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オークオーバロードの後頭部に有った一つ目が眉間上部に移動すると、頭部に三本の角が生え、両脇に有る両腕がこちらを向き、蝙蝠のような飛膜が有る翼が生えた。
そして見た目だけで無く、纏っていたオーラが更に巨大化した。
オークオーバロードは、魔法陣を守る為にあの場所を動けなかった。
それが、赤い石を取り込んだことで守護する必要が無くなった。
つまり、守護に回していた魔力をその身に宿したようです。
「皆の者、気を引き締めるのじゃ。奴は、先ほどまでの奴とは別物ぞ」
「はい!」
「ギュウ!」
「キュウーーン!」
返事をしたものの、鬼神化の残り時間は2分30秒。
ここからは、時間との勝負です。
そう思っていると、オークオーバロードが四本の腕に魔力を集中させだした。
四本の腕に黒い渦と黒い雷が宿ると、それを合わせ黒い光りを纏う黒炎が出来た。
そして見る見るうちに巨大化したかと思うと、それを放ってきた。
「氷剣よ、凍らせよ!」
氷剣を一本放つと、黒炎に溶かされた。
普通の炎では、無いようです。
「ならば、こちらはどうです! 地剣よ、打ち砕け!」
地剣を一本放つと、巨岩が逆に打ち砕かれた。
なんて、硬さと質量。
先ほどまでは一本でも破壊出来たのに、魔法の質が違うの?
「シューシャー!」
「ヴゥーヴゥーー!」
すると私に続き、姫立金花が雷を放ちインカルナタも風刃を放った。
しかし、どちらも弾かれた。
「むうん! 羽団扇よ、暴風で守れ! 撫子、加速瞬歩を使って避けるのじゃ!」
石楠花に言われて、姫立金花とインカルナタを抱きしめ、鬼神の加速瞬歩を使用して避けると、後ろに聳え立っていた山が消滅した。
何て、威力。
先ほどまでの、魔法と威力が桁違い。
あんな魔法を喰らうと、流石に鬼神化している私でも只では済まない。
氷剣と地剣の残りを全て放とうとすると、石楠花が前に立った。
「あれは暗黒魔法、ダーク フレイム メガ インフェルノじゃ。奴が吸収した魔力に比例し、威力と質が増しおる。皆の者、わしらは能力を合わせるのじゃ」
それぞれ返事をすると、技と能力を合わせるために頷き合った。
その間もオークオーバロードは、先ほどよりも小さな黒炎を、四本の腕でそれぞれ放って来た。
躱しながら氷剣と地剣をそれぞれ放ったが、小さな黒炎も消えることは無かった。
躱した黒炎が海に落ちると、水柱を上げ爆発した。
姫立金花とインカルナタが力を合わした、風雷刃は弾かれはしなかったものの、軌道を変えるだけだった。
「むう……姫立金花とインカルナタでは、魔力量で押されるか。姫立金花とインカルナタは、わしか撫子と合わせるのじゃ」
「ギュウ」
「キュウーーン」
二匹が石楠花に返事をすると、雷と風刃をいつでも放てる体勢を取った。
やはり魔力の差で、私の技と皆の能力を合わせないと、今のオークオーバロードの魔力には打ち勝てない。
力を、合わせる?
確か、鬼神融合無双が有りました。
融合? 剣と剣を、合わせるのでしょうか?
