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「それまでじゃ!」



 石楠花の声が高らかに響き渡ると、空を天狗の大軍勢が覆っていた。

 すると、八方から八天狗が現れた。

 次の瞬間、邪神を金色の鎖で捕縛。

 すると、邪神が元の姿に戻った。



「うふ、ふふふ。あの姿で、傷を負わされたのは初めてです。もっと戦いたかったですが、ここまでのようですね。信念を持った者達よ、良い戦いでした」



 次の瞬間、光りに邪神が吸い込まれた。

 すると、目映い光と共に向日葵様と山茶花の髪飾りを付けた神の使いが現れた。

 そして向日葵様が地に降り立つと、私達の前に向日葵の道ができた。

 天八岐(アメノヤマタ)に薺君を任せて向日葵様の元へ向かおうとすると、向日葵様達が優しい笑みを向け、こちらまで飛んで来てくれた。



「撫子よ、見事世界の摂理を乗り越え魂の限界を突破しました」



 すると、もう一人の神の使いが前に出た。



「神の試練、見事合格です。リ……」

「コホン! ……山茶花?」



 そして何かを言いかけると、向日葵様が咳払いをして止めた。

 もう一人のお使い様、山茶花様と仰るのね。

 山茶花様を見ると、横目で向日葵様を見て一瞬目を瞑り、再び私に眼を向けた。



「……上位女神の御言葉を、お伝え致します。次の春を迎えたその日、あの部屋で異世界へと続く過去への道が開かれる。貴方はその時までに、一人で行くかその子と一緒に行くか決めると良いわ」



 そう言って、向日葵様を見て山茶花様が頷いた。

 すると天より光りが迎えに来て、向日葵様と山茶花様を連れて行った。

 次の瞬間、桜との融合が解けると共に薺君の融合も解けた。

 すると、桜が私の中に戻った。



「桜、小桜、最後までありがとう」



 戻った桜にお礼を伝えていると、石楠花と太郎坊(タロウボウ)率いる八天狗がやって来た。



「大義であった。この国を守る八天狗の長として、撫子と薺に感謝する。後の事は豊前坊(ブゼンボウ)に委ねるが、(ワラワ)と撫子はこれより親友。気兼ねなく、接してくれると嬉しい」



 そう言って、太郎坊(タロウボウ)が獅子から降りて私に握手してきた。



太郎坊(タロウボウ)様、ありがとうございます」



 お礼を伝えると、太郎坊(タロウボウ)が耳元まで顔を近づけてきた。



(ワラワ)の事は、呼び捨てでも構わぬ。……いや寧ろ、ちゃん付けでも構わぬぞ?」

「あは、ははは。慣れるまで、もう少し待って下さいね」



 太郎坊(タロウボウ)の申し出に苦笑いを浮かべていると、獅子が私と薺君の匂いを嗅ぎに来た。



「獅子も(ワラワ)同様、気に入ったと言っておる」



 獅子を撫でていると、石楠花が側に来た。



「カッカッカ! コヤツ……総大将意外、慣れんと思うたが、慣れると可愛いのぉ」



 そう言って撫でようとすると、獅子に鼻息で吹き飛ばされた。

 すると、転がっていた石楠花が起き上がり獅子を睨んだ。



「……何でじゃ?」



 その様子を見ていた太郎坊(タロウボウ)が、笑った。

 太郎坊(タロウボウ)さん、笑うと可愛いかも。



「総大将の獅子は、総大将が認めた強さと美を好むのです」



 すると、治朗坊(ジロウボウ)が側に来て小声で教えてくれた。

 そして、治朗坊(ジロウボウ)の隣にいた僧正坊(ソウジョウボウ)がクスッと笑った。



「そう言う私達も、獅子ちゃん触らせてくれないのよ。ね、治朗坊(ジロウボウ)ちゃん」



 すると、治朗坊(ジロウボウ)が獅子を見つめていた。



「……あの子、獅子の癖に面食いすぎなんです。いつか、振り向かせて乗ってみせます」



 そして獅子の後ろから近づこうとすると、蹴り飛ばされていた。



治朗坊(ジロウボウ)ちゃんも、懲りないわね」



 僧正坊(ソウジョウボウ)が肩を竦めると、治朗坊(ジロウボウ)を治療しに行った。

 すると、側にいた太郎坊(タロウボウ)が私を見つめて来た。



「撫子、遠慮などいらぬ。何かあれば、直ぐに(ワラワ)達を呼べ。その為に、太郎坊(タロウボウ)村正(ムラマサ)を託したのだからな。それに、撫子の友人達に貸し与えた武具は、そのまま持っていると良い」

