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「薺君、ちょっと……」



 私は膝の上で眠っている姫立金花とインカルナタを下に降ろし、薺君を手招きした。



「姫、何でしょうか?」



 そして、未だにイチャイチャしている花ちゃんと朝熊(アサマ)君から少し離れた。

 因みに、イベリスはベットの上に置いて有るパーカーがお気に入りで、パーカーの中で眠っており、ヘイズスターバースト達は腕輪の中で静かにしている。


 石楠花(シャクナゲ)は私が作ったお菓子がお気に入りで、お菓子を食べてゴロゴロしており、ブルーローズは石楠花(シャクナゲ)に飲み物が欲しいと言われ、人の姿となって私達の分も一緒に取りに行ってくれている。


 そして今更ですが、ブルーローズが人の姿になると超絶美少年になる事に驚いた。

 滝で会った、美男だった水神の子だと言うのもこれで納得した。

 石楠花(シャクナゲ)と仲が良いのは、見た目の年齢が近いからかも知れません。



「最近花ちゃんと朝熊(アサマ)君が一緒になると、欄音(カノン)ちゃん達が不機嫌になりますよね?」

「姫、朝熊(アサマ)に花ちゃんの事を頼んだのは僕です。何か有れば、僕が責任をもって対処します」

「でしたら、皆でどこかへ遊びに行きませんか? 皆で遊ぶと、欄音(カノン)ちゃん達の気分が良くなると思うのです」



 薺君とコソコソ話していると、いつの間にか桂樹(カツラキ)君が来ていた。

 桂樹(カツラキ)君は私達とは違う他校に居ますが、最近魔法陣の出現が頻発しているので、一緒に居ることが多くなってきた。

 それに親衛隊の中で、武力よりも情報収集が得意ですので、他校の話や新しく出来たお店の話も聞けて、何かとお世話になっている。



「姫、良いアイデアですね。欄音(カノン)達は、単純だから効果は大きいと思います」



 そう言えば小学生の時、新しい物好きの欄音(カノン)ちゃんから言い寄られていると、桂樹(カツラキ)君が私の代わりに聞いてくれていた事を覚えている。

 二人の関係は家族ぐるみで幼馴染みだと知っていますが、付き合いそうで付き合わない不思議な関係なのだ。



桂樹(カツラキ)君も、そう思いますか?」

「はい。薺、良いだろ?」

桂樹(カツラキ)、僕の返事は聞くまでも無い」

「なら、決まりだな」

「では、欄音(カノン)ちゃん達に連絡しないといけませんね」

「姫、欄音(カノン)に伝えたら即答で行くと返事が有りましたよ。百合愛(ユリア)ちゃん、美桜(ミオ)ちゃん、椿来(ツバキ)ちゃん達に連絡すると言っていたので、欄音(カノン)に任せると良いです」

