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私は、棒状の物を手に取り布から出してみました。
すると、木の短剣でした。
先が尖ってはいますが、薺君の木刀と同じように刃が付いていません。
先ほどのケケッコ鳥は、思っていたより簡単に倒せましたが、こんな武器で他の魔物の縫いぐるみを倒せるのでしょうか?
「姫、かなり良い物が出ましたね。それは、封印された木の懐剣です。僕の木刀と同じく、持ち主の成長と共に成長致します」
「そうなんですか?」
まさか、そんなに良いものだとは思いもしませんでした。
「はい。そう言えば姫、先ほどのケケッコ鳥との戦いですが極稀に、とても強いグレートケケッコ鳥が出現します。以前繰り返し依頼を受けた時に出現したのですが、僕の方が倒されてしまいました。HPがかなり多く、一撃一撃が必ずHPを1ずつ減らして来る厄介な魔物なのです。しかも逃げると追いかけて来ますので、出現した場合は僕が倒そうと考えていました」
そう言えば、初めに会った魔物の縫いぐるみがまさにその魔物でした。
どうやら、逃げて正解だったようです。
ですが、そのグレートケケッコ鳥は一体どこへ行ったのでしょう?
元いた場所へ行った時も、出会しませんでした。
ただもし、向かっている時に出会していたと思うと、薺君についてきて頂かなければ危なかったと思います。
「薺君、一緒について来てくれてありがとうございます」
私がそう言うと、薺君は照れくさそうな表情をしていました。
「姫、次の依頼は何をされるのですか?」
そう言えば、薺君は依頼書の文字が見えないのでしたね。
「二つの依頼書が有るのですが、【水ネズミを二匹討伐せよ】をしようと思います」
薺君が封印された木の懐剣を見ると、納得したように頷きました。
「武器が無いと、手間取る依頼でしたね」
薺君が曰く、報酬精算機から封印された木の懐剣が出たのは、お使い様のご意志であり導きだそうです。
恐らく、薺君と偶然出会えたと思っていた事もお導きなのでしょう。
「失礼とは思いますが、姫レベルは幾つなのでしょう?」
レベルと言われましても、私が知っているのはHPとMPだけです。
どこにレベルが記されているのか、知らないのです。
「薺君、レベルはどこに記されますか?」
「右上に名前が有るのですが、景色と重なるので見えにくいと思います。ですがよく見ると、名前が有ります。名前の隣に数字が有るので、その数字がレベルとなります」
確かによく見ると、背景に隠れるように私名前とレベルが見えました。
私のレベルは、1のようです。
当然と言えば、当然です。
何故なら、ここに来たのは初めてですからね。
「それとレベルアップは、鍛錬の間から一度出なければ上がりません。ですので【ケケッコ鳥を五匹討伐せよ】が有れば、その依頼をされる事をお勧め致します」
そう言われましても、残りは【倒したケケッコ鳥一匹と水ネズミ一匹を買い取りボックスに入れよ】しか有りません。
それらの事を伝えると、薺君は首を傾げていました。
薺君が掲示板を活用していた時は、弱い魔物を倒す依頼は何度も出現していたそうです。
これは、私に対するお使い様の試練なのでしょうか?
ですが、メッセージカードに模擬試験と合否判定が有るので、絶対に達成しなくてはならない試練と言うわけです。
私は封印された木の懐剣を握りしめて、薺君と一緒にに大地から水が噴き上がる場所へ行く事にしました。
すると、先ほどよりも一回り大きな水ネズミがいました。
「姫、先に僕の対象を倒しても宜しいでしょうか?」
どうやら薺君は、一回り大きな水ネズミを倒すようお使い様から指示を受けていたようです。
「はい」
「では、下がっていてください」
薺君がそう言った瞬間、木刀を持って走り出しました。
そして次の瞬間飛び上がり、水ネズミの上から下に斬りかかると着地し、下から上へ飛び上がるように切り上げ、繋げて右肩から左脇を切り、着地すると飛び上がる様に左脇から右肩へ切り上げ、降りてくる時に喉と腹を突いて着地し、最後はジャンプして蹴り飛ばしました。
見事な連続攻撃を喰らった水ネズミは、何も出来ずに倒れ消えてしまいました。
「よし」
薺君はそう言うと、持っていたメッセージカードを取り出し頷きました。
お使い様の指示の、一つ目を達成したようです。
そして残りの指示は、まだ二つ有るようです。
ですが倒す度に指示が出るので、メッセージカードを持ち歩いているとの事です。
「次は、姫の番ですね」
「はい」
私は一体だけいる水ネズミを見つけると、木の懐剣を構えました。
私が剣道の時のように中断の構えで身構えていると、薺君が手で制してきました。
「姫、水ネズミは切るより突き刺す方が効果的です。それに、大地から水が噴き上がっている間は体力を徐々に回復してしまいます。ですので、一撃でコアを突くか若しくは僕のように水が噴き出していない時に攻撃しなければならないのです。僕が、見本を見せるので宜しいでしょうか?」
私が返事をして薺君にお願いをすると、右手だけて木刀を持って右手を引き、左手は少し前に出して身を守るように構えました。
そして、左足を前に少し出しています。
私が知る剣道とは、全く違う構えです。
そしてゆっくり後方から近づき、水ネズミが気づく前に背後から心臓の辺りを刺しました。
すると、水ネズミの縫いぐるみは倒れる前に消えてしまいました。
「姫、このようにすれば一撃で倒す事ができます」
そんなことを言われても、薺君の様に私は出来ません。
先ほど薺君が倒した水ネズミは、体躯が2.5m位ある魔物の縫いぐるみでした。
普通の水ネズミは、私の身長と変わりません。
ですのに、簡単に倒してしまいました。
一体どれだけ、魔物の縫いぐるみを倒して来たのでしょうか?
