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ブルーローズに乗って上空まで上がると、インカルナタが私の右肩に乗った。
「クウーーン」
そして鳴いたと思うと、風が穏やかになった。
どうやら、私達の周りの風を調節してくれたようです。
これでしたら、外套を羽織っていない騎士達も寒くはないはずです。
「撫子、温泉街はこの町のオーガを倒してからで良かったのではないか?」
上空から見える町を眺めていると、ブルーローズが話しかけて来た。
「いえ、何か嫌な予感がするのです」
一ヶ月前まで、多いときは週に二度ほど闇の魔法陣が出現していた。
ですが一週間に一度闇の魔法陣が現れた時は、二度出現していたときよりも、魔物の数が明らかに多かったのです。
そして今回は、一ヶ月少し経ち魔物の出現が確認された。
しかも、他県には別の魔物まで……。
私は、考えをブルーローズに話すことにした。
「成る程、闇の魔法陣の同時多発か。つまり、撫子はスタンピードを気にしているのか」
ブルーローズの言葉を聞いて、それだと思いました。
「はい。それだけでなく、私達があれだけの人数で探していたのに、オーガの出現地点であった下水道で魔法陣が確認出来なかったのです」
私達は地上で魔法陣が確認されなかった事から、オーガの多発出現ポイントの直下である下水道を近衛騎士で部隊を組み詮索した。
しかし、魔法陣は見つからなかった。
その為、詮索範囲を拡大する人員が必要だったのです。
スマホで一斉呼び出し送信し、町に来ていなかった近衛騎士達を集めている時、他県の騎士達が魔物の事を知らせに来たと言うわけです。
ブルーローズと話していると、温泉街が見えてきた。
ですが、上空から見えたのは人々を必死に守る騎士達の姿だったのです。
「撫子、来て正解だったな。オークの数が、騎士を圧倒しておる」
防戦しているものの、旅館やホテルなど避難指定されている建物を利用し、籠城しようとしていた。
それに、恐らく花ちゃん辺りがイベリスの能力を使用したのでしょう。
傷ついてはいましたが、HPが上下しているだけで、激減している騎士や人々はいなかった。
戦闘に巻き込まれた人々も、建物の上からオークに何か投げて、騎士達を助けていた。
ですが、上から見た事で魔法陣が一つではないことが分かった。
合計、三つ。
山の三方に、点在していた。
「ブルーローズ、急いで下さい」
「うむ」
私に返事をすると、ブルーローズは後ろを振り返えり騎士達を見た。
ブルーローズの水を操る能力のお陰で、誰も振り落とされはしない。
ですが、急加速した時の衝撃の注意を呼びかけるようです。
「今から、加速する。お前達は、舌を噛むなよ」
「「「「「はい」」」」」
騎士達の返事を確認すると、ブルーローズは急加速して温泉街に向かった。
※ ◇ ※
【薺SIDE】
緊急時につき市長に協力を仰ぎ、僕達は下水道のマップを入手した。
下水道に詳しい業者と共に、下水道マップを確認していると、魔法陣を詮索させていた第一部隊長が走って来た。
「親衛隊長、ご報告します。第一から第十部隊まで、地下道を隈無く詮索。小型化したオーガを、発見。全部隊で協力しつつ、合わせて百体の小型オーガを撃破。ですが、魔法陣は発見出来ませんでした」
小型のオーガが多数確認された場所は、地上でオーガが多数確認されたマンホール付近と重なるな。
何か、意味が有るのかもしれない。
「第一部隊長、報告ありがとう。大変だけど、引き続き魔法陣の詮索をお願いする」
「はっ!」
詮索地域を拡大したが、闇の魔法陣は元より、赤い石の情報もなかった。
自衛隊に協力をお願いしたが、上層部に連絡がつくまで待ってくれと言われた。
向日葵様の結界が張られている以上、連絡を取ることは不可能。
やはり、僕達で何とかするしかないようだ。
その中で、勇敢な警察官がオーガを倒すために拳銃を発砲した。
しかし、五名で一体倒すのがやっとだった。
強靱な筋肉を持つオーガの場合、頭部を確実に撃ち抜かなければ、小口径の威力が無い拳銃では倒せないからだ。
