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「天八岐、甲冑モード!」
天八岐を甲冑にしたのは、天女の涙のレベルが3に上がった事で、全ての能力が向上し、一つの剣で出せる刃が五つに増えていたからです。
しかも制限時間が30分となった事で、今までのように時間を気にする必要が無くなった。
「うむ。心得た」
天八岐が槍から甲冑に変形し装着されると、私は懐剣をアクセサリーに収納した。
そして腰にある一本の剣を手にすると、大通連という名前が表示された。
もう一本にも手を伸ばすと、小通連という名前が表示された。
どうやら本来の能力を使用可能となった事で、真名が解放されたようです。
真名が解放された事で、新たな力を手に入れた。
それは、氷刃、風刃、火刃、地刃、雷刃、陽刃、時刃に加え、霧刃、海刃、月刃、天刃、冥刃が新たに加わった事。
そして、今まで単体でしか使用出来なかった雷刃、陽刃、時刃が、新たに加わった刃同様、融合する事が出来る様になった事が大きいかもしれません。
但し、陽刃と月刃、時刃と海刃、天刃と冥刃は、それぞれ対義にあたるため融合する事が出来ないようです。
「【鬼神無双 氷刃、火刃、風刃、地刃、雷刃!】」
五つの属性を呼び出すと、大通連からそれぞれ千本の刃が展開された。
凄い……以前の、十倍になっている。
しかも、私の自由に数を変更する事ができる。
どうやら、魔力がある限り刃の数が減少する事は無いようです。
更に驚かされたのが、千本の刃を一本の巨大な刃に変更できる事と、集約して強靱で強固な一本の小さな刃に変更できる事です。
「では、行ってきますね」
そう言って薺君達に笑顔を向けると、薺君が神器天佑神助を解除して頷いた。
殆ど一時的に能力が向上するスキルは、最大加護時間前に解除すれば、残り時間を再び使用可能ですからね。
恐らく、オーバーロードの為に力を温存したのでしょう。
二つに割れた隕石の前まで行くと、不気味な気配を感じ取った。
この隕石、やっぱり普通じゃ無い。
再度神眼鑑定すると、一部を世界の摂理が解読開示していた。
開示された真の名称は、デビル エッグ。
そして情報には、数え切れない悪魔の怨念を、魔王が晴らす事を諦めた時に召喚される邪神の裁きと記されてあった。
邪神の裁き?
オーバーロードが、召喚した魔法では無かったの?
すると、隕石から何かの視線を感じた。
「氷剣よ、隕石を破壊しなさい! 【氷禍の嵐!】」
障壁内に進入し、千本の氷剣を放つと片方の隕石を破壊した。
しかし、もう片方を破壊しようとした時、隕石から凝縮された黒炎の槍が無数に放たれた
そして、氷剣と相殺し消滅した。
「クッ……」
氷刃の、腹を狙われた。
こんな正確に狙えるなんて、やっぱり割れた隕石の中心に何かがいる。
ですが、これならどうです?
「地剣よ、私を守護しなさい! 火剣よ、氷剣と共に黒炎を攻撃! 風剣よ、雷剣と共に隕石を破壊しなさい!」
それぞれに指示を与えると、黒炎の槍が数を増やし私を集中攻撃してきた。
「キャッ!」
……危なかった。
一瞬擦りましたが、龍天障壁でダメージを受けなかった。
ですが、何度も攻撃されると流石に厳しいです。
それにここまで集中されると、地剣だけでは守護できない。
他の剣を戻そうか思案していると、無数の矢が黒炎の槍に命中し、爆発して軌道を変えだした。
これは、花ちゃん達の絆の一閃。
「皆、助けてくれてありがとう」
ですが、あちらの方が戦い慣れている。
それに数で耐えられるなら、こちらはその数を融合させ、質を高めて攻撃するだけです。
「鬼神融合無双! 風禍の業風、雷禍の紫電、風雷融合しなさい!」
すると、風剣と雷剣が重なり合って融合した。
「全てを、消し去れ! 【無・風雷獄!】」
刹那、隕石がプラズマに包まれ粉々になった。
すると同時に、多属性絶対障壁が砕け散った。
流石に、融合した力では耐えきれませんでしたか。
そう思った次の瞬間、周りを囲っていた絶対障壁が次々と破壊され、結界の最上部に穴が開いた。
一体、何が起こったの?
まさか……。
オーバーロードを見ると、分厚い障壁を結界内に展開させていた。
「自分を、守ったの?」
しかし、その障壁の上部に穴が開いていた。
あの障壁は恐らく、絶対障壁や結界と同等の力を持っている。
それを破壊した所を見ると、生まれ出た物は相当な強さです。
その様子を見ていると、薺君と式神達が雪狼に乗ってやって来た。
「姫、今のは?」
「……姿は見えませんでしたが、恐らくデビル エッグから何かが生まれたのだと思います」
「えっ? なら、直ぐに倒さないと」
「ですが、その前に」
薺君達に、龍天障壁を。
龍天障壁を施し説明を終えると、融合時間がもうほとんど無いことに気がついた。
「薺君、分離するので少し待って下さいね」
「はい」
薺君に待ってもらうと、私は雛菊と分離することにした。
「怪力乱神分離!」
雛菊と分離すると、「お姉たん」と言って直ぐに眠りについた。
すると、変わるようにブルーローズが出てきた。
ブルーローズが起きていた事で、雛菊は安心したようです。
「撫子、厄介なものと戦っておるな。イベリス達は、どこへ行ったのだ?」
どうやら途中で起きて、私の戦いを見ていたようです。
「花ちゃん達を、守ってもらっています」
「そうか。……奴は強い。鬼神化していても、油断するな。融合していない分、今は魔力と体力が激減しておるからな」
確かに、先ほどよりもHPとMPが減少しています。
ですが鬼神化しているお陰で、HPとMPがいつもの十倍有ります。
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LV99
撫子 HP 5170/5170 MP 5110/5110
(鬼神化)
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それに、龍天障壁を再度かけ直したので問題有りません。
「はい、分かりました。ではブルーローズ、雛菊を頼みますね」
「うむ」
ブルーローズと話し終えると、オーバーロードが溶け始めた。
……クイーンと同じ。
つまり、オーバーロードはもう死んでいると言うことです。
私は薺君の手を引き、結界の穴の前までやって来た。
「姫、どうされたのですか?」
「薺君、オーバーロードを見て下さい」
「……崩壊している。まさか、死んだのか?」
「そのようです。ですが……」
「オーバーロードより、厄介な物が生まれたと言うことですね……」
「はい……」
薺君と顔を見合わせていると、急に桜が目の前に現れた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
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不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。