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 学校の授業を終えてマンションに戻ってくると、向日葵のスタンプが押された健康診断表に数字が書かれていました。



「あれ? うちのサイズ、書かんで良かと?」



 私は一先ず、自身のサイズを記載しなくて良い事にホッとしました。

 そして、向日葵の健康診断表を見て有ることに気づきました。



「赤ちゃんの、健康診断表?」



 そこに記載されていた身長を示す数字が、あまりにも小さかったのです。

 体重も、少なすぎます。

 人ではなくて、動物でしょうか? 


 ですが、胸囲ではなくバストAカップと記載されている事が引っかかります。

 動物の場合、バストのカップサイズではなく胸囲と記載されているはずです。

 身長65cm、体重2.3kg、バストAカップ……お人形さん、でしょうか? 


 私の身長が152cm、体重とバストサイズは……秘密です。

 健康診断のお医者様から、痩せすぎですと言われましたが、モデル業界の方々には理想的ですと言われました。


 私のローレル指数は91.121154ですが、もしこの子が人であるのなら、ローレル指数は83.750569になります。

 私と比べてみても、か細い子のように感じられます。


 因みにローレル指数とは、身長と体重から発育状況を知る目安の数値です。

 計算方法は、ローレル指数=体重g÷(身長cm×身長cm×身長cm)×10000となります。

 向日葵の健康診断表に目を向けていると、下の方に健康診断表-健康診断表と記載されていました。


 私の身長が152cmで65cmを引くと87cmです。

 同様に体重は……29.7kgで、バストこれはどうしたら良いのでしょうか? 

 私はパソで、検索してみることにしました。

 すると、トップとアンダーのサイズ差によるカップ表が有りました。


 範囲が有ったのですが、平均として考えるとAAが7.5cm差、Aが10cm差、Bが12.5cm差、Cが15cm差、Dが17.5cm差、Eが20cm差、Fが22.5cm差、Gが25cm差、Hが27.5cm差で有ることが分かりました。

 つまり、私との差を引くと5です。

 ここで「87、29.7、5」という数字が出てきました。


 これは、何か意味が有るのでしょうか? 

 本のページ数なのか、もしくは何かの暗号なのか? 

 ヒントを示していた、メッセージカードが白紙になっていたので、まだ何か続きが有るのかもしれません。


 考えを巡らせていると、スマホの着信が有りました。

 スマホの着信を読んで、ママへの返事と友達への返事を返しました。

 そして向日葵のお使い様から、またお告げが有るかもしれないと期待を込め、自宅に向かうことにした。


 自宅に向かっていると、お姉さんが必死に走っている後ろ姿が見えました。

 健康のために、ジョギングでもされているのでしょうか? 

 ですが、靴では無くいつものサンダルです。


 服装も、走るための服装ではありません。

 ランニングする時、私は吸汗性と速乾性が高いランニング用の服装で走り、飲み物を必ず持参するようにしています。


 ですが、お姉さんは飲み物も持っていないようです。

 お姉さんの服を見ると、まだ涼しい季節ですのに上着が汗で濡れているので少し心配です。

 もしかすると、脱水症状を引き起こしているかもしれません。


 私の場合、自宅へ向かう時は走ることが多いので、常にミネラルウォーターを鞄に入れるようにしています。

 この前の学校帰りに、お姉さんから麦茶を頂きました。

 なので、今回は私が飲み物を渡したいと思います。

 私は、歩幅を少し大きくして声をかけることにしました。



「お姉さん、こんにちは。ジョギング、されているのですか?」



 声をかけるとお姉さんは立ち止まり、肩で息をして壁に両手をついて座り込んでいました。

 ここまで疲れているなんて、余っ程の事です。

 恐らく、かなり長い時間ジョギングをしていたのでしょう。

 しかも、この走りにくい服装でなら疲れるのは当然です。


 私は、ミネラルウォーターを鞄から取り出してお姉さんへ渡しました。

 すると、お姉さんは一気に飲み干しました。

 余っ程、喉が渇いていたのでしょう。

 ミネラルウォーターを渡して、正解でした。



「ぷっはー! ほんま、おおきに。生き返ったわ。

 いや、ちゃうねん。撫子ちゃん、うちの話し聞いてー。

 給湯器が壊れてな、ほんで近くの店に言いに行ったんやけど、うちだけ置いてかれてん。

 なんでやねん! って突っ込みたかったんやけど、店主も誰もおらんのや。

 ほんで、(ウチ)に行っとんちゃうやろかと思て、急いで帰ってる所やねん。

 しかもな、型番言うたら古い給湯器やさかい部品無い言うし、風呂ごと変える言うたら工事に時間かかる言うてたさかい、暫く銭湯通わなあかんねん。ほんま、うち踏んだり蹴ったりやわ」



