表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/126

 ケープを着るために栴檀(センダン)の板と鳩尾(キュウビ)の板と草摺(クサズリ)を外していると、雛菊(ヒナギク)が私の太股を軽く叩いてきた。



「撫子おねぇたん、ピィと同じでいーの?」



 雛菊(ヒナギク)が着ているケープは、太股の少し上まで隠れていたので、見えるか見えないかの境目ですが、女性どうしですし然程(サホド)気にする事でも有りません。

 ですので、同じ物を頼む事にした。



「はい。それと、メイドさんの分も一緒にお願いしますね」



 恥ずかしがる様子のないメイドさんですが、可愛らしいケープには興味が有るようで、雛菊(ヒナギク)にお願いすると嬉しそうにしていた。

 ですが、迂闊でした。


 まさか、雛菊(ヒナギク)と同じ大きさのケープだとは思いもしなかったのです。

 メイドさんは嬉しそうにしていましたが、この大きさは流石に恥ずかしい。

 雛菊(ヒナギク)が笑顔を向けてくるので、一応合わせてみましたが襟巻きのようでした。



「えっと……」

「なーに、撫子おねぇたん?」

「ごめんね、雛菊(ヒナギク)。二度手間になるけれど、私達のサイズにしてもらっても良いかな?」

「いーよ。撫子おねぇたん、時間かかちゃうけどいーい?」

「うん」



 私が返事をすると、ケープの大きさを調整しながら雛菊(ヒナギク)はこれまでの事を話してくれた。

 実は話している時に、下着も作れるか聞いてみた。

 ですが、作る事が出来ないそうです。


 どうやら今の状態では繊細な物は、能力で作り出すことが困難で、このケープは唯一覚えていて、能力で作り出す事が出来たのだそうです。

 初めに着ていた服は、百年前に大切な友人から頂いた物だったそうです。


 ある日の事、雛菊(ヒナギク)はその友人に会い行くため雪山を降りて来た。

 ですが、急に天地が逆転し次元世界の渦に巻き込まれた。

 しかも現実世界と逸脱された次元世界は、能力を使用しても脱出する事が出来なかった。


 当てもなく時の不明な次元世界を彷徨っていると、少しずつ能力が衰えていった。

 そして能力を完全に失いかけたその時、急に次元世界が豹変しお菓子の世界となった。

 そこで、雛菊(ヒナギク)は私と出会ったというわけです。



「撫子おねぇたん、出来たよ」

雛菊(ヒナギク)、ありがとう」



 作ってくれたケープは、付けてみると肌触りがよく、防具の役割である栴檀(センダン)の板と鳩尾(キュウビ)の板と草摺(クサズリ)よりも凄く安心感が有った。

 ただ短いので、前に屈むと後ろが見えてしまう。

 ですので少しでもと思い、ケープの上に栴檀(センダン)の板と鳩尾(キュウビ)の板と草摺(クサズリ)を付けた。


 チグハグに見えますが、先ほどの破廉恥な姿よりも良いです。

 雛菊(ヒナギク)から色々と話を聞けたので、今度雛菊(ヒナギク)に似合う服を買いに行こうと思います。

 召喚時に消えてしまった、服の代わりになるかは分かりませんけれどね。



「撫子(ニャン)(ニャン)、先ほどよりも可愛さが増しましたね」

「そうですね」



 私より大柄なメイドさんを見てみると、足が凄く長く見えた。

 ケープは上にボリュームが有る分、足長効果は高いようです。



(ニャン)(ニャン)は何を着ても、お似合いですね。私も、可愛らしくなったでしょうか?」



 メイドさんの場合、可愛さと言うよりセクシーさが増した気がします。

 ですが嬉しそうにしている姿は、可愛くて良いと思う。



「はい」



 森の奥へ進むにつれ、深雪のように綿菓子が積もっていた。

 そして綿菓子が、フワフワと降ってきた。

 寒くはありませんが、不思議な光景です。

 風に(ナビ)く綿菓子は、綿菓子を作る機械の中のように糸を引いていた。

 初めは幻想的な光景でしたが、綿菓子が雪のように吹雪いてきた。



「撫子(ニャン)(ニャン)、綿菓子の吹雪が少し落ち着くまで木の陰に隠れませんか?」

「そうですね……雛菊(ヒナギク)も、良いかな?」

