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 雪狼に乗って結界の最上部を目指していると、高温と爆風が吹き荒れだした。

 これほどの高温、この服を着ていても少し危険な気がします。

 それに、この子も……。

 この子を覆える程の、巨大な多属性絶対障壁を作る必要が有りそうですね。

 ですがここまで大きいと、少し集中する必要が有ります。



「雪狼さん、少し待ってね」



 耳元で待つように伝えると、止まってくれた。



「クゥーン」



 そして甘えるように可愛く鳴くと、お座りして尻尾を振り出した。

 次の瞬間、私達を覆うように雪を巻き込んだ竜巻が発生。

 高熱の爆風とぶつかり合うと、熱を伴う爆風を防いでくれた。

 お陰で、暫くは上からの熱と爆風を遮断できそうです。

 今なら集中でき、この子を覆える程の多属性絶対障壁を作れそうですね。



「ありがと」



 雪狼の額を撫でてから上に立つと、私はあやかし達の顔を思い浮かべた。

 そして、様々な属性をイメージする。



「【極大多属性絶対障壁!】」



 すると、巨大な虹色の薄い膜が私達を優しく包みこんでいった。

 この通り、巨大でも石楠花に教わった絶対障壁は、かなりの速度で作れるようになりました。

 ですがこの先、この障壁で耐えられるか心配だったのです。


 ここから、障壁の能力を濃厚な物にしていく。

 すると、どうしても障壁が分厚くなる。

 ですが私達の動きを妨げないよう、濃厚にしつつも分厚くならないように気を遣い、毛の一本一本や服にもフィットするように障壁を形勢。


 更に、武器の刃以外にもフィットするよう障壁を形勢。

 初めてのことだけど、上手くいくかな? 

 並列思考と高速思考を併用しつつ、形にしていく。


 ……よし、良い感じ。

 それでいて必要に応じて強靱になり、強力な攻撃をも受け流す障壁。

 そして、必要に応じてしなやかに――そう、まるで龍燐のように……。


 ――出来た! 

