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ヘイズスターバーストが、大剣を振るう度にゾンビを浄化していくと、黒衣の王の目が赤く光った。
すると、黒衣の王が杖を掲げた。
その瞬間、魔法陣から幾つもの魔獣が合わさった巨大なキメラのゾンビが現れた。
杖に秘密が有ると考え、よく見ると幾つか付いていた宝石が色を失っていた。
どうやら、杖に付いていた宝石の数だけ強力な異形ゾンビを作り出せていたようです。
ですが、杖の頭部に有る赤い石は健在。
恐らく杖の頭部にある赤い石は、魔法陣の制御とゾンビ達を操る石だと思う。
「ヘイズスターバースト、杖の赤い石は破壊しないで下さい」
もし制御が効かなくなった場合、魔法陣にどのような影響が有るか分からない。
ですので、魔法陣を破壊する事が優先なのです。
「撫子姫、難しい注文だ」
ヘイズスターバーストがそう言うと、キメラゾンビが大きく口を開け炎弾を放った。
そして炎弾を叩き切ると、「だが、武王骨神の力を持つ我らに不可能はない」そう言ってキメラゾンビを蹴り飛ばした。
それを見た黒衣の王は、再び杖を掲げ魔法陣からゾンビの群れを呼び出した。
阿修羅ゾンビに魔法陣を守らせ、グレートゾンビとゾンビの群れの一部を、スケルトングラディエーター達に放った。
そして魔法陣から距離を取り、キメラゾンビと共にヘイズスターバーストと戦い始めた。
するとスケルトングラディエーターとスケルトン達が、ヘイズスターバーストの指示を受け、角に後退し始めた。
恐らく、魔法陣から遠ざけたのでしょう。
そうすれば、瞬時に再生する事が出来なくなる。
ヘイズスターバースト達に黒衣の王と多くのゾンビを任せ、私達は魔法陣を優先することにした。
私のMPは66まで自然回復し、薺君のMPも18まで自然回復しました。
本当なら最大値まで回復させたい所ですが、魔法陣を破壊しなければ、時間と共にこちらが不利になるだけです。
MPを消費する姫立金花には危険時の補助攻撃を頼み、イベリスにはパーカーの中に居てもらうことにした。
実はHP自然回復の効果が、近接戦闘時において、かなり効果を発揮していたのです。
ヘイズスターバースト達と繋がった今、スケルトン達のHPとMPが見られる。
そのHPを見れば、その事がよく分かる。
前衛にいるスケルトン達のHPが減っていくと、後方と交代し直ぐにゾンビを攻撃。
それを繰り返すことで、スケルトン達も倒れることはなくなった。
「姫、僕達は魔法陣を守る阿修羅ゾンビを」
「はい」
返事をして薺君と一緒に魔法陣へ向かう為、懐剣を構えたのですが、背に有る白銀の鞘に入った大剣が気になった。
懐剣をアクセサリーに収納し、大剣を手に取ると手に馴染むように軽かった。
そして前を向くと、魔法陣までゾンビ達を倒していく光りの道筋が見えた。
迫ってきたゾンビに大剣を向け、導かれるまま光る場所に剣先を差し込むと、一瞬でゾンビが浄化した。
この光りは、ゾンビの核? 弱点?
眼に意識を集中させると、群がるゾンビ達の光りが見えた。
これが、武王骨神の力?
MPを節約したい今の状況では、打って付けの能力です。
「薺君!」
「行きましょう、姫!」
薺君と一緒に駆け出し、襲いかかって来るゾンビを切り倒していく。
光る道筋に沿う為、二人で声をかけ合う。
「薺君、袈裟切り、切り上げ」
私が声をかけゾンビを切り倒すと、私の隙を補うように薺君も声をかける。
「姫、逆袈裟切り、左薙ぎ」
そして、道筋に沿うよう再び声をかける。
「薺君、右薙ぎ。そして、後方ジャンプ! こっち、です」
「姫、左薙ぎ、そして、刺突!」
二人で隙を補いつつ進んで行くと、攻撃速度が上がっていった。
その攻撃速度で魔法陣に近づいて行くと、阿修羅ゾンビが六手に武器を持ち、襲いかかって来た。
阿修羅ゾンビの弱点は見えているものの、周りのゾンビが邪魔で今一歩踏み込めない。
ですが、少しずつ魔法陣へ近づいていく事が出来た。
群がって襲いかかってくるゾンビの攻撃は、魔法をあまり使えない状態では、流石に喰らってしまう。
イベリスの自然回復向上が無ければ、危ないところでした。
しかし、二体目の阿修羅ゾンビが魔法陣から出現した事で事態が一変した。
しかも魔法陣に近づくにつれ、ゾンビが増えて行く。
圧倒的なゾンビの数により、私達は魔法陣から少しずつ後退するしか道が無かった。
「姫、後退するしかありません」
「あと、一歩ですのに……」
ゾンビを切り裂きながら、薺君と共に少しずつ後退していきました。
「キー、シャー!」
ですがその時、姫立金花が雷を連続で五回放った。
しかも、以前より効果範囲が広がっている? 火力も?
すると、一瞬で周りのゾンビが燃え崩れた。
自身のMPを確認すると、141から減っていませんでした。
ここで、私のMPの最大値が251に増えている事に気づいた。
もしかして、レベルが上がっていたの?
