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 次の魔物を探すために廊下を歩いていると、薺君が白く光る木刀を眺めていました。



「姫、属性付与というものは凄まじいですね。まるで、一段階上の武器のように感じられました」



 武器を見て薺君がそう言うと、前を歩いているイベリスが、まるで喜んでいるように軽やかに歩き出しました。

 イベリスが前を歩いているのには、訳があります。


 実は、次の魔物の居場所が分からないのです。

 ですので前を歩いてもらっていたのですが、暫く歩くとイベリスが私の元へ戻って来ました。

 どうやら、私に甘えたいようです。



「ニィニィ、ニィニィ」



 イベリスを抱き上げると落ち着いたようで、前足で行く方向を示しだしました。

 私と薺君が思わず吹き出しそうになると、イベリスが見上げて私の手を舐めてきました。

 どうやら、私達に笑われた事が恥ずかしかったようです。


 私の胸に顔を埋めると、お尻だけ出して尻尾を手に絡ませて来ました。

 思わずその行動に、キュンとしました。

 本当に可愛い、子猫さんです。



「姫、今度は僕が先頭を歩きますのでご指示願います」



 薺君がそう言って先頭を歩き出したので、イベリスを抱き直し前を向かせました。



「ミャウ」



 すると、尻尾を再び私の手に絡ませ前を向いて鳴きました。

 どうやら、機嫌を直してくれたようです。

 薄暗い中、イベリスが示す方向に歩いていると奇妙な足音が聞こえて来ました。

 そして、次の瞬間何かが私の右横を通り過ぎていったのです。


 同時に、イベリスも右を振り向き私の胸元に顔を埋めていました。

 また甘えたいのかと思うと違っていたようで、私達が探している魔物を追ったことで顔を埋めてきたようです。

 薺君も気づいて右側を切り裂いたようですが、攻撃が当たらなかったようです。



「姫、あの奇妙な音が聞こえたら周りに警戒して下さい。それと、イベリスは降ろしていた方が良いようです。僕が前方と右側を警戒するので、姫は左側を警戒して下さい」

「はい」



 私がイベリスを下に降ろしていると、薺君が私の後ろに来たので私も向きを変えました。

 来た道を戻っていると、再び奇妙な足音が聞こえて来たのです。

 薺君が音が聞こえる右前方を斬りかかると、急に音が左側に聞こえて来ました。

 同時にイベリスが左側を向いたので、私もイベリスの示す左側に懐剣の切っ先を向けました。


 その瞬間、切っ先に少し手応えが有ったのですが浅かったようです。

 どうやら、もの凄く早い魔物のようで私では思うようなダメージを与えられないようです。

 薺君は私の後ろに再び来ると、距離を置きました。



「姫、申し訳ありませんがそのままの位置でお願いします」



 そして薺君は、イベリスが魔物に反応した瞬間教えて欲しいと言って来ました。

 どうやら、全方位を切り裂く剣豪の大技を使用するようです。

 薺君が構えた瞬間、再び奇妙な足音が聞こえて来ました。

 私は、イベリスに意識を集中させました。



「ミャ……」

「今!」



 そしてイベリスが反応した瞬間、私がイベリスの言葉を遮る様に早く言葉を発しました。



「【残像(ザンゾウ)二閃(ニセン) 暁月(ギヨウゲツ)!】」



 その瞬間、薺君の一振り目が円を描くように切り裂いたのですが寸前の所で魔物に躱されました。

 ですが次に魔物が通り抜けようとした瞬間、薺君の残像が円を描くように周りを切り裂き魔物を切り裂いたのです。

 一瞬のことでしたが、木刀の放つ白い光りと技の軌跡も相俟って、技の名通りの月に見えました。


 そして魔物が倒れると、再び掲示板が現れました。

 依頼書に向日葵の判子が押されていたので、報酬精算機に入れると、五割引の割引券が二枚出てきました。

 パーティーを組んでいると、特殊でない限りそれぞれの分として同じ物が出て来るようです。


 私達は、五割引の割引券を一応キープすることにしました。

 そして、次の依頼書にある【光る肖像画と見つめる絵画を討伐せよ】を受ける事にしました。

 イベリスを抱き上げると、再びイベリスが前足で方向を示しだしました。

 その方向を目指して歩いて行くと、今度は壁の方向を示したのです。



「イベリス、そちらは壁よ?」

「ミャウ、ミャウ」



 ですが、その方向で間違いないそうです。



「姫、僕が木刀で突いてみます」



 薺君が木刀で突いてみると、木刀が根元まで入りました。

 足下も木刀で突いてみると、足場もちゃんと有るようです。

 この壁は、幻影なのでしょうか? 