「うん」



 子供の頃夢見た綿菓子は、フワフワした軽い物でしたが現実は違いました。

 纏わり付く綿菓子が視界を奪い、身体(カラダ)に絡みついて身動きが取れなくなるのです。

 私達は木と木の間に水の結界を張り、テントのようにして綿菓子の吹雪が収まるのを待つことにした。



        ※ ◇ ※



朝熊(アサマ)SIDE】



 後頭部と背中に、心地よい温もりと至高の柔らかさを感じる。

 これは、花に膝枕をしてもらっている夢か? 

 先ほどは酷い仕打ちをされたが、気まぐれで起こすいつもの照れ隠しだろ? 


 何だかんだ言っても、花は俺の事を心配してくれているんだ。

 頬に伝わる息と、柔らかい髪。

 そして、俺の唇に感じる暖かさは花の……エッ? 何で、ザラッとしているんだ? 


 花、唇が荒れているのか? 

 俺は、初めてのキスなんだぞ。

 花、ちゃんと唇くらいケアしろよ。



「ミャウミャウ、ミュウ?」



 ミャウミャウ、ミュウ? って、猫の真似か? 

 でも花は、犬派だろ? 

 そうか、姫の真似をしているんだ。



「……エッ? ウッ、ウワァー!」



 目をゆっくり開けると、イベリスが俺の口を舐めていた。

 俺のファーストキスが、猫に奪われた……。



「あっ! 朝熊(アサマ)君が、起きた」



 声がする方を見ると、花達が露天風呂の入口から顔を出していた。

 花、ちょっと酷くないか? 

 俺はイベリスの尻尾じゃなくて、花の膝枕で目覚めたかった……。

 溜め息をつくと、イベリスが肉球で俺の頭を優しく撫でてきた。



「ミュウ」



 俺を、慰めてくれたのか? 

 姫のあやかしは、優しいな。

 あれ? でも、姫は? 薺は、どこだ? 

 問題は、解決したのか? 

 でもその前に、介抱してくれていたイベリスにお礼を言わないとな。



「ありがと、イベリス」



 イベリスにお礼を伝えていると、桂樹(カツラキ)がやって来た。

 桂樹(カツラキ)が来ると、イベリスは露天風呂から出口へと向かった。

 姫は、奥に居るのか。



朝熊(アサマ)、助けに来たのに散々な目にあったね」



 桂樹(カツラキ)を見ると、俺同様トランクス一枚になっていた。

 どうやら、桂樹(カツラキ)が念の為にと準備していた物だけでは足りなかったようだ。

 なぜ、俺の鞄まで持って行くんだと思っていたが……。

 もし持っていかなかったら、トランクスも奪われていたかもしれない。



桂樹(カツラキ)、今回は計算外だったな」

「あははは、まーね」



 桂樹(カツラキ)にこれまでの事を聞くと、石楠花(シャクナゲ)()なくなった事で、姫が突然出来た結界内へ探しに向かった事が分かった。

 薺は恐らく、ブルーローズの力を借り玄関側から結界内に侵入して、姫を助けに向かったと思われる。


 騎士団が発動したのは、姫が入ってから少し経ってから。

 なので、中で何か有った。

 若しくは、俺達の助けが必要になったのかは不明らしい。



朝熊(アサマ)、話し合った結果だけど決まったよ」



 俺抜きで、話を進めたのか? 

 まあでも、俺が気絶していたので桂樹(カツラキ)が気を利かせたのかもな。


「どうなったんだ?」

「姫の応援部隊は、君と花ちゃんだ。勿論、イベリスと姫立金花(ヒメリュウキンカ)も同行する。理由は、簡単。二人のレベルが、一番高いからだ」



 俺も話し合っていたら、同様の意見だっただろう。

 流石桂樹(カツラキ)、話し合いも早くて的確だ。



「それと来る時、全親衛隊から着信があった。僕は、親衛隊達に説明をしなくてはならない。恐らく周辺の親衛隊は既に、この温泉宿の前に集結しているはず」



 そう言えば俺のスマホにも、沢山の着信が入っていた。



「だろうな。桂樹(カツラキ)、悪いがそちらの事は任せる」



 説明は、俺より桂樹(カツラキ)の方が得意だしな。



「任せてよ。だから朝熊(アサマ)、詳しい事情は花ちゃんから聞いてくれるかい?」



 詳しいって、主要な所は分かったのに何が有るんだ? 

