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 私は思わずバスから飛び降りると、傷だらけの子の元へ行っていた。

 全身に、汚染された切創及び刺創(シソウ)を確認。

 背部の刺創が異常に多いので、伝令を優先する事を目的とし、狙われつつ無理をしてここまで走って来たのだと思う。


 刺創は皮下組織や筋肉に達していましたが、幸い内蔵や深部の血管には達していませんでした。

 ですが炎症を起こし、かなり危険な状態とも言えます。

 つまりこのままだと、重度の感染や破傷風、そして壊疽を引き起こす可能性が高いのです。

 この子を襲ったものは恐らく、汚染された刃物と少し離れた位置を攻撃出来る弓か吹き矢。


 傷だらけの子は、私が(ソバ)へ行って抱きかかえると気を失った。

 ですが直ぐに、癒やしの光りを使用したので顔色が良くなった。

 背部の刺創から幾つかの異物が出てきたのですが、折れた鏃のような物でした。

 かなり小型ですので、やはり小型の弓か、吹き矢の(タグ)いかも知れません。



「「姫、お強いのは承知していますが一人で飛び出すと危険です。僕達と、行動して下さい」」



 少しすると、風と共に護衛の近衛騎士が走ってやって来た。

 咄嗟に足へ力を集中させたので、私の早さは騎士達の早さを陵駕していたようです。

 薺君を見ると、私の元へ行こうとしているのを他の騎士から止められ頭を掻いていました。

 いつもと違って、今日の薺君は騎士達の長ですからね。



「すみません。ですが、この方の傷を早く治して差し上げたくて……」



 素直な気持ちを伝えると、近衛騎士は私に深くお辞儀をした。



「「姫、感謝します」」



 そして、気を失った子をバスまで運んでくれました。

 暫くして気を失っていた子が眼を覚ますと、二組(ニクミ)と三組の子達の状況がある程度把握できた。

 先生と二組(ニクミ)三組の女子達は、それぞれ近くにあった店に店主達や観光客と共に避難。

 第一騎士団と第二騎士団でゴブリンを迎え撃ったのですが、守らなければならない人が多すぎて、第二騎士団の負傷者が五名出てしまったようです。


 人数的に不利だと悟った第一騎士団長が、籠城する人数を振り分け騎士団を分断。

 現在それぞれの店を木材などで補強し、籠城しているようです。

 ですが度重なる襲撃を受け、こちらへ助けを求める伝令を寄越したと言うわけです。


 薺君はまず矢対策として、施設の人達などの協力をへて盾を作成。

 騎士達に、盾を持たせた。

 そしてバスにも矢対策の補強を行い、右側面に施設の人達がボウガンや高圧釘打ち機を撃てるよう、小さなのぞき穴と射出口を作った。


 のぞき穴や射出口は、騎士達が店へ助けに行く際、施設の人に側面からの攻撃に対して協力してもらうため作った物だ。

 ただ移動手段の大型バスの確保を優先するか、店に助けに行くかで大人達と意見が割れた。

 大型バスの確保は出られることを前提としたものなので、結界で外へは出られないという説明をする事に苦労させられた。


 ですが第一発見者の施設の人がこういった事に理解してくれる方で、その方の助けを借り上手く話がまとまった。

 滝の駐車場へ行くまでに、四度ゴブリンの襲撃を受けた。

 その際、小さな弓を持った二十体とナイフを持った二十体のゴブリンがいたので、恐らくは私達の元へ来た子を追撃していた部隊だと想われる。


 倒してしまうとゴブリン側にその事が伝わり、魔法陣で呼び寄せる可能性が有るので、ロープで捕縛し一切動けないようにした。

 そこから駐車場まで襲撃が無かったので、先ほどのように魔法陣を破壊するまでは、捕縛し一切動けないようにする事がゴブリンの数を減らす唯一の方法だと分かった。



「やはり、魔法陣がどこかに有るのでしょうか?」



 薺君へ状況伝達した子は、魔法陣の存在を知らなかった。



「恐らく、有るかと」



 薺君曰く、籠城場所が何度も襲撃が有った事を考えると魔法陣が有るとしか考えられないと言っていました。

 駐車場の大型バスや車を見ると、全て破壊され動く状況では有りません。

 このバスも既に定員オーバーですので、何かあったとしても魔法陣を破壊しゴブリンを全て倒すしか手は無いようです。

