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薺君と一緒に外へ出て来ると、騎士団や大人の人達と、体躯4mの大型ゴブリンが戦いを繰り広げていた。
「僕に続いて、第一騎士団及び第四騎士団は大型ゴブリンへ突撃!」
指揮は、二組のクラス委員長が執っていた。
「欄音ちゃん、椿来ちゃん、美桜ちゃん、百合愛ちゃん、花に続いて来て! イベリスちゃんも、行っくよー!」
花ちゃんに、いつもの子達がくっ付いて戦闘に参加していた。
ですが、恐怖心は無いのでしょうか?
薺君に確認すると、騎士団の能力は騎士の資質に係わる全てを習得しており、武器の取扱や恐怖耐性など様々な能力を持ち合わせているのだそうです。
そして、指揮する長たる者の指示に従うようです。
「花ちゃん、本当に撫子ちゃんが私の着せ替え……」
「椿来ちゃん、それは後で話すから欄音ちゃんみたいに花の右側から付いてきて!」
「花ちゃん、本当に撫子ちゃんが私共の下着をパジャマ……」
「百合愛ちゃんも後で話すから、美桜ちゃんみたいに花の左側から付いてきて!」
……戦闘中に、一体何を話しているのでしょうか?
それに、花ちゃん? 私は、何も聞いていませんよ。
もしかすると、椿来ちゃんと百合愛ちゃんの我は騎士団の統制能力に対抗しているのかもしれません。
薺君に確認すると、私の精神面に比例するようです。
確かに、あの二人の押しの強さは私も参ってますからね。
「イベリスちゃんだけが、花の言うこと聞いてくれるお利口さんだよね」
「ミャウ!」
イベリスが花ちゃんに任せてと返事をすると、花ちゃん率いる女子部隊が大型ゴブリンの視線を誘導し、隙が有れば足をイベリスと一緒に攻撃していた。
花ちゃん達が使用している武器は、サバイバルナイフのようです。
そう言えば、店の奥の戸棚にサバイバルナイフが売っていました。
花ちゃん達が大型ゴブリンを誘導し後方を向かせると、大人の人達が連携するようにボウガンや釘打ち機などでゴブリンを攻撃していた。
ゴブリンは大型だけ有って一撃の攻撃力は有りますが、小型のゴブリンよりも動きは遅く、女子の方に目が向いていたので、誘導し攻撃する事ができたようだ。
「続いて、第二騎士団及び第三騎士団は大型ゴブリンへ突撃!」
そして大人達の遠距離攻撃が止むと、二組のクラス委員長が背を向けた大型ゴブリンに騎士達を突撃させた。
圧倒的な数の優位で、大型ゴブリンを翻弄。
捕縛は出来なかったものの、倒す事が出来た。
すると、私の懐剣の鍔に付けていた幸運の飾り石が微かに光った。
「コッコッコ」
姫立金花が嬉しそうに鳴いたので、どうしたのか聞いてみると尻尾が四本に増えたそうです。
姫立金花の尻尾が増えたと言うことは、私のレベルが一気に?
幸運の飾り石の光りを不思議に思いつつ、レベルを確認するとLV36から40に上がっていた。
薺君にレベルを確認すると、LV39から40になったそうです。
どうやら幸運の飾り石は、幸運の光りが灯った時、ランダムで経験値増加をしてくれるようです。
お陰で私のHPは187から207になり、MPは181から201になりました。
薺君のHPは294から300になり、MPは76から78になったそうです。
同時に、花ちゃん達もレベルが上がっていました。
ですが、飾り石の光り方が微妙すぎて気がつきにくいのが難点ですね。
レベルが上がったのは良いのですが、不味い事にもなりました。
大型ゴブリンを捕縛せずに倒したと言うことは、ゴブリン側で大型ゴブリンが魔法陣より再び現れている事になります。
