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私達は、パーティーを組むことにしました。
すると左側にある私のHPとMPの下に、薺君のHPとMPが表示されました。
因みに、薺君のHPは190でMPは58です。
薺君を見ると、メッセージカードを見て首を傾げていました。
「薺君、どうしたの?」
「討伐対象の名が、気になるのです」
そう言えば薺君は、メッセージカードに【稀に現れるケケッコ鳥をパートナーと協力して倒せ】と記されていたと言っていました。
ですが、今から討伐しに行こうとしているのはグレートケケッコ鳥です。
そして、もう一つ疑問が有るそうです。
それは、私の討伐依頼である【倒したケケッコ鳥一匹と水ネズミ一匹を買い取りボックスに入れよ】です。
薺君が言うには、依頼や指示に従って魔物を討伐すると、依頼書やメッセージカードに向日葵の判子が押され例外なく消えると言うのです。
そして極稀に現れる、とても強いグレートケケッコ鳥も同様なのです。
つまり薺君と私の討伐対象が、グレートケケッコ鳥では無い可能性が有るというのです。
ですが、そんなことを言っていても倒してみなければ分かりません。
「姫、討伐対象では無いかも知れませんが宜しいですか?」
薺君も私同様、兎に角グレートケケッコ鳥を倒しに行くと決めたようです。
「はい。よろしくお願いします」
私はまだ、ここの事を良く知りません。
ですので、薺君に私は付いて行くだけです。
ですがその前に、よく考えるとグレートケケッコ鳥の特徴を薺君から聞いていませんでした。
「薺君、宜しければグレートケケッコ鳥の特徴を教えて頂いても良いですか?」
「はい。通常のケケッコ鳥は白いのですが、グレートケケッコ鳥は黒く鋭い足の爪四本で攻撃してきます。時には嘴でも攻撃……」
爪が、四本?
私はその言葉を聞いて、薺君の説明を手で止めました。
「薺君、少し待って頂いても良いですか?」
私が襲われたケケッコ鳥の特徴と、グレートケケッコ鳥の特徴が異なるのです。
確か私が追いかけられた鶏の縫いぐるみは、白でした。
そして、私の記憶では爪が前向きに三本と後ろ向きに三本有ったのです。
「姫、どうされたのですか?」
「足の爪は、前向きに三本と後ろ向きに三本の合計六本では無いのですか?」
私は、一番特徴的な事を聞いてみました。
「いえ、どんなケケッコ鳥も爪は前向きに三本と後ろ向きに一本です。今まで倒して来たケケッコ鳥は、全てそうでした。間違いは、ありません」
鶏同様、ケケッコ鳥には色々な種類が存在すると思っていたのですが、どうやら違っていたようです。
「私が追いかけられた白いケケッコ鳥は、頭から足までフワフワした羽毛が生えていて、足の爪は合計六本有りましたよ?」
「姫、グレートケケッコ鳥は頭に大きな鶏冠が付いています。追いかけられたケケッコ鳥は、どうでしたか?」
「鶏冠よりも、フワフワしている羽毛に覆われているように見えました」
「姫、恐らくそのケケッコ鳥が今回のターゲットです」
私達は、そのケケッコ鳥を探すことにしました。
※ ◇ ※
薺君と一緒にケケッコ鳥が居る場所まで来ると、離れた位置から確認していきます。
ですが、やはり普通のケケッコ鳥しかいません。
私を追いかけてきた、六本爪のケケッコ鳥は一体どこへ行ったのでしょう?
それに、ケケッコ鳥に縄張りは無いのでしょうか?