 駐車場を越えて武装改造したバスで店の近くまで来ると、弓持ちゴブリン十体とナイフ持ちゴブリン十体が襲ってきた。


 直ぐに騎士達が動き叩きのめすと、止めを刺さずにロープで縛り付けた。

 捕縛した状態ではリスクを伴いますが、魔法陣の場所の特定とゴブリンの全体数を把握するまでは、止めを刺した場合のリスクの方が大きいですからね。

 ゴブリンを全て捕縛すると、籠城していた店から二組(ニクミ)のクラス委員長が出てきた。



「親衛隊長、救援感謝致します。ですが僕の管理が甘いばかりに、観光客の方々も負傷してしまいました。」

「第一騎士団長、大変だったな。遅れて、済まない」

「いえ、滅相も御座いません」

「それで、要救助者はどこなのだ?」

「応急処置をし、そちらの店で寝かせております」



 薺君がこちらを向いたので頷き、護衛騎士と共に店の中へ入った。

 店の中へ入ると、報告が有った人数よりも多くの騎士と観光客十名が傷を負っていた。

 私は直ぐに、観光客十名と十五名の騎士達へ癒やしの光りを使用し回復させた。

 すると観光客の中の一人が、滝で魔法陣を見たという者が現れた。


 話を聞いてみると、滝側から遊歩道を通って逃げる算段を考えた観光客十名が、騎士団が止めるのを無視して脱出を決行。

 しかし、直ぐに観光客十名はゴブリンに見つかった。


 そして観光客十名は、逃げに逃げ惑い各方面に散らばった。

 しかし足に矢を放たれ動けなくなり、十名全てが皆殺しになる寸前、騎士団が身を挺して助けに入った。

 その逃げ惑っていた時に、滝で見たのだと言っていました。


 私は薺君を呼び、他にも有力な情報を持っている人が居ないか確認しました。

 すると、棍棒持ち大型ゴブリン一体、鉈持ち大型ゴブリン一体、弓持ちゴブリン三十体、ナイフ持ちゴブリン三十体が魔法陣近くにいた事が分かった。


 先ほど捕縛したゴブリン達を差し引きすると、自ずとゴブリンの人数が把握出来る。

 それに棍棒持ちと鉈持ちの大型ゴブリンが、魔法陣を守護しているのだと分かった。

 これは、かなり有力な情報が手に入りました。


 薺君と騎士達を中心に、戦いに参加してくれるという大人の人達を交えて、滝に攻め込む部隊と、この店一帯を守護する部隊に分かれる話し合いが有った。

 そこで、戦闘に参加する大人達は防衛戦にだけ参加してもらう事になった。


 その話をしている最中に、イベリスと姫立金花(ヒメリユウキンカ)が私の膝の上に乗って来た。

 そして、二匹が話し出したのです。



「ニーニー、ミュウミュウミュウ」



 イベリスは、身体能力が上がり癒やしの尻尾を使用出来るようになったと言っていた。

 癒やしの尻尾とは、イベリスの尻尾が触れているパーティーメンバーに、パーティー全体の自然回復能力を持続的に向上させ速める力を与える能力のようです。



「グゥーグゥー、ギューギューギュー」



 姫立金花は、身体能力が上がり雷の尻尾を使用出来るようになったと言っていた。

 雷の尻尾とは、姫立金花の尻尾が触れているパーティーメンバーに、パーティー全体の武器へ雷による麻痺効果を齎す能力のようです。


 二匹の言っている事を不思議に思い、レベルを確認すると私のレベルが30から36に上がっていたのです。

 私は思わずイベリスと姫立金花を抱きしめ、椅子から立ち上がった。

 まさかレベルが上がっているとは、思わなかったのです。



「姫、どうされたのですか?」



 急に立ち上がったので、隣に座っている薺君が警戒した。

 騎士の子達と大人達も、外を確認しに行った。



「何でもないです。お騒がせして、ごめんなさい」



 私は席に座り、薺君に小声で知らせることにした。



「薺君、レベルを見て下さい」



 レベルのことを伝えると、薺君も驚いていた。

 私達の世界は、本来数値によるレベル表記は有りません。

 ですので、今までは不思議に思いつつも鍛錬の間から出てきた時、レベルを確認していた。

 ですが、レベルの上がる知らせはいつも無かったのです。


 それを知りながらも、私達は鍛錬の間に慣れすぎて麻痺していたのだと思う。

 ここは、鍛錬の間では無く現実の世界。

 つまり鍛錬の間から出てきた時レベルが上がっていたように、現実の世界で魔物を倒した時に経験値が入り、レベルが上がってもおかしくは無いのだ。


