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朝熊(アサマ)SIDE】



 確かイベリスは、パーティーメンバーを狭間の空間に連れて行く能力が使用可能だと聞いている。

 ここは、その能力を使用し慎重に行動した方が無難だ。

 花が居る以上、何を仕出かすか分からないからな。



「花、イベリスを借りても良いか?」

朝熊(アサマ)君の、エッチ!」



 ……このままだと、いつもの花のペースに飲まれる。

 勿論、花のこの性格も好きだ。

 しかし、時と場所は考えてくれると信じている。

 但し、ちゃんと説明をする必要が有るな。



「花、俺の言い方が悪かった。イベリスの能力を使用し、安全に行動したい。確かその能力を使用する場合、イベリスが前足で触る必要が有ると聞いている。だから、イベリスを借りても良いか?」

「……ゴックン。壁、うまうま! 朝熊(アサマ)君も、食べる?」

「おい!」



 俺が言葉で突っ込むと、花が舌を出した。



朝熊(アサマ)君、冗談だよー。イベリスちゃんの、能力でしょ?」

「ああ、虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)と言うパーティーメンバーを狭間の空間に連れて行く能力だ」

「花が、イベリスちゃんを抱いていても使用出来るよ?」

「そうなのか? じゃー、イベリス。俺達に、虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)を使用してくれるか?」

「ミャウ」



 イベリスが返事をすると、花とイベリスが急に消えた。

 しかも、今までそこに居なかった様にも感じられる。

 気配や存在が一瞬で消えただけで無く、ここに居たと言う記憶も曖昧になってきた。



「ギュー?」



 花達が消えた事で、少し不安に思ってしまったのを感じたのか、姫立金花が俺を見上げてきた。



「いや、何でもない」



 そう姫立金花に伝えていると、肉球の感触が頬に伝わって来た。

 刹那、花とイベリスが後方に現れ背中に巨大な二つの膨らみが感じられた。

 ここまで近接されても、一切気づかなかった。

 この能力、やはり凄い。

 だけど、やはり抱いたままだとイベリスの前足が届かなかったようだ。



「あはっ。ちょっと、失敗しちゃった」

「気にするな」



 照れくさそうにして、花が俺の背中から離れた。

 俺は、花のこういうそそっかしい所も好きだ。

 ……今は、そんな事を考えている場合じゃ無い。

 早く、姫の手助けに行かなくては。

 しかし、姫が向かった場所が分からない。



「花、姫が向かった場所は分からないか?」

「うーん、撫子ちゃんどこだろう? イベリスちゃん、分かる?」



 花に聞かれてイベリスが匂いを嗅いでいるが、周りはお菓子の匂いが充満している。

 しかも今の俺達には、巨大なダイニングは広大な場所だ。

 匂いだけでは、簡単には見つけられないだろう。



「ミュウ?」



 首を傾けたので、やはり広大すぎて匂いだけでは分からないようだ。

 しかし遅れをとった俺達は、姫が居ると思われる場所を、一直線に目指さなくてはならない。

 ただ場所さえ分かれば、イベリスの能力で道なき道を進む事が出来るのだ。



「ギュー」



 姫立金花が、俺の頭の上に登ってきた。

 そして立ち上がると、巨大なダイニングテーブルを見つめていた。

 ダイニングテーブルの上に、入道雲? 

 しかも、あそこだけ暴風の様になっていた。



朝熊(アサマ)君あの雲、大きな綿飴に見えるね」

「花、雲がそんなわけ……いや、この不可思議な場所では有り得るか」

「ねえねえ、食べに行こうよ」

「おい、花? 今は、姫を……」



 そう言えば、花は変なところで勘が鋭い。

 それに、あの場所だけ暴風になるなんて不自然だ。

 行ってみる価値は、有るかも知れない。

 花を信じて、行ってみるか。



「分かった。花、あの雲が有る場所に行くぞ」

「やったー!」



 こうして俺達は、ダイニングテーブルの上に広がる雲を目指すことにした。



        ※ ◇ ※



【薺SIDE】



 ブルーローズと共に紅葉の森を歩いていると、破壊された石像の様なお菓子が転がっていた。



「ブルーローズ、これは何でしょう?」

太陰(タイイン)白虎(ビャッコ)……これは、石楠花(シャクナゲ)の式神だ。だが、妙だ。なぜ、壊されている?」



 確かに、壊されているのはおかしい。

 姫達が式神に襲われて、倒したのか? 

