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「……姫! ♪♪♪♪♪ 姫! ♪♪♪♪♪」



 薺君の叫ぶ声とスマホが鳴る音で眼を覚ますと、イベリスの姿が消えていました。

 ですが、私の中でイベリスの存在は感じられます。

 どうやらイベリスは何らかの力によって、私の中に強制的に戻されたようです。

 ですが、ここでは再召喚することが何故か出来ないようです。

 前を見ると、薄暗い廊下の所々に鏡がありました。



「薺君、私は大丈夫です。ですが、ここはどこでしょうか?」



 そう言って振り向いた私は、薺君の居る場所に驚かされました。

 大きな鏡の中から、薺君が叫んでいたのです。

 薺君が、鏡に閉じ込められたのでしょうか? 

 それに薺君の後ろに見える上り階段と下り階段は、どこに続いているのでしょう? 

 私が居るここに、繋がっているのでしょうか? 



「姫、お気づきになられたのですね。僕も先ほど、階段の踊り場で眼を覚ました。ですが、その踊り場に有る大きな鏡の中に姫がいらしたのです。ですので、声をかけつつスマホを鳴らしていました」



 薺君ではなく、私が閉じ込められたのでしょうか? 

 ですが、私からは薺君が鏡の中に居るように見えています。

 これは、一体どういう事でしょう? 

 ですが一つ言えることは、恐らく常闇の鏡の仕業で有ると言うことです。


 先ほどの着信を見てみると、確かに薺君からでした。

 どうやらアプリを入れたお陰で、薺君とだけアプリを使用して話すことが出来るようです。

 私達は、今の状況を鏡の前で話し合いました。

 そこで、私達はある仮説を立てて行動することにしたのです。


 私か薺君の居るどちらか一方、若しくは両方に動く銅像が居ると言う事。

 その動く銅像を倒す際、アプリで連絡してから倒す事。

 倒した時に依頼書に向日葵の判子が押されていれば、そこが現実の世界。

 動く銅像を倒しても向日葵の判子が押されなければ、そこが鏡の世界。

 そして恐らく、どちらか一方に常闇の鏡の本体がいると言う事です。


 イベリスが居れば、合流出来ると思うのですが召喚出来ない今はそれも不可能です。

 それに、常闇の鏡さえ倒せば二人とも合流出来ると思うのです。

 つまり、今回は二人とも別行動となるのです。

 私達は五分という時間を決めて、アプリで連絡し合うことにしました。



「姫、僕はまず階段を降りてみます」

「では、私はこの通路の先を目指してみます」



 薺君と鏡の前で別れると、私は一人薄暗い廊下を進みました。

 ですが、一人で薄暗い中を進む事がここまで怖いとは思いもしませんでした。

 私は立ち止まり、震える両手で両腕を掴みました。



「薺君は、心細くないのでしょうか?」



 弱気になっていると、私の中で暖かいものを感じました。

 イベリスが、私を元気づけてくれているようです。

 勇気を貰った私は、再び薄暗い廊下の中を歩き出しました。

 暫く歩いていると、他の鏡とは違い私の背丈位ある鏡の中に鳥居が見えたのです。

 私はその鳥居が気になり近づくと、鏡に吸い込まれたのです。

 そして気がつくと、鳥居の前に立っていました。



「これって?」



 イベリスと出会った時と、同じです。

 鳥居を(クグ)り中に入ると、やはり祠が有りました。

 そして祠に近づこうとした瞬間、急に雷が落ち金色の小さな毛玉になったのです。

 かなり驚きましたが、恐る恐る小さな毛玉を手に取ると優しい暖かさを感じました。



「グゥー」



 そして可愛らしい鳴き声が聞こえて来たかと思うと、赤ちゃんフェレットの様な姿となり、私の顔を見上げてから手の中に消えていったのです。

 どうやらこの子も、あやかし召喚士の能力で召喚出来るようです。

 ですが召喚出来ないこの中で、召喚出来るのでしょうか? 


