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53

「撫子さん、オーバーロード倒す事出来たんどすな」



 そう言って、桜が笑みを浮かべた。



「……はい。ですが、私達が倒したのではありません」



 どうして桜は、あの存在に気づかないの? 

 もしかして、殺気がないから? 

 そういえば、薺君も私が伝えるまで気づかなかった。

 デビル エッグから生まれた物は、一体何? 



「それと、残念なお知らせです。オーバーロードの代わりに、今度はデビル エッグから何かが生まれました」

「デビル エッグ?」



 あれっ? 桜が、聞き返した。

 桜なら、神眼鑑定で看破していると思ったのに。

 もしかして、私にしか見えていないの? 

 いや、そんなことは有りません。

 なぜなら、ブルーローズは気づいていたからです。



「はい」



 桜に説明すると、顎に手をやった。

 私の言葉が、信じられないのでしょうか? 



「何や、うち嫌な事思い出してもうたのん」



 えっ? 思い出した? 一体、何を? 

 今は、少しでも情報が欲しい。



「桜、何か知っているのですか? もし良ければ、教えて下さい」



 手を組んで見つめると、桜が頷いた。



「伝えといた方が、良さそうどすな」



 そう言って、消滅したオーバーロードが居た場所を見つめた。

 今そこは残骸の代わりに、巨大なデコレーションケーキが聳え立っています。



「……闇の卵より生まれ出た悪魔は、魔王を吸収し邪神となりてこの世を滅ぼした。これは(カツ)て、別次元の世界で有った話どす。隕石を神眼鑑定しても、その卵か分かりゃしまへんでしたけど、一難去ってまた一難……もう、訳わからへんどすな。まるで何かに、手の平で良いように転がされとるようやわ……」



 桜と話しをしていると、薺君が桜の側に来た。



「桜、ごめんね。小桜の事……」



 すると、桜が首を横に振った。

 そして自分の手の平に息を吹き付けると、撫子色の細かな光りが集まりだした。

 その光りを薺君の胸ポケットに入れると、輝きが収まり膨らみが出来た。



「……小桜?」



 薺君が声をかけると、ポケットがモゾモゾ動き出した。

 そして、ポケットの(フチ)に小さな手がかかると可愛らしい狐耳がひょっこり顔を出した。



「ふぁぁぁー。……薺さん、おはようさんどすぅ」



 涙目で欠伸をすると、小桜が可愛らしい笑顔で薺君を見上げた。



「小桜、おはよ。無事、だったんだね」



 すると、薺君が小桜の頭を指で撫でて笑顔を向けた。



「うち、お姉様の分身やさかい平気どすぅ。そやけど、薺さん。心配してくれて、おおきにぃ」



 そんな二人の様子を見た桜が、頬を染めて私の腕に手を回してきた。

 どうやら、桜も嬉しかったようです。

 そんな心温まる一時を、割って入る事態が起きた。

 巨大なデコレーションケーキが、真っ二つになったのです。



「くふ、ふふふ」



 ケーキが二つに分かれると、中から不気味に笑う紫髪の女性が現れた。

 もしかして、あれが邪神? 

 神眼鑑定すると、完全に阻害された。

 今までのように、一部さえも情報を確認することは出来なかった。


 こんな事が出来るのは、神に匹敵する存在。

 つまり、桜が言っていた邪神そのもの。

 すると、邪神がケーキのクリームを手に取って舐めた。



「くふ。なかなか、美味なのだね」



 ……喋った。

 人の言葉が、話せるの? 

 なら、どうにか話し合いで解決出来ないかな? 

 そう考えていると、石楠花が瞬間移動してきた。



「あ奴は、一体何じゃ?」

「恐らく、邪神かと」

「……じゃから、わしのテリトリーが効いておらぬのか。……また、厄介な相手が現れたのぉ。撫子、もうテリトリーの操作は必要無かろう。わしと融合するか、桜とするかじゃ」



 石楠花がそう言ってくると、桜が私の腕を引いた。



「石楠花さん、テリトリー操作継続、お(タノ)(モウ)します」

「ん? 桜、何か策が有るのか?」

「テリトリー、うちらに影響しはるやろ?」

「成る程のぉ。逆手に、取るのか。うむ。わしに、任せるのじゃ」



 すると、石楠花と式神に加え雪狼までもが姿を消した。



「えっ?」



 急に消えた皆を心配していると、姿を現した。



『「心配するな。わしらはここにおる」』



 そして『耳元』で石楠花の声が聞こえたと思うと、再び姿を消した。

 気配だけで無く、触れる事すら出来ない。



「イベリスの、虚空の猫足?」

『「似ているが、少し違うのぉ。説明するのが、ちと面倒じゃから簡単にじゃ。テリトリーにおけるルールで、わしらはこの世界に居るようで、この世界には存在しておらん。じゃが、わしらは撫子達と会話する事が出来る。それにのぉ、こちらから相手に対し一方的に攻撃ができ、撫子達の支援ができるのじゃ。勿論、相手からの攻撃は、わしらに一切当たらんから安心するが良い。ただ、テリトリーの影響を受けぬ相手に、わしらの攻撃が通るか不明じゃ。恐らく、撫子達の支援しか出来ぬじゃろう」』