 石楠花の天障壁と、ブルーローズの強靱な龍燐を備え持つ絶対障壁。



「【龍天障壁!】」



 今までの、多属性絶対障壁とは別物です。

 これなら、多岐に渡って私達の身を必ず守ってくれる。

 ですが、直ぐに発動出来ない所が難点ですね。

 雪狼の頭に座り直すと、優しく撫でた。



「雪狼さん、待ってくれてありがとうございます」



 すると、雪狼が立ち上がった。



「クウーン、クウーン。クウーン?」



 そして、スピードを出しても良いか聞いてきた。

 どうやら、先ほどまで気を遣ってスピードを落として走ってくれていたようです。

 ですが今は、龍天障壁で覆っていますし固定も出来るので滑り落ちることもありません。



「はい、良いですよ。貴方の、最大スピードで向かうのですね」

「ウォン!」



 許可を出すと、喜ぶ様に吠えた。

 この子、縫いぐるみのアイビーちゃんに似させて作ったけど、大きくても凄く可愛いかも。

 そんな可愛い雪狼と話していると、急に上から凄まじい衝撃波が伝わって来た。



「キャッ!」

「ウゥー!」



 私が驚くと、雪狼が衝撃波を放った隕石に向かって吠えた。

 ですが、黒い炎がこんな所まで……。

 それに、凄い熱量です。

 急がなくては……薺君が心配です。



「クゥーン、クゥーン?」



 薺君の事を心配していると、雪狼が私の事を心配して鳴いた。



「平気ですよ。ありがと」

「クゥーン?」



 すると、走って良いか聞いてきた。



「はい、お願いします」

「ウォン!」



 雪狼が吠えて姿勢を低くした瞬間、先ほどとは比べものにならないスピードで結界を駆け登っていった。

 すると、登につれて激しい攻撃音と衝撃波が辺りに木霊した。

 次の瞬間、桜の甘い薫りが辺りに漂った。



「悪しき石よ、私の色香に溺れ昇天しなさい! 【春覇(シュンハ)槍空波(ソウクウハ)!】」 



 刹那、聖風を纏った金髪美少女が槍の穂先に聖なる暴風を集め強烈な槍の一撃を隕石に食らわせた。

 すると、間を置くことも無く火の粉が舞ったと思うと、赤髪美少女が双剣を持って現れた。



「悪しき石よ、我が焔で陽炎(カゲロウ)の様に散りなさい! 【夏豪(カゴウ)双炎斬(ソウエンザン)!】」



 刹那、聖炎を集めた双撃で隕石を切り上げた。

 すると、間を置くことも無く銀髪美少女が現れたかと思うと、両手の手甲に聖なる光りを集め出した。



「悪しき石よ、我が光気と共に銀河へ消え去りなさい! 【秋皇(シュウコウ)爪波動(ソウハドウ)!】」



 刹那、聖光の波動が隕石に放たれた。

 すると、間を置くことも無く辺りに不香(フキョウ)の花が咲き乱れたかと思うと、青髪美少女が現れた。



「悪しき石よ、聖なる氷で砕き散りなさい! 【冬威(トウイ)戦斧(センプ)氷斬(ヒョウザン)!】」



 刹那、聖氷を纏った戦斧で隕石を切りつけた。

 そして連携して隕石を攻撃すると、それぞれが武器を掲げ聖なる力を集結させた。



「「「「【春夏秋冬、四神破邪撃!】」」」」



 刹那、四色の光りが隕石の中心に穴を開けた。

 すると、巨大隕石が僅かに後退した。

 同時に、薺君が白銀に輝く武器をクロスさせた。



「【天衣無縫覇王連斬集約!】」



 次の瞬間、凄まじい早さで連斬が連斬を追いかけ全てが一つになった。

 ……いつもの、連撃と違う。

 全ての斬撃を、一点に集中した秘技。

 薺君は、新たな境地に達したのですね。



「喰らえ! 【覇王(ハオウ)一閃(イッセン)!】」



 刹那、巨大隕石の中心に亀裂が入った。

 ……凄い。

 あんなにも巨大な隕石に、亀裂を入れるなんて。


 恐らく亀裂は、隕石の中心まで達しているはず。

 ならば、巨大隕石は崩壊するはず。

 そう思っていると、巨大隕石が真っ二つに割れ黒炎が一気に噴き出した。


 嘘でしょ? 

 通常召喚された隕石などは、真っ二つになった時点で、その力に耐えきれなくなり崩壊します。

 なぜなら、召喚された隕石は呼び出した場所を完全に排出されるまで、その運動エネルギーをそのままの状態で維持するからです。


 ですので、先ほどまでのように力と力が拮抗状態であれば留まる事になります。

 ですが、その運動エネルギーに耐えられるのは先ほどまでの大きさの時のみ。

 ですので、こんな事は有り得ない。


 上空が黒炎で覆い尽くされると、何も見えなくなった。

 しかも、真っ二つに割れた隕石がそのまま落下してきた。

 この隕石を何とかしなければ、下の皆に被害が出てしまう。

 MPを一気に20万も消費しますが、致し方ありません。



「旋律を奏でる白魔よ、隕石の時を奪え! 【悠久の白魔!】」



 私は隕石の時を僅かに止め、その隙に並列思考と高速思考を駆使し、多属性絶対障壁で隕石を囲い、下にも多属性絶対障壁を張った。

 今の私では2秒が限界でしたが、どうにか隕石の落下を防ぐことが出来ました。

 隕石を囲う多属性絶対障壁がどれ程持つか分かりませんが、今はそれよりも薺君を。

 すると、薺君のHPが急激に減少していた。



「えっ? なぜ?」



 次の瞬間、黒炎の渦と爆炎が私の周りを過ぎ去っていった。

 薺君なら、秘技で黒炎すら切り裂くと思っていたのに? 

 そんな……なぜ私は、薺君を優先しなかったの? 

 その事を思えば思うほど、胸が痛んだ。



「イヤー!」



 私が悲鳴を上げると雪狼の毛が逆立ち、遠吠えを上げた。



「ウォォォーン!」



 次の瞬間、上空に向かって雪のブレスを吐いた。

 すると、薺君のHPが残り100を切った時、減少がピタリと止まった。

 ですが、心配です。



「雪狼さん、直ぐに駆け登って。お願い!」



 雪狼が頷き結界を駆け登っていくと、辺りが凍り付いていた。

 すると、薺君が結界の上で膝をついていた。

 両上肢の火傷Ⅲ度が18%と両下腿の火傷Ⅲ度が18%……他にも火傷は有りますが、年齢15で考えると51%以上……かなり重傷。

 しかも、皮膚が所々炭化している。

 直ぐに、癒やしの光りを使用しないと……。



「姫……」



 すると、薺君の微かな声が聞こえた。



「薺君、しっかりして!」



 雪狼から飛び降りると、私は薺君の元へ駆け寄り、癒やしの光りを使用した。



「「「「撫子様、申し訳ありません」」」」



 すると、式神達が謝った。

 この子達も火傷しているけど、薺君よりも軽傷。

 一体、どうしたのかな? 

 そう思いつつ癒やしの光りを使用していくと、赤髪の少女が教えてくれた。

 その子の話を聞くと、どうやら薺君が四人を守ったようです。



「姫、ありがとうございます」



 癒やしの光りで回復した薺君が、私にお礼を言ってきた。

 すると、自分の状態に気がついた。

 鬼神化してる……これなら、一人でも隕石を破壊出来る。



「薺君、雪狼さんと一緒に暫く休んでいて下さい」

「ですが……」



 薺君をここまで傷付けた隕石を、私は許せないんです。



「お願いします!」



 私が真剣な目差しを向けると、薺君が私の姿を見て少し考え頷いた。



「分かりました。ですが、鬼神化していても無理はなさらないで下さいね」

「はい」



 薺君に返事を返すと、私は隕石を睨みつけた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

一日置きの更新とさせて頂きます。

不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。

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