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あれは、一体何?
石楠花が、作りだしたの?
それにしては、あまりにも邪悪すぎます。
その黒い物体は、黒い太陽かと思うほど巨大でした。
それを神眼鑑定していると、貴人さんが側に来た。
「撫子様、こちらの事はお任せ下さい」
そう言って、魔虫を倒している花ちゃん達を見た。
貴人さんによると、今まで社全体を把握するため意識を分析に回していたそうです。
その結果、鳥居や祠の機能を把握したそうです。
「有事の際、脱出経路は確保しております」
なら、ここを任せて行ける。
神眼鑑定の結果、あれは巨大な隕石だと分かったからです。
もしもあの隕石が落ちると、全てが消滅する。
薺君と式神が隕石を押し止めてくれている様ですが、どれ程もつか分かりません。
すると、貴人さんが一つの鳥居を指さした。
「撫子様、鳥居間短距離移動をご使用下さい。機能を、解除させましたので」
「貴人さん、ありがとう」
お礼を告げていると、朝熊君が側に来た。
「行くのか?」
「はい。花ちゃん達の事、お願いします」
「ああ、勿論だ。今は夢中で魔虫を倒しているが、流石に気づくだろう。これ以上近づけさせないから、安心してくれ」
「ありがとう」
朝熊君に返事をしていると、イベリスと姫立金花が擦り寄って来た。
どうやら、私の考えが分かったようです。
「金花、花ちゃん達を守ってね」
「了解だぞ」
「イベリス、私に虚空の猫足をお願い。そして、姫立金花と一緒に花ちゃん達をお願いするわね」
「分かったにゃ」
腰を下ろして二匹に指示を与えていると、背中に大きくて柔らかい物が押しつけられた。
「キャッ」
その温かさと重みに驚き振り返ると、花ちゃんでした。
「撫子ちゃん、行っちゃうの?」
「……はい」
私が言葉を詰まらせると、いつもとは違い、それ以上聞いてこなかった。
薺君のHPを確認すると、先ほどよりかなり減っていた。
恐らく、秘技の繋ぎ目でダメージを受けているのだと思う。
早く行って回復しないと、間に合わないかもしれない。
私の焦る気持ちに気づいたのか、花ちゃんが背中を離れた。
「じゃー、花達ここから援護するね」
「でも、危なくなったら……」
逃げてと伝えようとすると、花ちゃんが人差し指で私の口を塞いだ。
「撫子ちゃん、分かってるって」
すると、いつの間にか椿来ちゃん達が来ていた。
「では、私達も」
そう言って、椿来ちゃんがウインクをすると美桜ちゃんと百合愛ちゃんが頷いた。
「――超感覚的知覚、発動! 【飛鷹!】」
椿来ちゃんが詠唱してスキルを唱えると、花ちゃん達の目にレンズのような物が付いた。
「ファッションは、分析が大切ですの」
ファッションと関係有るか知りませんが、私同様に遠くの物が見えるようになったようです。
「……嘘でしょ。あんな物を、押し返すなんて……」
椿来ちゃんが驚くと、美桜ちゃんが肩を竦めた。
「男の子って、好きな子が絡むと無茶しますわよね」
「えっ?」
薺君の、好きな子?
もしかして、花ちゃん達の中にいるの?
