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「薺君、どうしましょう?」
あの二体のスケルトンを倒して、先に進むべきか。
若しくは、魔法陣を優先するかです。
ですが、魔法陣の場所が分かりません。
イベリスと姫立金花は、瘴気が濃すぎて分からないと言っていました。
「姫、瘴気の渦巻く方を見て下さい。あちらから、ゾンビとスケルトンが出てきています」
つまり、元凶は瘴気が渦巻く方だと言うことですね。
私達は、瘴気が渦巻く下り坂を下りていくことにした。
※ ◇ ※
【ブルーローズSIDE】
撫子達が異界の鍾乳洞に入る前、ブルーローズはゴーストを倒し続けていた。
キャンピングカーに障壁を張れと撫子が言ったが、そこに居た女は強固な時空結界によって守られていた。
時空結界は、時をも止める効果が有る。
だが念の為、キャンピングカーに水の障壁を張った。
撫子に、嫌われたくはないからな。
しかし、ゴーストと言う物は貧弱すぎる。
「こうも弱いと、張り合いがない。我を脅かす物は、おらぬのか?」
ただ向かってくるだけのゴーストを前に、ブルーローズは愚痴を言っていた。
すると十数体のゴーストが、湧き出た瘴気に吸収されたかと思うと、鎌を持った霊体に変化した。
「ほおー、ゴーストの上位種シックルレイスか」
だがそれでは、我の清水の雨で事足りる。
辺りに浄化の雨を降らせると、数千体のシックルレイスは消滅していった。
しかし、瘴気が再び漏れ出てきた。
新たに湧き出てきた瘴気がシックルレイスとなり、数十体が濃度の高い瘴気に吸収され人型を形成した。
「スペクターキングとは、なかなかどうして」
だが、それでは我は止められんぞ。
撫子のレベルが46に上がり、我のレベルも上がってMPが2310となった。
何百、何千来ようとも、討ち滅ぼしてくれる。
清水のブレスを吐こうとすると、空中で数百体のスペクターキングが集合しだした。
奇っ怪な。王同士は、群れぬ存在だ。何故に、群れる?
「……何? レギオン化だと?」
霊体の中でも個体として力を有するスペクターキングが、集合体となるなど有り得ん。
だが現に、集合体となった。
名を付けるとすると、レギオンエンペラーか。
「「「「「「「「「グギャー!」」」」」」」」」
集合体のレギオンエンペラーが、咆哮をあげた。
そして、瘴気を集め出した。
「我に匹敵するか、試して進ぜよう」
清水のブレスを放つと、瘴気を吐かれ清水が地に落とされた。
我より、レベルが上か……だが、弱点は変わらぬ。
再び清水のブレスを放とうとすると、湧き出る瘴気を地下から吸い寄せ瘴気の固まりを放ってきた。
「むっ! 我より早い」
こちらも清水のブレスを放つと、打ち消し有ったが瘴気が少し降りかかった。
奴が放つ瘴気は、瘴気毒が有るようで、我の鱗が腐食した。
「【癒やしの清水!】」
鱗の腐食を浄化して回復させると、奴は連続で瘴気を放ってきた。
上に飛んで回避すると、天狗岩と呼ばれる物が腐食した。
回避すれば、大地が腐食。
やはり海水を使用する他、手は無いようだ。
「【海水陣!】」
多量な海水で円陣を組むのだが、海まで少し距離が有るので暫し時間がかかる。
だが我には、周りにも豊富な水源が有る。
この国は、水の豊かな地だ。
レベル差があろうと、水が有れば関係はない。
「【清水竜巻!】」
浄化の清水が渦巻く竜巻を取り囲む様に発生させると、奴は地下から瘴気を吸い寄せた。
「瘴気で、身を守ったか」
巨大な清水の竜巻を放つと、奴の瘴気が拡散された。
しかし奴は、再び瘴気を地下より吸い寄せた。
我の水と、張り合うようだ。
「我の水と其方の瘴気、どちらが尽きるか勝負!」
奴との激しい戦いが始まると、夥しい瘴気が上空に舞い散った。
その舞い散った瘴気が、結界に阻まれていた。
しかし、あのままでは不味い。
新たな物が生まれる前に、結界の最上部に清水の玉を放つことにした。
「浄化の清水よ、球体となり天の瘴気を浄化せよ!」
結界近くに有る拡散された瘴気に浄化の水弾を放っていると、奴が瘴気を纏って突進して来た。
「「「「「「「「「グギャギャー!」」」」」」」」」
「【五重の清水障壁!】」
天の瘴気を浄化しつつ水の障壁を張ったが、奴は四枚の障壁を破壊し止まった。
いや、瘴気を補充出来る場所から離れなかっただけ。
そう思った瞬間、奴は溜めていた瘴気を爆発的に放った。
「ぐっ!」
最後の障壁が破壊された瞬間、激痛が走り腐食の瘴気が纏わり付いた。
2370あったHPが一気に370まで減ったが、こちらも罠を仕掛けていたのだ。
「海水陣、解放! 【浄化の大津波!】」
浄化の大津波をまともに喰らったレギオンエンペラーは、瘴気諸共消え去った。
その瞬間、我のレベルが47となった。
我のレベルが上がったのなら、撫子も上がった筈だ。
再び次のレギオンエンペラーを警戒し、海水陣を呼び寄せていると、瘴気の発生が穏やかになった。
「異界の門を、清水の障壁で塞いだか。だが、少し甘い」
まあ、良い。
撫子が、おこなったのであろう。
「ふっ、ふははは!」
久々に、滾る戦いであった。
こうした戦いは、凶悪な鬼共と戦った時以来だ。
レギオンエンペラーよ、良き戦いであった。
礼を言う。
そう言えば、撫子に伝えた方が良いだろうか?