ですが、初めての事でよく分かりません。
すると、二匹が私の頬を舐めてきた。
「ギュウ、ギュウ」
「キュウーーン」
そして、私達がいるよと二匹が言ってきた。
そうです。
私には、信頼するあやかし達がいます。
オークオーバロードの様に、仲間を吸収して力を得ているのではありません。
ならば、あやかし達を信頼するように、私の背に浮遊する剣を信じれば良い。
そう思っていると、オークオーバロードが黒炎を幾つも放って来た。
このまま避けてしまうと、大地の大部分が消滅してしまう。
私は願うように、両手の剣を頭上で重ねた。
「鬼神融合無双! 氷禍の嵐、地禍の岩石群よ、氷地融合せよ!」
すると言葉が自然と口から出て来ると共に、背後で浮遊する百本の氷剣と地剣が重なり合い、融合して空に舞い上がった。
「天より、降り注げ! 【滅・箒星!】」
そして、私に迫ってきた黒炎を全て消し去った。
しかしオークオーバロードは、巨大な黒炎を既に放っていた。
鬼神化の残り時間を見ると、残り1分30秒しか無かった。
しかも、先ほどの攻撃で融合した箒星は全て使用してしまった。
あの黒炎は、再び鬼神融合無双をしなければ破壊出来ない。
「鬼神無双……」
百本の火剣と風剣を呼び出そうとしたが、鬼神融合無双では間に合わない。
もうこのまま二つの剣で受けなければ、大地の大部分が消滅してしまう。
「撫子、何をしておる! 避けよ! ……クッ! 姫立金花、インカルナタ、わしの神通力に合わせるのじゃ!」
「ギュウ」
「キュウーーン」
「羽団扇よ、炎を纏いし岩石を作り出せ! 【溶岩石!】」
「シューシャー!」
「ヴゥーヴゥーー!」
石楠花と姫立金花とインカルナタの能力が合わさり、黒炎の半分を消滅させたものの、残り半分が残っていた。
私は姫立金花とインカルナタを掴んで、石楠花に向かって投げた。
「石楠花、姫立金花とインカルナタをお願い!」
「馬鹿な! 撫子、逃げるのじゃ!」
「いえ、受けきります! 火刃、風刃、お願い。私に、力を貸して!」
私の願いが通じたのか、二つの剣が合わさった。
「ハァァァァァァ!」
気合を入れるように叫ぶと、石楠花が来ようとした。
「駄目じゃ、撫子!」
それを私は遮る様に、剣を向けた。
「石楠花達は、大地がこれ以上消滅して人が滅ばないよう守って下さい! 私は、大丈夫です!」
石楠花達に笑顔を見せ、黒炎を受けると全身に強烈な痛みが走った。
その瞬間、417有ったHPが一瞬で217になった。
私は、自身に癒やしの光りを連続使用しながら受けた。
しかし、鬼神化の残り時間は30秒。
このままでは、減り続けるHPにMPが尽きるか鬼神化が解けるかのどちらかです。
石楠花達は私の願いである大地の消滅を阻止する為、オークオーバロードが新たに放った黒炎を打ち落として、こちらの黒炎にまで手が回らない。
そしてMPが一桁になった時、奇跡が訪れた。
「姫ーー!」
「薺君?」
「ブルーローズ、僕に合わせろ!」
「何? 薺の技は、早すぎる! 致し方ない。海水陣、解放!」
「【水鏡 二刀流残像十二閃 鏡花水月!】」
「【水鏡 超圧縮水竜巻!】」
薺君とブルーローズの技が合わさると、黒炎が消滅した。
今のは、危なかったです。
私のMPが無くなると同時に鬼神化が解け、私のHPが1になったと言うことは、薺君のユニークスキル【守護者の男気LV2】が発動し、薺君のHPが削られたと言うことです。
薺君のHPを見ると、616有ったHPが116まで減っていた。
そして、薺君の木刀と脇差しが金色に輝いた。
その瞬間、薺君が消えた。
オークオーバロードを見ると、魔法陣を司る赤い石がある四本の腕が吹き飛んでいた。
薺君が、神速の早さで切ったようです。
そして上を見ると、いつの間にか来ていたヘイズスターバーストが飛び上がっていた。
