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「姫、白狐(ビャッコ)の鳥居を登録しておきましょう」

「はい」



 万が一に備えて外套の能力を使用し、薺君と二人で白狐(ビャッコ)の鳥居前を登録する事にした。

 これで何か有ったとしても、外套の能力を使用しここに移動する事ができる。

 白狐(ビャッコ)の鳥居前を登録していると、野湯(ノユ)のエネルギーでパワーアップした石楠花(シャクナゲ)が、辺り一面に聖炎(セイエン)渦巻(ウズマ)きを放ち、一人で闇の野狐(ヤコ)達の相手をしていた。



「わしが、こ奴らを引き受ける。ブルーローズ、雛菊(ヒナギク)の準備は良いか?」



 石楠花(シャクナゲ)が羽団扇を振るいつつ、横目でチラリとブルーローズを見ていた。

 すると、ブルーローズが雛菊(ヒナギク)と共に湯をかぶっていた。



「我も、雛菊(ヒナギク)を手伝うため野湯(ノユ)をかぶった。石楠花(シャクナゲ)、いつでも良いぞ」

「撫子おねぇたん、ピィ頑張るね」

雛菊(ヒナギク)、ブルーローズ、ありがとう」



 二人が笑顔を向けてきたので、私も笑顔を返した。

 説明している間も、増えた闇の野狐(ヤコ)が何度も攻撃してきたが、石楠花(シャクナゲ)聖炎(セイエン)渦巻(ウズマ)きを結界のように張り巡らせ、浄化し続けていた。

 すると石楠花(シャクナゲ)が、私達の方を横目でチラリと見た。



「薺、瞬歩の準備は良いか?」

「はい」



 薺君が返事をすると、私の側に来た。

 どうしたのかな? と思っていると、急に抱きかかえられた。



「キャッ!」



 思わず首に手を回し見上げると、薺君が微笑みを向けてきた。



「姫、しっかりつかまっていて下さいね」



 小学生の頃はあまり感じませんでしたが、抱き上げられて密着すると、薺君の逞しさが感じられた。

 因みに、薺君はメイド服から執事服に変更してもらったようです。



「……はい」



 返事をして天狐の方を向くと、石楠花(シャクナゲ)が再びチラリと横目で見てきた。



「恐らく大蛇の本体は、(テン)の胃におる。それに天の状態からして、恐らくじゃが大蛇は本来の力を取り戻しつつある。もし倒す事が困難なら、戻ってくるのじゃ。その時は、別の手段を講じるでの……」