「姫、お逃げになった方向は大地から水が噴き上がる場所方面ですよね?」
薺君は、先ほど歩いて来た道のりを指さしました。
ですが、その道には目当てのケケッコ鳥は居ませんでした。
「その筈なのですが、危険だと感じ咄嗟に逃げたので……」
「大地から水が噴き上がる場所へ行くには、逆方向へ行く事はまず有り得ません。
ですので、直進するか右斜め方向へ少し移動するか左斜め方向へ少し移動した可能性が高いのです。
そして直進する道のりを、僕達は歩いて来ました。
つまり、斜め左右のどちらかへ姫が向かわれた可能性が高いのです」
確かにあの時は、逃げる事に必死でした。
私は、自信の行動を思い返してみる事にしました。
確か化粧室から出てくると、薺君や人の姿が無くなり、まばらに置いて有った縫いぐるみが気になったのです。
そして左側の方に有った縫いぐるみに近づくと襲われ、咄嗟に身を後ろに躱し、後ろを振り返ってトイレへ逃げ込もうとしました。
ですが、トイレと公園の入口が無くなっていたのです。
そして振り返ると、縫いぐるみが再び私を攻撃してきました。
その攻撃を、私は左腕で払うように受け無我夢中で走って逃げたのです。
ですが、途中で後ろが気になり振り向いた事を覚えています。
そして、縫いぐるみの姿が見えない事に安心しました。
安心したのですが、念のためにもう少し走ることにしたのです。
そうして走っていると、大地から水が噴き上がる場所で薺君と出会ったのです。
つまり、私はくの字に移動したと考えられます。
恐らく、この場所から左へ向かえば目当てのケケッコ鳥が居る可能性が高いのです。
「姫、左側に前進し続けても大地から水が噴き上がる場所に行けませんよ?」
薺君はそう言いましたが、逃げたときの位置と手で躱した時の位置などを考えると、どうしてもこの方向になってしまうのです。
「いえ、私は咄嗟に左側へ走って逃げたと思うのです」
薺君と一緒に左側へ暫く進んでいると、お目当てのケケッコ鳥を見つけました。
どうやら六本爪のケケッコ鳥は、木々が多いこの場所で私を見失ったようです。
「姫、あのケケッコ鳥で間違いないですか?」
薺君は木々の隙間から六本爪のケケッコ鳥を見て、そう言いました。
「はい、間違いないです」
私がそう言うと薺君は、六本爪のケケッコ鳥の足を見ていました。
「確かに、爪が六本ありますね」
六本爪のケケッコ鳥の攻撃は、私のHPを12から11まで減少させる程度の攻撃力です。
ですので、力や身の守りが私の十倍以上も有る薺君でしたら、無傷で倒す事が出来ると思うのです。
ただ、私の下着がまた危険を示す様に赤く光りました。
ですので念のために、薺君へ注意を呼びかけることにしたのです。
「薺君、あのケケッコ鳥は不気味です。ですので、呉々も注意して下さいね」
「姫、分かりました」
私の忠告を受けた薺君は、慎重に後ろから近づくと、六本爪のケケッコ鳥に木刀で攻撃をしかけました。
ですが六本爪のケケッコ鳥は、水ネズミのように一撃で倒されなかったのです。
薺君が言っていたグレートケケッコ鳥のように、体力がかなり多いのでしょうか?
それとも、防御力がかなり高いのでしょうか?
そして薺君と六本爪のケケッコ鳥の戦いが始まると、私に襲いかかってきた時とは比べものにならない早さで薺君を攻撃しだしたのです。
私が見る限り薺君と六本爪のケケッコ鳥は、力が拮抗している様に見えました。
「姫、下がってください!」
そう思っていると、薺君は私に離れるよう言ってきました。
ですがその一瞬の隙をつかれ、六本爪のケケッコ鳥の攻撃を喰らってしまいました。
そしてその瞬間、薺君のHPが190から27と異常な減り方をしたのです。
HPが27まで減少した薺君は、再び襲いかかる六本爪のケケッコ鳥からの攻撃を木刀で防ぐと、一端距離を置き木々の間を風のような早さで抜けて来たのです。
そして、私を抱きかかえました。
「キャッ」
驚いた私は少し声を上げましたが、薺君の必死さが伝わって来たので薺君にしっかりと掴まりました。
すると、薺君は六本爪のケケッコ鳥から更に距離を取ったのです。
ですが、無理も有りません。
一撃で、あそこまでHPを減らされるとは思ってもいなかったからのようです。
「姫、一先ず退避して体勢を立て直します。退避は、失敗扱いにならないのでご安心ください」
薺君はそう言うと、木々を縫うように走り出し六本爪のケケッコ鳥から逃げ出しました。