「皆、僕に合わせろ!」
周りを見ると、花ちゃん達は矢を放っていた。
そしてブルーローズの能力で、皆に水鏡のちからが宿っていた。
薺君の早さについて行けないあやかし達も、既に技を使用していた。
「「「「「【水鏡】」」」」」
薺君と私のあやかし達が叫ぶと、連携してオークオーバロードを攻撃。
「シューシャー! ヴゥーヴゥーー!」
姫立金花とインカルナタの二つの風雷刃が、吹き飛ばされたオークオーバロードの四つの腕を、再生できないよう切り裂き、
「【ダブル ギガ ウォーター ジェット デストロイ レーザー!】」
ブルーローズが超圧縮されたレーザーのような水を放って、オークオーバロードの魔法陣を撃ち抜き、
「【火山噴火!】」
石楠花が火山を出現させ、オークオーバロードを上へ吹き飛ばし、
「【武王剣 滅殺!】」
ヘイズスターバーストが武王剣を使用し、真っ二つに切ると、
「【二刀流神速残像二十四閃 真・鏡花水月!」
最後に薺君が、オークオーバロードを細切れに切り裂いた。
すると、細切れになったオークオーバロードのオーラが消えさり消滅した。
そして空を覆っていた結界が消え去り、消滅していた山や大地が元に戻っていった。
どうやら全ての魔法陣を破壊し、全ての魔物を倒したようです。
私が座り込むと、薺君と花ちゃん達とあやかし達が心配して来てくれた。
皆が心配して来てくれたと思うと、急に辺りが真っ暗な雲に包まれ激しい雷が轟いた。
すると雷が落ちる度に、人のような形となり私達はその軍勢に取り囲まれた。
そして一際激しい雷が落ちると、獅子に乗って武装した人が現れた。
その瞬間雲が晴れ、私達は天狗の軍勢に取り囲まれている事に気がついた。
「撫子、心配するでない。わしら三代目の、総大将じゃ」
まさか、総大将が自ら来たの?
しかも、石楠花が三代目?
そう言えば美男の龍が「我が子を、そなたの元へ行かせる」と言った。
そして召喚すると、ブルーローズが現れた。
もしかして、石楠花は八天狗の一人である英彦山豊前坊の孫なのかもしれない。
「石楠花、そうなのですか?」
「うむ。見た目は冷たく見える美女じゃが、本当は女子には優しいのじゃ」
私が聞きたかった事と違いましたが、三代目総大将が怒っていないことは分かりました。
「アイタッ! こりゃ! 治朗坊、何をするのじゃ!」
石楠花と三代目総大将の事を話していると、クールビューティーと言っても良い、凛とした雰囲気を持つ美しい女性が、石楠花の頭を拳骨で軽く殴った。
なのに、もの凄い音がした。
「豊前坊、口を慎みなさい!」
石楠花が涙目で頭を摩っていると、グラマーと言っても良い、豊満で色気のある女性がやって来た。
そしてグラマーな女性は、石楠花の頭を撫でだした。
「治朗坊ちゃん、だめよ。豊前坊ちゃんは、この子達とこの国を救ったのよ。大目に、見てあげてね」
クールビューティーな女性は、三代目治朗坊さんなんだ。
「僧正坊は、豊前坊に甘いですね。ですが、私も少し厳しすぎました」
グラマーな女性は、三代目僧正坊さんなんだ。
三代目僧正坊さんが言うには、どうやら三代目治朗坊さんは、石楠花の事を一番心配していたようです。
殴ったのは、目上に対する礼儀と言葉使いを何度も教えているのに、石楠花が怠っていたからだそうです。
先ほど、コッソリ教えてくれました。
姉妹のように仲睦まじくしている石楠花達を見ていると、獅子に乗って武装した総大将が私の元へやって来た。
「撫子、妾達は其方達を初めから見ていた。それは、妾達が其方に力を貸しても良いか判断する為である」
総大将は、私が大地を守り仲間達と共にオークオーバロードを討ち滅ぼした全てを、事細かく見ていたそうです。
そしてオークオーバロードを倒せないと判断した時、天狗の軍勢で助けようとしていたそうです。
その事を、話してくれました。
