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 マンションに戻って扉を開けると、驚く事が起こっていた。

 玄関を開けたら直ぐ見える位置にフィギュアを飾っているのですが、離れた位置でも分かる位にフィギュアが縮んでいたのです。

 そして服装も、とても可愛らしいチャイナ服に変わっていた。



「なしてー、こげん小しゃくなったとー?」



 私は、驚きすぎてフィギュアの置いてある部屋へ行きました。

 窓際のレースの光り越しから見える、フィギュアの入った透明ケースを手にしてみてもやはり縮んでいます。

 部屋のカーテンを全て(ヒラ)けて部屋を明るくすると、パソの前に向日葵柄でラッピングされた箱と、メッセージカードが添えてある事に気づきました。


 向日葵柄でラッピングされた箱が気になり、箱を開けてみると元の大きさのフィギュアが入っていました。

 そして、添えてあったメッセージカードを読んでみると「窓際が現在」と書かれていました。

 メッセージの意味は理解出来ませんが、何か重要な意味が有るのかもしれません。


 それに、向日葵柄でラッピングされていた事が気になります。

 このメッセージカードは恐らく、向日葵の女性……お使い様からの、お告げです。

 私はそのお告げを信じて、元の大きさのフィギュアをそのまま箱にしまうことにした。


 そして、お告げを見て思い出しました。 

そう言えば、ラッピングされた綺麗な箱にも、同じ様にメッセージカードが添えてあったはずです。

 そのメッセージカードを読んでみると「シュミーロのミニセットボックス」と書かれていました。


 シュミーロ? 

 ミニセットボックスの意味は分かりませんが、著者さんの名前が書かれてあったのです。

 これって――本、フィギュア、お使い様、全てがお兄ちゃんに繋がっている? 



「あんちゃん……」



 私はお兄ちゃんの姿を思い浮かべ、ラッピングされた箱を開けて中を確認する事にした。

 ラッピングされた箱を開けて中を確認すると、ミニチュアのタンスが入っていた。

 ミニチュアのタンスを取り出すと、下にまだ箱が有った。

 その箱を開けて中を確認すると、小さな狼さんと妖精さんのフィギュアが入っていた。



「あの子の、お友達かな?」



 私は窓際のフィギュアを眺めると、有ることに気がつきました。

 女の子のフィギュアは座っているのですが、衣服が太股の位置で不自然に上がり、手の位置も狼さんが入るくらいに開いていたのです。



「もしかして、ここが狼さんの位置かな?」



 お人形遊びは卒業したのですが、少し楽しくなってきた。

 太股と手の間に狼さんを乗せると、ジャストフィットしました。



「次は、妖精さんです」



 妖精さんは腰掛けている形になっていたので、もう一方の太股に乗せましたが合いません。

 妖精さんの姿をよく観察すると、右側に身を寄せている事が分かりました。



「女の子の左肩に、乗せるのかな?」



 左肩に妖精さんを乗せると、女の子のフィギュアが笑顔になった気がします。

 そして、メッセージカードに「正解」と「1.13と3.37と7.72」の数字が現れていた。

 これは、何かのメッセージでしょうか? 

 私には、解読できません。


 ですが、ヒントなのは間違いないと思う。

 なぜなら、向日葵のスタンプが押されていたからです。

 私は、何となく白紙の本が気になり読んでみることにした。


 白紙の本を読み進めていると、また物語が増えていた。

 今度はお姫様を助けて、お城に招かれる物語でした。

 その物語の中に、フィギュアの女の子が着ている服と、妖精さんと狼さんのお話も沢山出てきた。


 この白紙の本は、フィギュアの子達の物語みたいです。

 題目や項目が気になり、初めのページに戻ると、あることに気づきました。

 1ページ目の下の縁に、向日葵のスタンプが四つ押してあったのです。


 確か初めて読んだ時は、向日葵のスタンプは押していなかった筈。

 メッセージカードのヒントが気になり、もう一度確認すると「1.13と3.37と7.72」でした。

 最初の数字が本のページ数を表すなら、きっと3ページ目にも向日葵のスタンプがある筈。


 私は、3ページ目を開いた。

 すると、向日葵のスタンプが八つ押して有った。

 次に、7ページ目を開くと向日葵のスタンプが一つ押して有った。


 ヒントの一つ目の数字が、白紙の本のページを現すのは分かりましたが、二つ目の数字は何を表すのでしょう? 

