12
鎮座する八つの頭を持つ巨大な大蛇をよく見ると、全身が石化しており、それぞれの三つ眼から涙を流していた。
そして下を見ると、瘴気が渦巻く魔法陣となっていた。
瘴気は胃の奥にも貯まっている様で、涙と瘴気が混ざり合う事で、無数の大蛇となっていたのだ。
「八岐大蛇?」
鎮座する八つの頭を持つ巨大な大蛇の姿に、思わず言葉が出るとインカルナタが首を横に振った。
「撫子様、あれは石化封印されていた八体の水神ですだ。そして八体の水神が融合した姿、八頭龍様だ」
インカルナタが、続きの話を教えてくれた。
遙か昔、この世界と他世界の狭間で神々と闇の魔神が戦った。
その時、大天狗や神に近い存在のあやかし達も戦いに加わっていた。
その中には、九体の水神と九体の稲成空狐もいた。
しかし、神々と闇の魔神との戦いは拮抗状態だった。
そこで、大天狗の総大将が他のあやかし達に力を貸すよう呼びかけた。
すると、世界中のあやかし達も力を貸してくれた。
分が悪いと悟った闇の魔神は、闇の眷属達を呼び寄せた。
そして闇の眷属達に、あやかし達を攻撃させた。
闇の眷属達は強く、妖力の弱いあやかし達がかなり多く散って行った。
大天狗の総大将は、妖力の弱いもの達を撤退させる指示行った。
しかし、稲成空狐の長姉は撤退指示を無視した。
そして、自身を慕っているあやかし達に神通力を使って強化し、そのものたち引き連れ闇の眷属を攻撃。
その攻撃によって、闇の眷属の一部を討ち滅ぼす事が出来た。
しかし、闇の眷属の中に特殊な力をもつものがいた。
特殊な力をもつ闇の眷属の能力によって、神通力の強化を打ち消され、稲成空狐の長姉の部隊は半壊。
稲成空狐の長姉は、弱体化した残りのあやかし達を撤退させる為、一体で闇の眷属達を相手にした。
殆どの闇の眷属は撃退できたが、特殊な能力をもつ闇の眷属だけは撃退できなかった。
特殊な能力をもつ闇の眷属の能力は凄まじく、稲成空狐の長姉は次第に傷つき死を覚悟した。
その時水神の長兄が現れ、稲成空狐の長姉の傷を癒し助けた。
しかし水神の長兄が加わっても、特殊な能力に打ち消され、その闇の眷属を倒す事は困難を極めた。
全てを使い切り辛くも勝利した水神達だったが、稲成空狐の長姉を助けた時に、水神の長兄は癒すことが出来ない闇の呪いの傷を負っていた。
稲成空狐の長姉は責任を感じ、呪いを受けた水神の長兄を自陣へ連れ帰った。
そして、八体の妹と八体の水神の弟に事情を話し、水神の長兄の呪いを祓う為力を借りた。
しかし十六体の能力をもってしても、闇の呪いを祓う事が出来なかった。
長兄の呪いを祓う為、水神の弟達は能力が劇的に向上する禁断の融合を使い、八頭龍となった。
しかし八頭龍は、劇的に向上した溢れんばかりの力を制御する事が出来なかった。
その為、八体の稲成空狐達が全ての神通力を使い、長姉を一時的に白面金毛九尾の狐へと進化させた。
そして白面金毛九尾の狐となった長姉は、強力な神通力で八頭龍の制御を支えた。
その支えで、能力を制御出来るようになった八頭龍は、白面金毛九尾の狐と協力して浄化の力を使い長兄の呪いを祓った。
しかし、完全には闇の呪いを祓う事が出来なかった。
その為、八頭龍は長兄の闇の呪いを自ら被った。
闇の呪いが消え去った事で、長兄は傷を治癒する事が出来た。
しかし、八頭龍の体内の浄化を使用しても闇の呪いを完全に祓う事が出来なかった。
そこで八頭龍は水神の長兄と白面金毛九尾の狐に願い、八つに分けて石化封印してもらったとの事です。
「撫子様、もう一つ良いだか?」
「はい」
「おら、以前おっかさまから聞いたことが有るんだ。八頭龍様は、ブルーローズ様の父っつぁまの、あんにゃ様達だと」
あんにゃの事をインカルナタに確認すると、お兄さんと言う意味だと教えてくれた。
私も、大好きなお兄ちゃんがいる。
そして大好きなお兄ちゃんに会う為、私は上位神と向日葵様の神託に従い、困難に立ち向かってきた。
出来れば、ブルーローズのお父様の兄弟達を助けてあげたい。
私は、心に強く願った。
すると『心の奥底』で、暖かくフワフワした物を感じた。
『「撫子さん、うちの力が必要どす?」』
と、微かな声が心の奥底で聞こえてきた。
これって、もしかして向日葵様から賜ったあやかしの毛玉から聞こえたのかな?
でも今まで、会話すら出来なかったのになぜでしょうか?
