10
身を隠した瞬間、私達を見失ったオークオーバーロードは、空に向かって様々な魔法を放ちだした。
そして魔法が放たれる度に、魔法陣から無尽蔵に現れるオークを吸収していた。
やはり魔法陣をどうにかしないと、私達に勝機は訪れません。
せめて、オークオーバーロードの魔法障壁を破壊出来る力が私に有れば……。
そう思っていると、いつの間にか私の両腰に三本の剣が有る事に気がついた。
両腰に、三本の剣……だけど、ブルーローズが行ったのに薺君に何か有った何て信じられない。
これは、違う切っ掛けで発動した鬼神化?
そう思って薺君のHPを見ると、10しか残っていない事に気づいた。
後一撃でも攻撃されると、死んでしまう。
私はこの時、薺君が押し潰されたときの事を思い出した。
「イヤッ……」
叫びそうになった私の口を、急に石楠花が押さえた。
「これ、撫子。内側から叫ばれると、大気と同化しておる神通力が解けてしまうじゃろ。心配せんでも、良い。わしの代わりに、水神が行ったのじゃ。薺が例え倒されたとしても、復活させおるわ」
すると、私の心の中でブルーローズから「撫子、心配せずとも良い。我がいる限り、薺が死ぬことは無い」と聞こえて来た。
次の瞬間、薺君のHPが最大値まで回復した。
それと共に、レベルが上がっている事と、ヘイズスターバーストのHPが残り700しか無くなっている事に気がついた。
「ヘイズスターバーストまで?」
思わず言葉を漏らすと、石楠花が腕を組んだ。
「あ奴らは、わしらの様に魔王に近き存在とでも、やりおうたのじゃろう」
ヘイズスターバースト達の事を心配していると、「撫子姫、我らは無事だ。同士は倒されたが、腕輪に戻り英気を養っているだけだ。こちらの町は、もう問題無い。今から、我らもそちらへ向かう」と聞こえて来た。
ヘイズスターバーストと話を終えると、石楠花が私を見上げていた。
「それより撫子、その姿は何じゃ?」
そう言えば、石楠花はこの能力のことを知りません。
「これは、薺君に危機が迫った時に発動する鬼神化です」
私は腰に携える剣を見て、そう言いました。
「鬼神化、じゃと? ……それは、神器か?」
すると石楠花が目を細めて、私の腰に携える剣を見た。
剣の能力を、見極めようとしているのかもしれません。
「神器かは知りませんが、5分間、氷・火・風・地・雷・光・時の力を、MPを消費すること無く、無限に使用する事が出来ます」
私が知っている事だけ伝えると、顎に手を添えて考えだした。
「……しかも、魔力と覇気が愛宕山の総大将のように桁外れじゃのぉ。つまり、5分間はわし以上の能力が出せるのか」
「よく分かりません」
素直に鬼神化の事を伝えると、石楠花が私の身体を触り出した。
鬼のように、筋肉質になったと思ったのでしょうか?
「ふむ……金色の角以外は、変わっておらぬな」
石楠花に角を触られる度に、擽ったい気持ちになる。
吐息を漏らすと、石楠花に角を触るのを止めてくれた。
「よし、問題なかろう。わしは、今が勝機とみた! 撫子、オークオーバロードを蹴散らすぞ!」
「はい」
和弓をアクセサリーに収納し、二つの剣を両手に持つと氷と風と火と地のアイコンが点灯した。
その瞬間、氷と風の技の他に火と地の技の名が表示された。
鬼神無双 氷刃――天女の涙のレベルに比例し、自在に動く氷剣を呼び出し敵を攻撃し凍らせる。
鬼神無双 風刃――天女の涙のレベルに比例し、自在に動く風剣を呼び出し竜巻となりて敵を切り刻む。
鬼神無双 火刃――天女の涙のレベルに比例し、自在に動く火剣を呼び出し敵を攻撃し燃やし尽くす。
鬼神無双 地刃――天女の涙のレベルに比例し、自在に動く地剣を呼び出し地割れに飲み込み敵を潰す。
鬼神分身 体――天女の涙のレベルに比例し、鬼神の分身体を作り出す。
鬼神融合無双 無――天女の涙のレベルに比例し、二つ以上の属性を融合して数多の敵を無に帰す。
鬼神融合無双 滅――天女の涙のレベルに比例し、二つ以上の属性を融合して一体の敵を滅する。
天女の涙のレベルが2になった事で、新たな技を習得したようです。
残り4分00秒しか有りませんが、この能力ならオークオーバーロードを倒せるかもしれません。
私達を見失っているオークオーバーロードは、未だに魔法を無差別に放っている。
つまり、あのまま戦っていたら危なかったと言うことです。
「撫子、わしが囮になる。その力を使って、魔法障壁ごと赤い石を破壊するのじゃ」
「はい」
私達は姿を現し、再びオークオーバーロードと戦う事となった。
オークオーバロードが私達を見つけると、笑みを浮かべ眼の色が赤く輝いた。
