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「薺君、イベリスの能力を使用します」



 私は薺君に、イベリスの能力を伝えた。

 威力は薺君の方が遥かに上ですが、手数はイベリスの能力の方が圧倒的。

 その能力を使用し、阿修羅ゾンビを倒さず、魔法陣の周りに有る赤い石を破壊すれば、魔法陣を消滅させることが出来る。


 ()()(マネ)きの利点は、正面だけで無く、イベリスが招く所に私の武器と同じ攻撃が招かれる点です。

 招かれた攻撃は、私と同じ様に相手を倒さず、魔法陣にも向かわせない。

 その隙に、薺君が技を使用し赤い石を破壊すれば魔法陣は消滅する。

 姫立金花のMPを考えると、もう時間がありません。



「薺君、行きます」

「分かりました」



 二人でうなずき合い、阿修羅ゾンビを私の前に誘導した。

 そして、薺君は魔法陣を見ると「姫、ご武運を」そう言って身構えた。

 その瞬間、イベリスが能力を解放する。



「ミャー!」



 同時に私も阿修羅ゾンビ二体を前に、大剣を振るった。



「ヤァァァァァァ!」



 私のかけ声を合図に、姫立金花が雷でゾンビの群れを倒し、薺君が通れる道を作った。

 阿修羅ゾンビがその事に気づき、薺君を追いかけようとしますが、イベリスの能力で私の大剣が九つの方向から攻撃。



「させません!」



 引き留める為の剣なので、私は30秒間注意を払い、倒さぬよう二体の阿修羅ゾンビを食い止めればいい。

 ですが()()(マネ)きが有るとはいえ、一瞬たりとも気を抜けない。

 気を抜いてしまうと、阿修羅ゾンビを倒してしまいそうになる。

 一体でも魔法陣から復活すると、赤い石を破壊出来ない可能性が有るからです。


 復活する普通のゾンビは、姫立金花が雷を魔法陣の中間地点に落とし倒し続けていた。

 姫立金花のMPも、もう殆どありません。

 チャンスは、この一回限り。

 そう思っていると、薺君が無事に赤い石の元へたどり着いた。



「【二刀流残像(ザンゾウ)四閃(シセン) 瞬歩(シユンポ)月華(ゲツカ)(マイ)!】」



 その瞬間、薺君の斬撃が光りをおび、踊るように次々と赤い石を破壊していった。

 そして最後の一つが破壊されたと同時に、魔法陣から小さな黒い球体が現れた。

 球体が心臓の様に鼓動すると、少しずつ姿を変え始めた。

 魔法陣は消滅しましたが、最後に出てきた物は一体何? 



「ふふ、あーはっは!」



 その疑問は、黒衣の王の笑い声で分かった。

 黒衣の王を見ると、杖を下に打ち付け赤い石を破壊していたのです。

 その瞬間、ゾンビ達の動きが急に遅くなった。



「魔法陣を失った今、もう我に出来る事は無くなった。研究が出来ないのであれば、あれを解き放つだけだ。危険すぎる故に、封印した物だ。制御の石が力を失った今、もう誰にも止められん。貴様らはヒュドラゾンビによって、報いを受けるがいい!」



