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 薺君に鍾乳洞の件を相談すると



「姫、僕はどこまでも貴女についていきます」



 と即答されました。

 即答されたことに、私は嬉しさと少しの恥ずかしさを感じ、その時はお礼を言えませんでした。

 ですが鍛錬や不測の事態に、薺君が来てくれると本当に心強いです。



「薺君、いつもありがと」



 今度はお姉さんに、鍾乳洞へ薺君と一緒について行って良いか確認すると



「撫子ちゃん、ええよ。せやけど、親御さんに聞いといてな。それに、うちはフィギュア雑誌の題材集めも兼ねてるさかい長時間一緒におられへんけどええか?」



 と言われました。

 ただ今回も、あの車でお姉さんが運転して行く事になるか気になります。

 ですので、思い切って確認しました。


 すると、近くの車屋さんにエンジンのオーバーホールとチューニングを依頼しているので、その日は電車とタクシーを使って行くと言っていました。

 ですのでママへ連絡し、お姉さんと薺君と一緒に鍾乳洞へ行きたい旨を伝えると



「お姉さんに迷惑がかからなければ、良いわよ」



 と即答されました。

 しかも、自宅の車庫に有るキャンピングカーを使用しても良いと言ってきました。

 お姉さんにママが車を貸してくれると伝えると、かなり喜んでいました。


 鍾乳洞と共に、本当はカルスト台地も見たかったようです。

 ですので、足が有って助かると言っていました。

 そしてトントン拍子で話が決まり、休日にお姉さんと薺君の三人で鍾乳洞へ行くことになった。


 恐らくこれだけ早く決まったのは、お使い様のお力添えだと思う。

 次の日、学校から帰ってくるとメッセージカードと外套と靴がテーブルの上に置いてあった。

 外套が気になりましたが、先ずはメッセージカードから読むことにした。


 メッセージカードを見てみると、異界の鍾乳洞内にある魔法陣の破壊依頼でした。

 異界とは、何でしょう? 

 不思議に思い、内容を詳しく読んでいると分かってきました。


 鍾乳洞の奥には照明が無く地下水が流れている狭い入口が有り、その奥を更に進み続けると、最も奥に通常の人では入る事が不可能な鍾乳石の結界が有るそうです。

 その結界を越えて中へ入ると、異界の鍾乳洞に繋がっているというのです。


 そして異界の鍾乳洞の最も奥に、魔の者が魔法陣を設置したというのです。

 今は結界周囲に、人払いと魔物払いをかけてあるので、異界の鍾乳洞から魔物は出てきていないそうです。

 ですが魔法陣を放置し魔物が増え続けていると、瘴気が充満してくるそうです。


 瘴気が充満すると強い魔物が生まれ、その魔物により結界が破壊され、私達の世界の鍾乳洞と繋がる恐れが有るというのです。

 この外装は、その結界内に進入する為の物なのだそうです。


 その他の外装と機能として、身体異常無効化(瘴気無効化を含む)、短時間透明化、衣服防具再生付与機能、身体正常化と体温調節機能、マークした場所への転移機能が付いており、過酷な環境下でも快適でいられるそうです。


