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えっ?
この光りは、お兄ちゃんの居る世界に通じる光り?
「姫、ご安心下さい。この洞窟から出る為の、転移の光りです」
転移の光り?
あんちゃんの元、行けんと?
この光りは、お兄ちゃんが消えたときの光に似ていました。
ですが、違っていたようです。
私は浅はかにも、お使い様の試練に合格して報われると思ってしまいました。
なぜなら、先ほどの水ネズミとの戦いは本当に一歩間違えると鍛錬の間での失敗を意味していたからです。
ですがよく考えると、まだお使い様の意味深な英数字の謎が解けていません。
それら全て解き明かさねば、恐らくお兄ちゃんの世界に行けないのでしょうね……。
確かに薺君の言うとおり光りが止むと、私達は水の洞窟の入口に出ていました。
「姫、どうされたのですか?」
薺君が、私の目尻にそっと指を触れさせました。
私は知らずに、涙を流していたようです。
「いえ……」
気落ちしてしまいましたが、薺君のHPを見て私は頭を振りました。
今は、危険を顧みず自らのHPを削ってまで助けてくれた薺君を回復させなけらばなりません。
道中で魔物に遭遇すれば、薺君が再び私を守ろうとするでしょうし、私が今出来る事をしなければ、守られるだけの存在になってしまいます。
私は癒やしの手を使用して、薺君のHPと私のHPを最大まで回復させました。
すると、薺君が水の洞窟の入口へ行こうと言い出したのです。
まだ水の洞窟に、何か有るのでしょうか?
私が小首を傾けると、薺君が私の服を指さしました。
「姫、出来れば着替えてから報酬精算機に向かいませんか?」
そう言えば、二人ともまだ水着のままでした。
ですが、私のはフレアキャミワンピース水着でしたし、着てみると肌触りや着心地が抜群です。
このままでも良いと思ったのですが、薺君は自身の水着だけでは無く、なぜか私にも早く着替えて欲しいようです。
ですので、元の制服に着替える事にしました。
「はい」
更衣室の中に入ると、お使い様のメッセージカードが置いて有りました。
そのメッセージカードには「合格」と記されてあり、ヒントとして「始まりのケケッコ鳥の爪数、その時パートナーが受けたダメージ数、捕らわれた水ネズミの攻撃から貴女が守られた回数、その時パートナーが受けたダメージ数、パートナーのレベルアップ数、貴女のレベルアップ数」と書かれてあったのです。
ケケッコ鳥は六本爪でしたので6、薺君のHPが一気に27まで下がったので163、水ネズミの戦いの時に、私が薺君に守られた回数は3、その時薺君が受けたダメージは9と30と20でした。
残りのヒントは、鍛錬の間を出てからしか分からないと言うことです。
私は水着をペンダントに収納すると、向日葵の下着と制服に着替えました。
そして、更衣室から出てくると薺君が制服に着替えメッセージカードを持っていました。
薺君も私のように、お使い様からメッセージを頂けたのでしょうか?
ですが、何故か薺君の頬と耳が薄紅色なのです。
「ひっ、姫に……お伝え致します。4回です」
一体、何の数でしょう?
薺君が動揺するような事が、書かれていたのでしょうか?
ですが、それだけでは意味が分かりません。
「その回数は、どうすれば良いのです? 私も、薺君のメッセージカードを見ても良いですか?」
「えっ! そっ、それは……少しお待ちください」
薺君がそう言うと、親指でメッセージカードの文字の一部を押さえていました。
内容を見てみると、「水の洞窟で、○○○○しめてしまった回数を姫に伝え、その数をヒントに足すと真のヒントとなる」と書いてあったのです。
しめるとは、恐らく何かを懲らしめたと言う意味でしょう。
それに、薺君が私に見せたくないのでしたら無理に見る必要はありません。
「私のヒントを数で表すと、6、163、3、59となります。それに、薺君が何かを懲らしめた回数の4を足すのですね」
私がそう言うと、薺君が小首を傾けました。
「えっ?」
もしかして、見当違いの事を言ってしまったのでしょうか?