 すると黒衣の王は、キメラゾンビごとヘイズスターバーストによって切り倒され浄化した。

 同時に、二体のスケルトングラディエーター達がグレートゾンビと周りのゾンビを一掃し浄化。

 制御を失ったゾンビ達は、動きに統率が取れていなかったようです。


 すると、ヘイズスターバーストが膝をついた。

 どうやら黒衣の王とキメラゾンビとの戦いで、MPを全て使い切ってしまったようです。

 ヘイズスターバーストが戻ると、白銀の鎧が全て骨となり腕輪に吸収された。


 すると、同時に私が持っていた大剣も消え去った。

 アクセサリーから懐剣(カイケン)を出すと、黒い球体だった物が九つの首を持つ、巨大な龍のゾンビへと姿を変えた。


 私達の周りにまだゾンビが居ましたが、姫立金花が一掃してくれた。

 ですが、疲れ切った様に私の肩の上で伏せた。



「姫立金花、お疲れ様。私の中で、ゆっくり眠ってね」



 そう言って撫でてあげると、寄り添ってきた。



「ギュー……」



 そして「ごめんなさい」と言って、私の中で眠りについた。



「ありがとう。後は、私達で何とかするね」



 存在する為のMPを使い果たしたので、あやかし自体のMPが戻るまでは、どちらも暫く再召喚出来ない。

 ですがお陰で、私達のLVが52に上がりました。

 私の場合、MPが最大値の261に回復したので魔法も使用出来ます。


 イベリスのお陰で、HPも最大値の267に回復しました。

 薺君は、HPが最大値の372に回復し、MPも少しして最大値の102に回復した。

 それにこちらは、スケルトングラディエーター二体とスケルトン達も健在。


 イベリスも居るので、薺君達と協力してヒュドラゾンビを倒すだけです。

 九つの頭のうち一頭が眼を開けると、ゆっくり立ち上がった。

 ですが、なぜ他の頭は目覚めないのでしょうか? 


 いえ、目覚めた一頭も焦点が合っていません。

 これは、封印解除に失敗したのでしょうか? 

 ならば、今のうちに弱点を攻撃すれば倒せる筈。


 私は、眼に意識を集中させた。

 すると、分厚い胸部の奥に核が有ることが分かったのです。

 ですが、私と薺君の武器では届かない可能性が高い。

 貫けるとすれば、スケルトングラディエーターが持っている剣しか有りません。


 すると、スケルトン達が最初に仕掛けた。

 しかし、ヒュドラゾンビの尻尾の一振りでスケルトン達が吹き飛ばされた。

 今のは、攻撃本能でしょうか? 


 目の焦点が合っていない状態での、攻撃。

 ですが、迂闊に飛び込んではいけない事が分かりました。

 ヒュドラゾンビを見て、スケルトングラディエーター達が前に出ようとした。



「待って!」



 私の声に、スケルトングラディエーター達が立ち止まった。

 どうやら私の指示も、ヘイズスターバースト同様に腕輪を伝って聞いてくれるようです。



「貴方達は、ヒュドラゾンビを倒す切り札です。迂闊に、飛び込まないで下さい」



 私がそう言うと、スケルトングラディエーター達は剣を構えた状態で一歩下がってくれた。

 ですが、困りました。

 魔法陣を破壊し、お使い様からの依頼は達成しましたが、ヒュドラゾンビを倒さなくては、また何かが起こるかもしれません。


 ですが迂闊に近寄れないこの状況では、私は魔法を放つ事しか思い浮かばない。

 薺君も武器を構えて、悔しそうにしていた。

 私が魔法を放とうとすると、イベリスが再びパーカーからヒョコッと顔を出した。



「ミャウミャ?」



 イベリスが、私に虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)を使用するか聞いてきた。



「イベリス、それは何ですか?」

「ミーミー、ミュウ」

「何も無い空間を歩く、キャットウォークの様な物?」



 キャットウォークは知っていますが、何も無い空間を歩くの意味が分かりません。

 イベリスに詳しく話を聞くと、先ほどレベルが上がった時に覚えた能力で、パーティーメンバーに何も無い空間を歩かせる事が出来る能力のようです。


 何も無い空間とは、世界でも異界でもない狭間の空間だと言っていました。

 私には、よく分かりません。

 しかも虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)中は存在と気配が無いので、相手に気づかれないだけで無く、攻撃も当たらないそうです。


 但し、攻撃を仕掛けた瞬間に元に戻るので、気をつけるように言っていました。

 ですがこれは、本能で攻撃してくるヒュドラゾンビに打って付けかもしれません。

 それに、八つの頭が目覚める前に攻撃出来るチャンスです。



「ミュウミュウ、ミャウ!」



 イベリスが虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)を使用すると、イベリスのMPが200減りました。