 靴は、鍾乳洞内で足を滑らせないようにする能力が付与されているそうです。

 今回はこの外装の結界進入を使用し、異界の鍾乳洞の最も奥へ行き、魔法陣を破壊するという依頼を告げられたという訳です。


 鍾乳洞へ行く当日の早朝、ママの専属運転手さんがキャンピングカーに乗って私を迎えに来てくれました。

 キャンピングカーに乗ってお姉さんの自宅へ行くと、お姉さんがお得意様から頂いたという人数分の入洞無料券を持っていました。

 恐らく、お使い様から頂いた物でしょう。

 専属運転手さんにお礼を言って別れようとすると



「お嬢様、奥様からの伝言です。冷蔵庫に食材や飲み物を、沢山入れてあります。着替えも用意してありますので、お好きにお使い下さい」



 と言って帰っていきました。

 恐らく、ママがお手伝いさん達に言って頂いた物だと思います。

 お手伝いの皆様、いつもお気遣いありがとうございます。

 私は心の中でそう言って、お姉さんと薺君をキャンピングカーに招き入れました。

 するとお姉さんが運転席に座ったのですが、いつものように手袋をしませんでした。



「撫子ちゃん、なんで運転手さん帰ってしもたん? うち、こないな車怖ーてよう走らんわ」



 どうやらお姉さんは、スポーツタイプの車やセダンタイプの車以外は怖いようです。



「ではお姉さん、安全運転で行きましょう」



 ですがお陰で私は、願ったり叶ったりです。



「せやな……せっかく、貸してもろたんやし」



 お姉さんは、恐る恐る車を動かし始めました。

 目的の鍾乳洞近くの駐車場にたどり着くと、早速私と薺君は一つ目のマークとして車の前を登録しました。

 これで、いつでも車の前まで転移することが出来ます。


 駐車場から長い階段を降りて入口にたどり着くと、無料入洞券を見せて鍾乳洞へ入りました。

 ゴツゴツした鍾乳石、垂れ下がる鍾乳石、色々な形をした岩や石を見て、不思議な感覚で見とれていました。


 ですが足下に水が流れ、奥へ行くほど狭くなった事で少し怖くも感じました。

 進んで行く内に岩肌から水が流れたり、途中から川のようになっていて、後ろを振り向くとお姉さんが震えていました。



「うわー、めっちゃ冷たいやん! これ、まだ進むん?」

「お姉さんせっかくですし、照明が無くなる手前まで進みましょうよ?」

「せやな……」



 お姉さんの言葉から、水温はかなり低いようです。

 私と薺君は、外装のお陰で何ともありません。

 お姉さんは愚痴を言いながらも、先へ進むと照明が終了する看板が現れました。


 これより先が、危険エリアのようです。

 ですが、私と薺君はここから先へ進まなくてはなりません。

 私達は、二つ目のマークをここへ登録しました。


 登録したことで、ここへ転移する事が出来ます。

 再び来た道を戻り駐車場までやって来ると、お姉さんが車のトイレに駆け込みました。

 どうやらお姉さんは、水で冷えてお腹をこわしてしまったようです。



「お姉さん、少し散歩してきても良いですか?」

「ええけど、遠くまで行かんといてや」

「はい、薺君が一緒なので大丈夫です。お姉さん、お大事に」



 そう言って、私達は先ほどマークした鍾乳洞の奥へ転移することにしました。

 薺君と一緒に転移し、鍾乳洞の中間地点までやって来ると、目を疑う状況が生じた。

 澄んでいた鍾乳洞の地下水が、赤みを帯びていたのです。


 こんな事もあろうかと思い、お使い様から頂いた水着を下に着てきて正解でした。

 薺君も初めから、下に履いていた物はお使い様から頂いた水着でしたので、私と同じように水に濡れることを考えていたようです。

 服とショートパンツをアクセサリーに収納すると、薺君が急に後ろを向きました。



「薺君、水着ですよ?」

「……姫、着替えるときは先に言って下さい」



 外套も着ているので気にすることは無いと思うのですが、変な薺君です。

 薺君が先に入り、私も四つん這いになり低い穴を抜けると中は真っ暗でした。

 ですが、少し先に光りが見えたのです。

 二人で防水ヘッドライトと防水ランタンを付けると、前方に男女二人が倒れていた。


 すぐに駆け寄り、明かりを照らすと二人とも酷い出血です。