その瞬間、先ほどまで無差別に放っていて、どこかに行ったかと思われた魔法が全方向から襲いかかってきた。
まさか、放っていた魔法が襲ってくるとは思いもしなかった。
「むう! あ奴、これを狙っておったのか? じゃがわしも、ただ身を隠していたわけでは無い」
石楠花が空を見ると、羽団扇を掲げた。
「オークオーバロードよ、生憎じゃったな」
すると雲から雷が轟き、全方位から襲ってきた魔法を全て打ち消した。
身を隠している時も石楠花のMPが少しずつ減り続けていたのは、この為だったようです。
「グギィ!」
オークオーバロードが強烈な咆哮を上げたかと思うと、石楠花に狙いを定め、炎を集め出した。
そして次の瞬間、巨大な炎が弾け幾つもの火球が放たれた。
石楠花が避けつつ私から遠ざかると、火球が石楠花を追いかけた。
そして石楠花を取り囲むと、火球が弾け爆炎と爆風が空を覆い尽くす。
「【竜巻!】」
すると、石楠花が羽団扇を持って回転し巨大な竜巻を作り出し打ち消した。
しかしオークオーバロードは、更に火球を放ってきた。
すると、石楠花が私の『心に』語りかけてきた。
『「撫子、奴の背後に回れ。そしてわしが引きつけている間に、赤い石を破壊するのじゃ!」』
『「はい!」』
私は爆炎と爆風に紛れる様に、鬼神化の能力を使用し一気に加速。
そして爆炎と爆風を避けて突っ切り、オークオーバロードの後方上空に来た。
石楠花に攻撃を集中しているので、私に気づいていない。
赤い石を破壊出来るのは、今しかない。
「【鬼神無双 地刃!】」
轟音が轟く中、アイコンに表示されている技を叫ぶ。
すると、左手に持つ剣から百本の剣が出現し後方に浮遊した。
以前技を使用した、氷刃の時とは比べものにならない剣の数。
大地を切り裂いて、赤い石を押し潰そうとしたのですが、流石に過剰すぎる。
この量を放つと、大地が崩壊してしまう。
四本の地剣に指示を出し、大地が崩壊しない程度に石を破壊するしかない。
そう考えていると、オークオーバロードが私に左手を向けて火炎弾を放ってきた。
なぜ、気がついたの?
「シューシャー!」
「ヴゥーヴゥーー!」
不思議に思っていると、姫立金花とインカルナタが雷と風刃で火炎弾を破壊してくれた。
二匹にお礼を言うと、私はもう一つの剣で防御する事にした。
「【鬼神無双 氷刃!】」
氷剣を出して守護させると、百本出現した。
そうか。
天女の涙が、レベル2になったから増えたのね。
しかしオークオーバロードは、石楠花と私へ同時に火炎弾を放ってくる。
折角、石楠花が隙を作ってくれたのに腑甲斐ない。
だけど、一体どういうカラクリ?
氷剣を操作して火炎弾に打つけると、凍りついて地面に落下。
近くで砕け散ると、オークオーバロードの後頭部に一つ目が現れた。
「えっ?」
私は、考えを改めた。
オークオーバロードは、魔王。
常識は、通用しないのだ。
後頭部の目が大きく開かれると、両脇の下から二本の手を出現させた。
そしてその両手を使い、私に向かって幾つもの火球を放ってきた。
火球は弾ける前に凍らせないと、爆炎と暴風が吹き荒れてしまう。
「氷剣よ、舞いなさい! 【氷禍の嵐!】」
火球が弾ける瞬間、百本の氷剣が次々と切り裂き一瞬にして凍らせた。
それを、姫立金花とインカルナタが攻撃して砕いた。
するとオークオーバロードが私の方へ向き直り、石楠花に背を向け四本の腕を交差させた。
その瞬間、私に向かって巨大竜巻を放ってきた。
私は地剣を放ち、巨大竜巻を切り裂くと巨岩が巨大竜巻を押し潰した。
すると、背を向けられた石楠花が羽団扇を掲げた。
「こっちを向かんか、オーク! わしの魅力に、平伏すのじゃ! 【大岩石!】」
羽団扇を掲げた空から大岩が現れたと思うと、オークオーバロードに向かって降下。
しかし、オークオーバロードは火炎弾を頭上に放ち大岩を打ち砕いた。
鬼神化が解けるまで、残り3分30秒。
迷っている暇は、ありません。
私が調節して、大地が崩壊しないようにすれば良いだけです。
「地剣よ、魔法陣を破壊せよ!」
地剣で地面を切り裂こうとした瞬間、オークオーバロードが四方に動き、大口を開け四つの赤い石を飲み込んだ。
その瞬間、四本の手が赤黒く光りオークオーバロードの胸部に魔法陣が現れた。
私は地剣が大地に触れる瞬間、停止させ後方に戻した。
「奴め、魔法陣と同化しおった」
石楠花がそう言うと、オークオーバロードが空に飛んで来た。
そして、これで対等になったとでも言うように私達へ牙を見せた。
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