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【花SIDE】
オーガが両手の甲にある角を打ち鳴らすと、地響きを上げ突進して来た。
「欄音ちゃんと百合愛ちゃんは、一射目準備!」
スケルトンナイト達が二体ずつ、盾を前にして前進。
盾で受けたと同時に、矢を放たせるつもりだった。
しかし盾で受けた次の瞬間、スケルトンナイト二体が横に吹き飛ばされた。
一体、何をしたの?
吹き飛ばされたスケルトンナイトは無事な様ですが、二体では抑えきれない。
「スケルトンナイトさん、フォーマンセルに変更お願いします!」
「「「「「ガシャ! ガシャ! ガシャ! ガシャ!」」」」」
スケルトンナイト達が、私の指示に陣形を変更。
しかし、四体ごと後方に下げられていた。
両手の甲の角に、ノックバック効果が有る?
「欄音ちゃんと百合愛ちゃんは、右側から交互に攻撃!」
「「はい!」」
私の指示で弓を射ると、両手の角で矢を落とされた。
本来ならこの時点で、オーガは後方に吹き飛ばされ、攻撃速度が低下する。
しかし、ノックバックされなかった。
恐らく、角の能力で相殺している。
でも、もう一射させ確認する必要が有る。
「椿来ちゃんと美桜ちゃんは、一射目準備!」
「クッ! あの角は、一体なんですの? 欄音の攻撃が、通じませんでしたわ」
「スケルトンナイトさん達は、陣形を立て直して下さい! 椿来ちゃんと美桜ちゃんは、同時に放て!」
「「はい!」」
私の指示で二人が同時に矢を放つと、オーガが両手の角を打ち鳴らした。
その瞬間、前面に透明な壁のような物が出来た。
「椿来と美桜ちゃんの攻撃が、透明な壁に阻まれましたわ。何ですの、あれは?」
「だけど、百合愛ちゃんの速度低下は効いているよ。皆、スケルトンナイトさん達が花達の防御の要。押し返せるよう、矢を射って下さい。花も、色々考えて射ってみるね」
「「「「はい」」」」
それぞれが攻撃方法を考え、オーガに対応。
オーガの攻撃速度は低下したものの、暫くすると速度が戻ってしまう。
透明な壁を形成し防ぐことから全てではないが、攻撃速度に対する状態異常回復小を、持っているのかもしれない。
「花ちゃん、百合愛と美桜ちゃんで、交互に速度低下を付与させ続けますわ」
現状、速度低下は少しの時間有効だった。
そのお陰で、スケルトンナイト達の盾で少しずつ押し返す事が出来ていた。
倒されるスケルトンナイトが居ない事から、イベリスちゃんの回復効果が体力の減少を上回っていると考えられる。
つまりレベルは、オーガよりもスケルトンナイトさん達の方が上。
だけど、オーガが特殊攻撃と特殊防御を持っているので倒せずにいた。
スケルトンナイトさん達にスキルが有れば良いのですが、スキルを持っているのは、ヘイズスターバーストさんとスケルトングラディエーターさんだけ。
ただ、いつまでもこの状態を保つことは出来ない。
なぜなら、矢の本数には限りが有るから。
もし、この状態で新手が現れたら対応しきれません。
最悪の場合、バスで後退しながらの対応となる。
「お願い」
「花ちゃんの地面に穴を開ける作戦、上手く足止め出来ていますわね。欄音は椿来ちゃんと交互にオーガの足下の地面を狙ってみますわ」
「うん、任せるよ。スケルトンナイトさん達は、花達があけている穴に気をつけて!」
「「「「「ガシャ! ガシャ! ガシャ! ガシャ!」」」」」
「花ちゃん、あのオーガの背を狙うように射って下さるかしら? 椿来が先ほど射った矢で吹き飛ばされた石が、オーガの背に当たった気がしましたの」
確かに、オーガが角を打ち鳴らす事で、全方位を透明な壁で防げるとは限らない。
それに、私ならオーガの背後から攻撃が可能。
「うん、了解。オーガの背を攻撃出来るのは、花しかいないもんね」
