたようです。


 何故お使い様の物だと分かったのかというと、狼さんの口に向日葵のメッセージカードが銜えられていたからです。

 ですが、私が寝ている掛け布団の中に狼さんを入れるのは止してほしかったです。

 しかも狼さんの頭を足下に向けられていたので、初めは何なのか分からず驚きました。


 ……今思えば、私もお兄ちゃんに同じ事をしていた気がします。

 何故かというと、お兄ちゃんが寝ている隙にそっと布団の中に潜り込んでいると、朝の目覚めは決まってお兄ちゃんの驚いた声だったからです。

 ですので、少し反省しようと思います。



「あんちゃん、驚かせてごめんね。撫子、反省するけん。……早く、会いたいよ」



 私は狼さんとスノーちゃんの縫いぐるみを、両手で抱きしめました。

 そう言えば、白紙の本にも狼さんが出てきました。

 確か狼さんの名前は、アイビーちゃんです。

 でしたら、この子の名前はアイビーちゃんなのでしょう。


 二匹の縫いぐるみさん達をベットに丁寧に並べると、私は早速封書を開けることにしました。

 すると、中にメッセージカードが有りました。

 下着毎日。

 能力調整。



「……えっ? なしてー?」



 私は慌てて、下着を見に行きました。

 実は昨日帰ってすぐに、向日葵の下着を洗濯したのです。

 まさか、毎日穿くようなお告げが来るとは思いもしませんでした。

 ただ換気扇を回したお風呂場に干したので、乾いているか心配です。

 もう、乾いているでしょうか? 



「ほっ……」



 完全に乾いて、柔軟剤の良い薫りがしていました。

 どうやらお使い様は、私が取る行動を予想していたようです。

 だから注意書きに下着洗濯不要と記載し、封書を明日開けるよう言付けされたのですね。


 ですが毎日穿くとしても、清潔に使用したいです。

 今日も帰ったら、直ぐに洗濯しようと思います。

 もう一つのお告げの能力調整とは、恐らくこの下着の能力の事でしょう。


 私が不意に能力向上させたのは視力で、試したのは聴力です。

 つまり、能力調整をしなくてはならない能力が有ると言うことです。

 直ぐに試そうと考えましたが、折角下着を洗ったのですし、お風呂に入ってからにしようと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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