「良いのですか?」

「撫子の大親友は、(ワラワ)達にとっても親友。特別な友に、気兼ねする必要は無い」

「はい」



 返事を返していると、僧正坊(ソウジョウボウ)が側に来た。



太郎坊(タロウボウ)ちゃん、あまり長居すると今日中に各地を確認できないわよ?」



 すると、太郎坊(タロウボウ)が獅子に跨がった。

 そして、優しい笑顔を向けてきた。



「撫子、また近いうちに会いに来る」

「はい」



 そう言って笑顔を返すと、太郎坊(タロウボウ)達は天狗の大軍勢を引き連れ帰って行った。

 因みに花ちゃん達は、貴人(キジン)さんの判断により天狐の(ヤシロ)を脱出。

 イベリスと姫立金花が、温泉宿へ連れ帰ったそうです。

 暫くすると、穴の開いていた地面や壊れていた建物が自動修復を始めた。



「天狐さん、元気になったんだ」



 その様子を見ていると、チアさん率いるメイド隊がやって来た。



「撫子(ニャン)(ニャン)、ご無事で何よりです。薺様は……膝の上で、眠られているようですね。ご報告致しますが、宜しいですか?」

「お願いします」



 チアさんによると、ヘイズスターバーストの部隊とあやかしの軍勢により、脅威が全て消失した事を確認。

 同時に崩壊していた建物内で、あやかしの負傷者達を発見し保護。

 天狐と妖狐、並びに水神と空狐姉妹が協力し建物と地盤を能力で修復。

 新たに発見した、あやかしの負傷者達を救出しているのだそうです。

 チアさんの話を聞き終えると、顔を出していたブルーローズが、何故か慌てる様にして胸の谷間の奥へ入って行った。

 すると、石楠花と黒狐(コクコ)がやって来た。



「石楠花様、私の給仕いかがでした? ブルーローズ様に、気に入られると思いますか?」

「もっと、フリフリが付いた方が可愛いかもしれんのぉ。いや、いっそブルーローズの服をフリフリにするか」

「それ、良いですね。早速、チア様の妹君にお願いしましょう」

「うむ」



 成る程、ブルーローズが隠れるわけです。

 あのままいると、イジられますからね。



「撫子、チアの妹がどこへ行ったか知らぬか?」

「ヘイズスターバーストを、手伝いに行ったのだと思います」

「そうか。……(クロ)よ、急いで向かうぞ」

「はい、石楠花様」



 そう言って石楠花と黒狐(コクコ)は、チアさんの妹を探しに行った。

 すると、ブルーローズが胸の谷間から顔を出した。



「撫子、済まん。助かった。あ奴ら、(テン)の手伝いもせず何をしておる」

「ブルーローズ、大丈夫ですか?」

「うむ。……天に直接挨拶をしてからと思ったが、ヘイズスターバースト達と合流してから帰るか」

「はい」



 返事をしていると、ヘイズスターバースト達が丁度戻って来た。

 石楠花と黒狐(コクコ)の事を聞くと、白狐(ビャッコ)に天狐の元へと強制連行されたそうです。

 すると、ブルーローズが巨大化して龍の姿になった。



「なら、丁度良い。ヘイズスターバースト、撫子の腕輪に戻ってくれるか?」

「ああ、了解した」



 ヘイズスターバーストが腕輪に戻ると、メイド隊とチアさんの妹も腕輪に戻った。

 すると、ブルーローズが周りを見てから私を見た。



「撫子、チア、薺を担いで我に乗れ。急いで、出発するぞ」

「ねえ、ブルーローズ。石楠花は?」

「我を、弄んだ罰だ。たまには、(キュウ)をすえねばならんしな。それに、自力で帰れるから構わぬだろう」



 随分可愛い灸ですが、石楠花に対するブルーローズの精一杯の抵抗のようです。

 後で石楠花にもっとイジられる気がしますが、その時は助けてあげますね。

 ブルーローズの背に乗ると、私達は天狐の(ヤシロ)を後にした。

 こうして私達は、天狐の(ヤシロ)での厄災を解決し、温泉宿の旅を楽しんだ。



        ※ ◇ ※



 そして時は流れ、私達が中学三年生となり、約束の春を迎えた有る日、お兄ちゃんのマンションで異変が起きた。

 パソの画面が、あの異世界への光りを発しだした。


 実は温泉宿から帰った次の日、向日葵様からスマホのアプリに連絡が有ったのです。

 一つ目、異世界へ行く場合この世界で私達の代わりに異変と戦う後継者が必要となる。

 それについては話し合い、花ちゃんと朝熊(アサマ)君が後継者となりました。


 二つ目、異世界ではレベルとポイントは1からとなるが、改変した形で能力を引き継ぐ事ができる。

 そしてポイントを使用し、経験値とポイント、それに下位能力が有る場合、能力を一つ譲渡する事が可能である。

 薺君は朝熊(アサマ)君と話し合い、経験値の全てとポイントを譲渡。

 それに、騎士団の能力を譲渡した。


 聖騎士団を持っていたので、そうしたそうです。

 私も花ちゃんと話し合い、経験値の全てとポイントを譲渡。

 それに、あやかし召喚士の能力を譲渡した。

 実はあやかし召喚士の上位スキル、聖霊召喚士の能力を取得したからです。


 私のあやかし達について、異世界では似通った別の存在となるそうです。

 その為、花ちゃんは別のあやかし達と契約する事となった。

 因みにですが、石楠花とブルーローズが契り、四代目豊前坊(ブゼンボウ)が生まれた。

 そして四代目豊前坊(ブゼンボウ)を、太郎坊(タロウボウ)が育てることになったのです。

 こうして私達は皆と話し合い、今日という日を迎えた。



「薺君、本当に良いの?」



 私についてくると、もう戻って来られないかもしれないんだよ? 

 何度もそう言いましたが、薺君の意思は変わりませんでした。

 ですが最後にもう一度、伝えたのです。



「はい。僕は、姫の騎士。どこまでも、お供します」 



 やっぱり、薺君の思いは変わらなかった。

 薺君が手を出してきたので繋ぐと、私達はパソの画面に吸い込まれた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

話が色々と長くなりましたが、本日で最終話となります。

時間を取って、できれば少しずつサブタイトルやおかしな内容を変えるかもしれません。

読んで頂いた方々には、心から感謝致します。

本当にありがとうございました。

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