 薺君が壁に入ったので、私も後を続くと廊下が続いていました。

 そして振り向き壁を触ると、普通の壁になっていたのです。

 通れたのが不思議ですが、イベリスが居なければこの道を見つけることは不可能だったと思います。



「イベリス、ありがと」

「ニィ」



 私の言葉にイベリスが返事をすると、少し歩いた所で再び壁を指さしました。

 イベリスの示す壁を何度も突き進んでいくと、再び廊下に出てきました。

 そして廊下の奥を見ると、音楽室が有ったのです。

 音楽室の前に行くと、扉の小窓から光りが見えました。


 光る肖像画、でしょうか? 

 私達は腰を下げ、薺君が小窓から中を覗こうとすると、イベリスが薺君の足に飛びつきました。

 薺君は再び腰を下ろすと、イベリスを足から外し手で抱き上げました。



「ニィニィ」



 すると、イベリスが光りを直接見ないようにと言っていました。



「ごめん、イベリス。僕では、君の言っている意味が分からないよ」



 薺君はそう言うと、イベリスを渡してきました。



「ミャオミャオミャオ、ミュウミュウ、ミィミィミィ」



 イベリスが言うには、あの光りは人に幻影を見せ惑わす肖像画の能力のようです。

 それと、見つめてくる絵画の能力の事も言っていました。

 見つめてくる絵画を直視すると、一時的に彫刻になってしますそうです。

 そして彫刻になると、動けなくなりHPが減少していくそうです。


 ですが一番怖いのは、彫刻になっている時に攻撃を一度でも貰ってしまうと一撃でHPがゼロになってしまうそうなのです。

 つまり、どちらも私達は直視できないのです。

 ですが、イベリスは平気なようです。



「薺君、イベリスが直視しては駄目と言っています」



 私はイベリスが言っていた事を、薺君に詳しく伝えることにしました。

 詳しく伝えていくと、薺君は顎に手を添えました。



「そうですか。……参ったな」



 剣豪の技は基本的に眼を使用する技で、眼を使用しない場合に技の命中精度がどのようになるのかが不明なのだそうです。

 薺君は私の下着のような能力を、お使い様から授かっていないのでしょうか? 

 この能力で耳と身体感覚を強化すれば、眼を使用せずに肖像画と絵画を捉える事が出来ると私は思うのです。



「薺君は、集中する事で一部の身体能力を高める力をお使い様から授からなかったのですか?」

「僕は、授かっていません」



 薺君曰く、私を守る為に授けられた特別な力なのだと言っていました。

 私はこの下着を毎日使用することで、かなり下着の能力を使いこなせるようになってきたと思っています。

 それにこの依頼は、私達が協力して行うものの筈です。


 先ほどまでは、薺君の能力に頼りきった事で遂行できたものだと言えます。

 ですので、ここは私の能力を使用して倒すべき魔物だと思うのです。

 それに先ほど感じたのですが、イベリスに集中していた時に、私の動きが猫の様に素早く感じられました。

 もしかすると、これもあやかし召喚士の能力なのかもしれません。



「薺君、ここは私が行きます」

「姫、それは危険です」



 薺君はそう言って、立ち上がりました。



「ですが、この能力はこういった場合の為に有るものだと思うのです。それに、私にはイベリスがいます」



 私は、イベリスを見てそう言いました。



「でしたら、僕がイベリスの指示に従います」



 薺君はそう言うと、小窓の方を見ようとしました。



「いえ、イベリスの感覚を共有できるのは私しか居ないようです」



 私はそう言って立ち上がり、イベリスから感じ取った見つめる絵画の視線から、薺君の視線を外しました。



「姫、済みません……」



 どうやら今の出来事で、薺君は私の言っている意味を理解して頂けたようです。

 私は意識を深層まで、イベリスに集中させる事にしました。

 すると驚く事に、周りの薄暗さが無くなり鮮明に見えてきたのです。

 しかも、絵画と肖像画が中で飛び回っている感覚も手に取るように感じられたのです。


 これは視覚、聴覚、嗅覚でも……いえ、五感では無いようです。

 イベリスの特別な、感覚なのでしょうか? 

