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24/126

 一方撫子は薺の為に鏡の前に戻り、姫立金花にお願いして光りを放ってもらっている所だった。



「姫立金花、お願い。光りを、薺君に届けて」

「グゥー、キューキュー」



 すると、甘えるようにこちらを向いてきました。

 姫立金花は生まれたばかりのあやかしで、どうやら私の魔力を消費しなければ大きな光りを放てないようです。



「姫立金花、使って良いですよ。それに、頑張ってくれたら後でいっぱい撫でてあげますね」

「コッコッコ」



 すると嬉しそうに鳴き、姫立金花は雷になると辺りを光りで埋め尽くしました。

 同時に、私のMPが136から126となったのは一瞬見えましたが、あまりの眩しさに顔を背けると先ほど向かった方向とは逆方向に矢印のようなものが一瞬見えました。


 不思議に思いましたが、今は薺君の方が優先です。

 手で眩しさを緩和しながら、スマホのスピーカーから聞こえてくる音に耳を傾けていると、何かを切り裂く音が聞こえました。


 恐らく、室外灯を切った音だと思います。

 そして次の瞬間、薺君が技名を発したのと同時に、切り裂く音と打つかった様な音が同時に聞こえて来ました。

 嫌な予感がして、薄目で薺君のHPを見ると6になっていたのです。


 ですので思わず「薺君!」と言って叫ぶと、私のように動じる訳でもなく「姫、助かりました。どうにか、動く銅像を倒せました」と淡々とした返事が返ってきたのです。

 薺君はいつも、このようなギリギリの戦いを鍛錬の間で繰り返し経験していたのでしょうか? 


 ともあれ、無事なようで何よりです。

 ですがHPが少ない状態で万が一のことが有れば大変です。

 その事を心配していると、薺君に依頼書がどうなっているか確認して欲しいと言われました。



「姫立金花、もう良いですよ。ありがとうございます」



 姫立金花が雷からフェレットの姿に戻ると、眩しい光りが止み私の足下に戯れてきました。

 ですので、腰を落として姫立金花を撫でながら依頼書を見てみると、向日葵の判子が押されていたのです。

 その事をお伝えしていると、薺君の声が急に途切れました。


 焦って何度もスマホに呼びかけていると、薺君から掲示板の前に飛ばされたと連絡が有りました。

 薺君が言うには、掲示板の前は安全な場所だそうです。

 HPも休んでいると、元に戻るので大丈夫だと言われました。

 ですが、今度は私が鏡の中に居るという事が確信に変わりました。


 しかもお使い様のメッセージカードに、私を信じて待つようにと書かれていたそうです。

 スマホの電池の残量を考え、薺君との通話を終了させましたが、常闇の鏡は一体どこに居るのでしょうか? 

 姫立金花が後ろ足で立って頻りに前足を挙げていたので、抱き上げて撫でてあげることにしました。



「姫立金花、先ほどは助かりました」

「コッコッコ、ベエベエ」



 私がそう言ってお礼を伝えると、姫立金花が甘えるように鳴いたと思うと、私の胸元に潜り込み顔だけ出してきました。

 少し擽ったいですが、私の身体(カラダ)からも光りが出て、より一層周りの状態が分かるようになりました。

 これは、私の身体自体が帯電しているのでしょうか? 