「分かりました。桂樹(カツラキ)君、連絡ありがとうございます」



 桂樹(カツラキ)君は、仕事が早くて助かります。



桂樹(カツラキ)、相変わらずやることが早いな」



 薺君も、同じ様に思ったみたいです。



「薺、僕の手が早いみたいに言うなよ。欄音(カノン)は僕の幼馴染みだから、性格をよく知っているだけだからな」



 これで、欄音(カノン)ちゃんと付き合っていないと言うのが不思議でなりません。

 欄音(カノン)ちゃんも、朝熊(アサマ)君ではなく桂樹(カツラキ)君に思いを寄せたら良いのに。

 私はお兄ちゃん一筋ですが、欄音(カノン)ちゃんは心移りが激しいのかもしれません。

 花ちゃん達の方を見ると、未だにイチャイチャしていました。



「花、最近肩が凝るの」



 花ちゃん、胸を持ち上げて言わないで下さい。



「花、俺が揉んでやろうか?」



 勿論、朝熊(アサマ)君が揉みほぐすのは肩だと分かりますが、言い方を考えてほしいです。



「うん。朝熊(アサマ)君、ここお願い」



 花ちゃんは、胸を持ち上げた。



「……花ちゃん?」



 冗談だと分かっていますが、それが欄音(カノン)ちゃん達を苛立たせる原因だと分かってほしいです。



「撫子ちゃん、花のいつもの冗談だよー」



 冗談が通じていたのは、小学生の時までです。

 私も、よくお兄ちゃんにしていたので、人の事は言えないですけれどね。

 っと、話が脱線しました。

 次は、どこに行くかです。



「そんなに凝っているのでしたら、暖めると良いかもしれませんね」



 肩を、暖める施設。

 リラクゼーション施設は、色々有ります。

 スポーツをしても、良いかもしれません。



「花、近くのスーパー銭湯行こうかな」



 そう言えば、一度だけお姉さんと行きました。

 あそこは色々と遊べる場所が有ったので、良いかもしれません。

 銭湯と言えば、確か温泉街を救ったお礼として旅館のオーナーから無料宿泊券を沢山頂いたと言って、親衛隊の子が持って来てくれた物が有りました。


 しかも向日葵様の記憶改竄(カイザン)前に頂いた物でしたので、返却しに行ったのですが、どういう訳か記憶改竄後に、くじ引きで当選して頂いた扱いになっていた。

 ですので、まだ私の手元にあるのです。



「温泉旅館の無料宿泊券が有るのですが、遠いので乗り物が必要ですし、中学生だけでは泊まれませんしね」

「そっかー」



 花ちゃんと話していると、ブルーローズが飲み物を持って来てくれた。



「姫、我に乗って行くと良かろう」

「ブルーローズ、ありがとう。ですが、保護者同伴でないと泊めてくれないと思うのです。私の両親は、明日お仕事だと言っていました」



 薺君達のご両親も、用事が有るそうです。

 お姉さんも、お仕事だと言っていたので誘えません。

 やはり、近くで遊びに行くしか無いようです。

 すると、お菓子を食べていた石楠花(シャクナゲ)が得意気な顔をしてこちらを向いた。



「何じゃ、撫子。そんな事で、悩んでおるのか? わしとブルーローズが、保護者になれば良かろう」



 話し方は年上に思えますが、石楠花(シャクナゲ)とブルーローズの姿は、保護者と言うより私の妹と弟と言った方が良い。



「ですが、石楠花(シャクナゲ)。見た目が私達よりも、かなり年下ですよ?」

「そんなもの、神通力を使用すればチョチョイノチョイじゃ。ブルーローズが夫で、わしが美人妻なら、撫子の保護者として成り立つじゃろ?」



 確かに、どういう神通力を使用したのか知りませんが、私の両親やお手伝いさん達も、石楠花(シャクナゲ)達を見ても何も言いませんし、私達のように接してきますからね。

 こうして私達は、隣の県に有る温泉街の温泉旅館に行くこととなった。



        ※ ◇ ※



 実は店の予約をその日にしたのですが、満室で数ヶ月先まで予約できないと言われた。

 当然と言えば当然なのですが、人気が有る宿は数ヶ月前に予約しないと、泊まることが出来ません。

 しかもその温泉宿は、宿としては珍しくペット同伴可能な宿だったので人気が有るそうです。


 ですが石楠花(シャクナゲ)が電話を代わると、「撫子、スマホとやらの写真はどうやって撮るのじゃ?」と言われ、なぜか私のスマホで写真を数枚撮られました。

 そしてスマホに着信が有ったと思うと、石楠花(シャクナゲ)が「その電話は、わし宛じゃ」と言って電話に出ると、「撫子、このアプリを使って写真の画像を送りたいのじゃが?」と言われ、向日葵様のアプリの使用方法を教えてあげると、先ほど撮った写真を向日葵様のアプリを使用して全て送信しました。


 その後、なぜか宿泊出来るようになったのです。

 石楠花(シャクナゲ)に事情を聞いてみると、オーナーが親衛隊のご両親だったらしく、私の名前を伝えると向日葵様のアプリで写真を送ってほしいと言われたそうです。

 向日葵様のアプリは、親衛隊以外は使用不可能ですし入手する事も出来ません。


 ですので、石楠花(シャクナゲ)に丁寧に教えてあげました。

 すると、なぜか予約中の部屋がキャンセルとなり、空き部屋が出来たと言うわけです。

 予約した部屋は、八名まで利用可能なメゾネットタイプの別邸離れ客室と、五名まで利用可能な由布岳が見えるバリアフリー対応の離れ客室です。


 私達女子組六名と薺君達男子組三名に別れ、女子組には石楠花(シャクナゲ)がつき、男子組にはブルーローズがついた。

 他のあやかし達は、イベリスと姫立金花が女子組の方に来て、インカルナタは男子組の方へ行くこととなった。


 因みにヘイズスターバースト達は、私の腕輪にいます。

 そしてブルーローズに乗って温泉宿の上空に着くと、宿の入口に人集(ヒトダカ)りが見えた。

 石楠花(シャクナゲ)が神通力を使用しているので、私達の姿は下の人達には見えていませんが、お祭りでも有るのでしょうか? 



