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お菓子の森を進んでいると、フワフワした白い光りが見えた。
「これって、あやかしの光りでしょうか?」
ですが、鍛錬の間でもないのになぜ?
不思議に思いつつ、私は光りを追いかけていた。
すると、メイドさんが肩を叩いた。
「撫子娘娘、どうされました?」
「白い光が、見えたのです」
メイドさんに今までのあやかし達の出会いについて説明していると、白い光りが地面に降りて彷徨いだした。
この子、迷っているのかな?
だけど、なぜこのような場所で?
「メイドさん、少し待って下さいね」
「はい、撫子娘娘。私は、ここでお待ちしておりますので」
「ありがとう」
白い光りを追いかけ出すと、白い光りが浮遊してお菓子の木の上に止まった。
すると綿菓子では無く、雪が集まって来た。
「やっぱり、あやかしの光り……」
そして雪が、フワフワな固まりとなった。
雪の綿? あのあやかしは、一体何でしょう?
そう思っていると「ピィ、ピィ、ピィ、ピィ」と鳴いて横を向いた。
すると、尻尾が有ったので鳥さんだと分かった。
そう言えば、この子と同じ様な姿をSNSで見た事が有ります。
確か、雪の妖精とも呼ばれる鳥さんです。
その子の姿は、雪の精霊に似ていてフワフワモコモコで凄く可愛かった。
「ジュリィィィッ、ジュリィィィッ」
鳥さんが再び鳴くと、私の元へ飛んできた。
そして肩に乗ると、この子の言っている事が分かった。
どうやら、この不思議な世界に迷い込んでしまったようです。
しかも、雪が無くて困っているようです。
私はブルーローズの能力を使用し、清水を凍らせた。
そして懐剣を使って氷を削り、フワフワな氷にしてあげた。
すると水浴びをするように、氷を浴びだした。
どうやら、この氷を気に入ってくれた様です。
私はその様子を見て、純白で可愛いらしい雛菊を思い出した。
「あなたは、今から雛菊ね」
名を呼ぶと雛菊が飛んできて、肩に乗り私の頬に身を寄せてきた。
頬にあたる、フワフワの毛が気持ち良い。
雛菊が私の足下に降りると、削った氷が集まり出し人型へと姿を変えた。
すると、幼く可愛らしい少女となった。
雛菊の白銀の髪に、純白のファーで覆われた可愛らしいドレスコートがよく似合っている。
しかし次の瞬間、急に雛菊の服が消えて裸になった。
どうやら、雛菊の服も例外では無いようです。
「……あれ? 消えちゃった?」
服が消えた事で、雛菊が不思議そうに小首を何度も傾けていた。
見ていると可愛らしいですが、雛菊に説明をしてあげなくてはなりません。
「雛菊、ごめんなさい。この不思議な場所ではね、能力以外の服は着られないみたいなの」
説明してあげると、頷いて理解してくれた。
それにこの子は、ブルーローズの様に変化能力が有ることが分かった。
「おねぇたん、たくしゃんの氷ありがと」
そう言えば、名前を教えていませんでした。
名前を教えてあげると、私の足に抱きついた。
「ピィ、撫子おねぇたん大しゅき」
そして顔を見上げて、笑顔を向けてきた。
石楠花と違い、話し方が幼い子供そのもので、小さな妹ができたみたいで嬉しかった。
雛菊を撫でていると、メイドさんがやって来た。
「撫子娘娘、お会いできたようですね」
「はい」
メイドさんに会えたことを伝えていると、雛菊が私の太股を軽く叩いてきた。
「ピィ、おねぇたんと契約しゅる」
「いいの?」
「うん」
雛菊が頷くと、白い魔法陣が現れ光りとなって私の胸に吸い込まれた。
いつもと違いましたが、これで召喚する事が出来るようになった。
「雛菊、おいで」
雛菊を呼ぶと、召喚MP減少LV8の状態でMPが50減った。
ブルーローズと、同じ消費量。
どうやら雛菊は、ブルーローズと同程度の能力が有るあやかしのようです。
実は召喚MPの量によって、あやかしの能力の高さが分かるようになったのです。
因みに雛菊の最大HPは3416で、最大MPは5052有りました。
「撫子おねぇたん、ただいま」
「おかえり」
そう言って雛菊を見ると、真っ白な雪のケープを着ていた。
話を聞くと、どうやら召喚と同時に能力で作り出したようです。
どうりで、召喚したのにMPが減っていたわけです。
雛菊に雪のケープを触らせて貰うと、フワフワしているが冷たくは無かった。
これなら消えることは無いし、今の恥ずかしい姿より余程ましです。
私は早速、雪のケープを雛菊に作って貰うことにした。
※ ◇ ※
【薺SIDE】
肘掛けの頂上までやって来ると、背もたれの頂上まで階段が続いていた。
その階段を上ると、一人掛け用のソファーまでウエハースで出来た筒状の曲がりくねったトンネルが続いており、入口にはお菓子で作られたトロッコが置いてあった。
「薺、如何にも怪しいトロッコだがどうする?」
確かに、ブルーローズの言うとおり怪しい。
しかし先ほどのティーカップも、途中までは進む事が出来た。
この世界を作り出した元凶は、何を考えているのか?
