表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/126

「撫子、待たせたな」



 ブルーローズがそう言って、入口から顔を出した。

 すると、ヒュドラゾンビキングが巨大な炎弾を放った。

 そして渦巻く炎がブルーローズに当たる寸前、蝋燭の火を吹き消す様に一吹きで打ち消した。

 姿が小さくても、中身は水神。

 涼しげな顔をすると、溜め息をついた。



「今のが、ブレスか?」



 すると更に続けてヒュドラゾンビキングが、土、風、氷、闇、猛毒、麻痺毒、腐食毒、眠り毒とブレスをブルーローズに放ってきた。

 ですが、(コトゴト)く打ち消した。

 まるで、力の差がハッキリしているとでも言うように。

 すると、ヒュドラゾンビキングは少し後退した。


 恐らく、上位の気配をブルーローズから感じ取ったのかもしれません。

 イベリスがブルーローズの側に行くと、虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)を使用した。

 するとヒュドラゾンビキングが、周りを見渡し警戒するようにブルーローズを探し出した。

 そして、無差別にブレスを放ちだした。

 洞窟の中は、まるで地獄のようでした。


 イベリスがブルーローズの上に乗って、私の元に来ると再びパーカーの中に潜り込んだ。

 そして顔を出すと、「ここは、譲らない」とブルーローズに言った。

 胸元は本来イベリスの場所では無いのですが、今回色々と貢献してくれているので、私は何も言えませんでした。

 しかも、ブルーローズはイベリスの主張をスルーしたようです。



「それよりイベリス、この能力は何だ?」

「ミーミー、ミュウ」



 虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)は、イベリス特有の能力だったようです。



「ほう、便利よの」



 イベリスの説明に納得すると、ブルーローズが私の顔を覗き込んできた。



「して、撫子? どういう、状況だ?」

「実は、ドラゴンのゾンビが……」



 私はブルーローズに、状況報告をした。

 すると私の話を全て聞き終えた後、



「あれは、ドラゴンゾンビでもヒュドラゾンビでも無い。紛い物であり、本物とは比べものにならない。しかし、名前が無いので仕方なく、ヒュドラゾンビキングと言っているのだ」



 と言われました。

 私には、区別がつかないのでドラゴンゾンビと言っているのですが、ブルーローズは龍種と一緒にしてほしくないようです。



「ブルーローズ、ごめんね」



 ブルーローズが少し怒っていたので、抱きしめた。

 すると、恥ずかしそうにそっぽを向いた。

 もしかすると、大人げないと思ったのかもしれません。

 小さくなったブルーローズは、巨大化している時より、少しぽっちゃりしていて可愛いのです。



「もう良い。して、核を九つ破壊したと言っておったな。だが、奴の核は元々一つだ。それに、奴はこの鍾乳石のエネルギーを吸い取って動いておるぞ? その超再生も、鍾乳石から吸い取っておるのだろう。紛い物とは、そういうものだ」



 あれ? 話しが、噛み合いません。

 ブルーローズの言っている事と、ヘイズスターバーストが言っていた話と違います。

 詳しく話しを聞くと、神格化しているとは言っても、ヘイズスターバーストは武王(ブオウ)であり、魔法や属性などに詳しくないそうです。


 そして一番重要なのが、神眼鑑定(シンガンカンテイ)を持っているのか持っていないかの差。

 ヘイズスターバーストはその能力を持っていないので、ヒュドラゾンビキングの事を感覚で捕らえたので違っていたそうです。

 神眼鑑定(シンガンカンテイ)を持っている者は、相手の状態を事細かく把握出来るのだそうです。


 私の場合、清水(セイスイ)を眼鏡のレンズの様に使用すれば、神眼鑑定(シンガンカンテイ)LV4程度にはなるそうです。

 ブルーローズに言われたとおりにしてみると、足下の鍾乳石からヒュドラゾンビキングに何かが流れているのが見えました。

 つまり、倒すのならエネルギー源を遮断してからと言うことです。



「ブルーローズ、どうすれば良いですか?」

「うむ、今の撫子にはまだ難しい。我が、引き受けよう」

「ですが、ここには水が有りません」

「なに、心配するでない」



 ブルーローズは念の為にと、海水陣をそのまま持って来たようです。

 この海水を使用すれば、この部屋を海水の遮断壁で覆い尽くす事ができ、鍾乳石のエネルギーを完全に遮断することが出来るそうです。

 そして元の大きさになると、薺君の元へ行った。



「薺、水面(ミナモ)を知っておるか?」

「はい、水の表面の事です」



 二人で作戦を立てているようですが、小声で話しているので聞こえません。

 薺君とブルーローズの事は、信用しています。

 ですので、敢えて聞き耳は立てませんでした。



「うむ、一般的にはそうだ。だが水神の水面(ミナモ)は、技をも写し再現する。それが【清水(セイスイ)水鏡(ミズカガミ)】である。撫子のレベルが上がれば、いずれ覚える。だが今回は、我が薺に清水(セイスイ)水鏡(ミズカガミ)を付与する。MPが回復しきってない今、技を放つ時に水鏡(ミズカガミ)を呼び出せばよい。我が先陣を切り、撫子にバトンを渡す。そして、最後の止めは薺がさせ。おなごは、強き者についてくるものだ。よいな」