「いえ、こちらの話です。それより、私達も手伝わないといけませんわね」
美桜ちゃんに尋ねようとすると、はぐらかされた。
「――超感覚的知覚、発動! 【飛隼!】」
美桜ちゃんも同様にしてスキルを唱えると、花ちゃん達の胸部と腕に防具のような物が付いた。
「体操服を着たときの様に、超パワーと超スピードを向上させました。如何で、しょうか?」
体操服にそんな力が有るとは思いませんが、弓を射る際の能力が向上したようです。
「もっと、下着の様に繊細にしなくては……」
下着との意味合いがよく分かりませんが、百合愛ちゃんが同様にしてスキルを唱えだした。
「――超感覚的知覚、発動! 【飛燕!】」
すると、花ちゃん達の頭にリボンが付いた。
どうやら、矢を射った時の鋭さと技の威力を向上させたようです。
「これで、足りるか分かりませんが……」
百合愛ちゃんがそう呟くと、花ちゃんが皆の手を繋いでいった。
「ううん。花達が協力すれば、大丈夫だよ! ね、朝熊君」
そう言って、花ちゃんが朝熊君に天狗弓を持たせていた。
どうやら、もう一つ借りていたようです。
「……花、何で俺まで弓なんだ?」
「絆の一閃はね、五人揃うと最強なの!」
「……成る程な。俺は、欄音の代わりか」
「うん」
「よし、任せろ!」
花ちゃんが素早く皆に指示を行うと、私の手を握ってきた。
「撫子ちゃん……」
「大丈夫。行ってくるね」
花ちゃん達と別れ、鳥居に向かっていると雛菊が私の側に来た。
「お姉たん、融合する?」
着いてから融合しようと考えていましたが、鳥居から出た先がどのようになっているのか分かりません。
「お願いできるかな?」
「うん」
雛菊が返事をすると、抱きついて来た。
「怪力乱神融合!」
雛菊が中に吸い込まれた瞬間、私の能力が一気に増大した。
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LV99
撫子 HP 430404/430404 MP 637818/637818
(怪力乱神融合:雪神Ⅰ)
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凄い。
ブルーローズの時より、能力が上がっている。
……神器神通天佑神助は、最後の手段。
オーバーロードに、取っておきたいですからね。
急いで鳥居に入ろうとすると、チアさんの妹が手を繋いできた。
「娘娘、私も一緒に良いですか?」
「ええ、良いですよ」
一緒に鳥居に入ると、光りに包まれた。
次の瞬間、かなりの高温を感じとった。
「雪の障壁」
囲うように雪の障壁を作ると、光りが止んだ。
すると、建物が高温により溶かされ、崩れていることに気がついた。
「娘娘?」
「大丈夫です。貴女は?」
「少し、火傷しただけです」
強がりを言っているのか、妹さんの肌が焼け焦げ、メイド服も燃えていた。
雪でメイド服を消火し、妹さんに癒やしの光りをかけると、私は雪のメイド服を作ってあげた。
このメイド服を着ていれば、身体の周りに雪の障壁が展開されているので、燃える心配は有りません。
妹さんに雪のメイド服を着させると、雪の障壁を解いた。
すると、近くに有る階段が水の障壁で覆われていることに気がついた。
これは、水神様の障壁。
私はその障壁を覆うようにして、雪の障壁を張り巡らせた。
雪で作ったスノーボードに乗り、雪を動かして妹さんと共に最上階へやって来ると、水神達とチアさん率いるメイド隊と石楠花がいた。
直ぐに皆を雪の障壁で覆うと、チアさんが駆け寄ってきた。
「撫子娘娘、ご無事で何よりです。早速ですが、取り急ぎご報告致します。現在オーバーロードを捕縛中ですが、作法の銀糸の残りは30%です。桜様と石楠花様の結界のお陰でもっていますが、いつ崩壊するか分かりません」
「分かりました。では、雪のガーディアンを生成しますね」
雛菊が雪だるまを出す事が有りますが、正式名称は白魔のガーディアンのようです。
それに、雪だるま型以外にも人型や獣型のガーディアンも作れる様です。
私はMPを30000消費して巨大なガーディアンを5体作りだし、4体に結界を押さえてもらうことにした。
そのうち1体は、隕石を押し返すのを手伝ってもらいます。
序でに、皆の為に雪のメイド服を作ってあげた。
同じくMPを30000消費しましたが、妖狐さん達の服もボロボロになっていたので。
「天華を統べる巨人と狼よ、我が願いに応え降臨せよ! 白魔の巨人招来!」
4体の巨人と1体の狼を召喚すると、それぞれに命令を与え結界を守護させた。
因みに、巨人はヘイズスターバーストにそっくりです。
身近な巨人が、ヘイズスターバーストしかいませんでしたので。
「撫子さん、おおきに。えらい楽に、なったどす」
すると、桜がお礼を言ってきた。
「では、ここは任せますね」
「うちに、任せとぉくれやす。せやけど、気ーつけてな」
「はい。桜、ありがとう」
私は桜達と別れると、雪の狼に乗って急いで結界を駆け登った。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
一日置きの更新とさせて頂きます。
不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。