表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/126

43

 超加速飛行で近接した瞬間、クイーンの凄まじい早さに驚いた。

 何て、早さ……巨体なのに、私の剣速を越えている? 

 ですがいくら早くても、私の感覚に捕らえきれないなんて……。

 その違和感が判明しないまま、クイーンに剣を再び振るうと右に躱された。

 ならば、これなら躱せないはず。



「【飛翔(ヒショウ)龍穴(リュウケツ)!】」



 飛翔(ヒショウ)龍穴(リュウケツ)は、龍穴(リュウケツ)の空間を繋げ瞬時に移動するブルーローズの水の龍穴(リュウケツ)を改良したもの。

 改良したことで、そこから出て来る速度と攻撃速度が、水の龍穴(リュウケツ)を遥かに上回っている。

 この能力を使用し、金清水(キンセイスイ)を纏った懐剣でクイーンを切り裂く! 



「シュッ! ……エッ?」



 剣を振り切った瞬間、クイーンが消えた。

 そんな……これは、躱せないと思ったのに。

 そして、私が剣を振り切った先の地面が切り刻まれ爆風が起きた。

 ここで、クイーンのおかしな点に気がついた。


 音速を超える速度で剣を振るえば、衝撃波が起きる。

 私より遥かに巨大なクイーンが、剣より早く動けるならば、周りを巻き込む程の爆風と衝撃波が起こるのは当然。

 しかし、クイーンにはそれがない。

 もしかして、私のように能力で瞬間移動しているの? 


 ですが何も無い所に、巨大なクイーンが現れれば、空気を押しのけた衝撃の風が起きてもおかしくはない。

 一体、どういう移動方法なの? 

 このまま躱され続けられたら、融合を解かなければならなくなる。

 だけど、移動のカラクリが分からない以上、私の攻撃が当たらない。


 下着で視力を強化し、空間認識の能力を高めていても、クイーンを捕らえられないなんて……。

 異界スキルで、移動しているの? 

 もしそうなら、神眼鑑定でも鑑定不可能。

 ですがきっと、どこかに何らかの手がかりが有るはずです。



「キャー!」



 そう思っていると、背中に強烈な衝撃が走った。



朝熊(アサマ)SIDE】



「花、何を見つけたんだ?」



 スマホに向かって話しかけると、花の顔がスマホの画面に映った。



『「ちょー大っきくて、赤黒いの」』

「そうか……」



 ……花、顔で表現されても説明が雑すぎてよく分からん。

 だが、赤黒い物体は魔虫(マチュウ)共を集める原因の可能性が高い。

 この陣を守る為に、破壊しておいた方が良いだろう。


 あれだけ矢を放って、破壊出来ない所を見ると……式神を、向かわせた方が良いか? 