 もしかして、行数? 


 私は白紙の本の行数を確認しましたが、7ページ目に72行目は存在しませんでした。

 ですが、ヒントと書かれてある事からヒントであるのは間違いない。

 それに向日葵のスタンプが、四つ、八つ、一つ。


 これにも、意味は有るはずです。

 向日葵のお使い様、フィギュア、白紙の本の著者さんには繋がりが有りました。

 繋がり……そう言えば、著者さんの本を忘れていた。

 もしかすると……私は、お姉さんから借りてきた本を調べることにした。


 お姉さんから借りた本の第一巻目をパラパラ(メク)っていくと、72ページ目の上部余白に向日葵のスタンプが有ることに気がつきました。

 これって「1.13と3.37と7.72」ヒントの最後に書いてあった数字は本のページ数かも。

 だったら、白紙の本にあった向日葵のスタンプの「四つ、八つ、一つ」は本の巻数だよね。


 私は一巻の72ページ、四巻の13ページ、八巻の7ページ目をそれぞれスマホで撮影してパソで画像を合わせてみることにした。

 すると、Gという英字が浮かび上がったのです。

 Gが一体何を意味するのかは不明ですが、一歩前進したと私は感じた。



「あんちゃん、撫子頑張るけん」



 私は向日葵のお使い様に感謝しつつ、鳴り止まないスマホを確認すると、ママからでした。

 スマホを開けて返信しようと履歴を見ていると、お仕事で打ち合わせしていたことが分かった。



(撫子ちゃん、ママよ)既読。

(学校終わったら、会いに来てね)既読。

(今日、先方さんに会ったの)既読。

(娘さんにって、色々もらったわ)既読。

(着ぐるみパジャマ)既読。

(白猫? の縫いぐるみ)既読。

(本の栞)既読。

(栞に、可愛い向日葵の絵があったわよ)既読。

(ママも、色々買ってきたの)既読。

(撫子ちゃん、喜ぶかな?)既読。

(早く、会いたいな)既読。

(撫子ちゃん、まだかなー?)既読。

(もしかして、お風呂?)既読。


 その中で、向日葵という文字に目が止まりました。

 打ち合わせした相手って、もしかして向日葵のお使い様? 


