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【薺SIDE】
ブルーローズが巨大な水の輪を前方に作り出すと、僕達の方を向いた。
「薺、水の龍穴を使って一気に加速する!」
水の龍穴は、龍穴と同じ効果を持ち、潜ると風と大地と水の力を得る。
そして繋がる空間を龍脈とする事で、目的地まで数十秒で行ける様になるそうだ。
但し、水の龍穴の入口と出口にMPを250ずつ使用し、人を連れて行く場合は一人につきMPを100使用するので、ブルーローズだけの場合は空気中の水の中を伝う瞬間移動を使用する方が早いらしい。
「ああ、よろしく頼む」
返事をすると、ブルーローズは花達を見た。
「花達は、口をしっかり閉じておれ!」
「うん。欄音ちゃん、椿来ちゃん、百合愛ちゃん、美桜ちゃん、花の様に、お口チャックだよ!」
花達は、ブルーローズに言われるまで五人で話していたからな。
「「「「花ちゃんに、それを言われたくはありませんわ」」」」
「花、口を閉じないと危ないぞ」
四人に指摘された花の口が開いていたので、朝熊が指摘した。
「「「「朝熊君」」」」
「欄音も」
「椿来も」
「百合愛も」
「美桜も」
「「「「口を、閉じましたわ」」」」
「フハハッ! ほんに、撫子の友人は賑やかで良い」
「ミュウミュウ」
ブルーローズが笑いイベリスが同意するように鳴くと、水の龍穴を潜った瞬間一気に加速した。
凄まじいスピードなのに、風圧や息苦しさを感じない。
しかも、水の龍穴を潜った瞬間に、湧き上がる力を感じた。
これは、龍穴と龍脈に似た力を得ることが出来る水の龍穴の能力か。
これなら、いつも以上の力が出せる。
僕達の戦力は、ブルーローズとイベリスを入れて9名。
水の龍穴で、ブルーローズはMPを1400使用した。
でも、もう既にMPを1000回復している。
水の龍穴は、MP自然回復力も急激に向上してくれるようだ。
ブルーローズに確認すると、水の龍穴を出た後も暫くは効果が続くようだ。
「皆、作戦は先ほど伝えたとおりだ。水の龍穴を出たら、直ぐに戦闘となる。攻撃出来るよう、武器を構えていてくれ」
「「「「「「はい」」」」」」
作戦と言っても、やることは変わらない。
花達に後方から支援攻撃してもらい、朝熊とイベリスには花達を守護してもらう。
そして、僕の技とブルーローズの水の力で畳み掛けるのだ。
主戦力の情報を見ていると、レベルが72から75に上がっていることに気がついた。
剣鬼がLV5になった事で、与えるダメージを2.5倍する事ができ、残像を最大で二つに増加させる事が出来る。
これなら、二刀で使用すると最大で六閃。
ブルーローズに水鏡を使用してもらうと、最大で十二閃となる。
そして忍者がLV5になった事で、光属性が追加された。
デコイはレベル72になった時、LV2になり二つ同時に出せるようになった。
瞬歩と合わせれば、攪乱も出来そうだ。
僕とブルーローズは技の相性が良いので、二人の能力を掛け合わせると凄まじい攻撃が可能となる。
これらを使用し、一気にタイラントオーガを倒して姫の元へ向かえばいい。
策を講じていると、ヘイズスターバースト達のHPとMPが減り始めた。
どうやら、ギガントオーガと交戦し始めたようだ。
交戦し始めた瞬間、三十体のスケルトンナイトのHPが一気に500減り、三十体のスケルトンアーチャーとメイジのHPが消えた。
スケルトンナイトは攻撃スキルは無いが、MPを消費して防御力を高めることが出来る。
それを考えると、ギガントオーガはスケルトングラディエーターと同等、もしくはそれ以上の攻撃力を持っているという事になる。
そして次々と、スケルトンアーチャーとメイジの数が減っていった。
一体どのような攻撃をされているかは不明だが、ヘイズスターバーストとスケルトングラディエーターのHPは残っている。
ただ減ってはいるようで、イベリスの能力のお陰で、減りが少なく見えるだけのようだ。
ヘイズスターバーストから聞いた話だが、本来のあやかしのHPとMPや能力は表示されているものではないらしい。
姫のHPとMPや能力に比例しているため、本来よりかなり低くなっている。
それと、あやかし召喚士レベルと、あやかしの宝玉レベルが釣り合った時に、本来のHPとMPや能力に変更されるそうだ。
その代わり利点として、例え強敵に倒されたとしても、姫の中でMPを戻して再召喚されれば復活する事が出来るそうだ。
ギガントオーガはかなり強敵のようだが、ヘイズスターバースト達を信じて任せるしか無い。
「薺、各位に清水の水鏡を付与する」
「ブルーローズ、ありがとう」
お礼を伝え木刀と脇差しを構えると、水の龍穴から出た。
すると周りは無差別に攻撃されたオーガの死骸が有り、その上にタイラントオーガが座っていた。
「僕は、このまま飛び降りる。ブルーローズ、花ちゃん達を後方へ」
「うむ。薺、我も直ぐに戻る」
「はい、お願いします」
「薺、花達のことは俺に任せろ!」
「ああ、朝熊に任せる」
ブルーローズから飛び降りると、タイラントオーガが死骸を幾つも投げてきた。
「デコイ!」
デコイを使用して、一体囮とする。
そして、デコイにも死骸を切り裂きながら降りるように指示を出した。
死骸の上に着地すると、後方から属性を纏った矢が放たれた。
デコイは死骸を切り裂きながら、まだ降りて来ていない。
タイラントオーガは、一体どれだけの同族を倒したんだ?