「ごめんさい。違いましたか?」
「……いえ、その通りです。姫、流石です。お見それ、致しました」
何となく違っている気がするのですが、薺君がそう言うのでしたら、そうなのでしょう。
「それと残りの数も有るのですが、二人のレベルアップ数ですので、外に出てから教えて頂けますか?」
「はい」
薺君はそう言うと、先ほど倒した洞窟水ネズミを抱えてくれました。
今回も、水ネズミを荷物として持ってくれるようです。
私達は、倒した水ネズミを持って報酬精算機に向かう事にしました。
報酬精算機に向かっている途中、薺君が持ってくれている水ネズミを見て改めて思ったのですが、凍る水を噴き出すトラップに対する対策としての有効な手段はどうやら私だったようです。
恐らくですが、レベル1に対してトラップが作動しないように出来ていたのだと思います。
そう考えなければ、凍る水が噴き出す場所を往復した時にトラップが発動しなかった説明がつかなかったからです。
六本爪のケケッコ鳥もそうでしたが、お使い様は薺君のパートナーとしてレベル1の私を選び、戦力として役に立たない変わりに別の事で役に立つよう考えてくれたようです。
「薺君、お使い様は私達の心もお見通しのようですね」
「はい、僕も改めてそう思いました。秘めたる思いも、お見通しだと……」
「秘めたる思い?」
「なっ、何でも有りません。それよりも姫、報酬精算機から何が出てくるのか楽しみでなりませんね」
薺君に少し誤魔化された気がしますが、確かに次の報酬が気になります。
それに、私のダメージを請け負った薺君の能力が気になり、薺君に聞いてみると初めて発動した能力のようでよく分からないそうです。
ですが、発動時にスキル名だけが【守護者の男気LV1】と表示されていたようです。
薺君曰く、恐らく私に危機が訪れた時に発動するタイプの特殊能力だと言っていました。
買い取りボックスに倒した水ネズミを入れると、依頼書に向日葵の判子が押されました。
その依頼書を、報酬精算機に入れると賞状筒のような物が二つ出てきました。
同時に、魔法陣が近くに現れたのです。
「姫、その魔法陣は鍛錬の間を出るための転移魔法陣です。ですが、その前に報酬を見て下さい」
「はい」
返事をし二つの筒を手にすると、私と薺君の名が筒に書かれてあったのです。
「こちらは、薺君の分みたいですよ?」
薺君へ筒を渡すと、かなり驚いていました。
報酬精算で、自信以外が受け取れるものが有るのは初めてだったそうです。
筒の中を見てみると、経験値確率増加の書とスキル書【姫の加護LV1】でした。
経験値確率増加の書とは、鍛錬の間から出たときに取得した経験値を1倍から15倍に確率でアップする使い切りの書物で、スキル【姫の加護LV1】とは、私のパートナーの能力を常に1.02倍にする事ができる能力のようです。
注意書きとして、どちらも使用してから鍛錬の間を出るようにと書かれてありました。
薺君にも同じ様に、経験値確率増加の書とスキル書【剣豪LV5】が入っていたようです。
現在薺君は剣士LV10で、LV10は剣士の最大値だったようです。
剣士LV10は、与えるダメージを1.5倍に出来るそうです。
そして剣豪とは、剣士の上位能力のようです。
ですので、更なる高みを目指せると言って喜んでいました。
経験値確率増加の書とスキル書をそれぞれ使用し、転移魔法陣で外に出ると大きな公園入口近くのトイレの前でした。
そう言えば、お姉さんはまだトイレから出てきません。
「姫、レベルをお伝えしておきますね」
心配して中に入ろうとすると、薺君が私に声をかけてきました。
そう言えば、まだレベルを確認していませんでした。
ですが、鍛錬の間以外の確認方法を知りません。
「はい、お願いします」
ですので、その確認方法も薺君から教わることにしました。
教わった方法で、私のレベルを確認してみると27となっていました。
薺君の方は、33になっていたそうです。
その他は【姫の加護】がLV9となり、パートナーの能力を常に1.18倍にする事ができるようになり【癒やしの手】は【癒やしの光り】に変化したようです。
説明が現れたので読んでみると、どうやら【癒やしの光り】は【癒やしの手】と違って相手に触れる必要が無くなったようです。
但し、MPの使用量が1から3に増え状態異常も回復させる事ができるようになったようです。
薺君はスキルが【剣豪LV6】となり、与えるダメージが1.6倍に増加しHPも50増加したそうです。
因みに私のHPは12から142となりMPは6から136に増え、薺君はHPが190から258となりMPは58から64となったそうです。
MPがこれだけあれば、癒やしの光りもそこまで気にせずに使えそうです。
それと薺君が、経験値確率増加の効果がかなり大きかったと言っていました。
薺君の場合は毎週鍛錬の間へ導かれたようですが、レベルを1から30まで上げるのに二年を要したそうです。
恐らく、お使い様がレベル差を埋める為に私と薺君の経験値増加確率を変化させたのだと思います。
「撫子ちゃん、春野君、めっちゃ待たせたやろ? 堪忍な……もう、お腹ピーピーやったんや。うち、ほんま死ぬか思たわ」
お姉さんがトイレから出て来ると、そう言いました。
ですが、大丈夫でしょうか?
お姉さんの状態を見てみると、感染性腸炎でした。
汚染されている食事を、食べたのかも知れません。
ですので、癒やしの光りを使用する事にしました。
すると、顔色が良くなり腹痛もなくなったようです。
「なんや知らんけど、撫子ちゃんの顔見たら治ったわ。せや、お姉さんが奢ったるさかい何か食わへんか?」
治ったからと言って急に食べるのは良くないのですが、お姉さんはお腹が空いたようです。
私達は食事をし、大きな公園の様々な施設を楽しみ、お姉さんの自宅へと帰ってきました。
帰るとき私は、自身に癒やしの光りを当てた事で、お姉さんの運転を乗り切ることが出来ました。
またお姉さんに誘われた時は、電車とバスを利用しようと思います。
薺君とお姉さんと別れ、自宅へ行きママとお父様達にお土産を渡しマンションへ戻ってくると、ヒントを合わせた数字「10、167、7、63、7、30」で本を見てみることにしました。
すると、十巻の167ページ、七巻の63ページ、七巻の30ページに判子が押されていました。
そのページをそれぞれを撮影し、パソで合わせると「K」という文字が出てきたのです。
未だにこの暗号の意味はよく分かりませんが、お使い様が今までされた事は全て意味が有りました。
きっとこれらの能力は、お兄ちゃんの世界へ行った時に必要な能力なのだと思います。
ですので、私はお使い様のお導きにこれからも従おうと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