(今から、直ぐに向かいます)送信。


 私は直ぐにママに送信し、自宅に向かうことにした。



        ※ ◇ ※



 自宅の玄関を開けて靴を揃えていると、スリッパの音が聞こえてきた。

 この足音は、お手伝いさんかな。

 お手伝いさんは、少し足早なので直ぐに分かります。


「撫子お嬢様、お帰りなさいませ」



 立ち上がろうとすると、お手伝いさんから声がかかりました。

 なので、笑顔を向けて挨拶します。



「ただいま、帰りました」



 お手伝いさんは人との距離感をよく理解されているので、ママと違って丁度良い距離から話しかけてくれます。

 ゼロ距離でくっ付いて話しかけてくるのは、ママとお兄ちゃんだけです。

 お兄ちゃんの場合は、私からですけれどね。



「奥様が、居間でお待ちしていますよ」

「はい。ありがとうございます」



 話をしていると、良い匂いがしてきました。

 今日は、カレーライスかな。

 そう言えば、お兄ちゃんにもカレーライスをよく作りました。


 お手伝いさんの作る料理は美味しいので、雑誌の仕事が忙しい時はお弁当を作って貰います。

 私が料理を得意になったのは、お手伝いさんのお陰です。

 お兄ちゃんの所に行く際は、材料とレシピをお手伝いさんから貰います。


 そして、マンションで私が料理をするよう心がけています。

 だってお兄ちゃん、コンビニ弁当ばかり買ってくるんだもん。



「撫子お嬢様? シャンプーを、変えられたのですか?」



 前を通ろうとすると、お手伝いさんが声をかけてきた。

 そう言えば確か、お姉さんの所にあったシャンプーは花の薫りがしていました。

 私の使っているシャンプーは、ママから頂いた物なので、薫りは凄く良いのですが、ラベルが無いので、どこのメーカーなのかよく分かりません。

 辺りにはカレーの香りしかしませんが、お手伝いさんは鼻も良いようです。



「走って汗をかいてしまったので、知り合いのお姉さんの所でお風呂を借りました」

「制服も、良い香りが致しますね。ですが、シワが入っているのでクリーニング致します。お部屋でお召し物をお着替え頂いたら、通路に出しておいて下さい」



 お手伝いさんは、私の服の香りが変わった事も気がついていたようです。

 この柔軟剤の香りは好みなのですが、仕方がありません。



「はい。では着替えてくるので、ママに少し遅れることをお伝え下さい」

「承りました。……お嬢様?」



 部屋に向かおうとすると、お手伝いさんに引き留められた。



「もしかして、その薫りがお好きなのですか?」



 態度を変えたつもりは無いのですが、長年私の面倒を見てくれているので、ちょっとした仕草で気づいた様です。



「はい、大好きな薫りです」

「では、お嬢様のお召し物はその薫りに致しますね」

「ありがとうございます」



 嬉しくなった私が感謝の笑顔を向けると、お手伝いさんも嬉しそうにして台所に戻っていった。

 自室で着替えてから居間に来ると、ママの姿が見えませんでした。

 どうしたのだろうと佇んでいると、誰かが後ろから抱きついて来た。



「キャッ」

「うふ、ふふふ」



 お手伝いさんから私の事を聞いて、ママが隠れていたようです。

 こういう子共っぽい悪戯を、よくしてくるのです。



「クンクン、クンクン。あれ? 撫子ちゃん、ママのシャンプー使わなかったの?」



 そして、よく匂いも嗅がれます。

 なので、自宅に来る前にはお風呂に入るようにしています。

 今日はお姉さんのお家でお風呂を借りたので、マンションのお風呂はパスしました。



「……汗をかいたので、知り合いのお姉さんにお風呂を借りました」

「この薫りも、良いわね。撫子ちゃん、今度メーカー聞いておいて」

「はい」



 また、ラベルの無いシャンプーが家に来そうです。

 それよりも、私は向日葵の栞が気になって来たのです。

 もう少しで、ママのペースに巻き込まれる所でした。



「ママ、お客様から頂いた物はどこですか?」

「それねー。こっちよ。ママが買ってきた物も、有るわよ」



 ママが向日葵の描かれた大きな袋と、ジュエリーのマークが描かれた小さな袋を渡してきました。

 小さな袋は恐らく、アクセサリーだと思います。

 それよりも、気になる向日葵の大袋の中を見ることにしました。


 中を見てみると、枕になりそうな白銀の虎の縫いぐるみが一番上に乗っていました。

 不思議な色の、虎さんです。

 ママが白猫と書いていましたが、絶対に虎さんです。


 縫いぐるみを抱き上げると、袋の空いた着ぐるみパジャマが有りました。

 恐らく、ママが試着したのだと思います。

 ですが、小さすぎて諦めたようです。


 そして、お目当ての栞が一番下から出てきました。

 確かに、向日葵の絵が描かれていました。

 栞の裏を向けると、小さな向日葵の判子でNMと書かれていました。


 これは、一体何を意味するものでしょう? 

 それに、向日葵の袋に入った縫いぐるみと着ぐるみ。

 これらのプレゼントも、お兄ちゃんと繋がっている気がします。

 私はママにお礼を伝え、食事をしてからマンションに戻ることにした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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