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【薺SIDE】



 朝熊(アサマ)達を救出し、残りの赤い石を破壊するため出発しようとすると、ヘイズスターバーストが別の町に新たな赤い石が有る事を教えてくれた。

 その為、急遽作戦会議が行われる事となった。



「薺殿、この町の残りの石はスケルトングラディエーターで事足りる。我らは、他の町の魔法陣を守護するオーガを倒すべきだ」

「やはり、他の町にも有りましたか」

「うむ」



 ヘイズスターバーストによると、青い隻眼のオーガは攻撃力は有ったが、特異的な能力は無かったようで、技を使用すれば簡単に倒せたそうだ。

 寧ろ、先ほど倒したオーガの方が特殊だったらしい。

 先ほどのオーガの事を考え、念の為にスケルトングラディエーターを二体行かせたが、会議が終わる頃には倒せるだろうと言っていた。


 僕はスケルトングラディエーターに、この町の赤い石の破壊を任せることにした。

 会議中に、オーガの群れが襲いかかって来た。

 一旦会議を中止してオーガの群れに眼を向けると、この町の中央を守護させている近衛騎士団第一大隊の一部隊である、第一大隊第二部隊がその群れを追いかけて来た。

 即時、僕の部隊がオーガの群れを討伐すると、第一大隊第二部隊長が報告にやって来た。



「親衛隊長、ご報告致します。町の中央付近より出現していたオーガが、ほぼ西側で出現するようになりました。現在、第一大隊第一部隊~第五部隊を西側に配置。中央を第六部隊~第十部隊に守護させています。第一大隊において、重傷者無し。負傷者も、姫様のあやかしのお陰で、直ぐに復帰出来ております」