 いや、それは無いか。

 式神と言うのなら、石楠花(シャクナゲ)の命令は絶対厳守する。

 つまり、契約者である姫を襲うことは不可能なのだ。



「しかも、石楠花(シャクナゲ)の神通力に干渉するように術自体を解いておる」



 だから、不自然な壊れ方をしていたのか。

 じゃー、一体誰が? 

 大天狗である石楠花(シャクナゲ)の神通力に、干渉する術? 


 まさか、八天狗の誰か? 

 いや、それは流石に考えられない。

 なぜなら、総大将自らが来て姫の事を認めたからだ。



「薺、先へ急ぐぞ」



 この状況に加え、能力が低下するミステリアス ワールド テリトリー。

 つまり、大天狗の能力に匹敵する力を持った者が進入したと言うことだ。



「はい」



 ブルーローズと急いで奥へ行くと、紅葉の中に施設が有った。

 その施設にはロープウェイが有り、ロープが伸びている方を見ると、次の次元世界に繋がっている事が分かった。



「薺、三つ目の次元世界に突入と同時に我のMPを全回する。いつでも、ミネラルウォーターを出せるようにしておいてくれ」

「はい」



 こうして僕達は、ロープウェイで三つ目の次元世界に向かう事になった。



        ※ ◇ ※



【撫子SIDE】



 水の結界に打ち付ける綿菓子の吹雪を見ていると、メイドさんが自身の耳に手を添えていた。



「撫子(ニャン)(ニャン)、何か音がしませんか?」



 メイドさんに言われて耳を澄ましてみたが、綿菓子の吹雪く音しかしなかった。



「私には、吹雪く音しか聞こえません。どのような、音ですか?」

「強いて言うと、何かが折れそうな音でしょうか?」



 折れると言う言葉を聞いて、私はお菓子の木の事を思い出した。

 水の結界で繋げている木は問題ないが、外の木は何も守られていない。

 そう思った瞬間、水の結界に衝撃と大きな音がした。



「キャー!」



 はっ! 悲鳴を上げている場合では、ありません。

 水の結界を厚くしなくては、暴風の荒れ狂う風圧に押されてしまう。

 綿飴の吹雪が、まさかここまで激しくなるとは思いもしなかった。



「撫子(ニャン)(ニャン)、大丈夫ですか? もしよければ、ティータイムに致しますよ」



 水の結界を分厚くしていると、メイドさんが声をかけてきた。



「えっ?」



 こんな時に、何を言っているのですか? 

 そう思っていると、メイドさんの笑顔と一緒に私の心へ「私達は、(ニャン)(ニャン)のあやかしです。心配なさらなくても、大丈夫ですよ」と伝わって来た。


 どうやら私は、二人を守ろうとして必死になりすぎていたようです。

 小さな雛菊(ヒナギク)からも「撫子おねぇたんは、ピィが守る」と言う心も伝わって来た。

 私は水の結界を分厚くした後、力を入れすぎていた肩の力を緩めた。



「メイドさん、私は大丈夫です。雛菊(ヒナギク)も、心配してくれてありがとう」



 私は自身を落ち着かせる為に、メイドさんの厚意に甘えることにした。

 ですが、どこから出してきたのでしょう? 

 メイドさんの、特殊スキルでしょうか? 


 そう思っていると、ティーカップに暖かいミルクティーが注がれた。

 不思議に思いつつ、メイドさんが注いでくれたミルクティーを飲んでいると、雛菊(ヒナギク)が雪だるまと雪兎を作り出した。

 どうやら、この荒れ狂う綿菓子の吹雪の原因を突き止めるために作り出したようです。



「撫子おねぇたん、兎たんに見に行ってもらうね。だるまたんは、ピィ達を守ってくれるの」

「ありがとう」



 雛菊(ヒナギク)にお礼を言って撫でてあげると、雪兎が私の結界を出て行った。

 そして出て行ったと同時に、結界の外から激しい暴風の轟音が木霊した。



「グワァー!」



 そして石楠花(シャクナゲ)の声が聞こえ、私の結界内まで吹き飛ばされてきた。

 因みに結界は、許しを得たものしか入室することが出来ません。



「痛っ……むっ、何じゃここは?」



 石楠花(シャクナゲ)が周りを見渡すと、私と目が合った。

 すると雪だるまが私達の前に出て守護し、雛菊(ヒナギク)は私の後ろに隠れた。



「撫子、なぜここに居るのじゃ!」



 石楠花(シャクナゲ)は頬が赤く、少し酔っているようです。

 ですが、なぜ傷だらけで吹き飛ばされて来たのでしょうか? 