つまり、ゴブリン側に知られたと言うことです。
「姫、急いで出立を」
「はい」
薺君の言葉で思い出し、私は大きな盾を装備しました。
この盾は施設の人とお店の人達が協力し、鉄板を中に入れて作ってくれた特別製で、かなり頑丈なのです。
ただ結構重いようで、大人の人達が二人で持っていました。
ですが、私は左手だけで盾を自由に動かすことが出来ます。
これが、レベルと言う力の差なのでしょう。
近衛騎士達も皆、大きな盾を装備したので弓対策は万全です。
「近衛騎士団、前進!」
薺君の号令で出立し、滝の近くまでやって来た。
すると、急に二十本の矢が雨のように空を覆った。
同時に、ナイフ持ちゴブリンが二十体襲いかかってきた。
やはり、待ち伏せされていたようだ。
「密集陣形! 周りにいる騎士以外は、盾で矢を防げ!」
薺君の指示で盾を掲げると、雨のように降ってきた矢を防いだ。
そして、突撃してきたゴブリンを木刀で倒していった。
しかし、矢はナイフ持ちゴブリンも襲っていた。
魔法陣が有る事を利用し、ナイフ持ちゴブリンは捨て駒にするようだ。
その時、武器に付加された雷がゴブリンを数体麻痺させていた。
十五体のナイフ持ちゴブリンは倒してしまったが、麻痺させたゴブリンは五体いた。
「これは、使える。親衛隊長!」
近衛騎士の言葉に、薺君は頷いた。
辺りを警戒していると、再び矢が二十本降ってきて同時に十五体のナイフ持ちゴブリンが襲いかかってきた。
そのナイフ持ちゴブリンを倒さずに麻痺させていき、矢が放たれた位置を特定。
武器を取り上げ、麻痺したゴブリン二十体を一カ所に集めた。
「近衛騎士は、六名を残し二人一組で散開!」
薺君の指示に従い、散開した近衛騎士は次々と弓持ちゴブリンを麻痺させていった。
そして散開した騎士達が、暫くすると戻って来た。
しかし、麻痺させたゴブリンは十体しかいなかった。
二十本の矢の数と、合わない。
つまり、十体の弓持ちゴブリンがどこかに身を隠したのだ。
しかし、ここに集めたゴブリンをこのままにしておく訳にもいかない。
「親衛隊長、ここは僕が守ります」
一人の近衛騎士が、名乗りを上げると他にも三名が名乗り出た。
しかし、四名で守るには心許ない。
薺君が顎に手をやっていると、滝側から棍棒を持った大型ゴブリンが現れた。
そして、私達を無視するかのように店の方へ走り去った。
「親衛隊長、如何しますか?」
近衛騎士の一人が、大型ゴブリンの行動を見て薺君に尋ねた。
「恐らく、陽動だ。あちらは、第一騎士団達に任せる。ここは、近衛騎士達全員で守ってくれ」
薺君は大型ゴブリンが戻って来る場合を考え、麻痺したゴブリンの管理と、潜んでいる弓持ちゴブリンの事を近衛騎士達に任せた。
滝に魔法陣が有る事を考えると、鉈持ち大型ゴブリンだけとは限らない。
それを踏まえ、私と薺君は二人で滝へ向かう事となった。
薺君と一緒に滝へ向かっていると、胸元で「ピシッ」と何かにヒビが入る音が聞こえた。
不思議に思い胸元を見てみると、姫立金花が「どうしたの?」と言う表情で私の顔を見上げた。
「いえ、何でもないです」
小声でそう伝えると、姫立金花が前方を見て毛を逆立てた。
姫立金花の緊迫した表情に前を見ると、滝を背にした体躯が6mは有ろうかと思われるゴブリンが鉈を持ってこちらを睨んでいた。
そして驚く事に、滝の後ろ側に大穴が開けられ、赤黒く光る巨大な魔法陣があった。
「グギィー!」
薺君が武器を構えると、大型ゴブリンが咆哮を上げた。
棍棒持ちゴブリンよりも、巨大だ。
私の攻撃で、効果が有るだろうか?