 いや、ここの守りが薄くなる。

 かと言って、花しか届く距離では無いだろう。

 考えていると、笑い声が聞こえてきた。



「キャハハハ!」



 そして、その笑い声がどんどん近づいてきた。

 ……やっぱり、花か。



貴人(キジン)ちゃん、暇だから朝熊(アサマ)君のところに行くよー。ほら、ついてきてねー」

「花様、お待ち下さい!」



 その笑い声に続いて、貴人(キジン)の慌てる声。

 やはり、あの場所に花を留まらせることは無理だったか。

 器用に走りながら魔虫(マチュウ)を倒しているが、行く手には魔幼虫もいるぞ。



「来い、魔虫(マチュウ)共! 【サークル アロウズ ハスティラティ!】」



 花の行く手を阻む魔虫(マチュウ)共を引いていくと、天空(テンクウ)勾陳(コウチン)に加えて、太陰(タイイン)太裳(タイジョウ)魔虫(マチュウ)共を倒していった。

 すると、天空(テンクウ)が俺の側に来た。



朝熊(アサマ)様は、花様にお優しいですね」

「いや、天空(テンクウ)あれ見てくれよ! 流石に、ほっとくと不味いだろ!」



 俺が指さす方向には、椿来(ツバキ)が数多くの魔虫(マチュウ)共を引き連れていた。

 すると、天空(テンクウ)が先ほど引いた魔虫(マチュウ)共に突進していった。



「花ちゃん、そっち行くと危ないよ! ……もぉー! 花ちゃんは、じっとしてないんだから……天后(テンコウ)ちゃん」

「えっ? 椿来(ツバキ)様、持ち場を離れると困ります。あっ! 椿来(ツバキ)様、お待ち下さい」



 花に続いて、椿来(ツバキ)も来たか……。



「来い、魔虫(マチュウ)共! 【サークル アロウズ ハスティラティ!】」



 椿来(ツバキ)の行く手を阻む魔虫(マチュウ)共を引いていくと、勾陳(コウチン)が側に来た。



「……確かに、忙しくなりそうですね」

「だろ?」



 すると、美桜(ミオ)も数多くの魔虫(マチュウ)共を引き連れて来た。



「あれー、面白そうね! 六合(リクゴウ)ちゃん、私達も行くわよ!」

美桜(ミオ)様まで……。あっ、お待ちください!」



 まっ、花と椿来(ツバキ)が来たら美桜(ミオ)も来るわな……。



「来い、魔虫(マチュウ)共! 【サークル アロウズ ハスティラティ!】」



 美桜(ミオ)の行く手を阻む魔虫(マチュウ)共を引いていくと、太陰(タイイン)も側に来た。



朝熊(アサマ)様、楽しそうです」

「そうか? だが、今のうちに引いておかないとヤバイ。……勾陳(コウチン)太陰(タイイン)、二人とも悪いな」

「「いえ、お気になさらないで下さい」」



 すると、百合愛(ユリア)が更なる魔虫(マチュウ)の群れを引き連れてやって来た。



騰虵(トウシャ)ちゃん、太陰(タイイン)ちゃんと太裳(タイジョウ)ちゃんの下着も気になるわ。私達も、行くわよ!」

「はい、百合愛(ユリア)様」



 百合愛(ユリア)だけ別の事に興味が有るようだが、やはりこのメンバーは、式神でも止められなかったか。

 って言うか、騰虵(トウシャ)はなんで百合愛(ユリア)に同調しているんだ! 

 だが、流石にあれを一気に引くと不味い。

 すると、太裳(タイジョウ)が側に来た。



朝熊(アサマ)様、問題は有りません」

「そうか? なら、まとめて来やがれ! 【サークル アロウズ ハスティラティ!】」



 百合愛(ユリア)が引いている魔虫(マチュウ)の群れを全て引くと、太裳(タイジョウ)が舞を舞いだした。



「春夏秋冬、憂い無し! 【四時(シジ)の恵み!】」



 そして舞い終わると、式神達がオーラを纏い始めた。

 どうやら、式神達の能力を向上させるスキルを発動させたようだ。

 式神達がオーラを纏うと、数秒もかからずに魔虫(マチュウ)の群れを全て倒した。


 倒し終えると、花達が来たので赤黒い物体をどうするか話し合った。

 すると花を筆頭に、椿来(ツバキ)美桜(ミオ)百合愛(ユリア)が同時に天狗弓を射る事となった。


 どうやら同調と言うスキルが有るらしく、二人以上で同時に弓を射ると、矢同士が同調し、飛距離が数倍になり能力も同調するようだ。

 その為、弱点必中、速度低下、吹き飛ばしなどが同調し、強力な矢になるそうだ。



「花、本当に赤黒い物体を破壊出来るか?」

「うーん。分かんない。だけど、やってみるよー」

「そうか。なら、俺が花達を守る。式神達は、五の陣を守ってくれ!」

「「「「「「「「はい」」」」」」」」



 こうして俺達は五の陣を守りつつ、赤黒い物体を攻撃する事となった。



【撫子SIDE】



 天八岐(アメノヤマタ)を纏っていたお陰でダメージは皆無でしたが、私は壁まで吹き飛ばされた。



『「お姉たん!」』

『「撫子ちゃん!」』

『「撫子様!」』



 すると、雛菊たちが私の『心』を通して叫んだ。



『「大丈夫! 少し、驚いただけです」』



 心を通してダメージが無いことを伝えると、私は甲冑を触った。



天八岐(アメノヤマタ)、ありがとう。助かりました」

「気にするな」



 天八岐(アメノヤマタ)を纏っていなければ、危ないところでした。

 ですが、私も尻尾で一撃喰らわせた。

 金清水(キンセイスイ)天八岐(アメノヤマタ)を纏った、龍尾の一撃。

 流石に、クイーンもダメージを受けているはず。

 一撃で倒さずに攻撃を与えると、進化する恐れが有りますが、手がかりを探すには仕方ありません。



『「虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)、使うにゃ」』

『「待って、イベリス」』



 私は常に、強化した眼と空間認識で位置や距離感覚を確認している。

 なのに、どうして攻撃されたのか? 