 それに、一体何と戦っているの? 

 ですが、会えて良かった。



「撫子おねぇたん?」



 雛菊(ヒナギク)が不思議な顔をして見上げて来たので、私は笑顔を向けた。



「安心して下さい。石楠花(シャクナゲ)は、私のあやかしです」



 そう伝えると、雪だるまが守護陣形を解き雛菊(ヒナギク)が私の後ろから出てきた。

 そしてメイドさんが、転倒していた石楠花(シャクナゲ)を立たせてくれていた。



「撫子、新たなあやかしか?」



 石楠花(シャクナゲ)が、私の近くにいた雛菊(ヒナギク)を見てそう言った。



「はい。メイドさんはヘイズスターバーストの一部ですが、この子は雛菊(ヒナギク)です」

「ふむ……雪ん子か。珍しいのぉ」

石楠花(シャクナゲ)、一緒に帰りませんか?」



 私が手を差し出すと、石楠花(シャクナゲ)が首を振った。



「いや、奪われた物を回収する必要が有るのじゃ。それに……」



 そう言って、横を向いた。



「撫子達が()ぬ様に、女子(オナゴ)が恥ずかしがる仕掛けをしておいたのに無駄じゃったか」



 そして、横を向いたまま石楠花(シャクナゲ)は小さな声で何か呟いた。

 ですが、私には聞こえませんでした。



石楠花(シャクナゲ)、何か言いましたか?」

「いや、何でもない」



 そして私の元へ来ると、ここから逃げるように言ってきた。

 ですが、ちゃんと話を聞くまでは帰れません。

 すると石楠花(シャクナゲ)は、強力な結界を周りに幾つも作り出した。



「これなら、暫くはもつじゃろう」



 石楠花(シャクナゲ)から話を聞くと、()の国から突然要注意人物が来訪し、私との契約に因縁をつけてきたそうです。

 その為、パウダールームに行って一口洋酒入りのお菓子を食べ能力を向上させた。

 そして、あべこべの羽団扇の封印を解除し、ミステリアス ワールド テリトリーを作り出したそうです。


 そのテリトリーは、この世界を模倣しているが別の不可思議な世界で、女性以外に様々な影響を及ぼす様設定したので、要注意人物の能力を激減させる事が出来る。

 しかも、石楠花(シャクナゲ)が許す者以外は出ることが不可能。

 なので、何が有っても対処できると石楠花(シャクナゲ)は考えたようです。


 だから、この不思議なダイニングになったのか。

 納得いきました。

 ですがその要注意人物は、能力減少封じの羽団扇を所持していた。

 そして石楠花(シャクナゲ)は逆に計略に嵌まり、あべこべの羽団扇を奪われた。


 その羽団扇を取り返すために、石楠花(シャクナゲ)は要注意人物と戦っているそうです。

 幸いこのテリトリーは、一度設定したものは(クツガエ)す事が出来ない。

 なので、能力減少封じの羽団扇を奪い、あべこべの羽団扇さえ取り戻せば、要注意人物は大人しくなるそうです。


 但し、注意しなければならない事が有る。

 要注意人物は、あべこべの羽団扇の能力を使用し苦手な物を無くした。

 そのせいで、石楠花(シャクナゲ)は苦戦を強いられているようです。

 ただ、要注意人物はまだ完全に羽団扇を使いこなせていないそうです。

 ならば使いこなせていない今のうちに、私達が協力して取り返せば良いだけのこと。



石楠花(シャクナゲ)、私達も手伝います。それに契約を認めないと言うのなら、実力を見せて認めさせれば良いのです」

「うむ……。それも、一つの手かのぉ」



 こうして私達は、石楠花(シャクナゲ)が苦戦している要注意人物と戦う事になった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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