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食事を終えて最終的に、欄音ちゃんは桂樹君と共に別館へ行き、百合愛ちゃん、美桜ちゃん、椿来ちゃん達は予約している露天風呂へ行き、残りのメンバーで野湯に行く事になった。
因みにイベリスは百合愛ちゃん達の護衛に付け、姫立金花は欄音ちゃん達の護衛に付けた。
秘密の野湯に行く準備をしていると、腕輪が反応して『心』にヘイズスターバースト達の声が伝わって来た。
『「撫子姫、先ほどは済まなかった。我らが役立たずの上に、うちのメイドが失礼な事をした」』
『「いえ、失礼な事はしていませんよ。寧ろ、メイドさんには色々と助けられました。ミステリアス ワールド テリトリーでは、大変お世話になったので、お礼を伝えて下さい」』
『「ああ、勿論伝えよう。それと変な話だが、肉体を得たメイドがスケルトン化せず受肉したままなのだ。撫子姫は、何か存じないだろうか?」』
そう言えばメイドさん、肉体を得て満足したと言ってスケルトン化せず、そのまま帰って行きました。
あべこべの羽団扇で作り出したテリトリーから、肉体を解除せずメイドさんが腕輪へ帰った事と、石楠花のテリトリーを出た瞬間、向上していた能力を注ぎ込んでいた羽団扇が封印された事、それらが複雑に干渉した事で、何らかの齟齬が生じたのでしょうか?
詳しくは分かりませんが、もし元に戻すのなら、野湯へ行き石楠花の神通力が向上してからのお話になると思います。
『「石楠花の能力と、腕輪の能力が絡み合ったせいかもしれません。ですが、メイドさんが受肉すると何か問題でも有るのですか?」』
それに、受肉していてもメイドさんはメイドさんです。
今回は男性達のヘイズスターバーストの代わりに、少し特殊な戦闘が出来るメイドさんでしたが、女性の代表として来てくれた訳ですし、ヘイズスターバーストの中での彼女のお仕事は変わらないと思います。
なのに、どうしたのでしょうか?
『「撫子姫に、伝える事ではないのだが……」』
『「いえ、メイドさんとは共にミステリアス ワールド テリトリーを冒険した仲なので、教えて頂けませんか?」』
それに、ヘイズスターバーストの腕輪の主として知っておかなければならない事だと思う。
『「そうか……分かった。我らの主である撫子姫に、伝えよう。恥ずかしい話なのだが、実は受肉したことで、他のメイドから嫉妬の眼差しを受けている。それ故に腕輪の中で、孤立しているのだ」』
まさか、そんなことに。
そう言えばメイドさんは、受肉したことを心から喜んでいた。
つまり他のスケルトン達も、受肉したかった訳です。
特に、女性スケルトン達は尚更……。
女性スケルトン達の中で、孤立するのは無理も無いか。
『「そうだったのですね……」』
それなら、尚更メイドさんを助けてあげたい。
特別視するようで他の女性スケルトン達には悪いですが、こうなったのは天狗達の騒動のせい。
つまり、石楠花の能力のせいで有るなら、あやかし召喚士である私のせいなのです。
『「もし良ければ、メイドさんだけ召喚したままでも良いでしょうか?」』
『「我らは、一向に構わない。しかし撫子姫、急にメイドがスケルトンとなった時困るのではないか?」』
『「その時は、私達がフォローするので大丈夫です」』
なぜなら、機転が利くあやかし達皆の能力が有れば、隠し通す事は可能だからです。
『「なら、我らは有り難い。撫子姫、今日より肉体を得たメイドの事をよろしく頼む」』
『「はい」』
返事をしてから、一つ気づきました。
メイドさんの事を、ヘイズスターバースト達の様に役職で呼んでも良いですが、出来れば名前を付けてあげたい。
それにメイドさんだと、自宅のお手伝いさん達が勘違いしますからね。
そう言えばメイドさんは、チアリーディングで言うトータッチジャンプの様な技が得意でした。
確か薔薇にチアガールという品種が有りますが、メイドさんはセクシーですし、ガールという年には見えません。
ですので、ガールだけ取ってチアと言う名で良いと思います。
チアという、シソ科の可愛らしい花が咲く一年草も有りますからね。
因みに種子はチアシードと言って、有名なスーパーフードです。
『「メイドさんに、お名前を付けてあげても良いですか?」』
『「ああ、構わない。撫子姫に、お任せする」』
『「メイドさん、貴女の名は今日からチアです。チアさん、腕輪から出てきて下さい」』
チアさんが姿を現すと、メイド服を着ておらず、なぜか栴檀の板と鳩尾の板と草摺だけでした。
薺君は直ぐに目を反らし、朝熊君は花ちゃんが首を横に向けていた。
因みに、今までメイドさんと呼んでいたので、チアさんはさん付けになりました。
「撫子娘娘、名を付けて頂き感謝致します。これから私チアは、娘娘の為に誠心誠意お世話致します。何なりと、お申し付け下さい」
チアさん、丁寧にお辞儀して頂くと色々と見えてしまいますよ?