「分かりました」



 最後の言葉で、石楠花(シャクナゲ)は悲しそうな表情をしていた。

 すると、ブルーローズが石楠花(シャクナゲ)を慰めていた。

 もしかして、石楠花(シャクナゲ)は天狐を……石楠花(シャクナゲ)を悲しませないためにも、私達は大蛇を必ず倒さなければなりません。

 天狐の攻撃が届かないギリギリまで近づき配置につくと、ブルーローズが清水(セイスイ)を頭上に集め出した。



「【天龍(アマタツ)清水(セイスイ)神氷(シンピョウ)!】」



 その清水(セイスイ)が、見る見るうちに凍り付いていった。

 そして山のように巨大な清水(セイスイ)の氷を、雛菊(ヒナギク)の頭上に移動させた。

 すると雛菊(ヒナギク)が頷き、左手を神氷に向けた。



「【雪氷(セッピョウ)融合(ユウゴウ)!】」



 その瞬間、ブルーローズが作り出した神氷が雛菊(ヒナギク)に吸収された。

 そして、ブルーローズが雛菊(ヒナギク)の右手と手を重ねた。



「「【雪氷獄(セッピョウゴク)楽園(ラクエン)!】」」



 刹那、天狐が一瞬で凍り付いた。

 すると雛菊(ヒナギク)が元の姿となり、気絶した。



「クッ! 雛菊(ヒナギク)は、全てを使い切りおったか。羽団扇よ、わしらを守れ! 【天障壁!】」



 ブルーローズが雛菊(ヒナギク)を支えると、石楠花(シャクナゲ)が多属性絶対障壁で周りを覆った。

 すると、ブルーローズが五つの小瓶を私達に投げてきた。



「薺よ、撫子のことを頼む。それには、エネルギーを凝縮させた野湯(ノユ)が入っておる。危ないと感じたら迷わず使え」

「はい!」



 薺君がブルーローズに返事を返していると、雛菊(ヒナギク)が目を覚ました。



「撫子おねぇたん、ピィ頑張ったよ」

雛菊(ヒナギク)、頑張ってくれてありがとう。皆も、ありがと」



 感謝を伝えた瞬間、薺君が一気に加速した。



「キャッ!」



 薺君に必死にしがみ付いていると、辺りが急に薄暗くなった。

 先ほどまでは、石楠花(シャクナゲ)聖炎(セイエン)渦巻(ウズマ)きで明るい光りに包まれていたのに? 



「姫、天狐の中に入りました。力を緩めても、良いですよ」

「薺君、ありがとう」



 薺君の言葉で目を開けると、闇の野狐(ヤコ)達が瘴気と共に凍り付いていた。

 瘴気まで凍り付くなんて、二人の凄まじい融合能力に驚きました。

 それに、あの距離を一瞬で駆け抜けてくるなんて……薺君の瞬歩の早さが、以前よりかなり増しているようです。


 薺君からレベルが上がっていたことを聞かされましたが、レベル84と93ではここまでの差が有るのですね。

 闇の野狐(ヤコ)達を、もうどれだけ浄化させたかは不明ですが、レベルの上がり方が凄まじい。

 もしかすると、この世界の最大値である99を突破するかもしれません。


 突破すれば、お兄ちゃんの世界へ……

 上位神の約束の事を考えていると、薺君が下に降ろしてくれた。

 そして私の右少し前へ行くと、木刀と脇差しを構えた。



「姫、ここからは何が起こるか分かりません。僕から、離れないで下さい」



 薺君の言葉に頷くと、インカルナタが左腕に抱きついて来た。

 そう言えばインカルナタも、ブルーローズ同様男の子に戻して貰えなかったようです。

 だけどこれだけ抱きついてこられると、女の子のままの方が良いかもしれません。



「おらも、撫子様から離れないだ」



 ただ、これだけくっ付かれると少し歩き辛いです。

 チアさんのように、一歩離れてくれると良いのですが、甘えたがりのインカルナタにキツく言うのも可哀相ですしね。

 少し歩き辛そうにしていると、チアさんがインカルナタの肩を叩いた。



「インカルナタ様、せめて撫子(ニャン)(ニャン)が歩ける距離でお願い致します」



 チアさんがそう伝えると、インカルナタは寂しそうに一歩離れた。

 すると、薺君がインカルナタに顔を向けた。



「インカルナタ、大蛇までどれ位の距離だ? この状況を考えると、一刻を争うかもしれない」



 確かに、天狐の口内の至る所で瘴気と闇の野狐(ヤコ)に加えて大蛇が発生していた。

 今は瘴気と共に凍り付いていますが、いつまでもつか分かりません。

 瘴気と闇の野狐(ヤコ)には多属性絶対障壁が効果が有りましたが、天狐の命さえも危険にさらす、封印されていた大蛇に効果が有るか分からない。



「この姿では、おら分かんねえだ。薺様、少し待ってくんろ」



 薺君の問いに答えると、インカルナタはいつもの狸の様な姿となった。

 すると、インカルナタが着ていたメイド服が小さくなりその姿にフィットした。

 ブルーローズ達が作ったメイド服は、大きさを自動で調節する機能を持っているようです。

 そう言えば、雛菊(ヒナギク)も大きくなったり小さくなったりしていましたが、丁度良い大きさでした。



「キュウーーン、キュウーーン、キュウーーン」



 インカルナタが大凡の距離を伝えてきたので、薺君に伝えることにした。



「目的の大蛇がいる場所まで、ここから約2km有るそうです」

「天狐の中とは言え、山のように巨大ですからね」

「しかも、道とは言えないようで山や谷の様になっているそうです」

「口内でも、この広さ。山越えと、考えた方が良いのか。でしたら……」



 薺君と話していると、腕輪が反応し『心』に伝わってきた。



『「撫子姫、我らの事を忘れていないか? 我らなら、数十秒で着くぞ」』

『「ヘイズスターバースト、ごめんなさい。でも、同時召喚は……」』



 実は他の女性スケルトン達の事を考え、チアさんと同時召喚をしても良いのか? 