 特に男性の方は、出血多量による意識喪失、脈拍微弱、頭部外傷、後頭部及び背部挫滅創、両上肢開放性骨折、あまりにも酷い状態で一つ一つの診断を上げると切りが無い。

 女性の方も、意識喪失、低体温、顔面から腹部にかけて多発性の挫創がみられた。


 私はすぐに、癒やしの光りを二人にかけた。

 すると、癒やしの光りで二人の傷は癒えたのですが意識は失ったままです。

 気を失っている状態で、冷たい水に晒されていると今度は低体温になってしまう。

 私は水を操る事が出来る、ブルーローズを呼び出すことにした。



「ブルーローズ、二人を安全なところに運んで!」



 すると、ブルーローズから「撫子、済まぬ。我では、この鍾乳洞を破壊してしまう」と伝わって来た。

 確かに30mの大きさのブルーローズを、ここで呼び出すには狭すぎる。

 人型になれないのか聞いてみると、私のレベルが72以上にならないと変化(ヘンゲ)出来ないようです。


 狭い通路と冷たい地下水に困っていると「撫子、なぜ我の力を使わない?」とブルーローズに問われました。

 ブルーローズによると、召喚者もあやかしの恩恵を受け、中級程度であれば私も水を操れるというのです。


 言われるままに【水の華】を作り出すと、気絶している男女二人に持たせました。

 すると、水が二人を避けだしたのです。

 次に【水の衣】を作り出し、二人に着せました。

 この衣は、体温を調節する効果が有るそうです。


 これで、低体温症も防げるでしょう。

 私はイベリスと姫立金花(ヒメリユウキンカ)を呼び出し、薺君を守るように言って、助けを呼びに外に転移した。

 すると、空を覆う結界が張られていたのです。


 恐らく、お使い様がこれ以上被害が出ないようにしたのでしょう。

 駐車場から長い階段を一気に駆け下り、受付までやって来ると誰も居ませんでした。

 どうやら、人払いの力も働いているようです。

 再び鍾乳洞に入口から入ろうとすると、入口に結界が張られていました。


 これでは、私達以外は出入り出来ません。

 再び鍾乳洞の中間地点に転移すると、姫立金花が分身を三体呼び出し、男性を銜えて流れる川を泳いできました。



「姫立金花、ありがとう。男の人を、運んでくれたのね」

「「「「キュウ」」」」



 四匹で銜えないと、水が男性を避けるので、浮力を利用して運ぶことが出来ないようです。

 姫立金花が、再び洞窟の奥へ戻っていくと今度は女性を銜えて戻って来ました。



「姫立金花、二人を水がない所までお願い出来る?」

「「「「キュウ!」」」」



 姫立金花が任せてと言って来たので、二人のことを任せることにした。

 再び流れる川の穴を潜り出て来ると、薺君とイベリスが待ってました。



「姫、おかえりなさい」

「ミュウ」

「ただいま。……キャッ!」



 返事をして前を見ると、防水ランタンで照らされた少し先に骸骨が横たわっていた。

 一瞬驚きましたが、恐らくあの骸骨が男女を襲った魔物だと思う。



「薺君、あの骸骨は何です?」

「恐らく、スケルトンです」



 薺君曰く、骨格を鍾乳石が覆うように付着しているスケルトンだそうです。

 では、鍾乳石スケルトンと呼ぶべきでしょうか? 

 心臓辺りに有った、赤く光る石を破壊するとバラバラになったと言っていました。


 そしてもう一体は、イベリスが聖属性が付いた爪で引っ掻くと煙のように消滅したそうです。

 薺君曰く、イベリスが倒したのはゴーストと呼ばれる霊体だと言っていました。

 しかもスケルトンは、鍾乳石で出来た武器を持っていたそうです。


 どうやら男女二人の傷は、その武器で傷つけられたもののようです。

 魔物がここまで来たと言うことは、つまり先に有る結界が破壊されたと言うことです。

 私は先ほどの入口に、姫立金花が通れる隙間がある水の障壁を作りました。


 この水の障壁は聖なる浄化の力を持っているので、先ほど来た魔物は触れただけで消滅する筈です。

 イベリスに頼んで武器に聖属性を付与し、私達は先へ進む事にした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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