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 殺気が辺り一面に広がった瞬間、周りの景色が一変した。

 石楠花が、テリトリーを変えたの? 

 薺君を閉じ込めていた、黒い檻が無い。



「ブルーローズ?」



 ……いない。

 さっきまで、胸元にいたのに……雛菊まで、いない。

 並列思考と高速思考を働かせ、周りを確認したがどこにも二人の存在が感じられなかった。

 そして、一つの答えにたどり着いた。


 ……私だけ、どこかに飛ばされたんだ。

 周りは全て、花と緑豊かな低木が広がっていた。

 座って花の品種を確認すると、ランタナであることが分かった。

 和名を七変化と言い、日が経つにつれて花色を変化させる事で知られている。


 だけど、何でこんな所に? 

 すると、急に目の前に有った蕾が大きくなった。

 そして開花すると、中から異形の面を被った邪神が現れた。



「うふふ。この花、綺麗でしょ。私の名を……いえ、違うわね。お気に入りなの」

「……」



 何も言わずに警戒していると、邪神が花に息を吹きかけた。

 すると花の色が、白、黄、薄紫、ピンク、赤、オレンジ、クリーム色など様々な色に変わっていった。



「心と思いは、この色と同じよ。時が過ぎていく度に、変わるの。でも、不思議ね……貴女を見ていると、私もヒントを……だけど、ここまでが限界」



 そう言うと、邪神は花に強く息を吹きかけた。

 すると、周りの花が全て瑠璃色に変わった。



「痛……」



 次の瞬間、左足に痛みが走った。

 ……いつの間に、凍らされたの? 

 私は狐火で氷を溶かし、癒やしの光りで傷を治した。

 すると左足に、棘が刺さっていたことに気がついた。

 この花が、攻撃してきたの? 



「花に罪はありませんが、ごめんね」



 そう言って、周りのランタナを切り裂くと邪神が笑みを見せた。



「うふ、ふふふ。美しい花を、切り裂いては駄目よ?」



 そんなこと貴女に言われなくても、花を扱う者として重々承知しています。

 だからせめて、生け花が出来る程度に切り裂き、花弁は傷付けていません。

 邪神は切り裂いた花を手に取ると、私を見つめた。



「こんな事をすると、お花に仕返しされますよ?」

「何を言って……」



 すると、空間から幾つもの剣が襲いかかって来た。

 これは、私の懐剣? 

 この邪神の攻撃は、一体何? 

 駄目……早すぎて、避けられない。

 だけど、私には浮遊する幾つもの剣が有る。



地刃(チジン)散開!」



 一つになっていた地剣を分散させると、邪神が笑みをこぼした。



「クスッ! 無駄なことを」



 すると、剣が地剣を擦り抜けてきた。



「クッ! キャァァァ!」



 咄嗟に懐剣を前に出し、全ての剣を受けきると、衝撃で後方へ吹き飛ばされた。

 すると、辺りのランタナが巨大化しだした。

 ……違う。

 邪神の位置を考えると、私が縮んでいるんだ。


 回転して地面に着地すると、風が舞い上がり、瑠璃色の花弁が花吹雪となった。

 すると、上に展開させていた地剣が花弁に触れた。

 次の瞬間、凍りついて落ちてきた。



「キャッ!」



 咄嗟に身を屈めて回避し、懐剣で次々と落ちてくる剣の軌道を変更。

 今のは、かなり危なかった。

 花弁に触れると、地剣が制御不能になるとは思わなかった。

 地剣では、防げない? 

 なら、他の剣で。



地刃(チジン)よ、戻れ! 火刃(カジン)散開!」



 尚も降り続ける、花弁を打ち消せるか分かりません。

 ですが、私は火剣を分散させた。

 花吹雪には、手数が必要だと感じたからです。


 すると火剣に花弁が触れた瞬間、爆発して辺りに破片をばら撒いた。

 目の前に来た破片を懐剣で打ち砕くと、火剣を操作して残りを花弁から遠ざけた。

 火剣も、駄目。

 このままだと、連鎖してしまう。



火刃(カジン)よ、戻れ!」



 火刃(カジン)を戻すと、私は転がって花弁を躱していった。

 すると、花弁が落ちた地面が凍り付いた。

 花吹雪の切れ目で、咄嗟に氷剣を足場にすると氷剣は凍らなかった。

 なら、同属性で対応します。



氷刃(ヒョウジン)展開!」



 氷剣を展開させると、花の色がクリーム色に変化した。

 折角対応出来たと思ったのに、今度は一体何? 

 警戒していると、前方の氷剣が砕け散った。


 懐剣を両手で握って前に構えると、懐剣で受けた部分に靴の先が見えた。

 今のは、透明な邪神の蹴り? 

 そして、そのまま吹き飛ばされた。



「キャァァァー!」



 叫び声を上げた次の瞬間、再び周りの景色が一変した。

 回転して勢いを殺し、地面に着地すると、クリーム色の(モヤ)が辺りを覆いだした。

 そしてその靄が、次第に濃くなっていった。


 ……これは、霧? 

 1m先が、何も見えない。

 なら、光りの陽剣でこの霧を晴らします。



「霧を光りで晴らし、青天白日の下に晒せ! 【聖なる陽光!】」



 陽剣で霧を晴らした瞬間、全方向から光りの槍が突き出てきた。



氷刃(ヒョウジン)……」



 駄目、氷剣が貫通してる。

 ……これは、躱せない。

 だけどこんな時の為に、時刃(トキノヤイバ)を出し手おいて良かった。



時刃(トキノヤイバ)よ、時を戻せ! 【たまゆらの時渡り!】」



 刹那、陽剣を使用する前に戻った。

 暫くの間、時剣は使えませんが仕方がありません。

 すると、霧の中から邪神の笑い声が聞こえて来た。



「うふ、ふふふ。貴女が、その力を使うのを待っていたわ。時神と鬼神、二つの力を合わせれば、私の時までも戻しますからね。ですが、もうその力を暫く使えない。それに、鬼神の力は無駄だと分かったでしょ?」



 邪神は、この力を知っていたの? 

 ですがそう考えないと、説明出来ない。

 なら、向日葵様に賜ったこの懐剣で……。



「【純白の花冠(カカン)!】」



 懐剣を構えた次の瞬間、巨大な花冠に包まれた。

 しまった。雷刃(ライジン)と、風刃(フウジン)で攻撃……。

 駄目! 迂闊に攻撃すると、何が起こるか分からない。


 並列思考と高速思考で、状況を確認するの。

 確認しようとした次の瞬間、何も無い真っ白な空間に飛ばされた。

 ……高速思考でも、この状況が分からない。


 この空間は、一体何? 邪神は、何がしたいの? 

 警戒して周りを見ると、鬼神の剣が全て無くなっていることに気がついた。

 鬼神化が、解けたの? 


 ……違う。

 鬼神の武器が、消えただけ……。

 すると白い空間に、白いランタナの蕾だけが無数に現れた。

 そして一斉に開花すると、花園の中心に邪神が現れた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

一日置きの更新とさせて頂きます。

不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。

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