 まあ、良いけれど。



「ああ、分かった」



 ただ緊急事態だと分かるが、桂樹(カツラキ)が姫の為に自ら行動せず、俺へ簡単に譲った事が気になった。

 いや……俺の、考えすぎか。


 露天風呂から桂樹(カツラキ)と共に出て来ると、花が裸でイベリスと姫立金花を抱いていた。

 大事なところは二匹で見えていないが、これは一体どういう状況だ? 

 それよりも、桂樹(カツラキ)



「お前は、見るな!」



 振り返って桂樹(カツラキ)を蹴り飛ばそうとすると、桂樹(カツラキ)の背中を誰かが思いっきり叩いて目隠しした。



「ガハッ! 裸なのに、平手打ちは痛すぎるよ。欄音(カノン)、僕は見ていないから止めてよ」



 欄音(カノン)か……相変わらず、桂樹(カツラキ)の事になると激しい愛情表現だな。



「秘技! 下着奪取、ですわ」



 そう思っていると、後ろからトランクスを百合愛(ユリア)ちゃんに奪われた。



「ちょっ……」



 俺は股間を、素早く手で隠した。

 と言うか花、これ説明しろよ。

 俺には、意味が分からない。

 ……まさか桂樹(カツラキ)、図ったな。



朝熊(アサマ)君、行くよ!」



 桂樹(カツラキ)を蹴りに行こうとすると、有無を言わせず花に右手を引っ張られた。



「おい、花! 手を、引っ張るな!」



 そしてそのまま、歪んだ空間の中に引きずり込まれた。

 中に入ると、甘い香りが漂い異常な世界だと直ぐに分かった。

 なぜなら、遠くに見えるダイニングテーブルが巨大なビルのように聳え立っていたからだ。


 しかも、後ろに見えていた露天風呂の入口が白い壁になった。

 何なんだ、ここは? 

 不思議な光景を見ていると、花が俺を見て驚いていた。



「あなた、朝熊(アサマ)君? だよね?」



 あなたって、そんなの決まっているだろ。



「花、何を言って……」



 何だ、この声? 

 俺の、声なのか? 

 えっ? 花との、目線の位置がおかしい。


 しかも、何て華奢な手だ。

 俺の、手なのか? 

 腕の筋肉は、どこへ行った? 

 胸? ……俺の、分厚い胸板が膨らんでいる? 



「なっ、何じゃこりゃー!」

「キャハハハ! 朝熊(アサマ)君、女の子になっちゃったんだ」



 ハッ! それよりも、能力はどうなった? 

 嘘だろ? 剣士が、女傑になっている。

 何かあった時、姫や花を守れる盾特化にはなれるのか? 


 ……どうやら、女傑になっても使える様だ。

 なら、安心した。

 盾を背に背負って安心していると、花が姫立金花を渡してきた。



朝熊(アサマ)ちゃん、はい」

「ギュー」



 姫立金花が小さな手を出して、俺を見上げていた。

 確かに、可愛いけれど……



「何で、姫立金花?」



 花は、何をしたいんだ? 



「えっと、花の方が大きいから朝熊(アサマ)ちゃんは姫立金花ちゃんで胸を隠してね」



 胸って? 俺が隠すなら、胸より股間だろ? 

 股間を手で隠そうとすると、無い事に気がついた。

 ……そう言えば、女になっていたんだ。



「だけど、花。せめて、ちゃん付けは止めてくれ」

「エー……可愛いのにぃ?」



 いつもの様なやり取りを花としたが、ここは不思議な場所だ。

 気を引き締めないと、何が起こるか分からない。

 俺は頭を切り替え、花とイベリス達に指示を行うことにした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