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【薺SIDE】
撫子が来る少し前、薺は秘技を繰り出して隕石の脅威を排除しようとしていた。
クッ!
小桜がくれたこの時間、無駄には出来ない!
『「オォォォォォォ!」』
気合を入れて攻撃していると、天迦具土が刀身を燃え上がらせた。
その瞬間、隕石が削れだした。
もっと、もっとだ……天迦具土よ、もっと滾れ!
『「ウォォォォォォ! ハァァァァァァ! タァァァァァァ!」』
すると、僕の思いに応える様に深紅に輝きだした。
良いぞ!
削って、隕石を破壊する勢いで切る。
だが、この質量では流石に1割を削るのがやっとか……。
燃えさかる隕石に秘技を放っていると、絆の狐憑きの時間がもうほぼ無いことに気がついた。
だが止まっている時の中で、分かった事が有る。
この技を放ち続ければ、黒炎による熱のダメージを受ける事は無い。
それに隕石を削る事が出来なくても、この技なら押し止める事ができる。
後は、僕の息がどこまで続くかだ。
停止していた時が、動き出すまで……3……2……1――ここからは、僕の意識が途切れるかの戦いだ。
だが限界を越えても、姫を守る為にはやるしか無い!
いや、姫を思えば意識を失おうともやれる!
『「ウオォォォォォォ! ハアァァァァァァ! タアァァァァァァ!」』
言葉を発さずに『心』で気合を入れていると、龍角と龍尾を生やした金髪美少女が来て隕石を攻撃しだした。
「ハァァァァァァ! ヤアァァァァァァ!」
次の瞬間、強烈な冷気の風が巻き起こり一瞬空気が吸えた。
助かった……だけど、この子一体誰だろう。
横目でチラリと見ると、金髪美少女が微笑んだ。
だが、姫の為に僕も負けてはいられない!
『「ウオォォォォォォ!」』
再びを気力を取り戻した僕は、金髪美少女と共に隕石を攻撃した。
すると、虎耳と尻尾を生やした銀髪美少女が隣に来て肩を竦めた。
「青龍、隕石を攻撃する前にする事が有りますでしょ! もぉー……」
そして可愛らしく頬を膨らませると、両手を広げた。
「白障壁!」
すると白い障壁が僕達を覆い、上部分が黒炎を弾いていた。
そして、下まで伸びると強烈な風が再び巻き起こった。
これなら、息が吸える。
だが、障壁はもって十数秒か。
「ありがとう」
感謝の言葉を伝えると、銀髪美少女が大きく息を吸い込んでいた。
「すぅー……」
成る程、息を整えて隕石を攻撃する手伝いをしてくれるのか。
そう思っていると、頬を朱色に染めて僕の顔を見つめて来た。
次の瞬間、急に迫ってきた。
「ウッ……」
この子、こんな状況で一体何がしたいんだ?
銀髪美少女のキスを必死に避けつつ隕石を攻撃していると、背後に回られ抱きつかれた。
「捕まえました」
しまった!
無理に振りほどく事は出来るが、この子に怪我をさせてしまう。
……これは、流石に逃げられないか。
すると、耳元で銀髪少女が吐息を吐いた。
「薺様、恥ずかしいのは分かります。ですが、逃げないで下さい。空気を、口に入れるだけです。少し、我慢して下さいね」
そう言って頬に息がかかると、隣にも金髪美少女が来た。
……まさか、こっちの子まで?
もう、空気は十分に吸えたよ。
この子達、周りの空気に気がついていないのかな?
「プッ!」
すると、金髪美少女が噴き出した。
顔を赤くしてたのは、笑いを堪えていたせいか。
「白虎、そんなキス顔で迫ると男の子は逃げるよ?」
背中の子、白虎って言うんだ。
白虎と青龍? もしかして、石楠花の式神か。
だけど前に見た式神は、ここまで人の姿をしていなかった。
「クスン……青龍の意地悪」
すると、白虎が恥ずかしそうに俯いた。
勘違いしているので、少しフォローしてあげるか。
「違うよ。二人のお陰で、空気を吸えたんだ」
すると、白虎の頬と耳が朱色に染まった。
今更だけど、空気が有ることに気がついたようだ。
「薺様、ごめんなさい」
慌てて背中から離れると、白虎が謝ってきた。
なので、僕は顔を横に振った。
「白虎、障壁ありがとう。お陰で、楽になったよ」
お礼を伝えると、白虎が微笑んできた。
そして、青龍を睨んでから隕石を攻撃しだした。
「ハァァァァァァ! 青龍、何て。青龍、何て……」
「ヤァァァァァァ! 白虎が、早とちりするからだろ」
愚痴を言い合いながらだが、二人が加わった事で秘技の隙が補える。
これなら、秘技の合間で隕石がこちらに進む事は無い。
すると、障壁にヒビが入った。
やはり障壁は、十五秒が限界だったか。
「羽団扇よ、改変せよ!」
すると石楠花の声が聞こえた瞬間、周りに空気の層ができた。
テリトリーで、僕達の周りを改変したのか。
空気の層が下まで続いているので、息ができる。
「石楠花、ありがとう」
お礼を伝えると、手を上げて応えた。
そして、巨大な式神二体に指示を出しだした。
今まで必死で気づかなかったが、朱雀と玄武が結界を守護していたようだ。
すると、巨大な式神が人型となり二人して結界を駆け登って来た。
そして、赤髪美少女が青龍の隣に来た。
「薺様、遅れ馳せながら参りました。朱雀と申します」
すると、少し遅れて青髪美少女が白虎の隣に来た。
「私は、玄武と申します」
そして、二人して丁寧にお辞儀をしてきた。
「「薺様、以後お見知りおきを」」
「宜しくね」
二人が加わると、ほんの僅かだが空の亀裂に隕石が押し戻った。
皆で力を合わせれば、少しずつでも押し返す事が出来る。
すると、急に隕石の黒炎が渦を巻きだした。
「クッ! 不味いな……」
まさか?
下を見ると、オーバーロードを捕縛していた銀糸が次々と切れていった。
「青龍、白虎、朱雀、玄武、秘技を放ち、押し返すぞ!」
「「「「はい!」」」」
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
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不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。