皆で試行錯誤し、オーガに攻撃を仕掛けていると、朝熊君が私の側に来た。
「藤野さん、俺も出る」
「朝熊君、手と足の感覚は戻ったの?」
「ああ、お陰様で元通りだ。それに、急ぎで来るよう薺に連絡しておいた。ただ、梯子に付けた大盾が簡単に外れない。だから、少し時間がかかる」
流石、朝熊君。
私もその事を考えていたけれど、手を休める訳にはいかなかった。
攻撃を緩めると、スケルトンナイトが下げられバスが危険に晒される。
それだけは、絶対に阻止したかった。
「うん、分かった。朝熊君、ありがとう。だけど、無茶しないで」
「ああ、お互いにな」
朝熊君と話し終え前を見ると、オーガの右肩に有る角が真っ赤に光った。
その瞬間、オーガがショルダータックルしながらスケルトンナイト達を物ともせずに前進してきた。
このままでは、バスに追突される。
危機感を抱いた私は、イベリスちゃんを欄音ちゃんに預け、バスから降りて囮となり、オーガを迎え撃つことにした。
「花ちゃん、どうしてイベリスちゃんを?」
「欄音ちゃん、イベリスちゃんをお願い。少しだけ、花が囮になるから」
「ミュウ!」
イベリスちゃんが、囮になると言っている気がした。
だけど、イベリスちゃんを抱いている人が居ないと、HP回復効果向上とHP回復速度向上が無くなってしまう。
つまり、全てに影響を及ぼしてしまうのだ。
「駄目! イベリスちゃんは、欄音ちゃんの胸元で待機! イベリスちゃんは、皆の要なんだからね!」
「ミャウ……」
私は不安な顔をしていた欄音ちゃんとイベリスちゃんに笑顔を向け、バスの窓から飛び降りた。
「花は、こっちだよ! スキル【雷の矢!】」
私が矢を放つと軌道を変え、オーガの背に直撃。
花の攻撃が、当たった。
やはり、背後が弱点。
「グガァ!」
直撃した瞬間、雷が襲うと思われた。
しかし、オーガが両肩の角に両手の角を打ち鳴らした。
その瞬間、刺さっていた矢が抜け落ち属性ダメージが軽減された。
あと少し刺さっていたら、雷のダメージで痺れていたはずなのに。
歯を食いしばると、オーガと目が合った。
そのお陰で、バスはオーガの攻撃を免れた。
オーガの標的が私となり、逃げながらスキルを使用して弓を射る。
光の矢・雷の矢・風の矢・水の矢・火の矢・土の矢、どれも属性の力が襲う瞬間、オーガが両肩の角に両手の角を打ち鳴らし、矢が抜け落ちてダメージを軽減されてしまう。
だけど、確実にオーガにダメージを与えられている。
ただ、MPが心許なくなってきた。
スケルトンナイトにオーガが与えていたダメージから考えると、恐らく私は一撃でももらえば、大ダメージを受けるのは確実。
ただ、私の方が足が速い。
しかし足場が穴だらけである為、一瞬の気の緩みが命取りとなる。
「「「「花ちゃんから、離れろ! この、オーガめ!」」」」
欄音ちゃん達が援護射撃を放ってくれるが、足場のせいで私は徐々に追い詰められていった。
そして足場に足を取られた次の瞬間、私は宙を舞っていた。
激痛の後に訪れた、冷たく痺れる感覚。
左腕を見ると、血が迸っていた。
そして、反響する欄音ちゃん達の叫び声。
吹き飛ばされ倒れた私に、オーガが両腕を振り上げていた。
※ ◇ ※
【花SIDE】
私は、もう助からない。
「【ライト シールド シェア マイ ライフ!】」
そう思った瞬間、誰かの叫び声が聞こえた。
「【ライトニング シールド リベンジ リフレクション!】」
そして腕の傷口が急に塞がったと思うと、同時に地面が陥没し誰かがオーガの攻撃を防いでいた。
「藤野さん、遅くなって済まない」
もしかして、朝熊君?
「【シールド ファイティング スピリット!】」
見上げると、朝熊君が大盾でオーガの拳を跳ね上げていた。
オーガとの体格差が、4倍以上有るのに凄い。
拳を跳ね上げられたオーガは、麻痺したように固まって後方に倒れた。
もしかして、朝熊君の盾スキル?
