1
ミステリアス ワールド テリトリーから戻って来ると、欄音ちゃん、百合愛ちゃん、美桜ちゃん、椿来ちゃんが、私に抱きついて来た。
すると、花ちゃんも私の背中に抱きついて来た。
そして皆で座り込むと、緊張の糸が切れたように泣いた。
どうやら欄音ちゃん達は、私達がもう戻ってこないと思っていたそうです。
花ちゃんは明るく振る舞っていましたが、実は内心とても心細かったそうです。
そう言う私も、気がつくと涙を流していました。
暫くして皆泣き止むと、欄音ちゃん達が後ろに居る少女達の事を聞いてきた。
実は戻ってくる時、石楠花の能力を向上させていた力を全て消費してしまい、あべこべの羽団扇が自動封印されてしまった。
そのせいで薺君達は、未だに少女のままなのです。
因みにメイドさんは、肉体を十分に楽しめたので私の腕輪に戻っていきました。
今回はメイドさんに色々と助けられたので、腕輪を通して後でお礼を言おうと思います。
雛菊は疲れた様で、イベリスと姫立金花とインカルナタの三匹と一緒に、ソファーで眠っています。
欄音ちゃん達に事情を話していると、薺君と朝熊君が石楠花と話している声が聞こえてきた。
「石楠花、僕達はいつまでこのままなのですか? まさか、戻らない何て事は無いですよね?」
薺君の少女化は凄く綺麗なので、この宿に居る間は良いと思うのですが、薺君は嫌なようです。
「洋酒入りのチョコレートとやらが手に入らぬと、あべこべの羽団扇の封印が解けぬのじゃ。じゃから、今日はこのままじゃのぉ。じゃが、心配するでない。明日の昼には、自然と元に戻るじゃろうて」
「露天風呂なのに、俺の筋肉を誰にも見せられないのか? ……だが、この引き締まった身体もなかなかどうして」
薺君と違って朝熊君は、肉体美が良ければ一日位は気にしないようです。
欄音ちゃん達に事情を話し終えると、ブルーローズの嫌がる声が聞こえてきた。
石楠花からやっと解放され、お茶を飲もうとしていた所を再び抱きつかれたようです。
「茶が、飲めぬではないか! 石楠花、我から離れよ!」
「そもそも、ブルーローズがわしのチョコレートを全て食うたのが悪いのじゃがのぉ。そうじゃろぉ?」
「むう……我は、石楠花が酒で暴走せぬようにしたのだ」
「そうだったのですね」
薺君は考えるように、顎に手をやった。
「薺は、どちらの言うことを信じるかのぉ?」
「こ奴の、屁理屈など聞くな! それより薺、我から石楠花を引き剥がしてくれぬか?」
「洋酒入りのチョコレートはのぉ、わしの能力向上に一番良い按排だったのじゃぞ? ほれほれ、ブルーローズどうじゃ?」
成る程、だから石楠花はブルーローズから聞いた時の様に、暴走しなかったのですね。
ですが、石楠花の酒癖は少しばかり悪い気がします。
なぜなら、今は素面のようですが、お酒の代わりに幼い少女化したブルーローズに、依存しているからです。
「我は、悪くなフニャァ……石楠花、口を舐め回すな!」
「口元にのぉ、チョコレートが付いておったのじゃ」
「いい加減、我から離れフニャァァァー……」
ブルーローズ達の話を聞いていると、外から窓をノックする音が聞こえてきた。
窓を見ると、桂樹君が窓を背に向けて立っていた。
「姫、お帰りなさい」
「桂樹君、ただいま。ごめんね、心配かけて」
「いえ、ご無事で何よりです」
桂樹君と話していると、欄音ちゃんが玄関まで歩いて行った。
恐らく、桂樹君に会いに行ったのでしょう。
「先ほど親衛隊達に説明をし終えたのですが、薺達はそちらに居ますか?」
尋ねられたので二人を見ると、二人は顔を見合わせて頷いた。
「桂樹、僕達はここだ」
薺君がそう言うと、桂樹君が驚いた顔をしていた。
「悪いが、訳は後で説明する。済まないが、僕と朝熊の服を取りに行ってはくれないか?」
そう言えば、薺君達はブルーローズの水の衣でした。
「また、僕の想定外の事態が起きたようだね。だけど、薺。……頼むから、欄音の前でその姿は止めてくれ!」
水の衣の、どこがいけないのでしょうか?
少女となった薺君の胸が大きいので、屈んだせいで胸元が少し見えていただけなのですが?
「済まない、桂樹。もう、遅かったようだ」
薺君の言葉を不思議に思っていると、欄音ちゃんが桂樹君を何度も引っ叩いていた。
どうやら思わず見てしまった桂樹君の目線に、欄音ちゃんは気付いていた様です。
そして暫くすると、顔を腫らした桂樹君が、薺君の服を持って来て欄音ちゃんに渡していた。
私はその間に、パウダールームで着替えてきました。
すると、石楠花がブルーローズから離れて私のそばに来た。
「撫子、良い友人達に恵まれたのぉ」
「はい。私の、自慢の友人です」
「じゃが、薺と朝熊と桂樹をどうする? 風呂や寝床の事を考えると、あのまま二人を別邸に行かせると欄音にのぉ……」
「ですね……」
薺君と朝熊君がトイレから着替えて出てきましたが、桂樹君を監視すると言って、欄音ちゃんが別邸についていくようです。
「そうじゃ、撫子。食事の後、少女化しておる薺達を連れて野湯に行かぬか? 野湯はのぉ、わしらの神通力を向上させる効果が有るのじゃ。もしかすると、あべこべの羽団扇の封印を解けるやもしれん」
石楠花は、昔からよく野湯に入っていたそうです。
野湯の事を簡単に言えば、自然自噴した源泉で、人の手が少し加わった物と一切加わっていない物があり、商業化されていない場所の事を言うそうです。
それに、野湯は湯あみ着や水着を着て良い所と駄目な所が有るそうです。
石楠花達天狗は、人が立ち入ることが不可能な場所であっても、神通力を使用し容易に入る事が出来る。
実はそう言った場所ほど、大地のエネルギーが湧き出ており、大天狗が通う秘密の野湯なのだそうです。
今回石楠花が行こうとしている野湯は、石楠花が神通力で隠した秘密の場所に有るそうで、何を着ようと構わないそうです。
私は水着が有りますし、湯あみ着はお土産の中に有ったので、薺君達に着てもらえば問題有りません。
食事の後に予約している露天風呂は欄音ちゃん達に入ってもらい、私達は石楠花が神通力で隠した秘密の野湯に行く事にしました。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