「皆に、被害が出ないので有れば安心です。石楠花、ありがとうございます」

『「うむ。薺、桜、撫子を頼んだぞ」』

「はい」

「……承知しておます」



 薺君が石楠花に返事を返すと、桜が少し返事を遅らせた。

 すると、石楠花が再び現れた。



『「カッカッカ! 桜、心配性ですまんのぉ」』



 そして謝ると、桜が頬を朱色にした。



「うちかて、同じ状況なら同じ事言ったどす」



 すると、石楠花が自分の懐を触りだした。



『「おおー、そうじゃった。天狗酒を、振る舞っておらんかったのぉ」』



 そして天狗酒の瓶を取り出すと、桜が涎を垂らした。



「……ジュルリ。ハッ!」



 桜が涎を垂らした事に気がつくと、石楠花が笑った。



『「カッカッカ! 桜も、いける口か」』



 二人の様子を見ていると、町内会のお酒の席を思い出した。

 近所のお爺ちゃん達も、ああいう顔してたな。

 私は勿論、ジュースでしたけどね。

 先ほどから邪神の様子を見ていたのですが、なぜかケーキを食べながら寛いでいた。


 邪神の心境は分かりませんが、私達の事を脅威とは思っていないのかもしれません。

 皆の事を石楠花に任せると、私は桜の方を向いた。

 すると、頬を朱色に染め天狗酒を飲んでいた。



「桜、融合良いですか?」

「天狗酒、ほんに美味しおすなぁー。うち、気分えーしぃー。撫子さん、いつでもかまへんよぉー」



 桜、こんなに飲んで大丈夫かな? 

 少し不安が有りましたが、桜と融合することにした。



怪力(カイリョク)乱神(ランシン)融合(ユウゴウ)!」



 桜と融合した瞬間、甘美な味が口いっぱいに広がり身体中に力が湧いてきた。

 ……何、これ? 

 いつもと、明らかに違う。

 これが、天狗酒の力? 


 すると薺君の身体(カラダ)に撫子色のオーラが現れ、直ぐに消えた。

 今の、目の錯覚? 

 そう思っていると、薺君が驚いていた。



「凄い。僕の能力まで上がった……」



 その言葉を聞いて、HPとMPを確認すると桁の多さに驚いた。

 HPが232667640でMPが245085820……これって、私酔ってるのかな? 



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 LV99

 三明(サンミョウ)の剣:大通連(ダイトウレン) 小通連(ショウトウレン) 顕明連(ケンミョウレン) 所持

 (鬼神化)

 撫子     HP 232667640/232667640 MP 245085820/245085820

 (怪力(カイリョク)乱神(ランシン)融合(ユウゴウ):稲成時神Ⅰ)


 時神の眷属

 (鬼神化)

 小桜     HP 1163330/1163330    MP 1225420/1225420

 (恩恵Ⅰ:絆の狐憑きリスク消去)

 (恩恵Ⅱ:一時能力時間二倍・再発動時間短縮)


 LV99

 

 薺      HP 2716/2716       MP 884/884

 (恩恵Ⅰ:初志貫徹(ショシカンテツ)一騎当千(イッキトウセン)LV1 常時発動能力二倍)

 (恩恵Ⅱ:一時能力時間二倍・再発動時間短縮)

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――



 目を(コス)ってみましたが、変わりませんでした。

 ここまで能力が上がっているなら、負ける気がしません。

 ですが、話せるなら交渉してみたいと思います。

 薺君と一緒に結界の穴に飛び込むと、邪神が腕を組んで待っていた。



「くふ、ふふふ。準備が、出来たようなんだね」

「待ってくれて、ありがとうございます。もし良ければ、話し合いで解決出来ませんか?」

「くふ、ふふふ。それは、無理なんだね。ケーキは美味いが、そろそろ刺激が欲しいと思っていた所なんだね」



 ……やっぱり、駄目か。

 武器を構えると、私は薺君と共に邪神に向かって駆け出した。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

一日置きの更新とさせて頂きます。

不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。

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