そう思った瞬間、私は朝熊君に抱き上げられた。
「キャッ」
そしてその場から離れると、朝熊君がバスの方へ駆け出した。
倒れたオーガを見ると、遅れてきたスケルトンナイト達が取り囲んでいた。
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親衛隊副隊長
朝熊 :HP 121
:MP 55
姫の親友女官近衛騎士長
花 :HP 207
:MP 21
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それに確か、私のHPは残り7しか残っていなかったはず。
なのに、なぜ207に?
朝熊君のHPを見ると、226から一気に100減りMPも70から55に減っていた。
私の傷が塞がった能力も、朝熊君のスキル?
「藤野さん、傷は大丈夫か?」
「うん……」
服に血糊は付いていたものの、傷は完全に塞がっていた。
乱れていた服を見られたせいか、急に恥ずかしくなった。
そして朝熊君に見つめられ、血を流しすぎたせいなのかクラクラして身体に力が入らない。
だけど、抱き上げられ心から安心を感じていた。
「俺は、藤野さんをバスに連れて行った後、スケルトンナイト達と共に前に出る」
オーガの方を見ると、スケルトンナイト達と再び激しい戦闘状態となっていた。
そしてバスからは、援護攻撃の矢が放たれていた。
しかし、オーガは弱点である背をバスに向けようとしない。
バスの近くまで戻ってくると、朝熊君が私を降ろしてくれた。
「藤野さんは、バスに戻って休んでいてくれ。HPが回復しても、血を流しすぎたからな。俺がスケルトンナイトと共に、バスの方に背を向けさせる。その隙に、皆で一斉にオーガを攻撃してくれるように言ってくれるか?」
朝熊君に顔を向けられると、胸の中がホワホワした気持ちになる。
だけど名字を呼ばれる度に、距離が有るように感じられた。
以前から思っていたけれど、女友達のように私の事を名前で呼んでほしい。
伝えるのは、今しか無いと私は思った。
だから、勇気を持って伝える。
「うん、分かった。朝熊君、助けてくれてありがとう。えっと……戦闘中に、藤野だと呼びにくいよね? 花で、良いよ。花も、朝熊君って呼んでるしね」
勇気を出して伝えると、朝熊君の頬が赤くなった。
「えっ……俺が、か?」
「駄目ですか?」
お願いするように見上げると、朝熊君が照れくさそうに頭を掻いた。
「わ……分かった。……花」
朝熊君に名を呼ばれると、胸が切なくて温かくも感じられた。
しかも、見つめられた事で鼓動が激しくなった。
撫子ちゃんと一緒にいる時、薺君と一緒に朝熊君は、よく顔を見せていた。
実はその時から、朝熊君の事が気になっていたのだ。
そして初めて名前を呼ばれ、頬と身体が火照ってきた。
「にひっ」
私は、それを笑顔で誤魔化した。
すると、バスから欄音ちゃん達が顔を出した。
「欄音も」
「椿来も」
「百合愛も」
「美桜も」
「「「「名前で、良いですわ」」」」
そして、四人の声が揃った。
えっ? 私が勇気を出して言ったのに、欄音ちゃん達まで?
「おっ、おう。了解だ」
それを、朝熊君は戸惑うように了承した。
「花だけと、思ったのに……」
いつの間にか、私は愚痴を呟いていた。
これって、嫉妬?
だけどこのオーガを倒さなくては、私はこの気持ちを確かめられない。
「じゃー……花、行ってくる」
「朝熊君、無理をしないでね」
朝熊君が手を上げて答えると、オーガに眼を向けた。
「オーガよ、かかって来い! 【アロウズ ハスティラティ!】」
朝熊君が盾を掲げると、青白い光りを纏った。
次の瞬間、オーガが他を無視する様に朝熊君に眼を向けた。
もしかして、敵を引きつけるスキル?
そしてスケルトンナイトを無視するように、朝熊君に向かってオーガが走り出した。
それを朝熊君は、誘導するように駆け出す。
「スケルトンナイト、俺に続け! 【ウインド シールド アクセラレーター!】」
そして、大盾を前にして加速しだした。
「「「「「ガシャ! ガシャ! ガシャ! ガシャ!」」」」」
スケルトンナイト達も朝熊君に従い、オーガを追いかけだした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