「はい、分かりました」



 薺君とブルーローズが話し終わると、ブルーローズのMPが60減った。

 すると、直ぐにMPが回復した。

 どうやら、海水陣の水でMPを回復したようです。



「ブルーローズ、ありがとう」



 薺君は、ブルーローズにお礼を言って身構えた。

 MPがまだ68で万全では無いですが、ヒュドラゾンビキングに技を使用するようです。

 無理をしてほしくないのですが、ブルーローズが何か策を授けてくれたようです。


 ブルーローズが私の元へ来ると、鍾乳石のエネルギー遮断と同時に、清水(セイスイ)の激流を放つよう言ってきました。

 そして、イベリスには私を守るよう言った。

 私はブルーローズに返事をし、いつでも清水(セイスイ)の激流を放てるよう身構えた。



「では、ゆくぞ! 海水陣、解放! 【浄化の大津波!】」



 見境なしにヒュドラゾンビキングが暴れ狂う地獄のような状況の中、ブルーローズが姿を現すと、部屋を覆い尽くすほどの大津波が起こった。

 地獄の状況が一瞬で大津波に飲まれると、ヒュドラゾンビキングごと壁に叩きつけた。

 ヒュドラゾンビキングは、見る見るうちに浄化され朽ちていったが、鍾乳石のエネルギーを吸収し肉片から超再生した。



「【海水遮断壁!】 撫子、今だ!」



 しかしブルーローズにより、巨大洞窟一帯の鍾乳石に海水の遮断壁が張られると、ヒュドラゾンビキングの動きが急に遅くなった。



「【清水(セイスイ)の激流!】」



 ブルーローズに言われたとおり、ヒュドラゾンビキングの左膝に清水(セイスイ)の激流を放つと膝をついた。

 今までとは違い、浄化された膝の傷が超再生しません。

 これは間違いなく、鍾乳石のエネルギーを絶っている証拠。



「薺、今だ!」



 ブルーローズが叫ぶと、薺君はヒュドラゾンビキングに肉薄していた。



「【水鏡(ミズカガミ) 二刀流残像(ザンゾウ)八閃(ハチセン) 水月(スイゲツ)連斬(レンザン)乱舞(ランブ)!】」



 薺君がブルーローズの水鏡で自身を映し出すと、残像の技をも写し出した。



「薺、良い機会だ。我が、高みを見せてやろう」



 ブルーローズがそう言うと、ブルーローズのMPが一気に200減り、水鏡(ミズカガミ)に波紋が広がった。

 刹那、薺君の残像が広がるように分身すると技の嵐が巻き起こり、ヒュドラゾンビキングは消滅し浄化された。


 すると、私達を祝福するかのように、向日葵で覆われた転送魔法陣が現れた。

 どうやら、お使い様のミッションをコンプリートしたようです。

 転送魔法陣に入ると、私達の車の前に転送された。


 この様子ですと、恐らく異界の鍾乳洞とこちらの鍾乳洞の間には、お使い様が結果を張られたと思う。

 なぜなら、私と薺君の手に袋とメッセージカードが有り、メッセージカードには巻き込まれた人の記憶改変と鍾乳洞の結界済みと記載されていたからです。


 ブルーローズとイベリスを私の中に戻すと、辺りを覆っていた結界が晴れた。

 袋の中には【羽団扇(ハウチワ)】が入っていました。

 気になるので、仰いでみたのですが何も起きませんでした。


 レベルが達していないのか、若しくは何かに使用するのか分かりませんが、ネックレスに収納する事にしました。

 薺君の袋には、スキル書【剣鬼】が入っていたそうです。

 ですが剣鬼のレベルが表示されていなかったので、恐らくレベルが上がってから使用出来るのだろうと言っていました。


 因みに、二人ともレベル54に上がりました。

 この後お姉さんがトイレから出てきたので、服を着替え食事をしてから、カルスト台地を見て帰る事となった。



        ※ ◇ ※



 キャンピングカーで自宅まで戻ってくると、なぜかママが出迎えた。

 お姉さんと別れ、薺君が帰ろうとすると居間まで来るよう言われた。

 ですが、ママ以外家の中に誰もいないのです。

 不思議に思いつつ付いていくと、居間の扉が開かれた瞬間、場の雰囲気が変わった。

 花が一面に咲き誇る中で、ママが椅子に腰掛けると、私達に笑みを向けてきた。



「二人とも、ご苦労様」



 ママとは明らかに、雰囲気が違います。

 しかも、私の呼び方がちゃん付けではありません。



「もしかして、お使い様ですか?」



 私が指摘すると、笑顔になった。

 姿はママなのですが、やはりお使い様なのでしょうか? 