 どうやら、一人に対してMPを50消費するようです。

 因みにイベリスは、パーカーに入っているので私と一緒の扱いになるようです。


 薺君とスケルトングラディエーター達と共に空間を歩いていると、ヒュドラゾンビの体躯が分かってきた。

 尻尾も合わせると体躯が50m有り、ヘイズスターバーストよりも大きい。


 そして眼を覚ましていない八つの頭の頂点には、色の付いた宝石が三つ埋め込まれていた。

 恐らく、あの宝石で黒衣の王はヒュドラゾンビを制御していたのでしょう。

 焦点が合っていない頭の宝石は、二つが色を失い、一つが色を失いかけていた。


 もしかすると、魔法陣を破壊した時に不具合が有ったのかもしれない。

 ですが、それなら好都合です。

 スケルトングラディエーター達が、ヒュドラゾンビの核の上までやって来ると、天井から攻撃を仕掛けた。


 二体の重量がかかった一撃が、鱗の隙間に突き刺さる。

 その瞬間、二体のスケルトングラディエーターはヒュドラゾンビの尻尾で吹き飛ばされた。

 まさか体躯10m有る二体が、あそこまで吹き飛ばされるとは思いもしませんでした。


 二体は、大丈夫でしょうか? 

 HPを見ると、1869あったHPが一気に669まで減っていた。

 どうやら、無事のようです。


 二体には、腕輪を通して一旦離れるよう伝えた。

 ですが、剣はヒュドラゾンビの核に刺さっているのに、浄化の蒸気が発生しているだけです。

 完全に、浄化されない? 

 聖属性は効果が有るようですが、一体どういう事でしょうか? 


 しかしその瞬間、八つの頭が同時に眼を開け、それぞれの宝石の一つが色を失った。

 今のが、もしかして封印していた宝石だったのでしょうか? 

 すると一斉に口を開け、初めに目覚めていた頭に食らいつき食いちぎった。



「共食い?」



 薺君がそう言いましたが、嫌な予感がします。

 目覚めていた頭を食った、頭の宝石が一つ増えたのです。

 そして、次々と他の頭も争いだした。


 黒衣の王は、危険すぎる故に封印したと言っていた。

 そして、九つの頭のうち初めは一つしか眼を開けなかった。

 私は宝石を見て、不具合だと思った。


 しかし、それは違っていた。

 その答えが、ようやく分かった。

 恐らくあの宝石は、ヒュドラゾンビ一つ一つの頭の制御であり、封印であり、生命の源。

 つまり、全ての宝石を破壊しなければヒュドラゾンビを倒す事は出来ない。



「暴走……」



 薺君が呟くようにそう言うと、ヒュドラゾンビの八つの頭が噛みつき合い、ブレスを吐き、無差別に暴れだしたのです。

 ブレスは毒霧と炎だけのようですが、スケルトングラディエーター達が倒されてしまった。

 倒された二体は、他のスケルトン達同様、私の腕輪に吸収された。


 ですが幸い、虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)中の私達には効果が有りません。

 外套も有るので、ブレスは炎に気をつければ良いようです。

 ただ、弱点が弱点では無くなっていました。

 恐らく、黒衣の王によってゾンビ化された事により弱点では無くなったのでしょう。


 上から見ていると、辺り一帯が炎と毒霧に覆われていた。

 炎が収まるまでは、流石に危険です。

 浄化の激流を使用すれば、その部分は鎮火しますが貴重なMPが減ってしまいます。

 薺君と話し合って炎が鎮火するまで待つと、ヒュドラゾンビの頭は残り一つとなっていた。

 そして九つの宝石が背に付き、頭上にも一つ付いていた。


 胸部に有った核は、そのまま浄化の蒸気を上げるだけだった。

 ヒュドラゾンビの行動を見ていると、宝石の意味が分かってきた。

 宝石ごと頭部を食いちぎられると、喰らった頭の首に宝石が移動し、その頭は攻撃力を増した。

 牙が宝石に当たり一つの宝石が割れて色を失うと、その個体は一つ分弱くなる。

 ですが宝石を持った個体を宝石ごと食いちぎり食べると、その分また強くなった。


 これらの事で分かったのは、このヒュドラゾンビは黒衣の王の失敗作であった。

 ですが、スケルトン達が行った蠱毒をヒュドラゾンビは自ら行い、独自の進化を遂げ、十個の核を持つドラゴンゾンビとなったのです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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