雷を放ったとき後ろに下がられると、滝の水に阻まれて雷は効果が薄くなってしまう。
しかも、足場には水がある。
薺君が技を繰り出すにも、不向きな場所。
その場から動こうとしない、大型ゴブリンに悩まされた。
薺君と私が考えを決め打って出ようとしたその瞬間、魔法陣が怪しい光りを発した。
すると、二十体の弓持ちゴブリンと二十体のナイフ持ちゴブリンが現れた。
「キャッ」
「姫、済みません」
薺君は逸早く気づき、足の速い私を止めてくれたようです。
「薺君、ありがとうございます」
ですが、不味い状況になりました。
魔法陣は滝に守られているので、遠距離からの雷では届かない。
それに巨大ゴブリンだけで無く、弓とナイフ持ちゴブリン達が滝の奥で待ち構えている。
これでは、魔法陣はますます破壊しにくくなった。
雷を使用しつつ、薺君と手を繋いだ状態で滝の中へ進入。
弓持ちとナイフ持ちゴブリンを、滝の奥で雷を使用し一気に倒す。
薺君は、大型ゴブリンを滝の奥まで誘導し技を使用して倒す。
そう提案したのですが「姫、それはリスクが高すぎます」と薺君に言われた。
薺君曰く、大型ゴブリンが滝の奥で暴れ弓持ちとナイフ持ちゴブリン達と乱戦になれば、倒されても何度でも魔法陣から出てくるゴブリンの方が有利だと言っていました。
暫くの間睨み合いが続きましたが、薺君が覚悟を決めて私の方を向いた。
「姫、僕が……」
「撫子ちゃん!」
すると薺君が何かを言いかけたその時、花ちゃんの叫ぶ声が後ろから聞こえてきた。
「花ちゃん?」
私達が驚くように後ろを振り向くと、花ちゃんがアーチェリーを持ってやって来た。
そして遅れて、欄音ちゃん、椿来ちゃん、美桜ちゃん、百合愛ちゃんがアーチェリーを持って走って来た。
アーチェリーは、店主の息子が管理していた施設の学生達が昔使用していた物らしい。
新しい物に買い換えたので、古い物を倉庫に置いていたそうです。
店主がそれを思い出し、倉庫の奥へ入っていった。
しかしその時、滝側から棍棒持ちゴブリンが襲来。
手加減しつつ捕縛を試みたが、山側へ素早く後退し陣取った。
そして暫くすると、山側から弓持ちゴブリン十体と、武器無しゴブリン四十体が現れ再び戦闘となった。
しかし、弓持ちゴブリン十体が弓を放って応戦しつつ棍棒持ちゴブリンの元へ後退。
やむを得ず、武器無しゴブリン四十体をその場で倒したそうだ。
因みに、初めに捕縛したゴブリン二十体は、大人の人達が倉庫に檻を作って閉じ込めたので問題は無いそうです。
恐らく武器無しゴブリンは、山から下りてくる際、捕縛した四十体のゴブリンだと考えられる。
弓持ちの十体は、行方を晦ませたゴブリンだろう。
そして暫くすると、店主が倉庫から旧型のアーチェリーを沢山持って来てくれた。
しかしアーチェリーは、大人の人達で使用出来る人は居なかった。
ですので、花ちゃん達と第四騎士団が装備する事になったそうです。
その後花ちゃん達は、倒したゴブリンの事を知らせる為に滝側へ走った。
そこで、近衛騎士達と合流。
近衛騎士達は現在、頭の良い弓持ちゴブリンの襲来を考え、麻痺したゴブリン三十体を店の檻に輸送しているそうです。
その代わりに、花ちゃん達がアーチェリーを装備して応援に来てくれたと言うわけだ。
ただ花ちゃんがこちらに来たことで、騎士達や戦いに参加してくれた大人の人達の回復面が気になります。
花ちゃんにその事を伝えると、走れば直ぐに店側に行けるし、人が多いから大丈夫だと言っていました。
確かにそうなのですが、重傷を負ってしまった場合のことを考えると心苦しくなってしまいます。
「ねえねえ、撫子ちゃん。花、弓矢放って良い? 大きな的だから、後ろに放っても当るよね」
「えっ?」
花ちゃんが言ったことに、薺君の方を見ると頷いていました。
女官近衛騎士や侍女騎士は、他の騎士達とは違い遠距離攻撃に特化した能力を有しているそうです。
女官近衛騎士の能力で言えば「遠距離武器攻撃必中、遠距離武器攻撃飛距離2倍、遠距離武器攻撃力2倍、遠距離武器の致命的一撃の確立アップ」だそうです。
侍女騎士の能力で言えば「遠距離武器攻撃飛距離1.5倍、遠距離武器攻撃力1.5倍、遠距離攻撃特殊」だそうです。
「それは、花ちゃんだけです。欄音と椿来ちゃんは、吹き飛ばし攻撃出来るだけです」
「美桜と百合愛ちゃんも、攻撃速度を遅くさせるしかで来ませんわ」
これは、私達にも勝機が見えてきた。
ただこのメンバーは、統制が取れていないのが難点なのです。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