 自身のHPとMPを見ると、HPは157から187に上がり、MPは151から181に上がっていた。

 ですが、姫の加護はLV10から上がっていなかった。

 剣士LVのように、どうやらこのスキルもLV10が最大のようだ。


 薺君はレベル36から39に上がっていて、HPは276から294に上がりMPは70から76に上がっていたそうです。

 しかも【剣豪】がLV7からLV8に上がっていて、与えるダメージが1.8倍に増加していたそうです。



「はっ! まさか? スキル【騎士団!】」



 薺君が思いついたように、スキルを再使用していた。

 すると近衛騎士団がレベル18から20になり、第一騎士団がレベル12から13になり、第二騎士団がレベル9から10になり、第三騎士団がレベル7から8になり、第四騎士団がレベル6から7になり、特殊な能力も備わったようです。


 因みに、小数点以下四捨五入だそうです。

 実は、どのように騎士達を分けるかでも意見が割れていた。

 ですが、全体のレベルが上がった事で対処しやすくなったのだ。


 攻撃側に私と薺君、それに近衛騎士団十五名が行く事となり、防衛側として、第一騎士団、第二騎士団、第三騎士団、第四騎士団、学校の男性教師、施設の男性職員、男性店主、男性観光客が防衛する事となった。


 男性運転手は、逃げるための手段として武装改造したバスに乗り込んでいつでも出られるようにした。

 防衛側が多いのは、防衛範囲と守る者達が多いからだ。



「イベリス、姫立金花、教えてくれてありがと」



 二匹を撫でていると、戦闘に参加する大人の人達が不思議そうな顔をした。

 そう言えば、イベリス達は普通の人は見えません。

 二匹の内どちらかを防衛戦にと考えていたのですが、それでは支障をきたす恐れが有ります。

 どうしようかと悩んでいると、花ちゃんが腰を下ろし私の後ろでイベリスと姫立金花を撫でていた。

 素早い動きを不思議に思っていると、花ちゃんが顔を上げた。



「撫子ちゃん、花も防衛に参加するよ?」



 花ちゃんの申し出を受け、戦闘及び防衛に参加する全員でパーティーを組むことにした。

 すると、全クラスの女子や先生方も防衛のお手伝いをすると言って来たのです。

 大人数(ダイニンズウ)でパーティーを組むことになりますが、全員のHPとレベル表記が現れた。


 少し予想とは違いましたが、私と薺君と騎士達と花ちゃんと一部の子以外は、皆レベル0で、差が有るのはHPだけでした。

 少し気になったのは、花ちゃんと一部の子の表記です。


 花ちゃんの表記には、親友(シンユウ)女官近衛騎士長と表記されLV18となっていた。

 一部の子とは、欄音(カノン)ちゃん、椿来(ツバキ)ちゃん、美桜(ミオ)ちゃん、百合愛(ユリア)ちゃんの四人で、(トモ)侍女騎士と表記されLV12となっていた。


 薺君に確認すると、これが特殊な能力だそうです。

 かなりレベルが高いのですが、薺君が私のレベルに比例すると言っていた。

 ですが、これで皆のHP管理がしやすくなる。

 ただ表記は、私と薺君だけが見えているようだ。



「花ちゃん? 一緒に戦うなら、イベリスと姫立金花どちらが良いです?」

「うーん……」



 花ちゃんは悩みに悩んだあげく、イベリスを選んだ。

 どうやら、肉球の触り心地で選んだようだ。

 ですが、組み合わせとして丁度良いかもしれません。


 もし離れた位置であやかし達の能力が発揮しなければ、自然回復向上と自然回復速度上昇があるイベリスが花ちゃんが付く防衛戦に役立つからです。

 姫立金花が胸元に入ると、花ちゃんが真似をしてイベリスを自身の胸元に入れた。



「撫子ちゃん、これ擽ったいね」



 私は、花ちゃんに苦笑いした。

 そうなんです。

 ですが、姫立金花の定位置ですので仕方がないのです。



「でも慣れてくると、暖かくて気持ち良いかも」



 どうやら、花ちゃんは気に入ったようだ。

 私は、未だに慣れないですけれどね。

 攻撃側部隊で滝へ行く準備をしていると、棍棒持ち大型ゴブリンが現れたと連絡が入った。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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