 クイーンの攻撃を、見極めなければなりません。

 ですが、恐らくこの攻撃も神眼鑑定すら鑑定不可能な異界スキルによる攻撃。

 見極めるのは、困難かもしれませんが……。


 クイーンを見ると、クイーンだけでなく黒魔虫(コクマチュウ)の一部が陥没していた。

 しかも、陥没した場所が揺らいでいたのです。

 再生? いえ、私が見て来た超再生と違う。

 これは、明らかに別の能力。

 行動を繰り返す度に、少しずつクイーンの能力が分かりだした。



「ウッ……クッ!」



 又、どこからともなく攻撃された。

 見えている所に、クイーンがいないのかな? 

 攻撃を数回受ければ、何かの手がかりが掴めると思ったのですが、何に攻撃されているかすらも分からない。



『「撫子様、金花(キンカ)もう見ていられないぞ!」』

『「金花(キンカ)、暴れると駄目にゃ! それに、ミィ達が行くと足手まといにゃ」』

『「けどよ……」』

『「お願い、金花(キンカ)押さえて。龍人化してるから、私は大丈夫だからね」』



 姫立金花に優しく言い聞かせていると、今度は前から衝撃が来た。



「カハッ、クッ!」 



 息を吸い込んだときに、不意打ちの衝撃。

 天八岐(アメノヤマタ)を纏っていても、龍人化した身体(カラダ)でなければ、危なかったかもしれない。

 ならば、先ほどから感じている違和感の正体を突き止められる事ができれば……。



「キャー! カハッ、クッ!」



 吹き飛ばされたと思うと、壁に打つかる前に再び何かに攻撃された。

 ですが、下着の能力でもっと空間認識能力を研ぎ澄ませればきっと。

 念の為に癒やしの光りを自分に使用し、連続してくるクイーンの攻撃を無視する。

 そして、もっと空間認識能力の範囲を拡大する。



『「ふえーん」』



 そうしていると、雛菊が泣きだした。



『「お姉たん、ピィも見ていられないよー」』

『「雛菊、ごめんね。もう少しで、何か分かりそうなの。お願い」』

『「……グスン。うん」』

「カハッ、クッ! キャァァァ!」



 そして、かなり遠くの壁にまで吹き飛ばされた。



『「お姉たん!」』

『「撫子ちゃん!」』

『「撫子様!」』



 雛菊達の悲鳴が聞こえてくる中、私は突き刺さる音を壁の中から感じ取った。

 さっきから聞こえていたのは、この音? 

 ここだ! 間違いない! 

 空間認識能力、最大範囲! 


 そして空間認識を広げると、矢を放ったのは花ちゃん達だと分かった。

 花ちゃんの矢は、弱点に突き刺さる。

 つまり、この壁の中がクイーンの弱点。

 矢が刺さっている位置を、特定した。


 見えた! 

 金清水(キンセイスイ)、最大解放。

 クイーンに攻撃されている間、溜め続けていた金清水(キンセイスイ)を懐剣と小刀に全て注ぎ込むと、剣先に龍爪の様なオーラが現れた。

 それを、壁に突き刺した。



「【金清水(キンセイスイ)(リュウ)爪撃(ソウゲキ)!】」



 その瞬間、技を使用して壁を大きく切り裂いた。

 すると、巨大な赤黒い塊に無数の矢が刺さっているのが見えた。

 まさか、クイーンの核と赤核が合わさった物? 

 ですが、矢の刺さり方が浅すぎる。



「貫け、天八岐(アメノヤマタ)!」



 部分甲冑となっていた天八岐(アメノヤマタ)が、槍となり核を貫いた。

 刹那、巨大な地揺れが起きた。

 地揺れが治まると、核が色を失い砕け散った。

 すると、クイーンと黒魔虫(コクマチュウ)に見えていた物が消失し全ての壁が溶け始めた。

 もしかして、この地下全てがクイーン? 

 違和感の正体は、これだったの? 

 詳細は分かりませんが、このままではクイーンの崩壊に巻き込まれてしまう。



『「虚空(コクウ)猫足(ネコアシ)にゃ」』



 すると、イベリスが私に能力を使用してくれた。



「ありがとう、イベリス。皆、私につかまって下さい」



 上を見て指示を伝えると、雛菊達が人型から獣型へと変化した。

 皆が胸元に入った事を確認すると、両手から多量の金清水(キンセイスイ)を放った。

 クイーンの核と赤核が消滅した事は分かりましたが、地下を完全に浄化するためです。



「では、脱出します!」

「うん!」

「了解だぞ!」

「了解にゃ!」



 金清水(キンセイスイ)を激流にして放出させると、私達はこのまま上に抜けて、地上を目指すことにした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

一日置きの更新とさせて頂きます。

不定期な時間になるかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