姫の事や邪な考えを思い描かない限り、欲望の魔物が襲ってこないのも、何かしら意味が有るのだろうか?
不明な事が、まだ沢山有りすぎる。
「ブルーローズ、念の為に周りを見てからにします」
「うむ」
周りを見てみると、このトンネル以外進む道は無かった。
しかも入口には柵が有り、中は真っ暗で何も見えない。
柵はクッキーなので脇差しで破壊可能だが、光りが無ければ中の様子が見えない。
何か光りに変わる物が無いかと探していると、トロッコにライトが付いていることが分かった。
能力が低下した僕とブルーローズの状態を考えると、トンネルの上に乗って移動するにはリスクが高すぎる。
やはり、トロッコに乗るしか手は無いようだ。
「ブルーローズ、外からの移動は危険です。トロッコに乗って、進みましょう」
それにインカルナタが乗り込んでいる所を見ると、トロッコに危険は無いようだ。
「うむ、そうだな」
トロッコを押して入口まで進むと、閉まっていた柵が降りた。
どうやら、この道を進むにはトロッコが必要のようだ。
僕達はトロッコに乗り込み、ウエハースのトンネルをゆっくり進み出した。
すると徐々に坂になっており、トロッコが加速しだした。
「薺、我の目の錯覚だろうか? 前方に壁? いや、曲がり角か」
ブルーローズに言われて前を見ると、直角に道が曲がっていた。
「ブルーローズ、伏せて下さい!」
「ヌウォー!」
まだ立ったままでいるブルーローズを慌てて抱き寄せると、インカルナタと共に身を伏せた。
次の瞬間、遠心力でトロッコの右下に押しつけられた。
「フモォォォー!」
「ウワァァァッ!」
僕とブルーローズが叫ぶと、インカルナタは必死で僕の胸にしがみ付く。
体勢を変えようとすると、今度は左側に押しつけられブルーローズを下敷きにしてしまった。
すると、ブルーローズが藻掻き僕の胸を押し上げた。
「フモォ! フモォ! フモォ! フモォー!」
しかし、遠心力で僕も動けない。
インカルナタは、僕の後頭部にしがみ付いた。
しかもブルーローズの藻掻く言葉が振動して、色々と擽ったすぎる。
「ヒィヤンッ! ブルーローズ、フモフモ言わないで! ウワッ!」
次の瞬間、浮いたと思うとブルーローズの胸が飛び込んできた。
「フニャー! 薺、我の胸に顔を埋めるな!」
そんな事を言われても、この状態はブルーローズが押しつけて来ている状態だ。
そう思っていると、ブルーローズの身体が浮いた。
「擽った……エッ!」
「ブルーローズ!」
不味い。このままでは、ブルーローズが外に放り出されてしまう。
そう思った瞬間、トロッコの底に背中を叩きつけられ目の前が暗くなった。
「フモ、フモ?」
この暗闇は、何だ?
そう言葉を発した瞬間、顔の上に有る暖かい物が震えた。
「フニャー! フェー! 薺、喋るな!」
そして、ブルーローズの悲痛な声が聞こえてきた。
その瞬間、またも体勢が変わった。
この顔にフサフサ当たるのは、インカルナタの尻尾?
そして胸を挟まれ、下腹部に伸し掛かるのはブルーローズの顔?
「……ンフッ」
僕は、必死にインカルナタの尻尾で声を押し殺した。
これは、流石に耐えられない感覚だ。
そうか、さっき僕はブルーローズの……。
今になって、ブルーローズが悲痛な声を出した意味が分かった。
「前が、見えんではないか。薺の、衣だったか。すま、ヌウォー!」
ブルーローズが謝ろうとして、また体勢が変わった。
こうして僕達は、何度も何度も遠心力と衝撃に晒され、変な体勢になってトンネルの中をトロッコで滑走した。
そしてトロッコの終点に着いた時、ブルーローズのMPが4になり、水の衣が消えていた。
どうやら衝撃を受ける度に、僕達のHPが減っていたので、ブルーローズが回復してくれていたようだ。
ミネラルウォーターの残り本数は、十二本。
残り本数は少ないが、最終地点に有ったトンネルの階段を登りきると、どういう訳かテーブルの上に出ることが出来た。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




