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 荷物を持ってマンションへ向かっていると、お姉さんを見かけた。

 そして私に気がいたお姉さんは、なぜか走ってやって来ます。

 サンダルなので半分転倒しそうになり、途中で壁に手をついて耐えていました。


 私も思わず走ろうかと考えましたが、両手に沢山の荷物を持っているので走れません。

 実は、向日葵の大袋にママから頂いたプレゼントを入れて一つの袋にしたのですが、お父様から沢山の花材を渡されたので両手が塞がっていたのです。

 通常花材は数点なのですが、今日はなぜか大きな花束だったのです。


 これって、花材じゃなくてお父様のプレゼントかな? 

 そう言えば、ママからプレゼントを貰っている時、花材置き場から慌てている音が聞こえていました。

 危なっかしく走るお姉さんを見て、慌てて花束を作るお父様の姿が思い浮かびました。



「先生ん()に行こうかと思てたんやけど、偶然会えて良かったわ」



 転倒しそうになっていたのに、笑っている姿はお姉さんらしいです。



「お姉さん、サンダルで走ると危ないですよ」



 ですが、私に会う度に走って来られても困るので注意しておきました。



「せやな? ほんま、途中でこけそうになったわ」



 注意しているのに、膝を叩いて笑っているので、またしそうな気がします。

 急ぐような用が、私にあるのでしょうか? 

 もしかして、また題材の衣装を着て欲しいのでしょうか? 



「えっと、お姉さん? 私に、何か御用ですか?」

「いやーな、大した用ちゃうねん。お得意さんが今日も来たんやけど、うちがだいぶ前作った創作フィギュアを見せてくれって言われてな。ほんで手渡したら、小さなケースに入れたんや。何やろかと思てたら、今度は撫子ちゃんに渡してって言われたんや」



 お得意様って、もしかすると向日葵のお使い様かな? 

 向日葵のお使い様なら、マンションのテーブルに置いてくれたら良いのに。

 また何か置いていくかもしれないと考え、テーブルには何も置かないようにしているのです。

 だけど、確認するまでは向日葵のお使い様なのか分かりません。



「お得意様がですか?」

「せやねん。撫子ちゃん()にも、仕事頼んでるって言ってたで。お代はお得意さんから貰ったさかい、気にせんでええよ」



 私の実家にも仕事を頼んでいる、お得意様? 

 お仕事を依頼してくるお客様は多いので、そのお得意様がどなたなのか不明です。

 私はお姉さんにお礼を伝えてフィギュアを受け取ると、早速見てみることにしました。

 すると、透明ケースの端に向日葵のマークが有りました。


 やっぱり、向日葵のお使い様だ。

 お姉さんに別れを告げた私は、マンションに戻ることにした。

 マンションに戻ってくると、私はまたフィギュアに驚かされた。

 髪の色が金髪になり、服装が可愛らしい修道服に変更されていたのです。



「なしてー?」



 そしてテーブルを見て、また驚かさせられた。

 大きな二つのメッセージカードと、何かの動物の絵が描かれた小さなカードが幾つかテーブルの上に広げてあったのです。

 どうやら、お使い様が来ていたようです。


 カーテン越しに夕日の光りで照らされていたので、私はカーテンを開けてカードを確認することにした。

 すると、その全てのカードに向日葵の絵柄がありました。

 ですので、お使い様からのお告げだと思います。


 メッセージカードには【正】と書かれており、もう一つにはヒントとして「友を正に」と書かれていました。

 そして小さなカードには、猫、虎、ライオン、犬、狼、兎、蝶、妖精、鳥、花、魚、栗鼠の絵が描かれていました。



「これって……白紙の本に書かれていた、少女の仲間を【正】と書かれてあるメッセージカードの上に、重ねて置くという意味なのかな?」



 私は白紙の本の内容から、小さなカードを一つ一つ見ていくことにした。

 確か、初めにお花畑に蝶がいたけれど仲間ではないよね。

 仲間と言えば、召喚した白銀虎(ハクギンコ)ちゃん? 


 子猫みたいに小さいと書いてあったけれど、名前からするとライオンじゃなくて虎だよね? 