 チアさんとの、(ワダカマ)りが無くなったのかを心配していたのです。

 嫉妬というのは、そう簡単に無くならないものですからね。

 言葉を濁していると、再びヘイズスターバースト達の思いが『心』に伝わってきた。



『「我らは元より、撫子姫を(アルジ)として認めている」』

『「ありがとうございます」』

『「それに私達を召喚して頂ければ、受肉するチャンスが有ると……済まぬ、女性スケルトン達の本音が流れ込んできた」』

『「あは、ははは。確かに、そうかもしれませんね」』

『「つまり、撫子姫は気にする必要はないのだ」』

『「はい」』



 ヘイズスターバースト達の思いを聞いていると、チアさんが頭を下げてきた。

 どうやら私達の心の思いが、チアさんにも伝わってしまったようです。



「撫子(ニャン)(ニャン)、私の為に申し訳ありません」

「チアさんは、気にしなくて良いですよ。私が、考えすぎていたからです」



 薺君がそのまま話さなかったのは、私が途中でヘイズスターバースト達と心で会話していることに気づいていたからの様です。



「決めました。ヘイズスターバースト、出てきて下さい」



 ヘイズスターバーストを召喚すると、今までよりも更に巨大になっていた。

 大凡、50m程と言ったところでしょうか? 

 恐らく私のレベルが上がった事で、巨大化する能力の上限が増えたのだと思います。



「撫子姫、我らの事を思ってくれて感謝する。さあ、乗ってくれ」



 ヘイズスターバーストが手を差し出したので乗り込むと、鎧の胸部まで手を持ってきた。

 すると、鎧の胸部に私達は吸い込まれた。

 中に入ると寛げる部屋になっており、メイド服を着たメイドスケルトン達がお辞儀をしてきた。



「「「「「撫子姫、ようこそお越し下さいました。こちらに、お掛けください」」」」」

「ありがとうございます」



 お礼を言って椅子に座ると、ヘイズスターバーストが加速しだした。



「撫子姫、数十秒程で中心部へ行く。だが、高低差が激しい。揺れるので、気をつけてくれると助かる」



 そして、スピーカーの様な物からヘイズスターバースト本体の声が聞こえてきた。

 するとインカルナタが、私の膝の上に乗ってきた。

 どうやら、人型より今の姿の方が甘えられるのでこの姿のままでいるようです。



「キュウーーン!」

「えっ? 飛ぶ?」



 インカルナタが鳴くと、私の腕にしがみ付いた。

 その瞬間、身体(カラダ)が浮遊した。

 すると薺君が手を引いて、椅子まで戻してくれた。



「姫、椅子にシートベルトが有りますよ」

「薺君、ありがとう」



 どうやら、ヘイズスターバーストが飛び跳ねて移動しているようです。

 そして、ハッとしました。

 そう言えば、チアさんは立ったままです。



「チアさん?」



 立っていたチアさんを心配して振り返ると、メイドスケルトン達同様、この激しい動きの中でも微動だにせず立っていた。



「撫子(ニャン)(ニャン)、私共はメイドです。この様な事は、慣れていますので」



 チアさんがそう言うと、他のメイドスケルトン達も頷いていた。



「えっ?」



 慣れって、普通無理です! 

 そう思い、薺君を見ると苦笑いしていた。

 私、もしかして顔に出てた? 

 こうして私達は、山と同じ様な巨大な天狐の胃まで向かった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

次回更新は2023年1月4日です。

よろしくお願い致します。

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