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報酬精算機の前で薺君と一緒に休憩していると、私のHPとMPの自然回復速度が早い事に気がつきました。
薺君も私と一緒にいると、HPとMPの自然回復速度が上がっているそうです。
しかも技を使用する際に、MP減少効果が有ると言っていました。
どうやら姫の加護LV9は、薺君と一緒に居ることでパートナーの能力を常に1.18倍へすると共にHPとMPの回復速度も上げてくるようです。
お使い様の意図は分かりませんが、パートナーの大切さを気づかせると共に協力して戦う事の大切さを教えてくれたのだと思います。
私達のHPとMPが全快したので、報酬精算機に達成済みの依頼書を入れることにしました。
動く銅像の報酬は、薺君用の【木の脇差し】と私用の【あやかしの宝玉LV1】が出てきました。
薺君は木の脇差しを手に入れたことで、二刀流を使用出来るようになったそうです。
私の方は懐剣の柄にあやかしの宝玉を埋め込む事で、私のレベルに比例してあやかしのレベルも上がるようです。
二匹の尻尾が二つになった事以外分からなかったのですが、二匹がそう言うのでそうなのでしょう。
因みに、姫立金花とイベリスを同時に呼び出せるようになりました。
次の常闇の鏡では、報酬として五割引の割引券が二枚出てきました。
同じものが有るので、二人で買い取りボックスに以前の五割引の割引券を入れるとコインが五十枚になりました。
割引券が何度か出てくれたら、攻撃力増加もしくは防御力増加の飾り石が買えそうです。
「姫、では次の依頼を受けましょう」
「はい」
ですがその前に、聖属性をイベリスに再付与してもらいました。
イベリスが強制的に戻されていたので、属性付与も消えていたようです。
因みに、姫立金花は雷属性を付与出来るみたいです。
「そうか、この属性が無かったから動く銅像が硬かったのか……」
薺君が言うには、属性が有るか無いかで与えるダメージがかなり違うようです。
次の依頼である【落ち武者を討伐せよ】を手にすると、急に襖が出現しました。
この中に、入れという意味でしょうか?
「姫、入る前にお手を……」
私が襖に近づいていくと、薺君が手を差し出してきました。
先ほどの事で、薺君は私と離ればなれになることを警戒したようです。
確かに、先ほどは離ればなれになり大変な思いをしましたからね。
「はい、では少し待って下さいね」
両手に抱っこしていたイベリスと姫立金花を下へ降ろし、二匹を撫でてから薺君と手を繋ぎました。
そして薺君が襖を開けた瞬間、まばらに行灯が置いて有る畳が敷いて有る部屋になっていたのです。
その奥にも、襖が有りました。
「姫、中に入ります」
「はい」
二人で中に入ると、後ろの襖が閉まり開かなくなりました。
どうやら、先へ進むほか無いようです。
それに今回は、離ればなれになりませんでした。
薺君は私の手を離すと、木刀を脇差しを手にしました。
先に進むと、剣道の胴のような物が置かれてありました。
「胴丸か……姫、警戒を」
剣道の胴みたいな物は、胴丸と言うのですね。
私、初めて知りました。
「はい」
イベリスと姫立金花にも警戒するよう呼びかけると、イベリスが胴丸を切り裂きました。
その瞬間、落ち武者の縫いぐるみが一瞬姿を現し消えていきました。
どうやら、私達の隙をついて後ろから襲おうとしていたようです。
「イベリス、気づいてくれてありがと」
「ミャウ」
イベリスを撫でてあげると、今度は姫立金花が天井に向かって雷を放ちました。
すると、胴丸を著た落ち武者の縫いぐるみが一瞬現れ消えました。
「姫立金花も、偉いわ。ありがと」
「キュー」
イベリスと一緒に姫立金花も撫でてあげると、薺君が小さな息を吐きました。
「二匹に、良いところを持って行かれたよ」
薺君が小声で何か呟いていましたが、私には聞こえませんでした。
ですが、お陰で薺君の過度な緊張が取れたようです。
この後も襖を開いて進んで行くと、幾度となく落ち武者が襲いかかってきました。
その落ち武者を、争うように薺君とイベリス達が倒していきました。
私は付いていって、撫でてと言ってくる二匹を撫でるだけでした。
姫立金花の雷の消費MPが2から1になっていたので、姫の加護LV9の恩恵で私も消費MPが少なくなっているようです。
これなら、MPの回復量が追いつき部屋に出て来る程度の落ち武者なら問題なく倒せていけそうです。
ただもう百体以上落ち武者を倒したのですが、依頼書に判子が押されません。
何体倒せば、依頼達成となるのでしょうか?