六本爪のケケッコ鳥の方を見ると、尚もしつこく薺君を追いかけてこちらに向かって来ていました。
ですが、六本爪のケケッコ鳥の行動に何か違和感を感じます。
その違和感が、何なのか今はハッキリとは分かりません。
「薺君、大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません」
薺君がそう言うと後ろを振り返り、木々の隙間から六本爪のケケッコ鳥を確認しました。
どうやら私達は、六本爪のケケッコ鳥から逃げ切ったようです。
私を気遣うように、薺君は下へ降ろしてくれました。
そして今更ですが、私は癒やしの手のことを思い出したのです。
実は、薺君のHPを見て気が動転し癒やしの手の存在を忘れていたのです。
薺君を見ると、木々の隙間から六本爪のケケッコ鳥が来ていないか確認していました。
私は薺君の側へ行き、六本爪のケケッコ鳥に攻撃された薺君の右腕に触れました。
「姫、僕が必ず守るので心配はいりません」
薺君は、私が不安に思っているように感じたのだと思います。
癒やしの手が発動すると、薺君に触れている右腕と私の下着が金色の光りを放ちました。
その癒やしの光りは、私の予想を上回る回復を見せたのです。
私は薺君のHPが少しでも回復すれば良いと思い使用しました。
ですが、全快するとは思いもしなかったのです。
「癒やしの、光り? 姫、感謝致します」
今まで下着の光りや回復の光りは、私以外見えている人はいませんでした。
ですが薺君にも、回復の光りと私の胸元の光りが見えたようです。
薺君は息を整えると、語り出しました。
「六本爪のケケッコ鳥は、見た目と違って僕が倒して来たどの魔物よりも強いようです」
確かに、離れた位置に隠れ木々の隙間から見ていた私にもそう感じました。
ですが、私の依頼書にある討伐対象として考えると釣り合わないのです。
それに、薺君が私の側へ来た時に感じた六本爪のケケッコ鳥の違和感。
「その強さは、攻撃回数と攻撃速度にあります」
攻撃回数と攻撃速度?
薺君はあの一撃に、数回攻撃されていたのでしょうか?
ですが私のレベルが低いせいで、そう見えていたのかも知れません。
「僕には一撃に見えたのですが、十九回攻撃されたようです。攻撃された時に出てくる攻撃ログに、十九回攻撃されたログが有りました」
十九回? 私が攻撃を受けた時と、全く違います。
もしかして六本爪のケケッコ鳥は、攻撃対象によりレベルが変わるのでしょうか?
それとも、特殊な能力を持っている魔物なのでしょうか?
私達が話し合っていると、六本爪のケケッコ鳥が現れ不意に私を攻撃してきました。
その攻撃を薺君が木刀で受けると、再び六本爪のケケッコ鳥と戦いが始まりました。
ですが、有ることに気づきました。
私を攻撃して来た時、六本爪のケケッコ鳥のスピードが明らかに落ちていたのです。
まるで、初めて攻撃されたあの時の様に。
「おかしい。魔物の、攻撃が軽い。なぜだ? それに、僕の攻撃が当たり出した」
薺君はそう呟くと、畳み掛けるように六本爪のケケッコ鳥を攻撃しだしました。
その凄まじい薺君の連続攻撃は、六本爪のケケッコ鳥に有無を言わせません。
左肩から右脇腹を切り、右脇腹から左脇腹への水平切りをし、左脇腹から右肩へ切り上げ、右肩から左脇腹を切り、左脇腹から右脇腹への水平切りをし、右脇腹から左肩へ切り上げ、頭部と腹部を連続で突き刺すと、下から上に切り上げ、最後は後ろ回し蹴りをして木々に打つけ六本爪のケケッコ鳥は動かなくなったのです。
「姫、もう大丈夫です。ですが、何だったのでしょう?」
薺君はそう呟くと、動かなくなった六本爪のケケッコ鳥の縫いぐるみを持ってきてくれました。
そして薺君が、私にお使い様のメッセージカードを見せてくれました。
すると依頼達成を示す向日葵の判子が押され、新たに【稀に現れる水ネズミを、パートナーと協力して倒せ】と書いてあったのです。
そして私の依頼書を見てみると、ケケッコ鳥と書かれている下に、一分の一と書かれてあったのです。
ですが、新たな問題が発生しました。
稀に現れる水ネズミが、どこに居るのか分からないのです。
幸い倒したケケッコ鳥は消えなかったのですが、持っていても仕方がないので、報酬精算機がある場所へ私達は戻ることにしました。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