 疑問に思いつつも、この子の名前を付けてあげることにしました。

 私の顔を見上げて必死に後ろ足で立っていた姿がとても可愛らしく、立っている姿が(ヒメ)立金花(リユウキンカ)に見えました。

 ですので、この子の名を姫立金花に決めたのです。



「姫立金花、来なさい」



 私がそう言うと、雷のような光りが手の平から駆け上って来て頬ずりしてきました。

 この子は光りを帯びているお陰なのか、召喚出来たようです。

 鳥居から外に出ると、鏡から出てこられました。

 そして、廊下に出て来ると薄暗かった廊下が姫立金花のお陰で明るくなったのです。

 明るくなった瞬間、スマホから着信音が鳴りました。



「姫、大丈夫ですか?」



 初めは私から連絡する事になっていたのですが、既に五分経っていたようで心配して薺君から連絡してくれたようです。



「はい」



 私は、薺君に姫立金花の事を詳しく話しました。

 すると何かが落ちてきた様な轟音が、薺君の方から聞こえて来たのです。



        ※ ◇ ※



【薺SIDE】



 一方薺は鏡の前で撫子と別れた後、撫子の事で気が気では無く、廊下を歩いていた。

 すると、時折上半身しかない縫いぐるみが襲ってきた。

 その魔物を瞬時に切り倒し、動く銅像を探していた。


 そう言えば、鍛錬の間での導きが一人で行ってきた頃よりも複雑になってきた。

 今までのように姫を守る為の鍛錬ではなく、何かお使い様のお考えが有るのかも知れない。

 それにしても、廊下を進むにつれて魔物が増えてきた。



「姫は、一人で大丈夫だろうか?」



 ただ、依頼書で出現した同じ魔物よりも明らかに遅い。

 だけど姫はこの魔物を、倒せているのだろうか? 

 先ほどは、イベリスが居て能力が使用出来たからまだ良かった。

 けれど、これだけ魔物が現れて姫は無事だろうか? 

 姫を心配している時に、次から次へと……。



「そんなに倒されたいなら、かかってこい」



 上半身しかない魔物を倒してみて、分かった事が有る。

 それは、僕の木刀が信じられないほど切れ味が増していた事だ。

 それに、切り裂くスピードも増していた。

 同時に五体程度なら、技を使用せずとも倒す事が出来ていた。


 これほど力を増しているのなら、姫の武器も増しているはず。

 姫のHPは減っていないが、一人で不安に思っていないだろうか? 