薺君にレベルを聞いてみると、レベル30と言っていました。
ステータスを確認する事も出来るようで、私と薺君との差は歴然でした。
HPとの差なんて、178も有ります。
どおりで、私と動きが違うわけです。
「薺君、私に懐剣の扱いを教えて頂けませんか?」
薺君に手取り足取り指導して頂くと、懐剣の扱い方がかなり理解できました。
懐剣を使用する場合、懐剣で突き刺したり切り裂くだけではなく、視線誘導やフェイント、左手や両足を利用して攻撃する事も重要なようです。
例えばですが、触れても問題のない魔物の場合、左手で魔物を押す、捻る、引っ張る、関節が有る魔物の場合は関節をきめる、足払いや蹴りによる攻撃など、魔物の体勢を崩し懐剣で急所を攻撃する方法を色々と指導して頂きました。
ですが、指導して頂く度に薺君の顔が朱色に染まってきている事が気になりました。
もしかして、先ほどの魔物との戦闘で怪我を負ったのかもしれません。
怪我をしているのなら、私の出番です。
「薺君、大丈夫ですか? 顔が、赤いですよ。もしかして、怪我を負ったのですか? 私の手で、癒して差し上げますね」
薺君の手を取って、顔を見上げると益々朱色に染まってしまいました。
それに癒やしの手が発動しない所を見ると、怪我をしていた訳ではなかったようです。
安心しました。
「ひ、姫? ぼ、僕は大丈夫です。ですので、水ネズミを倒してみませんか? 姫の場合は、少し斜め上に突き刺す様に攻撃してください」
薺君はそう言うと、私から少し離れました。
つまり、実戦開始というわけですね。
私は水ネズミの背後にゆっくり近づくと、懐剣を斜め上に向かって突きました。
「えいっ!」
すると、見事に躱されました。
ギィィィ!
振り返った水ネズミが、右の爪で私を攻撃してきました。
それを、私は腰を下ろしてギリギリで躱し足に意識を集中させて足払いしました。
すると、水ネズミが足を滑らせ転倒したので私は一端離れました。
この場が水で滑りやすくなっていたお陰で、私は助かったようです。
ですがこの懐剣は、私の身体能力を向上させる向日葵の下着と相性が良いことが分かりました。
それによく見ると、水で地面が濡れていない所が有ります。
濡れていないそこを足場にすれば、下着の能力を生かして動くことが出来ます。
私の足場を濡れていない所にして、水ネズミは濡れている足場で再び戦いを始めました。
すると、HPを3残しどうにか一体の水ネズミを倒す事が出来ました。
それに、身体能力を集中させるタイミングと調整が戦闘時の場合は、思っていた以上に大変だという事がよく分かりました。
ですが同時に、水ネズミの攻撃手法がよく分かりました。
ただ、一体の水ネズミ相手にここまで苦戦するとは思ってもいませんでした。
水ネズミに攻撃されている時、何度も薺君が加勢しようとしてくれましたが、私は何度も断りを入れました。
これは、お使い様の試験なのです。
助けてもらって依頼を達成しても、私の経験にはなりません。
それとメッセージカードに有った合否判定に対し、助けて頂いた場合は合格にならないと思ったからです。
私は癒やしの手でHPを回復すると、MPが5から4しか減っていないことに気づきました。
MP1に対して、HPを全て回復してくれるようです。
そして私は、水ネズミの攻撃手法や地形の有利さを生かし、討伐依頼の水ネズミを倒す事が出来ました。
今回はHPを10残し倒せたので、様々な経験が生きたのだと思います。
「姫、お見事です。ですが、無理をなさらないで下さい」
「薺君、心配かけてごめんね。でも、ありがとう」
再び依頼をこなすため報酬精算機に向かっていると、薺君から良い情報を聞きました。
HPは戦闘時以外は、少しずつ回復するそうです。
掲示板の前に着くと、HPは全快していました。
報酬精算機に達成した依頼書を入れると、今度は鍔が出てきました。
薺君は鍔の事は良く知らないようで、私の懐剣に付けてみるように言ってきました。
ですので、付けてみたのですが何も起こりません。
二人して小首を傾けましたが、考えていても仕方がありません。
なぜなら、依頼がまだ有るからです。
私の最後の依頼は【倒したケケッコ鳥一匹と水ネズミ一匹を買い取りボックスに入れよ】です。
薺君に、お使い様のメッセージカードに書かれてあった事を確認すると【稀に現れるケケッコ鳥をパートナーと協力して倒せ】だったそうです。
そして私が新たに取った依頼書をよく見てみると、協力可能と記して有ったのです。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