「姫、地面が揺れていませんか?」
薺君が襖を開けずに、周りに警戒をしだしました。
「そう言えば、先ほどから揺れている気がします」
ですので、私が次の襖を開けると辺り一帯に墓地が広がっていたのです。
その瞬間、墓地から数え切れない程の落ち武者が現れました。
「姫、後ろに!」
薺君がそう言って、駆け出し落ち武者を切り倒し始めました。
イベリスも薺君に続いて落ち武者を切り裂き始めました。
それを見て、姫立金花は私を守るように私の前に立ち近づく落ち武者を雷で攻撃しだしました。
ですがその時、後ろで嫌な気配を感じ振り返ると襖が開かれた最奥に巨大な鎧と羽織が有ったのです。
あれが、落ち武者?
どう見ても風貌が落ち武者ではなく、武将に見えます。
大鎧と陣羽織に身を包んで鬼面を被り、大太刀を片手に持って私の方へ向かって来ました。
「しまった! 戻るぞ、イベリス!」
「ミャウ!」
薺君とイベリスも、鬼面武将に気がついた様です。
ですが身構えた私と一緒に付いてきた姫立金花は、襖で薺君達と分断されてしまいました。
まさか薺君達と、分断されるとは思いもしませんでした。
「姫ー!」
薺君が叫び、イベリスと協力して襖を切り裂いているようです。
「ニーニー、ミャオミャオ」
ですが切り裂いた瞬間、襖が元に戻り再び行く手を阻んでいるとイベリスが言っていました。
こうなっては、私と姫立金花で鬼面武将を倒すしかありません。
姫立金花が私の足を登ってきて、胸元に入り顔だけ出しました。
擽ったいですが、こうする事で私の身体全体に雷を宿し、懐剣にも雷を宿す事が出来るそうです。
懐剣は、白い光りも宿っているのでイベリスの聖属性も秘めているようです。
「シューシュー!」
姫立金花が鬼面武将に威嚇をすると、雷を喰らわせました。
ですが、足下まで届く陣羽織の周りを雷が流れ落ち畳に吸収されてしまいました。
どうやら纏っている陣羽織のせいで、雷では鬼面武将にダメージが入らないようです。
しかも鬼面武将が纏う大鎧は頑丈な作りに見えるので、私の懐剣でダーメージが入るか分かりません。
こうなれば、切り裂けそうな陣羽織を切り裂き雷で止めを刺すほかはありません。
「シャー!」
姫立金花は再び鬼面武将を威嚇すると、二体の分身を雷で作り出しました。
そして、分身達の爪で武将を攻撃させはじめました。
その瞬間MPが136から116になりましたが、こちらの戦力が一気に増えたので有りがたいです。
「姫立金花、助かります。後で、いっぱい撫でてあげるね」
「コッコッコ」
姫立金花が嬉しそうに鳴くと、分身を操り鬼面武将に猛攻を始めました。
分身が手伝ってくれるなら、隙を見て私でも陣羽織を切り裂けるかもしれません。
ですが鬼面武将は大太刀を振り回し、分身達の猛攻に一歩も引きません。
私も参戦し分身達と連携して攻撃すると、鬼面武将は少しずつ後方へ下がっていきました。
私の武器に付与されている、聖属性を警戒しているようです。
なぜなら懐剣の切っ先が陣羽織に触れそうになる度、大げさに仰け反っていたからです。
ですが鬼面武将を行灯がある部屋まで追い詰めると、胴丸を着た落ち武者が前方へ二体と後方へ二体出現したのです。
直ぐに姫立金花が雷で攻撃して倒してくれたのですが、何度も繰り返し出現しました。
私は分身達と共に連携して鬼面武将を攻撃しているのですが、今度はなぜかこれ以上後ろへ下がろうとしません。
MPの残りは99有りますし自然回復も有るので、落ち武者を倒し続ける余裕はあります。
ですが、これだけ落ち武者を出現させるのには何か絡繰りがある筈です。