飛び降りた僕とデコイの方が、遅くなるなんて。
しかも、死骸が多すぎて視界と足場が悪い。
「【水鏡 居合い二閃 夜光斬!】」
木刀を左側に添えて、一気に抜いて斬撃を放った。
すると、死骸を斬撃が突き進み一気に視界が晴れた。
しかし見えたのは、タイラントオーガがデコイを切り刻んでいる所だった。
こんなにも早く、デコイが倒されてしまうとは思いもしなかった。
デコイのHPは、僕と同じ610ある。
しかも、目の前に来た魔物を倒すように指示を出している。
つまり、簡単には倒されないはずなのだ。
それに少しの間視界が奪われたとは言え、タイラントオーガは僕よりも早く動けるとは思えない。
もし僕より早く動けるのなら、ジャンプした時点で足下に横たわる死骸が吹き飛ばされていたはずだ。
ではなぜ、吹き飛ばされなかったのか?
しかも、同じ位置にいるように見える。
つまりタイラントオーガは、そこから動かず何らかの能力を使用し、デコイの攻撃を無効化させ、引き寄せて攻撃した。
そう考えるしか、辻褄が合わない。
切り刻まれたデコイが消滅すると、椿来ちゃんと美桜ちゃんが水鏡の能力を利用して四本の矢を放った。
その矢が、タイラントオーガに向かって突き進む。
しかし、僕の頭上より5m先で消えた。
そして次の瞬間、四本の矢がタイラントオーガの爪で切り裂かれた。
欄音ちゃんと百合愛ちゃんは、次の矢を射ろうと準備していたが、花ちゃんが手で止めた。
もしかして、この先5mに何かあるのか?
そう考え近づこうとすると、後方から飛んできたブルーローズに止められた。
「薺、それ以上奴に近づくな! これは恐らく、奴のテリトリー能力だ。花達に二射目を射させ、確認したので間違いない。近接攻撃者や遠距離攻撃は、テリトリーに入った瞬間取り込まれる。取り込まれた瞬間、僅かな時間のズレが生じる。奴はズレが生じた時の中で、破壊出来るものを見極め、破壊出来るものであれば、強制的に引き寄せ切り裂くのだ」
つまりズレが生じる事で、その僅かな時間だけ時が止まっているのか。
タイラントオーガは、時が止まった僅かな時間を利用し攻撃する。
デコイが何も出来ずに、倒されるわけだ。
「タイラントオーガを、倒せるでしょうか?」
「薺、よく見よ。奴は攻撃が止むと、あのように座ってMPを回復する」
ブルーローズ曰く、タイラントオーガは同族を数多く倒した事で、テリトリーという特殊な能力を得た。
テリトリーの詳細は不明だが、使用するとMPを使用する。
その事から、タイラントオーガのMPを無くせばテリトリーが使用出来なくなる。
そして見たところ、同族を倒すだけで吸収せず放置している。
吸収せずに放置している事と、MPを回復させている事から、魔王化はしていないと言っていた。
ただ、タイラントオーガのMP総量とテリトリーのMP消費量が不明。
つまり、迂闊に近づけないのだ。
「我が海水陣を使用し、遠距離から攻撃をしかける。薺はその間、奴の隙を見極めよ」
「はい」
タイラントオーガのテリトリーを取り囲む様に、四方八方からブルーローズの激しい攻撃が始まった。
しかも先ずは試しにと言って、水竜巻・大津波・拡散超圧縮海水弾・超圧縮海水柱・超圧縮海水刃・超圧縮水 誘導放出 超加圧圧縮破壊放射(ギガ ウォーター ジェット デストロイ レーザー)を放っていた。
その中で水量が明らかに多い、大津波・拡散超圧縮海水弾・超圧縮水柱・超圧縮海水刃・超圧縮鉄砲水・ギガ ウォーター ジェット デストロイ レーザーはテリトリーに入れた瞬間、タイラントオーガの直ぐ後ろから射出されていた。