 そのリンクした感覚と共に、薺君が私の頭とお尻を見た事と、恥ずかしそうに眼を逸らした事に気づきました。



「キャッ」



 そして、眼を反らした意味を理解したのです。

 私はスカートを、押さえました。

 ですが、猫の尻尾が生えているので無駄のようです。



「薺君、廊下の方を見ていて下さい。その間に、肖像画と絵画を倒してきます」

「はい……」



 薺君が廊下の方を向いてくれたので、眼を瞑りリンクした感覚を研ぎ澄ませて前扉を開け、イベリスと一緒に侵入すると素早く扉を閉めました。

 その瞬間に、光る肖像画と見つめる肖像画が合わせて十体襲いかかってきました。


 その攻撃を左右上下に躱し、躱した瞬間に肖像画の一体を右足で蹴り上げると、絵画が横から襲いかかります。

 その攻撃をイベリスが猫パンチで牽制し、すかさず私の懐剣で止めを刺します。


 蹴り上げた肖像画が落ちてきた所を懐剣で突き刺すと、今度は後ろから別の肖像画が襲ってきました。

 その攻撃を後方に翻り、翻ったと同時に懐剣を肖像画に刺し入れ後方回転の勢いと共に切り裂くと、下から絵画が襲いかかってきました。


 それをイベリスがよんでいたようで、猫の爪でズタズタに切り裂くと、残りそれぞれ三体ずつとなりました。

 今度は肖像画と絵画の三体同時攻撃に、私は足を大きく開脚させて躱し、躱した所に背中を後方に曲げて懐剣で一体の肖像画を突き刺すと、イベリスが猫の爪で一体の絵画を切り裂きました。


 そして私とイベリスは、その連携で次々と肖像画と絵画を倒していきました。

 すると、壁に一体ずつ残っていた肖像画と絵画が合体しようとしました。

 ですが、それを見過ごす私とイベリスでは有りません。


 一瞬で肖像画と絵画に近づくと、私の懐剣とイベリスの爪で二体が合わさりそうな所を切り裂きました。

 そしてイベリスと一緒に着地すると、全ての肖像画と絵画の気配が消えていたのです。



「姫!」



 薺君の声がしたので目を開けると、依頼書に向日葵の判子が押されたと声で知らせてきました。

 それにしても、イベリスと深層で意識を集中させリンクさせると、まさかここまで身体能力が上がるとは思いませんでした。


 イベリスとの深層意識のリンクを解除すると、ネコ耳と尻尾が消えました。

 そして外に出ると、掲示板が出現していたのです。



「姫、お見事でした」

「……薺君、見ていたのですか?」

「いえ、見えていなくても音である程度は把握出来るのです」



 薺君は約束通り、中を覗いていなかったようです。

 なぜなら、お祈りしていた指の痕が両手に残っていたからです。

 それにどうやらかなり、心配させてしまったようです。



「そうですか……心配させてしまって、ごめんなさい」



 私がそう言うと、薺君は両手を後ろに隠しました。

 自身の手の痕に、気づいたようです。



「いえ、それよりも次の報酬が気になりますね」



 そして話題を変えるように、報酬精算機の方を見ました。

 報酬精算機に向日葵の判子が押された依頼書を入れると、木刀と懐剣の武器成長の書が一枚ずつ出てきたのです。


 薺君が木刀用の武器成長の書を手に取ると、木刀の色が白味がかかった色から赤味がかかった色に変化しました。

 私も武器成長の書を手にすると、木の懐剣の色が赤味がかかった色に変化したのです。



「これは、凄い。僕の手に馴染むのに、一振り一振りが先ほどまでとは比べものにならない力を感じる」

「薺君、これが成長した姿なのでしょうか?」

「僕の木刀は、成長する度に姿を少しずつ変えました。初めは、短くて不格好な形で普通の木のようでした。ですが、成長する度に僕が扱いやすい細さと長さとなり、白味がかかった色となったのです。そして今回は、赤みがかかった高級家具の様な色をしています。封印がかかったままですし、恐らくまだ成長するかと思います」



 薺君はそういうと、木刀を見上げました。

 自身と共に成長した木刀が、誇らしいのだと思います。

 次の依頼の【動く銅像を討伐せよ】を受けるために依頼書を手にしたのですが【常闇の鏡を討伐せよ】だけが消えませんでした。

 他の依頼書は消えたのに、何故なのでしょう? 


 ですが、そんな事を気にしていても仕方がありません。

 二つの依頼書である【動く銅像を討伐せよ】と【常闇の鏡を討伐せよ】を手にすると、私達は再びイベリスの案内で動く銅像を探すことにしました。

 ですが歩き出そうとした瞬間、イベリスが上を向き私達も釣られて上を向くと鏡に吸い込まれたのです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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