 それに、主人公の名は描かれていませんでしたが、他の子達の名は描かれていました。

 確か、白銀虎(ハクギンコ)ちゃんの名前はスノーちゃんに変わっていたはずです。

 私がメッセージカードの【正】に虎のカードを置くと、部屋の中が急に明るくなった。



「キャッ!」



 夕日が陰って来た所だったのですが、急に明るくなったので少し驚いた。

 どうやら、お姉さんから頂いた小さなフィギュアが光りを放ったようです。

 透明ケースから小さなフィギュアを取り出し、中のフィギュアをよく確認すると、白銀の色をした虎さんでした。



「このフィギュアって、スノーちゃん?」



 不思議に思いつつも、外が暗くなって来たので、部屋の明かりをつけてカーテンを閉めることにした。

 そしてスノーちゃんのフィギュアをテーブルに置き、向日葵の大袋から縫いぐるみと着ぐるみパジャマと栞を出した。



「この縫いぐるみと着ぐるみパジャマも、スノーちゃんだよね」



 私はスノーちゃんの縫いぐるみを左腕に抱き寄せ、再びメッセージカードの【正】に別のカードを重ね置くことにした。

 お魚さんと栗鼠さんと鳥さんは、途中で見かけたけれど、この子達も仲間じゃないよね。

 確か、妖精のシルクちゃんと妖精狼(フェアリーウルフ)のアイビーちゃんが仲間になったはず。

 妖精のカードをメッセージカードの【正】に重ね置くと、窓際に置いてある妖精さんのフィギュアが光った。



「もしかして、この妖精さんがシルクちゃん?」



 私は窓際に置いてあったフィギュアを、透明ケースごとテーブルの上に置きました。

 そしてメッセージカードの【正】に狼のカードを重ね置くと、今度は狼さんが光ったのです。



「この狼さんが、アイビーちゃんなんだ」



 ですが、急に女の子のフィギュアが気になりました。

 なぜなら、左膝の衣服が少し捲れ上がっていたからです。

 何となく、スノーちゃんが乗る場所だと気づきました。


 透明ケースを開けて、女の子の左膝にスノーちゃんを乗せることにしました。

 すると、女の子が光り輝きその後に光は消えました。

 恐らく、正解だったのでしょう。


 私は女の子達のフィギュアを透明ケースに入れ、窓際に戻すことにした。

 窓際にフィギュアを置いてテーブルに戻ってくると、花のカードだけが裏になっていました。

 不思議に思い手に取ってみると、花の絵が鈴蘭に変わっていたのです。

 鈴蘭を見て思い出すのは、私の場合、お兄ちゃんです。



「あんちゃん……」



 そして、鈴蘭のカードが何となく寂しいと言っている気がした。

 なので、そのカードをメッセージカードの【正】に重ね置くことにした。

 何も起こりませんでしたが、急にスマホの着信が鳴った。


 ママからの、着信のようです。

 直ぐに返信しないと止まらなくなるので、ママと友達に返信する事にした。

 ママと友達に返信し終えテーブルを見てみると、【正】と書かれていたメッセージカードに「正解」と言う文字が現れていた。


 そしてヒントが書いてあったメッセージカードには「2.46と6.78と8.85」の数字が現れていたのです。

 私は直ぐに、白紙の本を確認する事にした。


 すると、白紙の本の2ページ目に向日葵のスタンプが七つ。

 6ページ目に、向日葵のスタンプが三つ。

 8ページ目に、向日葵のスタンプが九つと押してあったのです。



「やっぱり……」



 もし、以前のヒントと同じであるのなら「三巻の78ページ、七巻の46ページ、九巻の85ページ」にもきっと何か有るはずです。

 スノーちゃんの縫いぐるみを抱き寄せる腕にも、力が入ります。

 ドキドキする気持ちを抑えてページを(メク)っていくと、それぞれの上部余白に向日葵のスタンプが押してありました。



「有った」



 だけど、これって英字ではないよね? カナかな? 

 そのページをスマホで撮影し、パソで画像を合わせてみるとタグと言う文字が浮かび上がりました。



「タグ?」



 タグと言えば色々と有るのですけれど、私は咄嗟に左腕に抱いているスノーちゃんの縫いぐるみを見た。

 縫いぐるみって、普通メーカーのタグや取扱のタグが有るよね? 

スノーちゃんの縫いぐるみを調べていると、尻尾を上げたお尻にタグが付いていることに気づきました。



「やっぱり、有った」



 そのタグを確認すると、小さな向日葵の判子でIと書かれていました。

 他にもタグが無いか確認すると、着ぐるみパジャマにも小さな向日葵の判子でKと書かれている事が分かりました。

 フィギュアの方には、隠されたタグや向日葵の判子は押されていませんでした。

 スノーちゃんの縫いぐるみと着ぐるみパジャマは、向日葵のお使い様から頂いた物。



「もしかして、栞にもまだ意味が有るのかな?」



 私はもう一度、栞を確認することにした。

 栞を確認すると、裏には小さな向日葵の判子でNMと書かれ、表には向日葵の花が3本描かれていただけでした。

 ですが、きっと何か意味が有るはずです。



「撫子がんばるけん」



 だけど、今日は色々あって疲れました。

 明日の朝もママに会う事になっているし夜も更けてきたので、白紙の本を読むのはまた明日にしようと思う。

 白紙の本に向日葵の栞を挟み、可愛いスノーちゃんのパジャマを着て、今日はお休みする事にした。

 着ぐるみパジャマを着て縫いぐるみを抱いて横になると、何だかお兄ちゃんの温もりを感じた。



「あんちゃん、おやすみなさい」

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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