もしかすると、強力すぎて対処しきれないとタイラントオーガが判断した攻撃を行えば、背後を取れるかもしれない。
「薺、どうだ? 奴の、弱点が見えたか?」
どうやらブルーローズは、倒せる策が有るようだ。
安全策を取るなら、ブルーローズに何度も攻撃してもらい、MPを消費させれば良い。
しかしブルーローズの嫌な予感と、石楠花のMPが減っていっているのが気になる。
「はい」
僕はブルーローズに、作戦を伝えた。
すると、危険すぎると言って断った。
しかし、石楠花のMPの事を伝えると顔が険しくなった。
僕の案とは、ブルーローズの攻撃の中に潜り込み、タイラントオーガの背後に出てきた瞬間に攻撃をするというもの。
これはブルーローズの能力を信じなくては出来ない攻撃方法で、タイラントオーガが対処しきれないと仮定した博打のような作戦だ。
でもブルーローズは、「分かった。即死しなければ、我が必ず救う」と言って頷いてくれた。
そして、ウォータージェットカッターを水の羽衣として僕の服に付与した。
「これは、我であれば薺を守る防具として使える」
そして更に、氷の二重障壁も鎧として付与してくれた。
氷の鎧は、タイラントオーガに認識させる為のようだ。
つまり、水の羽衣が隠された防具というわけだ。
しかし、ズレが生じた時の中で防げるかが分からないそうだ。
でも僕はブルーローズを信じ、タイラントオーガに仕掛ける。
「薺、行くぞ! 水泡! 海水陣、解放! 【浄化の大津波!】」
ブルーローズが、僕を気遣って空気の泡を口元に作ってくれた。
これなら、一呼吸出来る。
そして大津波にのまれると、タイラントオーガを浄化の大津波が襲いかかった。
その瞬間暗転したかと思うと、腹部に痛みが走りHPが10まで減った。
氷の鎧が貫かれ、オーガの爪が水の羽衣さえ貫通していた。
苦痛軽減中が有っても、気を失いそうになる。
僕の読みが、甘かった。
だけど、水の羽衣でタイラントオーガの手が切り裂かれた事で即死を免れた。
チャンスは、今しか無い。
「【水鏡 二刀流残像十二閃 鏡花水月連斬!】」
タイラントオーガには二刀に見えているだろうが、実際は十二の斬撃が切り裂いている。
だから、決して防ぐことが出来ない連続する斬撃だ。
198あるMPが無くなるまで、切り刻む。
大津波が消え去った時、タイラントオーガは完全に消滅していた。
駄目だ、意識が薄れてきた。
「くっ! でも、赤い石を破壊しなくては、また復活してしまう」
でも、身体が言うことをきかない。
僕は、木刀と脇差しで身体を支えた。
すると、水の羽衣が僕の身体に浸透していった。
「薺よ、見事であった。心配するな、赤い石は我が破壊しておいた」
傷口を見ると、綺麗に塞がっていた。
ブルーローズが、回復してくれたようだ。
これで、町の魔法陣化も無くなるだろう。
HPを見ると、616に増えてレベルが76に上がっていた。
ヘイズスターバースト達を見ると、スケルトングラディエーター達が倒され、ヘイズスターバーストも、5730あったHPが残り700となり、1880あったMPは残り50となっていた。
どうやら、あちらもギガントオーガを倒せたようだ。
立ち上がると、朝熊と花達が第二大隊の三部隊を連れてきた。
どうやら、近くにいた援軍を連れて来てくれたようだ。
僕達は第二大隊に後のことを任せ、ブルーローズに水の龍穴を使用してもらい、姫の元へ向かう事にした。
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