「うふふ。向日葵は、そう呼ばれているのね。訳あって私は姿を見せられませんが、向日葵の(アルジ)と言っておきます。撫子、ママの姿を借りたのは身近な存在で有ったためです。他意は無いので、初めに言っておきます」



 そう言った後、向日葵様の(アルジ)様。

 つまり、神様は語り出した。


 この世界には、本来レベルが存在しない。

 しかし29年前、有る事を切っ掛けにレベルを設ける事となった。

 それにより、この世界における、選ばれた一部の者の最大レベルが99となった。


 しかし、更なる出来事が起った。

 その影響を受け、異世界の闇が一体世界に降りた。

 降りた闇は、この世界の神によって滅ぼされた。


 しかし、密かに分身を作り出していた。

 29年後の今、分身が闇をばら撒きアレルギーを起こす人が世界中で続出。

 その分身とばら撒かれた闇は、この世界の神が直ぐに滅ぼし正常化させた。


 しかし、一部で極小の闇が残っていた。

 ではなぜ、極小の闇が残っていたのか? 

 それは、ある神とこの世界の神が交わした約束により、この地に結界が張られていたからだった。


 その結界は、闇を消し去るが極小の闇には効果が無かった。

 極小の闇が成長すると、闇の魔法陣を作りだし、この世界から出ようとする。

 結果として、成長した闇は結界によって消去される。


 しかし、闇の魔法陣は残ってしまう事になる。

 闇の魔法陣は、その地に適した異世界の魔物を召喚する。

 その為、闇の魔法陣を放置できない。


 その魔法陣を調査していく内、この世界の神と向日葵様の行動が発覚。

 そして、私達と向日葵様との関係にたどり着いた。

 この世界の神に事情を聞き、向日葵様の行動は不問となった。


 しかし、新たな問題である闇の魔法陣を破壊しなければ、この世界は魔物の世界と化してしまう。

 そこで向日葵様と密かに交わした私達が、限界レベルに達し、闇の魔法陣を全て破壊すれば、向日葵様に代わり願いを叶えると言うのです。

 どうやら、目の前に居るママの姿をした神様は上位神のようです。



「向日葵に、これを渡されたわ」



 初めは信じられませんでしたが、向日葵様のメッセージカードを手渡され、真実だと知りました。

 メッセージカードには、ヒントとして「EH?」と書かれ「問いに答えると、(アルジ)の間へ飛ぶ」と書かれ、付け加えて「ごめんなさい」と書かれていた。



「向日葵様は?」

「心配しなくても、良いわ。これからも、向日葵に言付けを頼みますので。それに、こちらにも……。いえ、何でもありません。魔法陣の事、宜しくお願いするわね」



 上位の神様はそれだけ言うと、ママの中から消え去り景色が元の居間となった。

 ママが椅子で眠っていたので、お土産とメモを残し、私達は自宅を出ることにした。

 まさか、神様のお使い様である向日葵様の他に、上位神が絡んでくるとは思いもしませんでした。


 それと、お兄ちゃんの世界へ行きたいと言う自分勝手な事に、薺君を完全に巻き込んでしまった。

 本当はお兄ちゃんの世界へ行く時、薺君にお礼を言って別れる筈だった。

 それが、薺君も付いていくと上位神に申し出たのです。



「薺君、巻き込んでしまってごめんなさい」

「いえ、僕が姫を守りたいだけです。それに姫のお兄さんは、僕の命の恩人ですからね」



 私以外に、お兄ちゃんの事を覚えている人を初めて知った。

 それが、まさか薺君とは……話を聞くと、五年前交通事故に巻き込まれた時、命を救われたそうです。

 その時、話しをしていくうちに私のお兄ちゃんだと知った。


 それが切っ掛けで「妹と仲良くなってね」と言われ、私に声をかけた。

 そして、その後に向日葵様との不思議な出会いが有り、今に至っているのだそうです。

 私はこれらの出会いに、何か不思議な(エニシ)を感じました。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