 恐らく、西以外の赤い石を破壊した事で魔法陣が不安定になり、中央ではなく西側でオーガが出現するようになったのだろう。



「第一大隊第二部隊長、報告ありがとう」

「はっ!」



 第一大隊第二部隊長の報告が終わると、第一大隊第一部隊長が大人の人と一緒に車に乗って駆け付けた。

 どうやら、第二部隊長から僕がここに居ると連絡を受けたようだ。

 第一大隊第一部隊長の報告の中で、先ほどのシールドホーンオーガの話が聞けた。

 シールドホーンオーガは、元々普通のオーガだったのだが、他のオーガのように攻撃よりも逃げる事に集中していたようだ。


 そのオーガは何度も近衛騎士に攻撃されたが、ギリギリの所で何度も逃げのびた。

 しかも、逃げる際に他のオーガを倒して逃げていたらしい。

 そして第一大隊第一部隊が西に追い詰め発見した時、同族を喰らっていたそうだ。

 何体の同族を喰らったかは不明だが、急に苦しみだしたかと思うと、(ツノ)が四本生えたオーガに突然変異したらしい。


 そしてその場から、更に西へ逃げたようだ。

 だから朝熊(アサマ)の報告で、他のオーガが初めは周りに居なかったと言っていたのか。

 もしも喰らい続けていたら、更に進化していたかもしれない。

 僕は第一大隊第一部隊長に、朝熊(アサマ)から報告を受けた突然変異のオーガについて情報と警戒を伝えた。


 ヘイズスターバーストと会議を再開すると、「我らは、この町の南に位置する隣町へ行く」と言いだした。

 そこには、ギガントオーガが魔法陣の南に位置する一つの石を守護するように居るようだ。

 他の三つの赤い石は、普通のオーガが周りに居るだけらしい。

 ヘイズスターバーストの大きさを考えると、相手として丁度良いらしい。


 赤い石を守護していたであろう守護オーガが他に三体居ないという事は、守護オーガ同士が戦い勝利したものが突然変異した可能性が高い。

 もし周りに居る普通のオーガを倒され喰らわれると、更なる進化をするかもしれない。

 ギガントオーガは、一刻も早く倒さねばならないだろう。



「薺殿は、この町の西に位置する隣町を任せる」



 ヘイズスターバーストが言うには、そこにはタイラントオーガが魔法陣の西に位置する一つの石を守るように一体だけ居るようだ。

 つまり、タイラントオーガも守護オーガの突然変異だ。



「しかし、侮るな。奴は、得体が知れぬ」



 名前に暴君と付いているように、近づくものを同族で有ろうと無差別に倒しているらしい。

 タイラントオーガも、ギガントオーガ同様、早く倒さねばならないようだ。

 そして町の東に位置する隣町には、ファイアオーガが四体赤い石を守護していた。


 でもブルーローズがここへ来る際に、ファイアオーガと赤い石を全て破壊したそうだ。

 ヘイズスターバーストと作戦会議をしていると、3m程の大きさになったブルーローズが花ちゃんを乗せて空から降りて来た。

 どうやら、僕達の会議の様子を空で密かに聞いていたようだ。



「薺、ヘイズスターバーストが申した通り、我が海水を補充する序でに、東の魔法陣諸共破壊しておいた。残りの雑魚は、薺の部隊に任せても良いか?」

「ブルーローズ、ありがとう。残りのオーガは、第三大隊に任せてもらって問題は有りません」

「うむ」



 ブルーローズが頷くと、花ちゃんがブルーローズに抱きついた。



「ブルーローズちゃん、偉いね」

「我に、火は通じぬからな。弱いオーガなど、容易くひねり潰してやったわ」



 すると、ブルーローズは自慢するように胸を張った。

 姫の親友である花ちゃんには、ブルーローズはかなり気を許しているようだ。



「花、ブルーローズに乗られると俺の足では追いつけない。悪いが、降りてくれ」



 そして、花ちゃん達を追いかけるように朝熊(アサマ)欄音(カノン)ちゃん達がやって来た。



「「「「花ちゃん!」」」」

欄音(カノン)も」

椿来(ツバキ)も」

百合愛(ユリア)も」

美桜(ミオ)も」

「「「「ブルーローズちゃんに、乗りたいです!」」」」



 作戦会議中にどこに行っているのかと思っていると、ブルーローズと花ちゃんを追いかけていたようだ。

 神出鬼没な花ちゃんに、朝熊(アサマ)をつけて正解だ。

 そう思っていると、ヘイズスターバーストが僕の顔を見た。



「薺殿、つまり残すは南と西と言うことだ」

「そのようですね。でしたら僕の部隊を手分けさせ、守護オーガ達が居ない場所に有る赤い石を破壊させに行かせます。地図に、示して頂いて宜しいですか?」

「うむ、西は任せる。だが、南は同胞が行くから良いぞ」

「はい。では、お願いします」



 第二大隊と合流させる為に、部隊を再編成していると、スケルトングラディエーター達が帰ってきた。

 早いな……往復を、あのスピードで走って来たのか。

 人と違って体力を考えなくて良い事と、車と違って道無き道を行けるのが強みだな。

 僕達では、まず無理だ。

 南の町をヘイズスターバースト達が行くと言ったのは、その事も織り込み済みだったようだ。



「薺殿、この町の赤い石は全て破壊した。恐らく、町の魔法陣化も解消したであろう。残りは、残存したオーガだけだ。我らの同胞も使い、一気に倒すか?」

「いえ、それには及びません。第一大隊だけで、事足りるので」



 姫のあやかし達だけに、負担はかけさせられない。

 僕達も、姫の騎士として示さねば。



「ならば、我らは先に南へ向かう」

「お願いします」



 ヘイズスターバースト達はそう言って、南を守護するギガントオーガの元へ向かった。

 再編成し終えると、ブルーローズに乗って花達がやって来た。



「薺、編成は終えたか?」

「はい」

「では、我の背に乗れ。部隊は、我らの後で来させれば良い。嫌な、予感がするのだ。タイラントオーガを早く倒し、撫子の元へ行かねばならぬ」

「えっ? では、少しお待ちを……」

「うむ」



 直ぐに向かいたいところだが、その前に僕の代わりになる者を選定しなくてはならない。

 でも、丁度良いところに適任者がいた。



「第一大隊第一部隊長、ここへ」

「はっ!」

「悪いが、桂樹(カツラキ)に一任するが良いか?」

「はっ、お任せ下さい」



 桂樹(カツラキ)は直ぐに第二大隊第一部隊長へ連絡し、赤い石の破壊の案を出していた。

 やはり、行動が早い。

 親衛隊副隊長の座を、朝熊(アサマ)と争っただけはある。



(ツキ)桂樹(カツラキ)第一大隊第一部隊長、君は今から僕の代わりに、指揮権を持った大隊長に任命する。僕はタイラントオーガを倒した(ノチ)、ブルーローズ達と共に直ぐ姫の元へ向かう」