 よく見ると、木の懐剣も同じ様に光りを帯びていました。

 再び鏡の前からスタートする事になりましたが、今度は姫立金花が居るので寂しくありません。

 それに、先ほどの矢印が気になります。

 私は姫立金花と一緒に、今度は廊下の逆方向へ行く事にしました。


 姫立金花と共に歩いていると、また矢印を見つけました。

 どうやらこの矢印は、姫立金花の放つ光に反応しているようです。

 ですがおかしな事にその矢印は、廊下の先では無く近くにある鏡を指していたのです。



「ねえ、姫立金花? 鏡が、道なのですか?」

「キュキュー、グゥーグゥー」



 姫立金花が、道に見えるものが全て道では無いと言っていました。

 そう言えば先ほども、イベリスに導かれて壁の中を進み音楽室にたどり着きました。

 つまり、この鏡の世界は鏡も道なのです。


 恐る恐る鏡の中に入ると、鏡がある部屋に出てきました。

 その中の一つに、また矢印が指し示して有りました。

 こうして矢印の示す通り鏡の中を何度も進んで行くと、何も無い薄暗い空間に出てきました。



「シュー! シャー!」



 すると、姫立金花が急に威嚇したのです。

 威嚇した方向を見てみると、薺君の姿をした可愛らしい縫いぐるみが置いて有りました。

 何となくホッとした私が、その縫いぐるみに近づこうとすると、姫立金花が縫いぐるみに雷を落としたのです。


 その瞬間ガラスが砕け散る音がしたかと思うと、今度は木刀を構えた薺君の縫いぐるみが二体現れたのです。

 私が懐剣を構えると、二体の縫いぐるみが一斉に襲いかかってきました。

 ですが、薺君よりも遅いです。


 二体の攻撃はその事を織り込み済みなのか、隙を埋める様に左右上下から攻め立てて来ました。

 私は一体の攻撃を、懐剣で受け流すと一体が痺れました。

 二体目の攻撃を躱し、回し蹴りを喰らわすと二体目も痺れました。

 私の攻撃は姫立金花のお陰で、感電させる事が出来るようです。


 その隙に、懐剣で突き刺すと二体はガラスが砕け散る音と共に消えました。

 縫いぐるみを撃破すると、矢印の先に鏡が現れました。

 そして今度は、矢印に示された鏡の中に入る度に、薺君の縫いぐるみが増え襲いかかってきました。

 ですが五体に増えた所で、私一人では対処ができなくなりました。


 それを姫立金花が雷で三体を撃破してくれたお陰で、一撃攻撃を喰らっただけに留まりました。

 MPは136まで戻っていましたが、136から130となりHPが142から90になってしまいました。

 ですが、まだ痺れた二体が残っています。

 HPの事を考えると、これ以上攻撃を喰らえません。



「シャー!」



 その時、姫立金花が威嚇をして二体の縫いぐるみに雷を喰らわせ撃破しました。

 私のMPが130から126まで減ったので、雷は一体に対し2消費して倒せるという事です。

 縫いぐるみを全て撃破すると、矢印の先に再び鏡が現れました。


 私は鏡に入る前に癒やしの光りを使用する事にしたのですが、MPが126から129となりHPが90から94になっていました。

 どうやら、鍔のお陰でMPが自然回復してくれたようです。

 その直後、薺君から連絡が有りました。


 薺君曰く、私の場合MPを消費した方がHPの自然回復を待つより効率が良いそうです。

 癒やしの光りを使用し、MPが129から126になりHPが94から142まで回復しましたが、確かに薺君の言うように、次の鏡の中へ入る前にMPが126から129まで戻っていました。



「姫立金花、次から私が対処しきれない縫いぐるみは雷で全て倒して下さい」

「キュー」



 姫立金花が分かったと答えてくれたので、鏡の中に入る事にしました。

 すると、今度は十体もの縫いぐるみが襲いかかって来たのです。

 必死に蹴りと懐剣を駆使し、攻撃をしつつ躱し続けると倒す事が出来ました。


 ですが、躱しきれずに攻撃を喰らってしまいました。

 ここまで増えると、流石に姫立金花の雷でも対処しきれなくなってきました。

 そして、十一体、十二体、十三体、十四体、十五体と倒した時、残りMPは残り8となっていました。


 途中で癒やしの光りを使用しなければ危なかった時が二度ほど有ったので、本当にギリギリでした。

 少しMPを回復してから次へ行こうとしたのですが、今回は矢印と鏡が現れません。



「シャー!」



 不思議に思い周りを見ていると、姫立金花が地面を威嚇しました。

 その瞬間、巨大な手鏡が地面に現れ私達を飲み込もうとしたのです。

 咄嗟に足に意識を集中させて飛び退くと、持ち手の柄で私を攻撃してきました。


 HPが142から一気に2まで下がってしまいましたが、同時に姫立金花が雷を放ったのです。

 ですが鏡の部分で反射され、雷が私達を襲いもうダメだと思った瞬間、MPが6から13になったのです。

 私は直ぐに癒やしの光りを使用しようとすると、姫立金花が毛を逆立てました。



「シュー、シュー、シュー! シャー!」



 同時に、唸るように鳴いたかと思うと空間全体に雷の豪雨が降ったのです。

 刹那、目映い光で手鏡の柄を撃ち抜き巨大な手鏡は消え去りました。

 どうやら今の豪雨のような雷光は、姫立金花の最大の能力だったようです。

 MPを見ると、13から1になっていました。


 依頼書を確認すると、向日葵の判子が押されていたので常闇の鏡の依頼を達成できたようです。

 その瞬間、目の前が暗転すると私は薺君の前に座り込んでいました。

 私も薺君のように、掲示板の前に転送させられたようです。



「姫、お疲れ様でした」

「姫立金花の、お陰です」



 姫立金花を見ると、私の胸元で項垂れていました。

 相当、疲れた様です。

 少しの差でしたが、癒やしの光りを使用していたら恐らく常闇の鏡は倒せなかったと思います。

 今回は、姫立金花の機転に助けられました。

 次の依頼もありますし、精算の前に私達は掲示板の前で休むことにしました。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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