そう思った私は、周りに注意しながら分身達と共に鬼面武将を攻撃していました。
すると、行灯の炎が揺らぐ度に落ち武者が出現している事が分かったのです。
「姫立金花、行灯を攻撃して下さい」
「キュ!」
姫立金花が見える行灯を全て雷で攻撃すると、行灯が燃え上がり周りの落ち武者も燃えて消えました。
武将はそれを見て、左手を横に動かすと全ての襖が開きました。
「姫!」
その瞬間、薺君とイベリスが襖の中に入ってきてくれました。
ですが、墓石から数十体の落ち武者が現れ同時になだれ込んできたのです。
「シャー!」
その瞬間、姫立金花が落ち武者達を威嚇しました。
「グゥグゥー、ギュー」
そして、雷の雨を降らすと私に告げてきたのです。
「薺君、早くこちらに来て私と手を繋いで下さい! イベリスも、早く私につかまって!」
姫立金花曰く、パーティーを組んだ者が私と手を繋いだり身体に触れていると、姫立金花の保護が働き、雷の豪雨の攻撃範囲に居たとしても攻撃を受けないそうです。
薺君とイベリスは、落ち武者を無視するように私の元へ直進してきました。
そして薺君と手を繋いだ瞬間、辺り一面に雷の豪雨が轟音と光りと共に降り注いだのです。
遠くに有った行灯と後方に見えていた墓石が全て破壊されると、同時に全ての落ち武者が消えました。
ですが、武将だけは陣羽織で無傷のようです。
因みにイベリスは、私の足に尻尾を巻き付け身体を寄せているので無事です。
「今の攻撃を喰らって、なぜ大鎧の武将は無事なんだ?」
薺君が疑問に思うのは、無理もありません。
私と姫立金花とは違い、薺君とイベリスは襖で阻まれていたため鬼面武将と私達の戦いを始めて見たのですからね。
「薺君、あの陣羽織が雷を無効にしているみたいです」
「ならば、僕とイベリスが陣羽織を切り裂いてきます。行くよ、イベリス」
「ミャウ!」
私達より素早い薺君とイベリスが鬼面武将に迫ると、大太刀を振るい鬼火を放ってきました。
その鬼火を薺君が木刀と脇差しで切り裂き、イベリスが爪で陣羽織を切り裂きました。
その瞬間、鬼面武将が畳を叩いて壁にするとイベリスが畳を切り裂き応戦。
ですが追い詰められた鬼面武将は、行灯を左手に携えていたのです。
再び落ち武者が出現しそうになりましたが、それを見過ごす私ではありません。
「姫立金花、行灯に雷!」
姫立金花に、雷を撃つよう指示しました。
「シャー!」
私の指示に従い雷を落として行灯と出てきた落ち武者を倒すと、薺君が鬼面武将に肉薄していました。
「【二刀流残像四閃 鏡花水月!】」
次の瞬間、薺君と残像が鬼面武将を切り裂いたのです。
依頼書に向日葵の判子が押されると、先ほどまで畳の部屋だったものが廊下となりました。
そして同時に、掲示板が現れたのです。
「姫、残りは最後の依頼です。万全な状態で挑みたいので、MPを戻してからにしましょう」
「はい」
MPを自然回復で戻し、落ち武者の討伐完了依頼書を報酬精算機に入れると、幸運の飾り石が二つ出てきました。
ただ、自動販売機に売っていない物ですので効果は不明です。
ですが、物は試しということわざが有ります。
ですので私達は、その飾り石を鍔に付けてみることにしました。
飾り石を付けてみると、HPもMPも何も変わりません。
「薺君、この飾り石に意味が有るのでしょうか?」
「姫、僕も分かりません」
この場では何も試せないので、このまま付けて次の依頼を受けることにしました。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