「薺君、人が沢山いますが今日はお祭りが有る日なのでしょうか?」

「姫、入口にいる大半の者達は親衛隊です。ですが、先の戦いに巻き込まれた一部の大人達も含まれているようです」

「えっ?」



 ですが、記憶が改竄されて先の戦いの事は覚えていないはず。

 では、なぜ? 



「実は最近調べて分かった事なのですが、戦闘に巻き込まれた大人達の一部で、記憶が残っている者達が居たのです。その者達は例外なく親衛隊の気質を持ち、特殊な保護騎士となる事が分かりました」



 保護騎士の能力は、戦闘中に自身のレベル分の人数に対しレベルを2ずつ貸し与える事が出来るそうです。

 但し、レベルを貸し与えた保護騎士のレベルが1となり、貸し与えられた騎士は他の保護騎士のレベルを借りる事が出来ないそうです。


 つまり保護騎士という存在が現れた事で、遠距離に行くほど騎士達のレベルが下がる騎士団の能力が、少し改善されたと言うわけです。

 恐らく、魔法陣の出現が他県にまで及んで来たので、上位神が手を加えてくれたのだと思う。

 ブルーローズに降下してもらい姿を現すと、温泉宿のオーナーがやって来た。



「姫様、ようこそお越し下さいました。先日は私共の旅館と、この町を助けて頂き感謝のしようも有りません。今宵は、ごゆっくりとお寛ぎ下さい。周りにいる親衛隊は、息子から聞いて来た者達です。もし良ければ、記念撮影して頂けると助かります」



 これだけ人数が集まっていたのは、息子さんが呼び寄せたせいだったようです。



「はい、良いですよ」



 返事をしたものの、記念撮影を終えるのに、かなり時間がかかってしまった。

 なぜなら、温泉旅館の従業員も合わせて大凡ですが七百名いたからです。

 本当は宿の場所を確認してから、周りを見に行くはずでした。


 ですが、早めにチェックインさせて頂いたあげく、周りの親衛隊の方々からは、お土産を沢山頂けたので、帰りにお土産を買いに行かなくてよくなりました。

 ですので、帰る前に探索しようと思います。



「姫、お疲れ様です。僕も、お持ち致します」



 薺君達が、入口で待っていてくれました。



「薺君、ありがとうございます。一度ネックレスに収納してからお部屋で分けるので、薺君もペンダントに収納して下さい」

「はい」



 お土産を収納しフロントまで案内されると、中庭の花々や緑豊かな木々の美しさに心を癒された。

 そしてインテリアにも(コダワ)られているようで、新しい物とアンティークな物が共存するのに、落ち着きが有る大人な空間が演出されていました。


 私達が案内されたのは二階建ての別邸で、大きなリビングに半露天風呂、一階にはドックランが付いていました。

 薺君達が居る場所まで少し距離が有りましたが、半露天風呂から由布岳が見え寛げる空間でした。

 薺君達の部屋でお土産を分けてから、一通り見て別邸へ戻ってくると、花ちゃん達が半露天風呂に入っていました。


 花ちゃんと欄音(カノン)ちゃん達が、いつも以上に楽しそうに話していたので来てよかったです。

 これで五人の仲が、以前のように良くなってくれる事を祈ります。

 そっと隙間から五人のことを見ていると、石楠花(シャクナゲ)とイベリスと姫立金花が来ました。



「撫子、わしらも入るかのぉ?」

「はい」

「ミュウ」

「ギュー」



 石楠花(シャクナゲ)達は、私の事を待っていてくれたようです。

 私は石楠花(シャクナゲ)達と一緒に、半露天風呂に入ることにした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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