しかも弓のように直接手に持つ武器ではなかった為、姫の聖域の効果が適用されなかった。
その他にも、協力してくれる大人達がいたので、大人達の事は市長に任せることにした。
但し、遠距離からの攻撃にとどめるよう伝えておいた。
幸い、スポーツ用品店の店長と、弓道具店の店長が協力してくれたので、アーチェリーと日本弓を数多く入手出来た。
大人達と話をしていると、親友の朝熊がやって来た。
「薺、地上部隊も魔法陣や赤い石を確認出来なかったぞ。だけど、オーガが百五十体ずつ四つの町に点在していた。藤野さん率いるアーチェリー部隊と、ヘイズスターバースト率いるスケルトン部隊のお陰で、負傷者を出さずに倒せたけどな」
ヘイズスターバースト達は姫のレベルが上がった事で、スケルトングラディエーター二体を別部隊とし、それぞれ、スケルトンナイト、スケルトンアーチャー、スケルトンメイジ部隊を組み合わせた三部隊となっている。
その為、戦力的に任せることが出来るのだ。
しかし花ちゃんの部隊は、欄音ちゃん、百合愛ちゃん、美桜ちゃん、椿来ちゃんという少数遠距離特化部隊。
前衛にスケルトンナイトが二十体守護しているとはいえ、五人の性格から突撃する恐れが有る。
姫のご友人である以上、本当は自ら守りに行きたい。
しかし、近衛騎士達の事を考えると統率者不在では士気に係わってくる。
不本意だが、ここは信頼できる朝熊に頼むしかないか。
「朝熊、花ちゃん率いる部隊は少数遠距離特化部隊だ。近接戦を考えて、スケルトンナイト達が二十体守護している。だが、動きは花ちゃん達の方が圧倒的に速い。もし無茶な事をして突撃されると、スケルトンナイト達では追いつけない。姫のご友人である花ちゃん達を、朝熊に任せても良いか?」
「良いよ」
流石、僕の親友。
直ぐに、返事をしてくれた。
朝熊の部隊は再編成する事になるが、部隊長を新たに設け任せる事にしよう。
「だけど、薺? いつの間に、藤野さんを下の名前で呼ぶようになった?」
朝熊に、変な目で見られた。
だけど僕は、姫一筋。
これは、八年前から変わらない。
ただ姫の言葉と、周りの環境で自然と下の名で呼ぶようになっただけの事。
「朝熊、僕の心を知っているだろ。これは、姫の影響だ。気にしないでほしい」
「そうか……なら、良い。じゃー、行ってくる」
「頼む」
そう言えば、朝熊の花ちゃんを見る目が以前とは異なっていた。
もしかして、朝熊は花ちゃんの事を……いや、考えすぎか。
朝熊と花ちゃんの事を考えていると、ヘイズスターバーストが来た。
「薺殿、我らの同士が赤い石の一つを発見した」
そう言えばヘイズスターバースト達は、動物や何かの骨が有ると、その骨を通じて情報を共有する事が出来るスキルを取得した。
「それは、本当ですか?」
「うむ。だが、我らが探している場所とは見当違いの場所であった。
オーガが多数出現した場所より、遠い北にあった。
青い隻眼のオーガが居たので、間違いないだろう。
そこには、スケルトングラディエーター率いるスケルトン部隊を向かわせた。
むっ! オーガの出現場所を中心として南側にも居るな。
そちらにも、スケルトングラディエーター達を向かわせる」
「お願いします」
ヘイズスターバースト達のお陰で、赤い石の場所が判明した。
恐らく残りの赤い石は、東と西。
魔法陣を探しても、見つからないはず。
つまり、町自体が魔法陣という訳だ。
「薺殿、我らと同じ考えか」
「はい」
「我らが、東へ向かおう」
「では、僕が西に行きます」
ただ、朝熊が気になる話をしていた。
百五十体のオーガが、四つの町に点在していた事だ。
この事から、ヘイズスターバーストが見つけた赤い石は、百五十体いたオーガを呼び寄せた魔法陣の一つ。
つまり、他に三つ魔法陣と化した町が存在する事になるのだ。
部隊を編成し直し、町を守る大部隊と、赤い石を僕と共に破壊しに行く弓と木刀持ち部隊に分け、協力してくれる大人が運転するトラックに乗って西へ向かう事となった。
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