そう言えば数え切れないゾンビを、薺君とヘイズスターバースト達と一緒に協力して倒した。
「薺君、レベルを見て下さい」
指摘した事で、薺君もレベルが50になっていた事に気がついた。
姫立金花とイベリスの項目を見てみると、HPとMPが表示されていました。
尻尾が増えた分、どおりでパーカーの膨らみが増えているわけです。
因みに、姫立金花のHPは514でMPは753有り、イベリスのHPは771でMPは502有りました。
先ほどの雷の攻撃で姫立金花のMPが30減りましたが、まだ余裕が有ります。
これなら、周りのゾンビを気にせず魔法陣に近づける。
後は二体になった阿修羅ゾンビに、どう対処するかです。
ですが、考える余裕などありません。
二体の阿修羅ゾンビが、魔法陣を守るべく私達に仕掛けてきた。
六本の腕で絶え間なく攻撃してくるので、こちらが防御に回ると返って不利になる。
薺君と絶え間なく攻撃する事で、阿修羅ゾンビとの攻防戦となっていた。
「姫、僕が……タァ! トォ!」
攻撃を仕掛けつつ、薺君が話しかけてきた。
私は耳を傾けつつ、隙をカバーする。
気の緩めない極限の攻防戦に、話す事がここまで辛いとは思いませんでした。
阿修羅ゾンビの攻撃で多少傷付きはしますが、二人ともレベルが上がった事と、武王骨神の能力で私の防御が底上げされ、私達のHPを留まらせていた。
それにHP自然回復向上のお陰で、HPの上下は激しいですが、危険ラインのHP半分以下にはならなかった。
「二体を、引きつけます。タァタァタァ! トォ!」
薺君が激しく阿修羅ゾンビの一体に攻撃を仕掛け、蹴り飛ばした。
その方法も考えましたが、薺君が技を常に使用しながらの攻防となるので、残りMPが38しか無いので危険な賭となってしまう。
「いえ、それは……ヤァァァァ! タァ!」
すかさず私も、もう一体に連続で攻撃を与え、蹴り飛ばした。
ですが、阿修羅ゾンビは直ぐに戻ってくる。
話すのも途切れ途切れになり、攻撃をするので、息も切れそうになる。
武王骨神のレベルがもう少し有れば、薺君の負担を減らせると思うのですが、基本となる剣士のレベルが無い私では、武王骨神のレベルが4あっても、能力を上手く使いこなせないようです。
「危険すぎます。ヤァァァ! ハー、タァ!」
互いに話せる隙を作りますが、阿修羅ゾンビも攻撃が激しくなってきた。
息切れする前に、どうにかしなくては……。
「ギュ」
「爆雷?」
私の肩で周りのゾンビ達に雷を落としていた姫立金花が、爆雷を放つと言ってきた。
新しいスキルのようで、雷の玉にゾンビが触れると、5秒間その周りに雷が落ち続けるそうです。
一つずつ放つので、その間休むよう言ってきた。
ですが、一つにつきMPを30使用してしまう。
姫立金花の、MPが持つか心配です。
薺君が一体の阿修羅ゾンビに攻撃を仕掛け、蹴り飛ばすと姫立金花が雷の玉を作り出した。
「シュー、シャー!」
そして蹴り飛ばされた阿修羅ゾンビに、爆雷を放った。
すると阿修羅ゾンビに当たり、周りのゾンビを巻き込み、雷が連続で落ち続けた。
周りのゾンビが燃え崩れる中、耐久力が有る阿修羅ゾンビは痺れて麻痺し、雷が10回落ちると燃え崩れていった。
これは、足止めに使えそうです。
その間も、ゾンビがこちらに近づきすぎないよう姫立金花が雷を放っていた。
ですが、やはり姫立金花の負担が大きすぎます。
一体の阿修羅ゾンビが倒れると、その場所に薺君と一緒に走った。
すると、もう一体の阿修羅ゾンビが追いかけてきた。
その阿修羅ゾンビに、姫立金花が爆雷を放つと、周りのゾンビを巻き込んだ。
更に、魔法陣から這い出てきた阿修羅ゾンビへ爆雷を放った。
すると魔法陣を囲っている赤い石が、透明なケースで保護されている事がわかった。
雷がケースの外を伝って、赤い石に届いていない。
これでは、赤い石を破壊して魔法陣を消滅させる事が出来ない。
「姫、やはり僕が阿修羅ゾンビを引きつけます。その隙に、魔法陣を破壊して下さい」
薺君は姫立金花を見て、そう言いました。
姫立金花のMPを、気にしているようです。
ですが赤い石はケースで保護されており、雷では破壊出来ない。
それに恐らく、薺君のように強力な技でしかケースは破壊出来ないと思う。
「薺君、技が使えない私では恐らく破壊出来ません。あのように、雷でも効果が無いので……」
薺君は、雷が轟いていた魔法陣を見て歯を食いしばった。
今は離れていますが、阿修羅ゾンビを同時に相手にすれば、薺君は技を使用するしか方法が有りません。
つまり足止め出来ずに倒してしまうと、魔法陣から阿修羅ゾンビが復活する事となり、赤い石を保護するケースを私が破壊出来なければ、同じ事を繰り返すことになる。
今は薺君のMPを温存し、爆雷で阿修羅ゾンビを誘導しつつ、魔法陣に近づく他ありません。
ただ、姫立金花のMPが持つかです。
「ミュウ」
イベリスが急にパーカーから顔を出すと、白いオーラを纏っていた。
しかも力を入れているようで、毛が逆立っていた。
そう言えば、かなり前からパーカーの中で震えていた気がします。
あれは震えていたのでは無く、どうやら能力を使用していたようです。
「ミャウ、ミャウ」
「九の手招き?」
話を聞くと新しい能力のようで、イベリスが力を溜めた状態で自身のMPを200使用すると、召喚者の武器による攻撃を一時的に、9つに増やすことが出来る近接特化能力でした。
但し30秒間しか持続時間が無く、再使用に一時間必要な様です。
ですが、魔法陣を破壊する事が出来る兆しが見えてきました。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