ここは石楠花のテリトリーでは無いし、外へ行って頂く事もあります。
ですので、出来れば服を着て欲しい。
もしかしてこれも、女性スケルトン達の嫌がらせでしょうか?
もしそうなら、注意しなくてはなりません。
ヘイズスターバースト達に確認すると、違っていたようです。
どうやらスケルトン女子の中で、私が着たセクシーメイド服と言って流行っているようです。
私は即刻止めるよう、切願しました。
「では、チアさん」
「はい。何でしょうか、撫子娘娘」
「まずは、私の服を着て下さい」
鞄の中から服を取り出すと、チアさんに渡した。
すると、丁寧にお辞儀してきた。
「お見苦しいものを、申し訳ありません。ですが、女性しかいませんよ?」
「チアさん、済みません。僕は、男です」
チアさんが周りを見てそう言うと、薺君が別の方向を向いた状態で謝っていた。
「悪いな、俺もだぜ」
朝熊君は口では謝っていましたが、堂々と胸を張りチアさんの方を向いた。
「朝熊君は、花の方を向いて!」
すると、花ちゃんに無理矢理横を向かされていた。
「痛い、痛い! 花、俺の首が折れる! もっと、力を抜いてくれ!」
「こうしないと、朝熊君はチアちゃんの裸を見るでしょ?」
「花、あの子は良いのか?」
朝熊君はそう言って、雛菊を指さした。
「ピィは、女の子だもん」
「キュウーーン」
ですが、どこからどう見ても雛菊は女の子にしか見えません。
インカルナタも、雛菊は女の子だと訴えています。
因みにインカルナタは、雛菊が抱っこしています。
どうやら朝熊君の、苦し紛れの言い訳だったようです。
花ちゃんの隙を見てテーブルへ行き、雛菊にお菓子をあげて謝っていた。
「皆様、見た目が女の子ですし撫子娘娘も気にされないですよね?」
チアさん、どうして私が気にしないと思うのですか?
確かに、ミステリアス ワールド テリトリーでは暫くその姿でしたけれどね……。
「チアさん、ごめんなさい。私の服を、着て頂けませんか?」
「撫子娘娘、そうでしたか申し訳ございません。ですが、貸して頂ける服は少々小さいようです」
そう言われると確かに、私とチアさんでは背の高さやスタイルが違います。
ですが着られなくても、せめて羽織って欲しいです。
「チアは、我らの前で恥じらいが無いのか?」
今のブルーローズは幼い女の子なので、チアさんは首を傾けていた。
ですがなぜ、チアさんは恥じらわないのでしょうか?
「ブルーローズ様、私はメイドスケルトンです。恥じらいは、疾うの昔に消失致しました。今は撫子娘娘の為に、お仕えするだけで御座います」
成る程、そう言うことですか。
スケルトンとなったことで、男性への恥じらいは消え去った。
その代わりに、可愛い服や流行物への執着が大きくなったのか。
「その、撫子が着ろと言っているのだ」
「ブルーローズ様、どう致しましょう?」
すると、申し訳なさそうにチアさんが私の方を見た。
「はぁー、仕方がない。我が、水の衣を作ってやろう」
ブルーローズはそう言いながらも、初めから作る気だったようです。
「ピィも、チアたんに雪のケープ作るの」
雛菊はそう言って、チアさんの足下に抱きついた。
「ならば、我の水の衣と合わせて、チアに似合う白と水色が合わさったメイド服にして進ぜよう」
「うん。ピィ、ブルーローズたんに合わせる」
「ブルーローズ様、雛菊様、感謝致します」
チアさんが二人にお礼を言って、雛菊の頭を撫で笑顔を向けていた。
「えへへ、ピィ褒められちゃった。ねぇー、ブルーローズたん」
「うむ……と言うわけだ。石楠花、合同で衣を作るから我から離れよ」
実は食事を終えてからずっと、石楠花がブルーローズを抱いたままです。
ブルーローズは、それを言う切っ掛けを待っていたのかもしれません。
「何じゃ、ブルーローズ? わしの自由にさせぬと、男に戻してやらぬぞ?」
恐らく石楠花は、ブルーローズの少女姿が名残惜しいのでしょう。
「……むう」
「カッカッカ! 冗談じゃ。じゃが、怒る所も可愛いのぉ」
ブルーローズは少し頬を膨らませ、雛菊と共にチアさんのメイド服とお揃いの靴を作り出した。
ブルーローズと雛菊が一緒に作り出したメイド服は、気品と可愛らしさが合わさった特別なメイド服で、チアさんは見た瞬間気に入った。
こうして私達はヘイズスターバースト達の問題を解決し、ブルーローズに乗って野湯に向かった。
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