 せめて、イベリスを召喚出来たなら……。

 襲ってくる魔物を切り倒していると、校舎から外へ行くための扉が開いていた。


 学校の銅像と言えば、確か外に有った気がする。

 動く銅像の依頼書を手にしたことで、外に出られるようになったのか。

 外まで出て来ると、薄暗い中に屋外灯が点いていた。

 学校の銅像が有ると記憶している所まで歩いて行くと、少し明るめの屋外灯が点いていた。


 確かここに銅像が有った筈だ。

 しかし、どこにも無い。

 暫く探して時間を見ると、後十秒で姫からの連絡がある約束の時間だった。

 周りに警戒しながらスマホを見ているが、姫からの連絡が来ない。


 一秒一秒が、長く感じる。

 五分二十秒経過したところで、思わずこちらから連絡してしまった。

 僕から連絡をすると、心地よい姫の声が聞こえてきた。

 姫の声が聞けた事で、心の中の不安感が消えていった。


 しかも、新たな召喚獣を手に入れたそうだ。

 嬉しそうな姫の声を聞いていると、上から冷たい殺気を感じた。

 咄嗟に横へ転がりに距離を取ると、黒い固まりが落ちて地面に大きな穴を開けた。

 黒い固まりに目を凝らすと、探していた銅像だった。



「姫、動く銅像を見つけました!」



 喜ばしい僕の感情とは違い、姫の方からは焦っている音が聞こえてきた。



「薺君、大丈夫なのですか?」



 銅像が地面に打つかった轟音で、姫は僕が怪我をしてしまったと勘違いされてしまったようだ。

 HPを見れば怪我をしていないと分かるのだが、僕のように二年かけて鍛錬の間で修行していない姫は、言葉で伝えないと心配してしまうようだ。



「姫、僕は大丈夫です。ですが、今から戦闘に入るので一端通話を切りますね」

「えっ? あ、はい」



 姫との幸せな時間を終わらせると、木刀を構え銅像の前までやって来た。

 すると、上から沢山の殺気を感じた。

 瞬時に後方へ下がると、一回り小さい銅像が二十体降ってきた。

 銅像が降る度に、地面が陥没し辺り一面が穴だらけになった。



「くっ!」



 あれを喰らうと、流石に不味い。

 小さい銅像に眼を奪われていると、初めに降ってきた銅像が消えていた。

 どこに消えたのかと探していると、地面から急に出現した。


 それに木刀の切っ先を合わせようとしたが、先ほど降ってきた小さな銅像がミサイルの集中砲火のように飛んできた。

 その銅像を回避しようとしたが、このままでは同じ事の繰り返しだ。

 僕は地面からの攻撃を後方へ回避し、小さな銅像の攻撃を迎え撃つことにした。


 残像を出して技を使用すると、MPが2減ってしまうが消費しても20程度。

 残りMPが44も有れば、動く銅像も倒せるだろう。

 それに鍔のお陰で、1ずつMPが回復する。

 僕はそう計算して、剣豪の技を使用する事にした。



「【残像(ザンゾウ)二閃(ニセン) 唐竹(カラタケ)逆風(サカカゼ)連斬(レンザン)!】」



 残像がブレて現れると、僕の唐竹斬りの隙を残像が逆風斬りで無くしてくれる。

 そして小さな銅像を全て切り裂き倒していくと、MPは64から残り4まで減っていた。

 なぜ、計算が違うんだ……残りMP4で、恐らく残像を出せるのは一度限り。

 そう思い技を使用せず動く銅像を攻撃してみたが、小さな銅像よりもかなり硬いようだ。


 体捌きを使用し技を仕掛けるタイミングを見ているが、鍔のMP回復もなぜか遅い気がする。

 剣を交えてみて分かった事だが、動く銅像にダメージを与えるには、恐らく同じ場所に対し技を使用して三度攻撃しなければ困難だと分かった。

 技にMP3消費すると考えると、まだ回避し続ける必要がありそうだ。


 それにしても、MPの回復が遅い。

 ようやく、4から5になった。

 MPの回復量を見つつ動く銅像の攻撃を回避していると、再び上からの殺気を感じた。

 すると、再び小さな銅像が降ってきた。


 その時一瞬、周りの屋外灯がチラついた。

 同時に、小さな銅像の攻撃を躱しきれずに二度受けてしまった。

 その瞬間、HPが258から58へと激減した。

 だが、小さな銅像の糸口を見つけた。


 恐らく、あの二十本の屋外灯だ。

 僕は屋外灯まで走ると、袈裟切りをして次々と二十本有った屋外灯を切り裂いた。

 刹那、小さな銅像は消え去った。

 しかし、まだ動く銅像の本体がいる。


 HPは自然回復のお陰で58から66へと回復したが、動く銅像の攻撃が小さな銅像よりも低いとは思えない。

 一撃食らうと、強制的に外に出されてしまうだろう。

 ただ、その後残された姫のことが心配だ。

 しかも二十本の屋外灯が無くなったせいで、周りには殆ど明かりが無くなってしまった。


 残りは、遠くに見える明るい街灯だけだ。

 その光を頼りに、動く銅像の攻撃を回避しつつ攻撃を喰らわせていった。

 そうして死闘を繰り広げていると、スマホの着信音がなった。



「薺君!」



 大きくバックステップで距離を取り、通話ボタンをスライドさせて素早くスピーカー通話に切り替えると姫からの叫び声とも思える声がスピーカーから聞こえて来た。



「姫、油断して攻撃を喰らってしまいました。ですが、二十本の室外灯を壊し小さな銅像は倒す事が出来ました。ただ、最後に残っている明るい室外灯を破壊したとして動く銅像を倒せるかは賭けになってしまいます」



 もし倒せなければ、暗闇の中で戦う事になるからだ。



「薺君、私に良い考えが有ります。私が合図するまで、その屋外灯を壊さずに居て下さい」

「はい」

「姫立金花、鏡の前まで戻るわよ」



 その言葉が聞こえると、走っている姫の息遣いが聞こえて来た。

 姫は鏡の前まで戻られて、何をされるおつもりだ。

 動く銅像の攻撃を回避しつつ、明るい室外灯の前までやって来るとHPが66から90まで自然回復しMPは5から8まで回復していた。

 MPが9になった瞬間、動く銅像に仕掛けるか? 

 いやでも、あの明るい街灯が気になる。



「薺君、鏡の前に着きました」

「はい」



 スマホのスピーカー通話から姫の声が聞こえてきた時、MPが9まで回復しHPは98まで回復した。



「姫立金花、お願い光りを放って」



 姫が召喚獣にお願いすると、校舎の通路が眩しく輝いた。

 あの鏡を使って、姫は光りを届けてくれたのか。

 これなら、明るい街灯を切り裂いてもあの輝きが続く限りは戦える。

 そう思った瞬間、僕は明るい街灯を袈裟切りをして切り裂いた。


 その瞬間、動く銅像の動きが明らかに遅くなった。

 今だ! 

 そう思ったのも束の間、動く銅像は明るい街灯が消える直前に小さい銅像を一体打つけてきた。

 それは、HPが98から106になりMPが9から10に回復した時だった。



「【残像(ザンゾウ)二閃(ニセン) 破月(ハゲツ)連斬(レンザン)!】」



 同時に、僕もMPを消費し決死の攻撃を動く銅像本体に叩き込んだ。

 衝撃が僕の腹部に当たったのと、動く銅像の本体を切り裂いた感覚、それは同時だった。

 動く銅像の本体が消え去ると、僕のHPは6となりMPは1となっていた。



「薺君!」

「姫、助かりました。どうにか、動く銅像を倒せました」



 そう伝えると、姫から依頼書に向日葵の判子が押されたと連絡が有った。

 その瞬間、僕は掲示板の前まで飛ばされていた。

 そして掲示板にはメッセージカードが張ってあり、そこにはパートナーを信じて待てと書かれてあった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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