 お姉さんの話を聞いていると、まるでコントのような内容でしたが、大変である事は分かりました。



「お姉さん、大変だったのですね」

「せやねん。ほんま、疲れたわ。せや! 撫子ちゃん、うちと銭湯行かへんか? 温泉もわんさか有るさかい、なかなかええで」

「えーと……」



 銭湯って、お風呂の事だったのですね。

 私、初めて聞きました。

 温泉は嫌いじゃないのですが、お姉さんと一緒に入るのは少し恥ずかしです。

 それに、今から自宅に戻って食事ですし、遅くなるとお姉さんに迷惑をかける事になります。


 ですが、お姉さんには本をお借りしている事や、お風呂をお借りしたことも有ります。

 お断りするのも、気が引けますし……。

 どうしようかと悩んでいると、お姉さんのスマホが鳴りました。



「……なんや、知らん番号やな。撫子ちゃん、ちと待ってな」



 お姉さんが着信相手と話し出すと、着信相手の機嫌を取るように頭を下げ出しました。

 内容を聞いていると、お姉さんの勘違いで店主は在庫を確認するために倉庫に行っていたらしいです。

 そして帰ってきたらお姉さんが店から居なくなっていて、店の着信履歴からお姉さんを探し出したようです。



「……すんません。ほな、うち自宅で待ちますわ。

 えっ? もう、うちの自宅? 直ぐ行きますわ。

 撫子ちゃん、先生()行くんやろ? 

 用事が済んだら、(ウチ)来てな。ほななー」



 お姉さんは、着信相手と話しながら走って行きました。

 どうやら私が悩んでいる間に、お姉さんの中では私も銭湯に行くことになっていたようです。

 裸は既に見られていますし、これからもお姉さんにはお世話になると思うので、食事が終わってからお姉さんの自宅に行こうと思います。



        ※ ◇ ※



 お姉さんの自宅にやって来てインターホンを押すと、猫さん達の声が沢山聞こえてきました。

 お姉さんの所にいる猫さん達は、音に反応するのでインターホンが響く所に一斉に移動したのだと思います。

 暫くすると、お姉さんの足音と猫さん達の足音が玄関扉の前まで聞こえて来ました。



「お姉さん、こんばんは」



 私が玄関の外から声をかけると、猫さん達が玄関の磨りガラスに肉球を押しつけてきました。



「撫子ちゃん、ごめんなー。悪いけど、ちと待ってなー。

 この子ら何でか、うちから離れへんのや。

 さっき、ご飯やったやろ? 

 クンクン、もしかしてうち汗臭いからやろか? 

 あかん、この子ら飯の呼び鈴鳴らしても付いてくるやん。

 今日は、どないなっとんねん? 

 なんや、靴下に頭突っ込んどる子もいるやん。

 うちの、足の匂いか? 

 洗面所で、足洗てくるわ。

 撫子ちゃん、堪忍やでー」



 お姉さんの声が遠ざかると、猫さん達の声も遠ざかっていきました。

 今日のお姉さんは、猫さん達に大人気のようです。

 そう言えば、私が初めてお姉さんの家にお邪魔した時も、猫さん達が足下に集まって来た事を思い出しました。


 もしかして、私の足が臭かったのでしょうか? 

 少し、ショックです。

 暫くすると、走る音が聞こえてきました。



「撫子ちゃん、お待たせして堪忍やでー」



 玄関から出てきたお姉さんはいつもの服装では無く、スカート丈が膝下のスーツを着ていました。

 もしかすると、銭湯の後にお出かけするのかもしれません。



「お姉さん、お出かけされるのですか?」

「いや、ちゃうねん。猫ってな、フェロモンにめっちゃ敏感やねん。

 ほんで、うち汗かいてたやろ? 

 汗臭いんは汗臭いんやけど、うちの子らはそのフェロモンに反応したみたいやねん。

 やから、まっぱになって服放り投げたら服に群がって、匂い嗅いで幸せそうに口半開きしてたわ。

 傑作やったけど、見てる場合やない思て、よそ行きの服に着替えて玄関まで走って来たんや」



 お姉さんの話を聞いて、安心しました。

 お出かけされる用事が有るのに、私の為に待っていてくれたと思ったからです。

 それに、私の足も猫さん達が好きなフェロモンが出ていたようです。

 ですが恥ずかしいので、お姉さんの家に上がる時は換えの靴下を持っていこうと思います。



「そうだったのですね」

「せやせや、忘れるとこやったわ。お得意さんから、よう分からん封書貰ったで。撫子ちゃんに、渡してって言われたわ。ほんでなんや知らんけど、封は明日開けてくれって言ってたで」

「お姉さん、ありがとうございます」



 私はお姉さんから向日葵が描かれた封書を頂くと、鞄にしまいました。

 本当は直ぐに見たかったのですが、向日葵のお使い様の言うことは絶対です。

 すると、お姉さんが周りを気にしだしました。



「なあなあ、うち変ちゃうか?」



 何が、変なのでしょうか?

 私には、分かりません。

 スーツ姿のお姉さんは、いつもより凜として綺麗です。



「いやなー、こんな服着たん久しぶりやさかい。やから、変ちゃうか思て?」

「お姉さん、似合っていますよ。私は、凄く良いと思います」

「撫子ちゃんに言われると、なんや照れるわー」



 私とお姉さんが話しながら歩いていると、大きな施設が見えてきました。

 あの大きな施設が、銭湯なのでしょうか? 

 お姉さんによるとこの銭湯は、露天風呂、泡風呂、寝湯、炭酸風呂、香り湯、岩盤浴など様々なお風呂が楽しめて、お風呂の他にも漫画が読めるリクライナー席があったり、仮眠や宿泊、食事も出来るらしいです。



「久々に来てみたら、相変わらずデッカいな。撫子ちゃん、ほな行くでー」



 お姉さんに手を握られると、銭湯に引っ張っていかれた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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