風神の祠に、大天狗の羽団扇が有ったことを……。
まあそれは我と同じ様に、あの方が撫子を導くであろう。
こうしてブルーローズは、再び弱いゴーストを倒し続けるのであった。
※ ◇ ※
【撫子SIDE】
瘴気の渦巻く坂を下りていくと、何体もゾンビとスケルトンが現れた。
このゾンビとスケルトンを倒していけば、少しは上の瘴気の発生を抑えられる。
私達は下りる度に、増えていくゾンビとスケルトンを倒し続けた。
倒し続けて坂道を下っていくと、黄色い靄が立ち込め、小さな水溜まりが所々有る広場に着いた。
すると、イベリスがモゾモゾしだした。
「ミャオミャオ!」
なぜか臭いと言って、顔を私の谷間に押しつけた。
「イベリス、どうしたの?」
イベリスの行動を不思議に思っていると、肩に乗っていた姫立金花が前を向いて毛を逆立てた。
「シャー!」
姫立金花が見つめる先を見ると、六体の双頭のゾンビが横一列にいた。
そして、片方の口から黄色い息を吐いていた。
私は外套のお陰で感じられませんが、鼻の良いイベリスには、あの黄色い息が臭いようです。
もう片方は、一定量の液体を時折吐き出していた。
「姫、新手のようです」
薺君は、木刀と脇差しを構えた。
そして飛び出そうとした瞬間、姫立金花が薺君の頭の上に乗って尻尾で眼を覆った。
すると、薺君が足を止め姫立金花を抱き上げた。
「姫立金花、危ないよ?」
「キーキー!」
「薺君、姫立金花が待ってほしいと言っています」
姫立金花に話を聞くと、双頭のゾンビの片方が吐いているあの息は、強烈な刺激臭を持つ神経系に作用する瘴気で、一息吸い込むと肺が焼け爛れ、人なら1分足らずで死亡してしまうそうです。
「グゥグゥ、ギュ-ギュー」
更に詳しく話を聞くと、もう片方の頭から出ているのは涎なのだそうです。
その涎が皮膚に付くと、麻痺を起こし骨まで溶けてしまう恐ろしいもののようです。
「姫立金花、助かった。ありがとう」
「コッコッコ」
薺君がお礼を言うと、姫立金花は嬉しそうに鳴いていました。
黄色い瘴気が辺りに舞っているので、この外套が無ければ危ないところでした。
もし双頭のゾンビが人の世界に出てしまうと、大変なことになってしまう。
外套の能力で、双頭のゾンビの瘴気は防げますがあの涎が厄介です。
しかも所々に有る水溜まりは、恐らくあのゾンビの涎。
お使い様から頂いた靴が有るとは言え、もし撥ねて皮膚に付くと危険です。
幸い六体のゾンビは足が遅いようで、こちらに気がつきましたがゆっくりと近づいて来るだけです。
遠くから攻撃出来る手段を持つ私であれば、近づかれる前に攻撃出来ます。
「姫立金花、雷をお願い」
「グゥグゥ、ギュー」
「えっ? 可燃性の、ガス?」
雷を放つと引火して、爆発するので放てないと言われた。
でしたら、浄化の水を放てば問題は有りません。
「薺君、あのゾンビに清水弾を放ちます」
一体に清水弾を放つと、当たる直前隣の一体が引っ張り、清水弾を無理矢理躱させた。
どうやら横一列に並んでいるのは、足の遅さを力でカバーするためのようです。
連続で清水弾を放つと、ゾンビが協力して引っ張り合い躱し続けた。
異常な動きで予想ができず、清水弾を幾つ放っても躱されてしまう。
「何だ、あの動き。姫、僕も協力します」
薺君は、姫立金花を肩に乗せ直し駆け出しました。
止まりそうになかったので、私は薺君の木刀と脇差しに清水で出来たウォータージェットカッターを付与し、姫立金花に薺君を守るよう指示しました。
「姫、感謝します」
薺君はそう言って、水溜まりを器用に避けつつ双頭のゾンビ達に攻撃を仕掛けた。
外套に色々な耐性は有りますが、溶かす物に対する耐性が有るとは思えません。
それに涎を浴びて溶かされると、HPが0になる前に癒やしの光りが間に合うかが分からないのです。
薺君が木刀と脇差しを素早く振るうと、ゾンビは引っ張り合いをして躱していく、私がそこに清水弾を放つのですが、別のゾンビが無理矢理引っ張り当たらない。
薺君はゾンビの涎を木刀で切り裂き、躱していました。
どうやら清水のウォータージェットカッターが、涎を浄化しているようです。
しかし、私達の攻撃も当たりません。
「「「「「「グギィ!」」」」」」
その時、双頭のゾンビ達が咆哮を上げた。
「ミー!」
そして、その瞬間イベリスが大きく鳴いた。
「上?」
イベリスの叫びに上を見ると、天井からゾンビが多量に降ってきたのです。
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