 伝え終わった後、再度桂樹(カツラキ)の顔をよく見て言葉として強く伝える。



桂樹(カツラキ)大隊長、後のことは任せる」



 すると、桂樹(カツラキ)も応える様に僕の眼を見て敬礼した。



「はっ! 薺親衛隊長、ご武運を」



 僕はブルーローズの背に乗り、朝熊(アサマ)と花ちゃん達の部隊と共に、先行してタイラントオーガの元へ向かう事となった。



        ※ ◇ ※



【撫子SIDE】



 巨大な火炎弾が迫ってくると、石楠花(シャクナゲ)が庇うように避けてくれた。

 そして、羽団扇で仰ぐとオークオーバーロードの周りに塵旋風(ジンセンプウ)が起きた。

 切り刻んだかと思われたが、オークオーバーロードが右手と左手に纏い付く禍々しいオーラで塵旋風(ジンセンプウ)を散らせた。



「生まれたばかりの魔王のくせに、やりおるのぉ。わしの塵旋風(ジンセンプウ)を、両手に溜めた魔力で散らせおったか。じゃが、これはどうじゃ」



 石楠花(シャクナゲ)が右手で羽団扇を掲げると、空に渦を巻きながら分厚い雲が漂い雷が轟きだした。

 そして石楠花(シャクナゲ)が私を見ると、和弓(ワキュウ)を指さした。

 私は頷いて、『心に届く石楠花(シャクナゲ)の言葉』に耳を傾けた。



『「撫子、わしの(ヒョウ)に雷の矢を合わせるのじゃ!」』

『「はい。雷の矢!」』



 私の和弓(ワキュウ)と能力を合わせる事で、石楠花(シャクナゲ)のMPをかなり軽減できるそうです。

 しかも、私の両肩には姫立金花(ヒメリュウキンカ)とインカルナタが居ます。

 二匹の能力と石楠花(シャクナゲ)の能力で、雷と風と火に係わる属性能力はMPを軽減し向上。

 水及び氷と土と光は、私と通じるあやかし達の能力でMPを軽減することが出来るそうです。


 なぜこのような事が出来るようになったのかというと、レベルが73から75に上がってあやかし連携LV1を取得していたからです。

 私達のレベルが上がっていたと言うことは、どうやら薺君達も魔物を倒し魔法陣を破壊したようです。


 そして女傑がLV5になったことで、与えるダメージが1.25倍になり、姫の聖域がLV5になったことで、1.35倍の恩恵を受ける事が出来るようになったのだ。

 因みに、私達のHPとMPはこのようになった。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

  撫子           :HP412:MP396

 姫のあやかし

  石楠花(シャクナゲ)          :HP3056:MP4512

  姫立金花         :HP764:MP1128

  インカルナタ       :HP764:MP1128

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――



 和弓(ワキュウ)に魔力で作り出した矢を添えると、分厚い雲から(ヒョウ)とは思えない巨大な固まりが顔を出した。

 すると、オークオーバーロードが両手に火を集め出した。

 分厚い雲から、数多の(キョ)(ヒョウ)が降り注ぐ。



「今じゃ、撫子! わしの(ヒョウ)と、羽団扇の旋風(センプウ)に合わせよ!」



 その(キョ)(ヒョウ)を、石楠花(シャクナゲ)が羽団扇で仰いだ。



「はい」



 私は、その(キョ)(ヒョウ)旋風(センプウ)に雷の矢を合わせた。

 すると、オークオーバーロードが両手の炎を合わせて巨大な火炎弾を作り出した。

 ですが、私達の方が早い。



「「【琥珀(コハク)雹災(ヒョウサイ)旋風(センプウ)(セン)!】」」



 石楠花(シャクナゲ)と合わせた琥珀(コハク)色に輝く渦が、オークオーバーロードに迫る。

 その瞬間、轟音と炎がまき散らされ辺りに爆風が起きた。



「撫子を守れ、羽団扇!」

「キュウーーン!」



 石楠花(シャクナゲ)とインカルナタの風で、私は守られた。

 しかし、辺りは爆風と炎で木々が燃え、土煙が視界を遮り、オークオーバーロードの姿が見えない。



石楠花(シャクナゲ)、インカルナタ、ありがとうございます」



 二人にお礼を言いましたが、石楠花(シャクナゲ)とインカルナタ達が無言で地面を見つめていた。

 まさか、今の攻撃で倒せなかったの? 

 私がそう思うと、インカルナタが風を集めだした。

 すると、姫立金花が先に仕掛けると言って毛を逆立てた。



「シャー!」



 姫立金花が土煙に向かって雷を放つと、雷が(ハジ)かれた。

 確か今の場所は、魔法陣が有った場所。

 でも、なぜ(ハジ)かれたの? 



「やはり火炎弾を放ちつつ、魔法障壁で魔法陣を防いでおったか」



 石楠花(シャクナゲ)がそう言うと、土煙が晴れてきた。

 すると、オークオーバーロードの姿が見えた。

 左腕の大半が消滅しているのに、不気味な笑みを浮かべている。

 魔法陣から、オークの群れを出現させるつもりでしょうか? 



「じゃが、魔力を大幅に削り左腕を奪ってやったわ」



 石楠花(シャクナゲ)がそう言うと、魔法陣からオークが多量に溢れ出てきた。

 しかし次の瞬間、オークの群れが消え去り左腕が再生された。



「むうっ! あ奴、魔法陣から出た同族を吸収し再生しおった」



 しかも、魔力も元に戻ったようです。

 魔力が戻ったオークオーバーロードは、今度はこちらの番だとでも言うように、火の矢・氷の矢・土の槍・風の刃・闇の蔦と魔法を次々と放ってきた。

 私達は、それを躱し続けた。


 無尽蔵に放たれる魔法は、源である魔法陣を破壊しない限り、こちらの攻撃は無駄だったからです。

 ですが空で躱し続けるには、石楠花(シャクナゲ)の神通力を使用し続け、MPを消費してしまうことになる。



「むうっ、忌々しい! 撫子、身を隠すぞ」

「はい」



 石楠花(シャクナゲ)が神通力を使い、私達は一旦身を隠すことにした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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