「其方は見事、妾達の信頼を得た」
そう言って私に、七つの羽と刀を渡してきた。
「これは妾達の信頼の証、受け取るが良い」
この大天狗の羽は、私のレベルが上がるにつれて羽団扇に吸収されるそうです。
そして全ての羽を吸収した時、私は神通力を自由に使いこなせるようになるそうです。
刀は危機的状況だと判断して掲げると、天狗の軍勢が私のMP量に応じて助けに来てくれるそうです。
私に説明し終えると、天狗の軍勢は去って行った。
数日後、私達は話し合いを設けた。
今回の様に魔物と魔法陣が複数現れた時、もし事前に親衛隊の皆に記憶が有れば、被害が縮小されたのではないかと考えたからです。
そして向日葵様に、次から騎士団の記憶を改竄しないよう求めた。
すると上位神が現れ、限られた一部の者だけ改竄しない事となった。
その一部の者とは、親衛隊副隊長の朝熊君、親衛隊長補佐官の桂樹君、花ちゃん、欄音ちゃん、百合愛ちゃん、美桜ちゃん、椿来ちゃんの七人です。
そして二週間後、危惧していた魔法陣が再び複数現れた。
ですが記憶を一部の者に残した事で行動が早まり、魔物が魔王化する前に魔法陣を破壊する事が出来た。
ですが月が経つにつれ、複数現れる魔法陣に悩まされていた。
「薺君、複数現れる魔法陣の出現をどうすれば察知できるでしょうか?」
私は薺君と記憶を有している子達と集まり、話し合っていた。
「姫、向日葵様に相談してみませんか?」
確かに薺君の言うとおりですが、わざわざ向日葵様の手を煩わせても、突然出現する闇の魔法陣に手を焼いているのは、向日葵様も同じでした。
「花も、そう思うよ?」
花ちゃんは朝熊君の膝に座って、背もたれにしていた。
「だよな、花」
朝熊君は、その行動を気にもしていません。
しかも、子猫を撫でるように花ちゃんの頭を撫で始めた。
見ているこっちが、恥ずかしいです。
実はオーガとオークが町に溢れかえっていたあの時、朝熊君が命がけで花ちゃん達を守った事が始まりだそうです。
花ちゃんの背の高さは小学生の頃と変わらないのですが、中学生になり急激に胸が成長。
胸が成長したことで、他校の男子からも注目を浴びるようになった。
そして魔物の魔王化を阻止した時に、二人の心に変化が有ったそうです。
それから、二人は恋仲の様に接する事が増えた。
ですが、まだ恋人では無いそうです。
私は別に良いのですが、周りの子達の視線が注意しろと言ってくる。
「……えっと、花ちゃん?」
ですので、それとなく注意しました。
薺君と桂樹君は周りの子達を見ないので、気にもしていません。
「撫子ちゃん、どうしたの?」
花ちゃんが、小首を傾けました。
「なぜ、朝熊君の膝の上に座っているのですか?」
私が指摘すると、周りの子が立ち上がった。
「「「「そうよ! 花ちゃん、見せつけないでよ!」」」」
欄音ちゃん、百合愛ちゃん、美桜ちゃん、椿来ちゃん達の声が揃いました。
朝熊君がいないときは、女の子達は仲が良い方なのですけれどね。
実は欄音ちゃん達もあの時、朝熊君の行動に四人とも心を奪われたそうです。
ですが、仲が良い花ちゃんとイチャイチャしている事が我慢できなかったようです。
結局四人は、怒って帰って行きました。
二人の行動は、思春期の女の子達にはイライラ来るようです。
「あら、帰っちゃった。花、悪いことしてないのに」
「だよな、花」
二人の心境はよく分かりませんが、友人なのでこれ以上言えません。
それに、これ以上言うと薺君と私の仲を言ってくるのです。
昨日と同じで、結局複数現れる魔法陣の対処は保留となった。
それよりも、花ちゃん達の事を何とかしないといけないようです。
私は、久しぶりに息抜きを提案する事にした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