そう思っていると、心の奥でフワフワした物が『「クスッ」』と可愛らしく笑い『「撫子さん、いけずやわぁ~。うち、毛玉やないどす」』と、私を擽るような声が聞こえて来た。
その声にハッとした私は『「ごめんね。例える言葉が、出て来なかったの」』と正直に伝えた。
すると『「うふ、ふふふ。うちの主さん、ほんまかいらしいわぁー。今のは、冗談どす。そんなんより、撫子さんレベル見ーへんの?」』と聞いてきた。
ですがレベルを見る前に、名前を付けてあげた方が良いと思った。
恐らくこの子は、この場所で八頭龍の強い力を感じ取り、早く眼を覚ましてしまった。
早く眼を覚ますと、何か変調を起こしてしまうかもしれない。
ですが名前を付けてあげると、私との繋がりが一層強り庇護下に入る事ができる。
なので、名前を決めてあげる事にした。
この柔らかで、フワフワした話し方。
名を付けるとしたら、美しさの中に猛々しさが有り、それでいて可愛らしく柔ら間見た目の樹木が良いかもしれません。
そう思っていると『「うちに、名前付けてくれるん?」』と聞いてきた。
その問いに『「はい」』と答えると『「おーきにぃ。うち毛並みが撫子色やさかい、撫子色の、かいらしい花が咲く樹木がええわー」』と言ってきた。
柔らかく撫子色の花が咲く樹木と言えば、枝垂桜が有ります。
ですが枝垂れ桜には、八重紅枝垂・清澄枝垂・一重紅枝垂・枝垂山桜・吉野枝垂など種類が豊富です。
ですので、【桜】と名付ける事にした。
すると『「ええ、名前やわぁー」』と言って気に入ってくれた。
先ほど言われたので、レベルを確認してみると96になっていた。
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LV96
薺 HP 886/886 MP 290/265
LV96
撫子 HP 637/637 MP 631/631
姫のあやかし(あやかし能力解放前)
野湯ブーストのあやかし
インカルナタ HP 6039/6039 MP 8947/8947
(翡翠のリボンにより風神化)
ブルーローズ HP 35551/34321 MP 35113/33786
(良好)
石楠花 HP 26493/25992 MP 39250/38956
(飲野湯)
雛菊 HP 24155/8607 MP 35786/1908
(――)
野湯ブースト聖騎士化
ヘイズスターバースト HP 45292/31008 MP 14912/4912
(騎士状態)
チア HP 6794/5748 MP 6710/6710
(騎士状態)
スケルトングラディエーター HP 15852/13412 MP 2237/2237
(騎士状態)
スケルトンナイト HP 4553/3836 MP 558/558
(騎士状態)
スケルトンアーチャー HP 3399/2875 MP 744/744
(騎士状態)
スケルトンメイジ HP 753/637 MP 4473/4473
(魔法騎士状態)
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雛菊の状態は変わりませんが、徐々にHPとMPは回復していますし、問題は無いと思う。
それと、気になっていたインカルナタのリボンの意味が分かりました。
どうやら、野湯と翡翠のリボンの効果により風神化しているようです。
それと、桜が話せる様になったと言うことは、もしかすると召喚出来るかもしれません。
そう思い、あやかしの毛玉を取り出すと毛玉が撫子色に薄く光った。
『「撫子さん、かんにんなー。うち、99ならな孵化出来へん。せやけど、使わへん魔力を共有する事は可能どす」』
と言ってきた。
なので、もう一度あやかし達のHPを確認するとあやかしの毛玉の情報が増えていた。
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LV96
撫子 HP 637/637 MP 631/631
最大共有可能HPMP HP 221369 MP 243798
あやかしの毛玉
桜 HP 637/222006 MP 631/244429
(孵化前)
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桜のHPとMPを見ると、不自然な状態になっていた。
やはり、目覚めが早すぎたようです。
ですが、有り余るHPとMPを私と共有出来るなら有り難い。
桜によると、最大共有HPMPを使い切るまで私のHPとMPは一切減らないようです。
桜に感謝していると、チアさんが私の手を引いた。
「撫子娘娘、どうされたのですか?」
そう言えば桜と話している時、周りに大蛇や皆が見えていなかった。
これは、あやかし達と初めて会う時に起こる不思議な現象。
もしかして、私は長い時間ボーッとしていたのでしょうか?
「チアさん、私どれ位ボーッとしていましたか?」
確認すると、チアさんが小首を傾けた。
「インカルナタ様の説明が終わって、少しの間です」
桜と話していた時間は長かった気がしましたが、それ程ではなかったようです。
周りを見ると、多量の大蛇がヘイズスターバーストに引き寄せられていた。
そして、スケルトン達と共に大蛇を浄化していた。
ですが、薺君とインカルナタの姿が見当たりません。
「薺君達は?」
チアさんに二人のことを尋ねると、八頭龍の足下を指さした。
「先ほど、インカルナタ様と共に魔法陣を破壊しに向かわれました」
チアさんが指さした方向を見ると、無数の大蛇が吹き飛び浄化されていた。
しかし、無数の大蛇が渦巻く瘴気と共に湧き出ていた。
私は直ぐに、魔法陣の核を探した。
しかし魔法陣の周りや、湧き出る大蛇のどこにも見つけることは出来なかった。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
一日置きの更新とさせて頂きます。
不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。




